公開日:2019年09月06日
最終更新日:2024年03月11日
相続は誰の身にも起こることです。
相続に関しては、相続対策が大切なのはもちろんのこと、相続開始後の遺産分割協議、相続税申告、税務調査などさまざまなプロセスで専門的な知識を必要とする手続きが次々と必要になってきます。必要な書類や手続きも多く、これらの手続きをサポートしてくれる専門家の存在が欠かせません。
ここでは、相続税の専門家に依頼する前に知っておきたい基礎知識や依頼すべきタイミング、相続税に強い税理士の探し方などについてご紹介します。
相続の豆知識
2015年の相続税の税制改正で、基礎控除額が大幅に引き下げられたことで、相続税を納めなければならない人が約2倍増えたと言われ、これまで相続税は無縁と思っていた人にとっても、相続税は身近な問題になりました。
さらには、2018年には「配偶者居住権」や、介護に貢献した相続人以外の親族が相続人に対して金銭を請求できる「特別の寄与制度」が創設され、暦年贈与についても見直しが行われました(2024年以降に贈与される財産については、相続税の対象になる期間が順次延長、最終的には相続開始前7年以内の贈与が相続税の対象になることとなりました)。このように相続に関する重要な税制改正がいくつも行われたことも、相続を身近に考える人が増えた理由のひとつでしょう。
しかし相続で一番重視すべきなのが、相続トラブルです。相続税がかかるほどの財産がなくても、遺産の分割をめぐって相続人同士が争うケースは年々増加傾向にあります。
相続税を節税し、無用な相続トラブルを回避するためには、何といっても早めに相続対策を行うことです。
相続税がかかるのか、相続税を節税するためにはどのような方法があるのか、残された家族が争うような事態を避けるにはどうすればよいかなど、検討すべき事項はたくさんあります。
可能な限り早く、相続に精通した税理士に相談し、アドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
相続という問題に大きな関心を持つ人が増えています。
特に平成27年(2015年)の相続税改正以降、その関心は大きな高まりを見せています。
なかでも、基礎控除、つまり相続財産のうち課税の対象外とされる部分は大きく縮小されたことは、多くの人に影響を及ぼしました。
相続税に関心が高まった大きな理由は、相続税が平成27年(2015年)1月より相続税が実質増税されたことでしょう。
平成26年(2014年)までの基礎控除 5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円) 平成27年(2015年)以降の基礎控除 |
基礎控除とは、簡単にいうと「この額までは税金はかかりませんよ」というものです。
この基礎控除が大幅に引き下げられたことで、たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、以前の税制では8,000万円までが基礎控除(8,000万円までは税金がかからない)とされてきましたが、この改正によって4,800万円に縮小されたのです。
とくに地価の高い首都圏においては「相続財産は、マイホームと預貯金だけ」というご家庭でも、十分相続税の課税対象となる可能性が出てきたのです。
相続に関心が高まってきたもうひとつの理由が、相続トラブルの増加です。裁判所の司法統計によれば、親族間の相続トラブルは年々増加傾向にあります。
「相続トラブルなんて、一部のお金持ちの話だろう」と思う人も多いと思いますが、なかでも最も多いのが遺産の価額が5,000万円以下のケースです。遺産の額が200万円前後でも、トラブルに発展したケースもあります。つまり一般的な家庭でも相続・贈与トラブルは十分起こり得ることであり、相続をきっかけとして、それまで平穏だったご家族に修復し難い亀裂が生じるケースは、決して珍しい話ではないのです。
相続トラブルを回避し、相続税をできるかぎり節税するためには、税制のしくみを理解し可能なかぎり早めに税理士に相談することが大切です。
相続にしては、いくら親族で協議を進めようとしてもなかなかスムーズに進めることができません。感情的対立などから親族の間で激しく長い紛争に発展してしまうことが少なくありません。
特に相続財産に不動産が含まれるケースでは、「評価が難しい」「分割が難しい」という理由からトラブルに至るケースが多いものです。
しかし、早目に税理士に相談して個々の状況を説明したうえでトラブルになるポイントが分かれば、適切な対策を行なうことができ、関係者全員が納得できる円満な相続を実現することができます。
相続時の税負担を減らし次世代にトラブルなく財産を引き継ぐためには、早めの生前対策がとても重要となってきます。
相続財産の価額に応じた適切な対策を行うことで、相続税がゼロになる可能性もあります。反対に「良かれ」と思って行った相続対策に問題があり、多額の贈与税を納めなければならなくなってしまうこともあります。税理士に相談すれば、適切な相続税対策を行い、確実に相続税の負担を軽くする方法を提案してもらうことができます。
相続税の申告・納税期限は、相続開始後10カ月以内と定められています。
そして、この限られた期間内に相続人・遺産の調査を行って、遺産分割協議書を作成し、申告手続きを行わなければなりません。何度も法務局や役所に足を運ばなければならないケースも多々あります。
税理士に相談すれば、相続税申告に必要な煩雑な手続きをすべて代行してもらうことができます。
相続税の税務調査は、相続税の申告を行なった人の30%くらいの割合で行われているといわれます。令和4事務年度の相続税の税務調査は、8,196件(実地調査1件当たりの追徴税額816万円)であり、令和3事務年度の6,317件より増加しています。
とくに海外資産関連事案に対する調査が年々増加傾向にあり、令和4事務年度においては、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は174件海外資産に係る申告漏れ課税価格は70億円にもなりました。
引用:国税庁「令和4事務年度における相続税の調査等の状況(令和5年12⽉)」
なお、税務調査では預貯金や不動産に関する事項だけでなく、亡くなった方の趣味や職歴、病歴、交友関係など実に細かい点までさまざまな質問をされます。
税務調査で細かく指摘されて慌てないためにも、事前に税理士に相談して準備しておくことが必要です。
円満な相続を実現し、できる限り納税額を減らすためには、税理士などの専門家に相談することが大切であるとご紹介してきましたが、それでは相続に強い税理士か否かを見極めるポイントは何なのでしょうか。
相続開始後の手続きは、相続財産の評価や相続人の確定、遺産分割協議など、人によっては50種類以上あることもあり、またそれらの手続きは期限が決められているものがほとんどです。
これらの煩雑な手続きを迅速に行うためには、相続税の申告実績が豊富な税理士に依頼する方がミスがなく、効率的でしょう。
ホームページなどで相続税の申告実績がどれくらいあるかを確認できることもありますが、実際に打ち合わせをして確認する方がよいでしょう。
相続対策を行うか否かで、相続税の納税額が大きく変わることがあります。
したがって、この場合もやはりまず何といっても大切となるのが、「いかに相続対策の実績が多くあるか」という点です。
相続対策に精通している税理士に依頼することで、「相続税対策としては、どのような方法があるか」「どれくらい節税できるのか」といった具体的な質問をすることができますし、財産の簡易評価、遺産分割シミュレーションなどのアドバイスを受けることができます。
また、どんなに節税対策をしたとしても、円満な相続を実現できなければ意味がありませんし、納税資金がなくやむなく自宅を手放すというケースとならないための対策も必要です。
相続対策に豊富な経験を持つ税理士であれば、適切な相続税対策とともに、いかに納税資金を無理なく確保していくか、そして円満な相続を実現させるためにはどのような方法があるかとといった、トータルの視点で最もよい対策を提案してもらうことができます。
税理士に依頼する時には、報酬がいくらかかるのかも重要なポイントとなります。
2002年(平成14年)の税理士法改正によって、税理士会の報酬規程が廃止され、現在は税理士が独自に決めた報酬規定が作成されるようになりましたが、旧報酬規程では、相続財産の総額によって報酬額が決められていますので、下記を参考にして下さい。
遺産の総額 | 報酬額 |
5,000万円未満 | 200,000円 |
7,000万円未満 | 350,000円 |
1億円未満 | 600,000円 |
3億円未満 | 850,000円 |
5億円未満 | 1,100,000円 |
7億円未満 | 1,350,000円 |
10億円未満 | 1,700,000円 |
10億円以上 | 1,800,000円 |
1億円増すごとに | 10万円を加算 |
ただし、あたり前ですが「報酬額が安い=よい税理士」というわけではありません。
報酬額が安くても、適切な相続対策を提案してもらうことができなければ意味がありません。
そこで、報酬額の相場を知ったうえで実際に面談をして「ていねいに業務内容を説明してくれるか」「納得のできるサポート内容か」などあわせて検討すべきでしょう。
円満な相続を実現するためには、可能な限り早めに税理士に相談すべきです。
実際に相続が発生してからではできる対策が限られてしまいますし、効果のある相続対策は中長期計画を立てて実施することが必要だからです。
相続は必ず訪れるものだと頭で分かっていても、実際にその時がくると大抵の人たちが慌てます。
相続人が複数いると、相続人の確認だけでも時間がかかり、さらに協議が難航してスムーズに相続手続きを済ませることすら難しいこともあります。
しかし、早めに適切な相続対策(遺言書作成や生前贈与)を行っておけば、いざ相続が開始されたとしても大きなトラブルにはなりません。
また、相続対策は中長期計画を立てて確実に実行していくことで大きな効果が生まれます。相続税を減らすためには、生前贈与で相続税の対象となる資産をできるだけゼロに近づけることが大切ですが、そのためにはさまざまな特例を活用したり、時間をかけた対策を行ったりする必要があるからです。
とくに相続財産に不動産が含まれる場合は、不動産の評価が難しい、分割がしにくいなどの性質からトラブルに発展しがちなので、思い立ったらすぐに税理士に相談することをおすすめします。
相続開始後も、可能な限り早く税理士に相談することをおすすめします。
確かに相続対策は中長期計画が必要ですが、相続開始後でも不動産評価を下げたり、譲渡税がかかる土地は売却しないと決めたりするなど、できる節税対策はいくつもあるからです。
また、相続税の申告や税務調査を見据えた対策などを相談することもできますので、相続開始後は早めに相談すべきでしょう。
せっかく相続対策を行っても、その対策を間違えてしまえばかえって相続トラブルの元となってしまうこともありますし、税務調査を無事に終わらせることができなければ、それまでの事前の対策がすべて無駄になってしまうこともあります。
何度も繰り返しますが、相続で最も大切なのは、相続財産を減らして節税することではありません。次世代に財産を引き継ぎ、円満な相続を実現することが大切なのです。
そして、そのためには相続人と税理士などの専門家が連携し、必要なサポートを受けることが大切です。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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