役員給与(報酬)|損金算入・不算入の要件

公開日:2022年02月02日
最終更新日:2022年03月20日

この記事のポイント

  • 税務上、役員給与の取り扱いは厳しく規定されている。
  • 役員給与は定期的な支給は損金可だが、臨時的な支給については損金不可と取り扱われる。
  • 税務上は、役員の範囲が会社法の役員より広い。

 

役員報酬は、税務上の取り扱いは厳しいものとなっています。
なぜなら、役員給与は「利益が出たら支給を増額して利益を調整しよう」といった利益の調整方法として使われる可能性があると考えられるためです。
そこで、定期的な役員給与については損金と認められますが、臨時的に支給されたものについては、原則として損金不可とされます。また、基本的には役員賞与は損金不算入となっています。

役員給与とは

役員給与とは、取締役への報酬や監査役への役員報酬のことをいい、税務上はこの役員報酬のことを「役員給与」と表現します。

役員給与は、税務上の制限があり、役員給与が税務上も経費と認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。

参照:国税庁「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

(1)そもそも役員給与の「役員」とは

従業員に支払う給与は損金になりますが、役員に対する給与についてはいろいろな制限が設けられています。
したがって法人税を計算するうえでは、「その人が役員となるか役員とならないか」は大きな影響を与えることになります。

会社法上は、「役員」について株主総会で選ばれて就任した人(取締役、執行役、会計参与、監査役)と規定されていますが、実際には役員という肩書がなくても経営に関わっているケースも少なくありません。
そこで税法では、取締役、執行役、会計参与、監査役に加えて、以下の人についても「みなし役員」と扱います。

①相談役、顧問など会社の経営に関わっている人
②同族会社の使用人のうち、一定の大株主で会社の経営に関わっている人

したがって、税法上の役員の範囲は、会社法上の役員とみなし役員とかなり広くなります。

税法上の役員

①会社法上の役員:
取締役、執行役
会計参与、監査役

②みなし役員:
①相談役、顧問など会社の経営に関わっている人
②同族会社の使用人のうち、一定の大株主で会社の経営に関わっている人

一方、役員という肩書があってもサラリーマン重役のように使用人としての職務を兼ねている人がいます。このような人のことを税法では「使用人兼務役員」と呼び、使用人兼務役員に支払う給与については、純粋な役員に支払う給与より制限がゆるやかになっています。

「使用人兼務役員」となるためには、以下の要件を満たす必要があります。

①部長、課長、支店長、取締役経理部長、取締役営業部長のように使用人としての肩書を持っていること。
②いつも使用人としての仕事をしていること(したがって、非常勤役員などは「使用人兼務役員」となることはありません)。
なお、使用人としての仕事をしていたとしても、社長、副社長、専務取締役、常務取締役などの役付役員、監査役、同族会社の株主のうち一定以上の大株主である人は、「使用人兼務役員」とは認められません。

(2)役員給与に含まれるもの

税法上役員給与は「会社が役員に対して支払われる」ものであり、以下のようなものをいいます。

・役員報酬
・役員賞与(役員の残業手当も含む)
・役員退職金

このほか、税法では、役員に無利息で金銭を貸し付けたり土地を時価より安く売ったりした場合の差額相当分についても、給与として取り扱うことになっています。なぜなら、無利息で金銭を貸し付ければその利息分だけその役員が、経済的利益を得ることになるからです。

このように給与と認められる経済的利益としては、以下のようなものがあります。

・役員報酬
・役員賞与
・役員退職金
・無利息で金銭を貸し付けた場合の利息相当分
・土地や建物を安く貸した場合の適正賃料との差額相当分
・土地を時価より安く売った場合の時価との差額相当分
・資産を無料で贈与した場合の時価相当分

(3)高すぎる役員給与は損金にならない

税法では、役員給与(退職金、一定の新株予約権による給与および使用人兼務役員の使用人分給与をのぞく)のうち、不当に高すぎる部分については損金として認められないことになっています。

この「不当に高すぎるか」という判断は、①実質基準、②形式基準によります。

①実質基準
役員1人1人について、その職務の内容、その会社の収益や使用人給料の支給内容、同業種、同規模の他社の役員給与からみて、高すぎる部分はないか

②形式基準
定款や株主総会決議などで支給限度額を決めている場合には、その限度額を超えていないか

上記の①実質基準、②形式基準によって、不当に高すぎる部分があれば、損金とはならず申告書別表四で、その分を加算することになります。

役員給与で損金算入できるもの

法人税法上は、損金算入される役員給与(報酬)について規定が設けられていて、それ以外の役員に対する報酬については、損金算入は認められません。
ここでは、役員給与の損金算入・不算入の判定基準についてご紹介します。

項目 損金算入・不算入
①定期同額給与 適正部分は「損金算入」
過大部分は「損金不算入」
②定期同額給与以外の給与等
③事前確定届出給与
④業績連動給与
⑤使用人兼務役員の使用人分給与
一定の新株予約権による給与
⑥上記①から⑥までの給与以外の給与(⑦、⑧をのぞく) 「損金不算入」
⑦隠ぺいまたは仮装経理分 「損金不算入」
⑧退職金 適正部分は「損金算入」
過大部分は「損金不算入」

 

項目 内容
①定期同額給与 支給時期が一定の1カ月以下の一定期間ごとに各支給時期における支給額が同額である場合。
②事前確定届出給与 定期同額給与と利益連動給与をのぞく給与で、所定の時期に確定額を支給する給与。事前に税務署に届け出ている給与。
③利益連動給与 企業が役員に対して支給する利益連動給与。利益に関する指標に基づいて支給され、算定方法が有価証券報告書に開示されていることが要件となる。

(1)定期同額給与

定期同額給与とは、以下の要件を満たす給与です。
定期同額給与については、適正部分は「損金算入」過大部分は「損金不算入」となります。

①支給時期が1カ月以下の一定期間ごとの給与であり、かつその事業年度の各支給額が同額であるもの(税金、社会保険料控除後の金額が同額であるものを含む)。

②定期給与で、以下の給与改定がされた場合には、事業年度開始の日または給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日、または事業年度終了の日までの間の各支給額が同額であるもの。
・会計期間開始の日から3カ月までにされた給与改定
・その事業年度において、役員の職制上の地位の変更、その役員の職務内容の重大な変更等(臨時改定事由)による給与改定
・その事業年度において、経営状況が著しく悪化したなどの理由による給与減額改定

③継続的に供与される経済的利益で、その利益の額が毎月おおむね一定であるもの

(2)定期給与以外の給与等

定期給与以外の給与等とは、以下の要件を満たす役員給与のことで、適正部分は「損金算入」過大部分は「損金不算入」となります。

①非同族会社の支給する役員給与で、定期給与の支給を受けていない役員給与
②一定の特定譲渡制限付株式等による給与
③一定の新株予約権による給与

(3)事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、定期同額給与と利益連動給与をのぞく給与で、所定の時期に確定額を支給する給与で、事前に「事前確定届出給与」を税務署に届け出ている給与です。事前確定届出給与も適正部分は「損金算入」過大部分は「損金不算入」となります。

「事前確定届出給与」の届出期限は、以下のとおりです。

内容 期限
一般的な場合 以下の①~③のうち、いずれか早い日
①役員給与の決議をする株主総会の日から1カ月を経過する日
②職務執行を開始する日から1カ月を経過する日
③会計期間開始の日から4カ月(申告期限の延長の指定を受けている場合は、延長された申告期限+1カ月)
設立した場合 設立日以後2カ月を経過する日
臨時改定事由の場合 以下の①~③のうち、いずれか早い日
①役員給与の決議をする株主総会の日から1カ月を経過する日
②職務執行を開始する日から1カ月を経過する日
③会計期間開始の日から4カ月(申告期限の延長の指定を受けている場合は、延長された申告期限+1カ月)

すでに届出をしている場合の変更届出の期限は、臨時改定事由の場合は、改定事由が生じた日から1カ月を経過する日で、業績悪化改定事由の場合には、株主総会の決議をした日から1カ月を経過する日と改定前給与の支給日の前日のいずれか早い方です。

(4)利益連動給与

利益連動給与とは、企業が役員に対して支給する利益連動給与のことです。
一定の対象期間における業績連動指標に基づいて支給され、算定方法が有価証券報告書に開示されていることが要件となります。
損金経理をしていること、確定額または市場価格のある株式を交付する給与等で確定した数を限度として客観的な計算方法によって算定し、その算定方法が有価証券報告書等で開示されていること等が必要です。
利益連動給与も、適正部分は「損金算入」過大部分は「損金不算入」となります。

(5)役員退職金

役員退職金は、「不当に高すぎない」ことを要件として損金になります。
※平成29年10月1日以後に支給される「利益その他の指標」に基づいて算定される役員退職金については、利益連動給与の損金算入要件を満たさないものについて全額損金不算入となります。

この「不当に高すぎない」の判定は、退職の事情や在籍年数、同業種同規模の他社の役員退職金等を参考にします。

役員退職金が損金となる時期については、税法上「株主総会の決議などでその退職金の額が決まった日」とされます。

役員給与のよくある仕訳

役員給与は、役員に支払われる報酬のことで、支払の際には源泉所得税、住民税、社会保険料等を差し引きます。
役員でありながら取締役兼営業部長のような使用人としての職務を兼任している場合には、「役員給与」と使用人分の「給与」を分けて計上します。
執行役員は取締役会の決定に基づいて業務執行を行うので、取締役ではありません。したがって、執行役員への報酬は「給与」で計上します。

(1)役員報酬を振り込んだ

「役員報酬として60万円を普通預金から振り込んだ。源泉所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料を差し引いた。」

借方 貸方
役員報酬 600,000 普通預金 480,000
預り金(源泉所得税等) 20,000
預り金(住民税) 20,000
預り金(健康保険) 30,000
預り金(厚生年金) 50,000

(2)使用人兼務役員に給与を支給した

「使用人兼務役員に給与を支給した。使用人としての給与は45万円、役員としての報酬は35万円、総額80万円である。」
使用人兼務役員の使用人部分の給与は、通常の使用人と同一の支給方法です。使用人の職務に対して相当な額であれば、損金算入することができます。

借方 貸方
役員報酬 350,000 諸口(現金・預り金等) 800,000
給与手当 450,000

(3)役員報酬を期中に減額した

「業績悪化に伴い、2月以降4月までの支給を月額200万円から150万円に変更した。」
事業年度の途中で業績が著しく悪化した時には、減額後同一支給額であれば損金に算入できます。
この場合の「業績が著しく悪化」とは、単に「売上が減った」というだけでなく、借入金返済のリスケジュールのために銀行から要請があったり、取引先から経営改善を要請されたりといった、厳しい状況をいいます。したがって、単に「売上が減ったから」という理由では定期同額給与は認められず、減額後同一支給額であったとしても、減額前の支給額との差額分が損金不算入となりますので注意が必要です。

借方 貸方
役員報酬 1,500,000 諸口(現金、預り金等) 1,500,000

まとめ

役員給与とは、役員に対する業務執行の対価として支給するもので、株式会社の役員とは取締役、執行役、会計参与、監査役です。さらに税法では、取締役、執行役、会計参与、監査役に加えて、一定の要件に該当する人を「みなし役員」と扱います。
税務上、役員報酬は役員給与と表現され、取り扱いは厳しいものとなっていますので、十分留意して決定するようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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