公開日:2023年10月12日
最終更新日:2023年10月17日
フリーランスは、会社を設立することと比べれば、開業の手続きがとても簡単です。税務署に「個人事業の開廃業等届出書」を提出し、都道府県の税事務所と市区町村役場に「事業開始等申告書」を提出すれば、フリーランスとして開業することができます。そして、これらの書類を提出する手数料はかかりません。
ただし業種によっては、免許や資格がないと開業できない業種がありますし、フリーランスとして生活していくためには、税金や社会保険、人を雇用する際の手続き、経理事務や資金繰りなど、知っておくべき知識がたくさんあります。
そこでここでは、フリーランスになる時に必要な手続きや、社会保険制度、確定申告や経理作業についてご紹介します。
フリーランスになるための開業手続き自体はとても簡単ですが、フリーランスになるうえで知っておきたい知識(社会保険制度、確定申告の方法など)は、たくさんあります。
また、始めようとするビジネスによっては許認可が必要なこともありますし、開業資金が必要になった時には、その資金を調達する必要もあります。
そこでここでは、フリーランスになりたいと思った時に知っておきたい、基本的な10個のポイントについてご紹介します。
フリーランスになりたいと思ったら、まずはこれまでの経験やノウハウをベースにした強みを明確にすることから始めます。「誰に、何を、どうやって売るか」を概念化して、自分の強みが明確になったら、自分の強みと顧客が求めているものの重なる部分を見つけ出します。この「重なる部分」がフリーランスとしての事業となります。
実際には、サラリーマン時代に培った知識や技術、ノウハウをもとにフリーランスになったり、知識や技術を学んでからフリーランスとなったりするケースも多く、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査によれば、フリーランスで最も多い職種は、「クリエイティブ・Web・フォト系」となっており、次いで「エンジニア・技術開発系」「出版・メディア系」「コンサルティング系」となっています。
参照:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2023」
なお、やりたい事業が決まったら、名刺やホームページは、屋号(※)を考えたりデザインを考えたりと、いろいろ検討することが多いので、早めに準備を進めておくことをおすすめします。
※屋号は、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットも認められます。ただし、コーポレーション、○○会社といった言葉を使うことはできません。
フリーランスになって、すぐに事業が軌道に乗るとは限りません。
思ったように売上がなければ、家賃や光熱費、仕入代金などの必要経費が利益を上回り、赤字となります。
ましてや、デザイナーやライターなどの場合には、仕事が完成してからの請求となることが多く、入金は数カ月先になることもあります。
したがって、3カ月は収入がなくても営業できるだけの運転資金を蓄えておく方がよいでしょう。
事業を続けていくための運転資金は、大きく固定費と変動費に分けることができます。
固定費とは、売上に関係なく毎月発生する家賃や水道光熱費、消耗品費などのことで、変動費とは、商品や材料などの仕入代金などのことです。
固定費・変動費それぞれで毎月いくらくらい必要となるのかを計算し、3カ月分の運転資金はまず確保しておきましょう。
また、フリーランスは、運転資金と生活費が混在してしまうことがあります。事業を継続させるために生活費を運転資金に回してしまい、生活費も事業も綱渡り状態になってしまうこともあります。
したがって、生活費は余裕をもって多めに見積もっておくことをおすすめします。そうすれば、予想外に生活費がかかっても、慌てずに事業に専念することができますし、心に余裕が生まれるからです。
開業直後の収入減に備えて、できれば半年分の生活費を用意しておくことをおすすめします。
開業直後は審査が厳しくなるので、退職する前にクレジットカードも取得しておく方がよいでしょう。このとき、プライベート用と事業用の2枚を用意しておきます。
銀行口座も、個人の口座とは別に事業用の口座を開設しておくと、開業後に管理しやすくなります。
なお、銀行口座の名義は、「○○商店(屋号)○○○(名前)」という形で作ることができます。キャッシュカードによるATMでの出し入れもできますし、公共料金の口座振替も設定できます。
フリーランスになった場合には、協力者や支援者が非常に大切になります。円満退職していれば、それまで勤めていた会社や取引先が顧客となってくれる可能性があります。
したがって、在職中から会社や同僚と良好な関係を保ち、退職もスムーズに手続きを行うようにしましょう。
同僚や上司に迷惑をかけることがないよう、引継ぎはていねいに行って円満退職を心がけます。
会社には、退職のためのルールや条件がありますから、まずはそれらを確認してスケジュールを立てて進めることが理想です。
①まずは、直属の上司に相談します。 法律上は2週間前に退職の意思を伝えればよいとされていますが、礼儀として2カ月前には伝えておくとよいでしょう。 ②退職日が決まったら、退職届に明記して提出します。 ③必要に応じて引継ぎ資料を作成します。業務の内容や顧客別の対応方法など的確な資料を残しておくと、退職後の後任者が業務をスムーズに進めることができます。 ④取引先への挨拶も忘れないようにしましょう。直接会えない場合には、メール等で退職する旨とお礼を伝えます。 ⑤退職する際には、健康保険証、名刺、社員証などを返却し、年金手帳や離職票などを受けとります。 |
会社を退職してフリーランスになると、これまでの保険制度から脱退することになります。
サラリーマンを辞めてフリーランスとして独立開業する場合には、①健康保険・国民健康保険と、③厚生年金・国民年金への加入や変更手続きが必要です。
サラリーマンの場合には、通常会社を窓口として健康保険に加入しており、退職した時に、以下のどちらかを選択する必要があります。
①退職前の健康保険の任意継続を選択する
→2年間が限度となり、保険料は会社が折半していた分も自分で支払うことになるため、今までより高くなります。
②国民健康保険に加入する
→保険料は、前年の所得、加入する世帯の状況に応じて決まります。自分が住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口で手続きを行います。
厚生年金・国民年金については、健康保険のような任意継続はなく、また1カ月の保険料は定額です。
国民年金基金やiDecoは、自分で加入を選択します。
フリーランスとして開業するうえで必ず提出しなければならないのは、税務署に対して新たに事業を始めることを知らせる「個人事業の開廃業等届出書」です。
提出期限は、事業をスタートさせた日から1カ月以内です。
確定申告を青色申告で行なう場合には、あわせて「青色申告承認申請書」も提出します。フリーランスの確定申告については後述しますが、おすすめは断然青色申告です。
「個人事業の開廃業等届出書」と「青色申告承認申請書」は、同時に提出することができ、書類の作成・提出はすべてオンラインで行うことができます。
これらの届出書を提出しなくても、「お金を支払っている側」の情報から税務署はフリーランスの存在を把握しますので、忘れずに届出書を提出しましょう。
「freee開業」は、税務署に行かずに正しい開業書類をかんたんに作成して提出することができます。 所要時間は、最短5分。「国税庁のサイトと比べてfreee開業はどこに何を入力するのかわかりやすい。」という声もいただいております!ぜひご活用ください! |
フリーランスになって、行う事業によっては資格や許認可が必要になることがあります。
飲食業であれば、食品衛生責任者や防火管理者の資格が必要ですし、自動車整備施設であれば、自動車整備士の資格が必要です。
また、美容師は美容師免許が必要となるほか、保健所に届出を行わなければなりません。
資格や許認可を未取得のまま事業を行った場合には、営業停止処分や罰金などの処分が課せられてしまいます。
自分が行う事業では、どのような許可や免許が必要なのかを確認して、必要なものは事前に取得しておきましょう。
業種 | 窓口 | 必要な手続き・届出・資格など |
飲食店、カフェ、キッチンカーなど | 保健所 | 食品衛生責任者 調理師や栄養士の資格を持っているか、ない場合には食品衛生責任者養成講習を受講する |
美容院 | 保健所 | 厚生労働省が認定する専門学校を卒業したうえで、国家試験を受け理容師免許、美容師免許を取得する。 保健所に開設届を提出する |
アンティークショップ、リサイクルショップ | 警察署 | 古物商許可が必要 メルカリで不用品を販売する場合は許可は不要だが、ビジネスとして中古品を聴牌する場合は、古物商許可が必要 |
旅館、ペンション | 保健所 | 旅館業許可が必要。規制が厳しいため、要件確認は早めに行う。他にも消防法や建築基準法の遵守など、旅館業法以外の規制も対象となる。 ・食品衛生責任者(食品衛生責任者養成講習を受講) ・建築確認(市区町村に申請し確認済証の交付を受ける) ・消防設備の設置確認(地域の消防署から消防法令適合通知書の交付を受ける) ※民泊の場合、個人が保有する空き家・空き室を利用する民泊新法の適用を受ける場合には届出が昼用であり、簡易宿泊営業をする場合は旅館業許可が必要となる。 |
なお、ネットショップでの開業も、基本的な手続きは実店舗の場合と変わりはなく、実店舗で許認可が必要であれば、ネットショップでも許認可が必要となります。
たとえば、中古車販売では古物商の許可が必要であり、食品の販売では食品衛生法に基づく営業許可が必要です。
フリーランスになると、経理事務は必須となります。
フリーランスは、所得税を納付する義務があり、自分の事業の利益がいくらなのかを自分で計算して、そのうえで税額を計算して納付しなければならないからです。
「所得」とは、収入から必要経費を差し引いて計算します。
所得金額 = 収入金額 - 必要経費 |
収入金額とは、商品やサービスを販売した時の「売上金額」で、必要経費とは、事業を行ううえでかかる経費です。
所得は10種類に分けられ、それぞれ計算方法が異なりますが、フリーランスの場合には事業所得となります。
そして、所得税は「累進課税」であり、所得が多いほど課せられる税額が高くなりますから、必要経費をもれなく計上して所得を抑えることが、節税の大原則ということになります。
したがって、日々の取引の管理がとても重要になりますが、会計ソフトで取引を仕訳すれば経理作業を大幅に効率アップすることができます。
「クラウド会計ソフト freee会計」で仕訳をすれば、その瞬間に必要な帳簿が作成され、青色申告決算書はもちろん、事業に役立つレポートを作成することができます。
基本設定で難しいと感じる人もいるかもしれませんが、まずは分かるところだけ設定して使い始めて見ることをおすすめします。業種の選択、年度情報の設定さえしておけば、ほとんどの項目は後から変更することができます。
「クラウド会計ソフト freee会計」令和2年度に大幅に改正された電子帳簿保存法にも対応しているので、必要なデータはすべて電子データのままで保存することができます。
フリーランスになると、1月1日~12月31日の所得金額や所得税額を計算して確定申告をしなければなりません。
フリーランスが確定申告をする場合には、青色申告と白色申告の2つの選択肢がありますが、青色申告の方がメリットは多く、断然青色申告がおすすめです。、
青色申告を選択すれば、青色申告特別控除という特別な控除を受けることができますし、事業が赤字になってしまってもその赤字分を翌年に持ち越して、翌年以降の黒字と相殺することができます。
さらに、家族がビジネスパートナーとして働く場合には、家族に支払った給与を必要経費とすることができます。
青色申告を行なうためには、複式簿記で帳簿を付けなければなりませんが、先ほどご紹介した「クラウド会計ソフト freee会計」であれば、直感的に経理作業を行うことができるため、経理作業の負荷は変わりません。
さらに、65万円の特別控除を受けるための要件も満たしているので、堂々と青色申告65万円控除を適用できる帳簿を作成することができます。
フリーランスとして事業を行っていて、一定規模以上に事業の売上が伸びたら、法人化(会社を設立すること)した方が、節税となるケースがあります。
会社を設立すると、代表者として自分に給与を支給することができるので、給与所得控除を受けることができますし、配偶者や子どもに支払った給与を必要経費にすることもできます。また、個人事業で青色申告を行なっている場合に、赤字を繰り越せる期間は3年ですが、会社の場合には繰越控除期間が10年となります。
「会社を設立した方が、節税になるのでは」と思ったら、以下の税額シミュレーションで法人化した場合に支払う税額を比較してみてください。
令和5年10月1日スタートのインボイス制度は、フリーランスにも密接に関わってきます。
インボイス(適格請求書)とは、消費税に関する取引情報を記載した請求書・領収書等のことです。
事業者には、消費税を納付する義務のある事業者(課税事業者)と、納付する義務のない事業者(免税事業者)に区分され、フリーランスとして開業した時は、原則として全員免税事業者です。
フリーランスが課税事業者となるのは、①基準期間の課税売上が1,000万円超、②特定期間の課税売上が1,000万円超、③課税事業者選択届出書を提出した場合、④インボイス発行事業者の登録をした場合のいずれかです。
フリーランスとして、インボイス発行事業者の登録申請をしなかったらといって、何か直接に対応する必要はありません。しかし、取引先に課税事業者がいる免税事業者は、注意が必要です。
免税事業者は、適格請求書発行事業者に登録することができませんから、登録番号を記載した適格請求書を交付することができません。
したがって、適格請求書が交付されない取引では、取引先の課税事業者は免税事業者との取引で支払った消費税について仕入税額控除(※)を受けられなくなってしまいます。
つまり、フリーランスのインボイス制度の問題点は、「自分がインボイスの登録をしないと、仕事の発注側の消費税が増えてしまうという点にあります。
※仕入税額控除とは、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて計算することによって、消費税の二重課税を解消する制度で、納付する消費税は、預かり消費税-支払消費税で計算します。
仕入税額控除ができなくなると、仕事の発注側の消費税が増えてしまうので、「仕入税額控除ができない」という理由で、免税事業者は課税事業者から取引を断られるリスクがあります。
しかし、BtoCのビジネスであったり、取引先も同じように免税者であったりすれば、影響を受けませんが、ゆくゆくは、インボイス発行事業者の登録申請をして、消費税の課税事業者となるか、それとも免税事業者のままでいるかを決めなければならなくなるでしょう。
なお、インボイス発行事業者となることを選択した場合には、適格請求書発行事業者の登録申請書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
フリーランスとして開業するうえでの手続き等は、それほど難しいことはありませんが、税務署に提出する書類や消費税のインボイス発行事業者になるべきかなどについては、税理士が相談相手として強力な存在となります。
その選択が、税金面だけでなく別の側面から見た時に、どのような影響を与えるかなどは、税務の専門家でなければ分からないことも、たくさんあります。
開業したてのフリーランスは、初めてのことだらけです。
ネットでは調べられないようなことを教えてくれる頼りになるブレーンには、早めに相談してアドバイスを受けておくことをおすすめします。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、フリーランスの開業手続きや経理システムの効率化や節税対策、確定申告などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ フリーランスについて相談できる税理士を検索 /
・フリーランスのエンジニアです。法人成りを検討しています。 「フリーランスのエンジニアです。現在個人事業主で毎年青色申告をしています。 年の利益が900万円程度出るようになったので、法人成りを検討しています。…」 |
・インボイス制度でやること 「フリーランス組織の経営者です。3期目で課税事業主となりインボイスも登録済みです…」 |
・確定申告は白色か青色か 「今年度、フリーランスでライターをしており収入が90万円ほどになりそうです。 扶養内のままで働きたいです。…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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