公開日:2019年12月29日
最終更新日:2019年12月29日
法人税申告書とは、決算書に加え法人税の計算を行うための申告書別表、勘定科目内訳明細書、事業概況説明書などで構成されています。
別表は、1~18までありますが、実際にはそれらすべてを使用するわけではありません。
自社の申告内容に応じて、必要となる書式を選択して記入します。
ここでは、決算書と申告書の関係や、法人税申告書別表のうち、特に重要な別表1・別表4・別表5についてご紹介します。
法人税とは、法人の所得に対して課税される税金です。
会社が1年間で得た儲け、すなわち所得に対して課税される税金です。
会社が納める税金には、法人税のほかにも印紙税(契約書を締結した時)や固定資産税(土地や建物を所有している時)など、さまざまな税金を納めていますが、法人税は、会社にとってメインの税金ということができます。
なお、1年間の所得に対して課される税金には、法人税以外にも法人住民税、法人事業税などの地方税も課税されます。
法人税は、税務署から通知がきてから納める税金ではありません。
決算書を作成し、株主総会で証人し、株主総会で証人された当期利益をスタートとして所得金額を算出し、法人税の税額計算を行い、申告納税する「申告納税方式」です。
会社は、設立時に定款で事業年度を定めて決算日を決めますので、3月決算なら、5月末日、5月決算なら7月末日までに申告書を提出することになります。
なお、法人税以外の法人住民税、法人事業税などの地方税についても申告書を作成し、それぞれ地方公共団体の窓口に提出しなければなりません。
法人税は、決算書を作成し、そこで計算した当期利益を元に法人税を計算して作成しますが、個人に課税される所得税と比較すると、計算が煩雑で作成すべき書類の数も多く、かなり高度な経理の知識が必要になります。
たとえば、別表は1から18まであり、そのなかから自社の状況に応じて作成すべき書類を選択します。
作成手順についてルールがある訳ではありませんが、大まかに言うと、まず①会社決算の当期利益から申告調整をしながら、法人税の課税対象となる所得金額を算出し、②所得金額に税率を乗じて納税額を計算することになります。
①については、別表4と、別表5(1)および、別表5(2)を中心に作業を行い、②については別表1を中心として作業を行います。
法人税申告書は、決算書に別表等の必要な書類を添付して、税務署に提出します。
【決算書】
決算書とは、貸借対照表と損益計算書を中心として構成されるもので、決算期末日における会社の所有資産な資本金、どれだけ売上が出たかなどが表示されています。
①貸借対照表
決算日時点の財政状態を示す書類です。
左側に資産の運用形態を示す「資産の部」、右側に資産の調達源泉を示す「負債の部」「資本の部」が表示されます。
②損益計算書
1年間の経営成績を示す書類です。
売上高-費用=利益の形式で儲けを表示します。
利益は、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期総利益に分けて表示されます。
③株主資本変動計算書
1年間の中で、剰余金の処分などで株主資本がどのように変わったのかを示す書類です。
④キャッシュフロー計算書
1年間のキャッシュ(現金と預金)のフローを示します。
そして、法人税申告書とは、この決算書に加えて法人税の計算を行うための申告書別表勘定科目内訳明細書、事業概況説明書などで構成されています。
【法人税申告書】
①決算書
貸借対照表や損益計算書などの決算書について、株主総会で承認を受けます。
②申告書別表
数多くの別表がありますが、主に使用するのは、別表1(1)、別表4、別表5(1)です。
③勘定科目内訳明細書
決算書の主要な勘定科目の内訳を記載します。
④事業概況説明書
法人の事業内容や規模、従業員数や利益など、会社のプロフィールを記載します。
また、別表は以下の表のとおり1~18まであります。
別表名 | 内容 |
---|---|
別表一(一)及び別表一(一)次葉 | 「普通法人(特定の医療法人を除く。)、一般社団法人等及び人格のない社団等の分」の申告書 |
別表二 | 同族会社等の判定に関する明細書 |
別表三(一) | 特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書 |
別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 |
別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 |
別表五(一)付表 | 種類資本金額の計算に関する明細書 |
別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 |
別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 |
別表七(一) | 欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書 |
別表八(一) | 受取配当等の益金不算入に関する明細書 |
別表十一(一) | 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
別表十一(一の二) | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
別表十四(二) | 寄附金の損金算入に関する明細書 |
別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 |
別表十六(一) | 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(二) | 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(六) | 繰延資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(七) | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書 |
別表十六(八) | 一括償却資産の損金算入に関する明細書 |
別表十六(九) | 特別償却準備金の損金算入に関する明細書 |
別表十八 | 法人税法第七十一条第一項の規定による予定申告書・地方法人税法第十六条第一項の規定による予定申告書 |
しかし、実際にはそのすべてを記載することはありません。数多くの別表のなかから、自社の状況に応じて必要となる書類だけを選択して作成していくことになります。
たとえば、別表11「貸倒引当金の損金算入に関する明細書」は、決算において貸倒引当金の設定をしないのであれが、使用しません。
貸借対照表は、別表5(2)41欄「期末納税充当金」と一致します。
法人税充当額は、地方法人税+事業税+法人都民税+法人市民税で計算しますが、総勘定元帳の期首残高から改めて計上されたものを記載します。
損益計算書の「法人税等充当額」は、別表4「所得金額の計算に関する明細書」の「損金経理をした納税充当金」の欄に転記します。また、別表4の「留保額②」にも同額を転記します。
損益計算書の「当期純利益」は、別表4の「所得金額の計算に関する明細書」の「当期利益又は当期欠損の額」の欄に転記します。なお、事業年度中に配当が行われていない場合には、同額を別表4の「留保欄②」に転記することになります。
損益計算書のうち「販売費・一般管理費内訳書」の租税公課の金額は、租税公課の内訳明細を総勘定元帳(租税公課)で確認して、別表5(2)「租税公課の納付状況等に関する明細書」に転記します。
※仕訳帳の内容をもとに、すべての取引を勘定科目ごとに記録する主要簿のひとつです。
また、「接待交際費」は、別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」に転記します。
「別表1」とは 各事業年度の所得に係る申告書で、法人の基本情報と法人税の納付額を申告する書類です。
「別表4」には、損益計算書の該当金額が記載されていますが、この別表4の「所得金額又は欠損金額」が、別表1の「所得金額又は欠損金額」と一致します。
また、控除しきれない金額がある場合には、「控除しきれなかった金額」「所得税額等の還付金額」にその額を記入します。
還付金が発生する時には、「還付を受けようとする金融機関等」の欄に口座情報を記入
するのを忘れないようにしましょう。
各欄の計算方法は、自社の状況によって異なりますので、別表1(一)および別表1(一)次葉の各欄の記載方法については、国税庁のホームページで確認してください。
「別表4」は、「所得の金額の計算に関する明細書」です。
損益計算書の当期純利益を、別表4「当期利益又は当期欠損の額」の「総額①」に転記します。
また、損益計算書の法人税等充当金は、別表4「損金処理をした納税充当金」にも転記します。
このほか、別表5(2)で納税充当金から支出した事業税、その他租税、源泉所得税の合計は、別表4の「納税充当金から支出した事業税等の金額」に記入します。
「別表5(1)」は、「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」です。
「積立金」の欄には、別表4の20「仮払い税金認定損」から転記します。
期首の繰越利益余剰金や、総勘定元帳の法人税等充当金と一致しているか確認します。
以上、法人税申告書の内容や、作成するうえで知っておきたい8つのポイントについてご紹介しました。
個人所得税の確定申告書は、一般的な申告内容であれば第一表と第二表の2ページしかありませんが、法人税申告書は、作成しなければならない書類が数多く、全部合わせると30ページ以上になることもあります。
ですが、「クラウド会計ソフトfreee」を活用すれば、決算書はほぼ自動で作成することができますし、法人税申告書を作成する際には、必要な申告書をご自身で選択することで、その選択された申告書のみ画面上に表示される仕組みとなっているので、申告書自体は作成することができますが、申告書の内容にミスがあると、税務署から指摘を受けることもあります
申告手続きを行う前に、税理士に確認してもらうことをおすすめします。
税理士検索freeeでは2,000以上の事務所の中から、法人税の申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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