公開日:2019年11月01日
最終更新日:2024年03月14日
銀行から融資を受ける時には、事前に専門家に相談したいと考えることもあるでしょう。そのような場合には、銀行に強い(資金調達に精通している)税理士に相談することをおすすめします。
税理士の業務というと、記帳代行や税務申告書の作成、税務調査の立ち会いなどをイメージする人も多いと思いますが、銀行融資を受ける際にも、税理士はさまざまなサポートを提供してくれます。
ここでは、銀行から融資を受ける際に「銀行に強い税理士」を活用することのメリットと、銀行に強い税理士の選び方をご紹介します。
銀行融資の豆知識
融資を受ける際の金融機関の評価は、決算書の内容や金融機関に提出する資料や情報の量と質によって決まります。決算書は、中小企業会計指針に準拠した決算書を税理士に作成してもらいましょう。
さらに決算書には、税理士法第33条の2第1項の書面を添付してもらうことで、決算書の信用力を高めることができます。
毎月の試算表はいつでも金融機関に提出できるよう準備しておき、決算書や試算表について、金融機関にどのように説明をすればいいのかは、税理士に相談して常に状況を把握しておくことも大切です。金融機関は、経営者が決算書や試算表から会社の問題点を把握できるのか、問題点があればその改善策を考えられるのかといった点に注目しているからです。したがって、これらの事項について質問を受けた際にきちんと金融機関に説明ができるように、準備しておきましょう。
また、税理士に会計参与に就任してもらうという方法もあります。会計参与は、主に中小企業の決算関係書類の記載の正確さに対する信頼を高める制度ですから、おすすめの利用法といえます。
銀行に強い税理士を活用するメリットや選び方についてご紹介する前に、まずは銀行から融資を受ける際には、どのような書類や手続きが必要なのか、そして銀行ではどのように融資審査が行われるのかについてご紹介します。
銀行から融資を受ける際には、さまざまな書類を提出するよう要求されます。
借入申込書 企業から融資申し込みがあった場合には、かならず銀行の担当者がその上司に報告しなければならないことから、「借入申込書」を作成します。 金融庁の規定では、まず借入申込書があり、その次に貸出申請書(稟議書)を作成することになります。 銀行は、公正中立な立場でなければならないことから、借入の申し込みを受け付けないということはできず、融資の相談があった時にはすべて借入申込書を作成することが義務づけられています。 決算書 銀行から融資を受ける際に、銀行がチェックする決算書のポイントについては、以下の記事をあわせてご覧ください。 試算表 資金繰り表 事業計画書 |
先ほどご紹介した書類のうち、試算表と資金繰り表は、決算後3カ月以上経過していれば、ほぼ要求されるマストアイテムといえます。
また、とくに資金繰り表は、経営実態を知るために求められます。
資金繰り表を見れば、その会社の売上と利益が上がる時、赤字になる時がだいたい分かります。たとえば、今までかけていた貯蓄性の保険を解約するタイミングが分かりますし、経費を削減してどれだけ経営状況を改善できるのかも、予見することができるのです。
銀行は、経営計画書を作成している会社を評価します。
ただし、作成すればよいというわけではありません。経営計画の数字の根拠をきちんと説明できなければ、絵にかいた餅になってしまいます。それでは、銀行から評価してもらうことはできないでしょう。
とくに今赤字の会社は経営改善計画書を作成すべきです。問題点をきちんと把握して、その問題点の具体的な解決策を計画スケジュールの中に盛り込むことが大切です。
また、その他会社のパンフレットやホームページで、他社との違い、強みなどをアピールできるように作り込み、その点についてもきちんと説明できるようにしておくと、より評価をされることが期待できます。
資金使途とは、「借りたお金をどう使うか」ということです。
銀行から融資を受けようとする際には、必ず資金使途について確認されます。
資金使途は、大きく分けると設備資金と運転資金とに区分されます。
設備資金とは、建物や機械などを購入する時の資金で、運転資金は、仕入れ代金や諸経費の支払に充てられる設備資金以外の資金です。
①資金使途を説明できる
設備資金はある程度説明できると思いますが、運転資金は、「どのように商品を仕入れて、売上を回収するのか」について、きちんと説明できなくてはなりません。
運転資金のうち、計上運転資金は「売掛金・受取手形+棚卸資産-買掛金+支払手形」ですから、これらの数字をきちんと落とし込んでおくことが必要です。
銀行は貸倒れになるリスクを負ってお金を貸すことになりますから、貸したお金をどのように使って返済のためのお金をつくるのかをしっかり調べる必要があるのです。
したがって、資金使途は銀行の担当者を納得させられるものでなければ、融資を受けるのは難しくなってしまいます。
②説得力のある「返済原資」を示す
返済原資は融資審査で最も重要な項目です。
借入金を返済するためのお金で、そのお金をどのように作るのかということも重視されます。返済計画は長期にわたるものなので、融資の申し込みの際には徹底した準備を行ったうえで、銀行の担当者を説得させることができるようにしておく必要があります。
③銀行に「貸したい」と思わせる
銀行は、預金で集めたお金を貸して利息でお金を稼いだり、金融商品を販売した手数料を稼いだりするのが商売です。
したがって、銀行にとって利息以外にもメリットがあるように判断してもらうことが必要です。
銀行員にはノルマが課せられていますので、「定期預金を入れてくれませんか」などと要望されることがあります。そのような要望にはできる限り応えてあげましょう。
個人的に借入したり、従業員の給与振込口座を開設したりするなど、銀行にとってメリットになることはどんどんやっておくべきです。
なお、「今赤字で困っているから、融資してほしい」という経営者もいると思いますが、銀行は赤字を補填する資金を融資することはありません。赤字の会社が絶対に融資を受けられないわけではありませんが、融資を受けるためには「赤字で困っているから」ではなく、経営改善計画書を評価してもらうことが重要なのです。
税理士は、税金のプロではありますが、銀行から融資を受けるためのプロではありません。
したがって、税理士なら誰もが銀行に強いというわけではありません。それでは、銀行に強い税理士とはどのような税理士なのでしょうか。
銀行に強い税理士は、「いくら借りられるか」の目安をあらかじめ教えてくれます。
いくら借りられるかという判断の80%は、決算書の内容で決まります。それほど、融資を受ける際には決算書の内容は重要なのです。
そして銀行に強い税理士であれば、この決算書について銀行から融資を受けられるか、いくらくらい融資を受けられそうか、あらかじめアドバイスをしてくれてその数字に基づいて銀行とどう交渉するのかを検討してくれます。
計算式で言えば、「銀行の借入金の残高<簡易キャッシュフロー×10」つまり、簡易キャッシュフローの10倍までは融資を受けることができると想定することができます。
たとえば、税引後利益が500万円で、借入金の残高が2,000万円の会社のケースで考えてみましょう。この会社の簡易キャッシュフローは、税引後利益が500万円となりますから、500万円の10倍、本来は5,000万円まで融資が受けられる可能性があるということになりますが、借入金の残高が2,000万円ありますので、その差額の3,000万円くらいまでが融資の可能性があるということになります。
銀行に強い税理士であれば、どのような書類を作成すれば、銀行が評価してくれるのかを熟知しています。
銀行が融資をするか否かを判断するのは、決算書が黒字であるかどうかだけではありません。もちろん赤字を出していない方が有利なことはもちろんですが、最も重視するのは「貸したお金が返ってくるのか」です。
貸借対照表では、まず純資産はプラスの状態でなければなりません。純資産は、「総資産-総負債」で計算されますが、これがマイナスとなるということは、債務超過ということだからです。
また、損益計算書では営業利益、経常利益は必ずチェックされます。
保険の解約金によって全体の収支が黒字になっても、損益計算書の営業利益や形状利益を見れば、事業が順調か低迷しているかは一目瞭然です。
また、貸付金や仮払金などの勘定科目があることも、融資審査の際にはマイナスと判断されます。
銀行からの融資に強い税理士であれば、このような銀行が嫌うポイントを熟知しているので、どのような決算書の内容にするべきなのか、決算書で不利な場合には、どのような書類を作成すれば不利な点をカバーできるのかについてアドバイスをしてくれます。
銀行に強い税理士は、決算書や試算表について銀行にどのような説明をすればよいのかを知っています。
銀行は、経営者が決算書や試算表の数字を判断できるのか、そしてその数字から会社の問題点を把握し改善策を考えられるかどうかに注目しています。
したがって、税理士には何度も質問して説明を受け、銀行から「会社の数字に強い経営者」と思われるためのアピール方法を身につけるようにしましょう。
また、事業計画書や資金繰り予定表の作成も税理士のサポートを受け、予算と実績をこまめに銀行に報告し印象をよくするなどの努力が有効なこともあります。
実は、融資は受けやすいタイミングというものがあります。
まずは、黒字の時です。
多くの方は「赤字になって余裕がないから、融資を受けたい」と思うかもしれませんが、黒字の時の方が、銀行から返済原資がある会社だと判断されるので、融資を受けやすくなるのです。黒字の時には、融資のことはあまり頭に浮かばないものですが、黒字の時こそ、融資を受けることを検討しましょう。
また、決算後も銀行から融資を受けやすいタイミングです。
これまでもご紹介したように、決算書の内容は、融資を受けられるかどうかの大きなポイントです。
決算日を過ぎてから数カ月も経って融資を受けようとすると、銀行から「試算表を提出してほしい」と言われます。日頃から試算表を作成している会社であれば問題ないと思いますが、決算日直後であれば、試算表の提出は求められないことが多いので、それだけ手間がかかりません。したがって、決算日直後に融資を受けておいた方がよいということになります。
税理士によっては、銀行との面談に同行してくれることもあります。
税理士が事業計画書を作成したということで、計画書自体への信頼度が増しますし、銀行の印象が良くなり資金調達できる可能性がアップすることもあります。
また、融資条件の改善をはかるための交渉について提案してくれることもあります。
融資条件とは、たとえば金利や担保、保証人などです。
決算書が黒字の時には、融資条件の交渉がしやすくなるのです。なぜなら、銀行からしてみれば、決算書が黒字の会社は魅力的な融資先だからです。
銀行に強い税理士であれば、「決算書が黒字ですから、融資条件の交渉をしてみてはどうですか」と提案してくれます。
融資条件の交渉は、会社が赤字の時にする経営者がいますが、会社が赤字になってからでは融資条件の交渉はできません。したがって決算書が黒字の時こそ、融資条件を交渉するチャンスです。
税理士とよく相談し、「どのような融資条件なら、交渉する余地があるのか」「どのような融資条件を提示してみるか」など、アドバイスを求めることをおすすめします。
以上、銀行から融資を受けるために必要な書類や注意すべきポイント、銀行からの融資に強い税理士を活用するためのメリットについてご紹介しました。
大企業であれば、銀行からの融資について困ることはそれほどありませんが、資金調達の手段が限られる中小企業にとっては、大切なのは「手元のキャッシュ(現金預金)」です。いつでも資金調達ができる大企業とは違うのですから、有利に融資を受けられるタイミングを逃さずに融資を受け、融資条件の改善を交渉し、手元のキャッシュをできるだけ持っておくようにしましょう。
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ここでご紹介したようなポイントを押さえて、税理士を上手に活用し、有利に融資を受け、会社を成長させていきましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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