顧問税理士の役割と依頼できる業務【まとめ】

公開日:2018年11月06日
最終更新日:2024年03月15日

この記事のポイント

  • 顧問税理士とは、顧問契約を締結した税理士のこと。
  • 顧問税理士に依頼できる業務は、多岐にわたる。
  • 顧問税理士がいると税務調査の対象となりにくい、というメリットもある。

 
 

顧問税理士の豆知識

顧問税理士に支払う報酬額については、インターネットで比較することができますが、内容については税理士事務所によって異なり、同じ顧問料3万円でも提供するサービス内容に大きな違いがあるものです。
したがって、単に金額そのものではなくサービス内容などもきちんと検討して税理士を選ぶべきです。
顧問税理士によっては、試算表と合わせて適切なアドバイスを提供し、融資を受けるタイミングにはタイムリーに提案があり金融機関の選択も間違いなく、さらに売上アップやコストダウン、節税対策の提案をしてくれることもあります。
なお、節税対策は単に利益を減らすための短期的な節税では意味がありません。
将来の資金繰りも見据えた、無理のない節税対策を行うことが重要です。
さらに顧問税理士に決算書や申告書を作成してもらい、税理士法33条の2による書面を添付してもらえば申告書の信頼性を向上させることができ、税務調査の対象となりにくいというメリットがあります。

顧問税理士とは

顧問契約を締結した税理士のことを顧問税理士といいます。

「うちの会社は規模が小さいから、顧問税理士は必要ない」とか「顧問税理士は、顧問料がもったいない」などとお考えの経営者の方もいらっしゃいますが、税理士に依頼すれば、本業に打ち込む時間を確保することができるだけでなく、正しい会計情報を得てそれを経営に活かしていくことで事業を成長させることが可能となります。

(1)税理士の役割と3つの独占業務

税理士に相談できる内容や依頼できる内容は、顧問契約の内容によって異なりますが、依頼できる業務としては税務署に提出する書類の作成、節税対策、資金調達施策、経営計画の作成や業務を効率化するための会計ソフト導入支援など、多岐にわたります。

また、なかには税理士にしかできない「独占業務」があります。
以下の独占業務は、税理士資格を登録した人でしか扱うことができません。

①税務代理業務
税理士は、税務署等に法律で定められた書類を納税者に代わって代理で提出することができます。
また、税務調査の対象となった納税者が税理士の立ち会いを求めた場合には、納税者に変わって税務署等に主張することができます。

②税務書類の作成業務
納税者の税務書類の作成支援も、税理士でないと行うことができません。
税務書類とは、所得税・消費税・法人税の確定申告書類、年末調整や法定調書の作成、相続税・贈与税の申告書類、償却資産税の申告書類などです。

③税務相談業務
税務署等に提出する申告書類を作成する場合には、税金を算出するまでに税法を用いた計算が必要ですが、この税金を計算する際の納税者からの相談に対応できるのは税理士だけです。

(2)税理士と公認会計士との違い

税理士と公認会計士については、どちらも「お金に関する職務を行う士業」というイメージがあり「違いが分からない」という方も多いようです。

先ほど税理士の独占業務についてご紹介しましたが、公認会計士の独占業務は、「監査業務」です。
監査業務とは、企業の決算書が正しく作成されているかをチェックし監査報告書を発行して、監査意見を表明する業務です。一定規模以上の会社については、法律で監査を受けることが義務づけられています。
なお、公認会計士は税理士登録することも可能であり、実際「公認会計士・税理士」という肩書で事務所を経営しているケースもたくさんあります。

一方税理士は、公認会計士試験に合格しない限り、公認会計士業務を行うことはできません。

(3)どんなときに顧問契約が必要?

顧問税理士とは顧問契約を締結した税理士ですが、ではいつ顧問契約を締結した方がよいのかといえば、「事業をスタートしたら、可能な限り早く」締結した方がよいといえます。
事業の規模や多忙なことを理由に税理士との顧問契約を先延ばしにしていると、決算期を迎えてあわてたり税務署から連絡が来たりした時に、対応が遅れてしまいます。
それに、会社の規模がどうであれ、経営に重要なのは会計の視点であり将来の計画です。
多くの経営者は、「現在の売上を3年後には5倍、5年後には10倍にしたい」といった漠然とした計画を持ってはいますが、会社経営は、そのような売上目標だけたてればいいわけではありません。
その売上を達成するためには、どれだけの必要経費を確保すべきか、売上から経費を差し引いた利益はどのように増やしていくのかといったぶんせきが必要です。
そして、このような視点からアドバイスやサポートを行ってくれるのが、税理士なのです。

なお、顧問契約を締結するのは起業してからなるべく早い方がよいですが、税理士への相談は起業前に行った方が、よいでしょう。
設立時期や資本金の額で、起業後の納税額が大きく変わることがあるからです。(※後述)

(4)顧問契約を結ぶときの注意点は?

税理士と顧問契約を締結する時には、以下の点に注意します。

①税理士にどのような仕事を依頼し、どの仕事を依頼しないのか線引きできる程度の基礎知識を持っておく。

②その仕事に対する報酬の相場を知っておく。

③適切な契約書を締結する(期限等も確認する)。

④今後、顧問料が値上げされるのはどのようなケースの時か、最初に確認しておく。

⑤別途料金が必要な業務については、最初に説明を受けておく。

上記のうちで一番気になることといえば、税理士報酬でしょう。
注意しなければならないのが、顧問契約を締結すれば、経理、税務、資金調達、経営の相談のすべてをサポートしてもらえるわけではないということ。つまり、顧問料も「一括お任せ料」というわけではないのです。

顧問契約の内容は、税務のみであったり税務会計まで及ぶものであったり、記帳まで包含するものであったりと一様ではないことから、しばしば誤解を生みトラブルの原因となることがありますが、これは双方の認識の違いから生じるものです。

税理士報酬を高い、安いと判断する際には、仕事の内容(どこからどこまでをお願いできるのか)と対価関係をよく比較する必要があります。税理士が何もしないで高い報酬をもらっているのであれば別ですが、経理作業から申告書の作成、節税対策のアドバイスなどまで依頼していれば、その報酬の額は相場からすれば、かなり安い場合もあるからです。

そのうえで税理士報酬が高いかか安いかを検討するべきですが、一応の目安については、税理士会が税理士に対して行った調査があります。
その調査によれば記帳代行と決算というケースでは、法人で毎月3万円・決算時に20万円、個人だと毎月2万円・決算時に10万円くらいが相場のようです(事業規模や所得金額によっても異なります)。

(5)顧問税理士がいるメリットは?

多くの経営者が資金調達や事業承継といった問題について、税理士を相談相手として活用していますが、顧問税理士がいることのメリットは、他にも「本業に集中できる」「経理ミスがなくなる」「節税対策を行うことができる」「税務調査の対象となりにくい」など、いくつもあります。

本業に専念できる
会計ソフトの登場によって今まで手作業で行っていた経理事務が自動化されたことで、決算書や申告書は、ほぼ自動で作成できるようになりました。
しかし、取引が多い企業であればこれらの記帳作業が負担になることもあるでしょう。また、会計ソフトの導入や初期設定などに時間をかけられない場合もあるでしょう。
このような時、顧問税理士がいれば、会計ソフトの導入や、初期設定などサポートしてもらうことができるので、経理会計業務の時間を大幅に削減することができます。

起業したばかりの時は、事業を軌道に乗せるために本業に集中できる時間を確保すべき時期でもあります。
このような時に税理士に経理を丸投げできれば、経営者は本業に専念することができます。

経理業務にミスがない
言うまでもなく、税理士は「税務のプロ」です。
したがって、税理士に経理事務を依頼すれば、自社で経理事務を行う際のようなミスが起こらず、決算書の作成から申告までスムーズに行うことができます。

「freee会計」を導入し、経営者や経理担当が行っている場合でも、導入当初は税理士がサポートすることで、経理作業は格段に効率化します。

「freee会計」は学習能力を備えていますので、記帳作業を税理士が修正指導するたびに学習していきます。
たとえば、「仕入」と「青果店」を自動リンクすれば、「青果店」と入力するだけで「仕入」と自動経理することができます。

節税対策を行うことができる
合法的な節税対策を行い、会社の多くのお金を残すのは、経営者の大切な責務です。そして同じ売上高でも、節税対策を行っているか否かで、支払う税額は大きく変わってきます。
効果的な節税対策を行うためには、税制に精通している必要があります。
顧問税理士と相談して、利用できる節税対策はなるべく活用し、会社にできるだけ多くのお金を残すことで、安定した経営を行うことができるようになります。

税務調査の対象になりにくい
決算書に税理士のハンコがある場合には、「この会社は、きちんとした顧問税理士がついているので、脱税はしないだろう」といった印象を、税務署に与えることが期待できます。
したがって、税務調査の対象となりにくく、税務調査の企業リストから外されたり税務調査の頻度が低くなったりするなどのメリットがあります。

資金繰りの相談ができる
当たり前のことですが、会社を経営していくためにはお金が必要です。
税理士に相談すれば、公的な助成金・補助金の情報から、融資を受けることができる金融機関の紹介まで、さまざまな提案をしてもらうことができます。

顧問税理士に依頼できる業務

先ほど税理士報酬について法人で毎月3万円・決算時に20万円、個人だと毎月2万円・決算時に10万円くらいが相場とご紹介しましたが、この報酬は顧問税理士にどのような業務を依頼するのかによって異なります。

「freee会計」を導入し、決算時の業務のみ税理士に依頼するならば報酬を軽減することができる可能性がありますが、それに加えて資金調達や事業承継の支援を依頼するならば、別途報酬が発生すると考えておいた方がよいでしょう。

(1)経理指導・記帳代行

事業を拡大していくうえでは、正確に数字を把握するための経理作業は、本業と同じくらい重要です。しかし、本業も経理業務も両方を完璧に行うのは、至難の業です。
そのような時には税理士に経理を丸投げすることができます。
本業は経営者にしかできませんが、経理は経営者以外の人でもこなせます。
また、経営者が判断に迷った時には、税理士にサポートをしてもらったり経理指導を受けたりすることもできます。

(2)年末調整・給与計算

給与計算業務や年末調整についても、税理士に依頼することができます。
年末調整というと、従業員の給与計算が絡むことから、「社会保険労務士に依頼する業務」とイメージする人が多いと思いますが、社会保険労務士が年末調整事務を行うことは、税理士法第52条(税理士業務の制限)に抵触するため、社会保険労務士には依頼することはできません。

したがって、年末調整に必要な「源泉徴収票」や「法定証書」の作成は税理士の業務であり、税理士に依頼する必要があります。
つまり、社会保険労務士の業務範囲は給与計算までとなりますので、注意が必要です。

(3)節税対策のアドバイス

合法的に納める税額を減らすことを、節税といいます。
節税対策を適切に行うか否かで、同じ売上高でも、支払う税金が大きく変わることがあります。
もちろん、節税対策を行わず国に多くの税額を納めるのも社会貢献のひとつといえるでしょう。しかし適切に節税し会社に多くのお金を残すのも、経営者の仕事です。顧問税理士がいれば、個々の事業内容な状況に応じて適切な節税対策を提案してもらうことができます。

(4)起業・開業支援

税理士に起業・開業支援を依頼した方が、設立後の納税額を軽減できるケースがあります。
たとえば、消費税は基準期間における売上高(消費税の課税対象となる売上高)が1,000万円を超えると納税義務が生じます。
基準期間とは、個人事業主の場合にはその年の前々年であり、会社であればその事業年度の前々事業年度です。
つまり事業開始後最初の2年間は、「2年前」が存在しないので消費税の納税義務が免除されます。
たとえば、個人事業主が法人成りすると事業主体が個人から法人に変わり、基準期間の判定がリセットされます。
そこで、この「2年前」を最大限活用するタイミングで法人成りすれば、個人事業主で2年間、法人として2年間の合計4年間、消費税の納税義務が免除されるのです。
ただし、インボイス制度のスタートで、免税事業者でもあえて適格請求書事業者となった方がよいケースもあります。この点についても税理士に確認をしたうえで選択する方がよいでしょう。

なお、会社を設立する際には資本金の額についても、1,000万円を超えるラインと1億円を超えるラインで、税務上の違いが生じます。

もちろん、資本金の額も設立時期も事業内容に即して決定するべきではありますが、少しでも納税額を軽減したいのであれば、起業・開業を検討し始めた時点で、税理士に相談することをおすすめします。

(5)資金調達支援

起業時、あるいは起業直後から何年間かは、資金繰りについて悩む経営者も多いでしょう。
その場合には、金融機関から融資を受けることを検討しますが、そこで、金融機関は原則として決算期3期分や事業計画書、資金繰り表、試算表などの資料を見てお金を貸し付けるかどうかを判断します。
この時顧問税理士がいれば、金融機関から求められた資料を作成することができますし、銀行に交渉して有利な条件でも融資を取り付けてもらうことも可能です。

また、税理士によっては、金融機関だけでなく、業種によって活用できそうな公的な助成金・補助金情報を教えてもらえ、申請書類の取り寄せや作成方法についても支援をしてくれることもあります。

(6)海外進出・国際税務

海外進出をするうえでは、カントリーリスク、インフラ、労働問題や居住環境など、さまざまな事項について綿密に検討したうえで計画を作成・実施する必要があります。そして、忘れてはならないのがタックス・プランニングです。進出地を決定するうえでも、税の問題を抜きにしては考えられません。
国際間となると、日本国内の税制だけでなく相手国の税制も調査する必要がありますし、租税条約の締結国なのか移転価格税制は適用されるのかについても確認する必要があります。

海外進出をするうえでは、国際税務に精通している税理士のサポートは必須といえるでしょう。

(7)相続・事業承継・M&A

相続対策、事業承継、M&Aは考え始めたらすぐに税理士に相談しましょう。
相続や事業承継は、早いうちから中長期計画を立てて取り組んだ方が高い効果を得ることができます。また、活用できる制度もあり、納税額を大きく軽減できる可能性があります。
もしM&Aを検討するのであれば、、会社の買い手を探さなければなりません。買い手が見つかった後も、条件の交渉や契約、法務、税務、労務に関する手続きが必要となりますから、専門家のサポートが欠かせません。M&Aに精通している税理士なら、他士業と連携してトータルなサポートを受けることができます。

(8)株式上場(IPO)支援

株式上場においては、公正な株価の形成や株式の流通性を確保するという観点から、上場株式数、株主数について形式的基準が規定されており、この基準は厳密に遵守する必要があります。また上場会社には未上場の会社より厳格な会計処理が義務付けられており、上場準備を開始する時点から会計処理の見直しを実施する必要があります。
また、会計制度をベースとした予算管理制度の構築や、証券取引所あるいは証券会社の審査部門への開示資料の作成も必要です。

株式上場のための準備作業は実に多岐にわたりますが、そのどれもが専門知識を必要とします。
株式上場を正しく理解し、株式上場を有効に利用して会社を成長・発展するためには、税理士はもちろん他の多くの専門家のサポートが欠かせません。

顧問税理士を選ぶポイントは

これまで述べてきたように、顧問税理士は、税務のアドバイスだけでなく、さまざまな問題について相談できる経営者のよきパートナーとなってくれます。
それでは、よい顧問税理士を選ぶためには、どのような点に注意をすればよいのでしょうか。

(1)もっとも大切なのは「相性」が合うか

税理士との付き合いと言っても、結局は人間同士の付き合いという面が根本にありますから顧問税理士選びで最も大切なのは、相性が合うかどうかであるといえるでしょう。

「主要都市の一等地に事務所がある」「税理士を何人も抱えている」などといった点を重視する人もいますが、そのようなことにこだわっていると、最も大切な「相性」という点を見逃してしまいがちです。

したがって、顧問税理士を選ぶ時には、その税理士の事務所で実際に会って、相性が合うかどうかを確認するとよいでしょう。
たとえば、30代の女性起業家であれば同年代の女性税理士に共感を覚えビジネスの相談をしやすいこともあるでしょうし、出身地が同じということで境遇や立場に親近感を覚え、何でも話せる経営パートナーのような存在になってもらうこともあります。

税理士を選ぶ際には、直接会って1時間ほど話して「この人と話しやすいと思えたか」「共感・親近感を覚えたか」といった点をしっかり考えて選びたいものです。

(2)報酬より「サービス内容」を重視しよう

顧問税理士にかかる報酬は、できるだけ抑えたいのは、誰でも同じです。
税理士に依頼する仕事を少なくすれば、税理士に支払う報酬額は少なくて済みます。記帳作業は自社で会計ソフトを導入し、税理士に指導を受けるようにして、決算・申告だけ税理士に依頼をするなど工夫することもできます。

したがって、税理士を選ぶ際には、報酬ではなくサービス内容で選ぶべきです。
「自社に必要なサービスは何か」「そのサービスはなぜ、税理士に任せた方がよいのか」などについて、しっかり説明をしてもらい、そのサービス内容に納得してから、顧問契約を締結するようにしましょう。

(3)顧問税理士をお探しの方

freee税理士検索では数多くの事務所の中から所得税、相続税、贈与税について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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