公開日:2022年12月01日
最終更新日:2024年01月22日
外形標準課税とは、法人事業税に導入されている計算方法であり、資本金1億円超の法人を対象としたものです。
資本金1億円超の法人には、課税標準(税金の課税対象)として、所得割に加えて付加価値額と資本金等の額が加えられます。
つまり外形標準課税は、所得以外をベースに行う課税の計算方法です。
外形標準課税の豆知識
外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の計算方法です。
課税標準として「所得」に「付加価値額(給与などを基礎)」と「資本金等の額(資本金等を基礎)」を加え、所得以外をベースに行う課税方法です。
法人事業税の課税対象は、以前は原則として法人の所得とされていました。
しかし税収が景気の動向に左右されてしまうなどの理由から、所得のみではなく事業規模や活動量などを示す外形基準によって課税する外形標準課税が導入されました。
なお、事業税と名前が似た税金に「事業所税」がありますが、これは東京23区と政令都市など特定の都市で課税され鵜税金です。事業所税は、事業所の床面積や支払給与などを課税標準とします。
外形標準課税とは、平成16年4月1日以後に開始する事業年度から、資本金1億超の法人について導入された、法人事業税の計算方法です。
所得に対して課税するのではなく、事業所の床面積や従業員数、資本金の額など、外形から客観的に判断することができる基準をもとに課税されます。
このように、所得以外をベースとして行う課税を「外形標準課税」といいます。
外形標準課税が導入されている法人事業税とは、会社が利用する都道府県の行政サービスの費用を分担する道府県民税です。
法人はその事業活動を行うに当たって、その法人が所在する地方団体からさまざまな行政サービスを受けています。法人はこうした行政サービスに必要な経費を負担すべきであると考えられています。この考え方に基づき課税されるのが、法人事業税です。
参照:総務省「法人事業税」
法人事業税は、資本金1億円以下がどうかで課税方法が異なります。
外形標準課税の対象となるのは、資本金1億円超の法人です。
外形標準課税では、資本金や床面積など、外形を使う方法で計算されますが、資本金1億円以下の法人については、通常は所得金額を課税標準とします。
※課税標準:税金の課税対象
資本金1億円以下の会社の法人事業税の課税標準は、特定の業種を除き、原則として法人税と同じ所得額です。
法人事業税の課税標準である各事業年度の所得金額は、法人税申告書「別表四」の「総計」の所得金額に一定の金額を加減算して計算し、その所得金額に以下の標準税率を乗じて、法人事業税を計算します。
なお法人事業税は、地方法人特別税が廃止されて復活したものですが、その法人事業税の一部を分離して特別法人事業税が創設されています。
法人事業税
特別法人事業税
|
外形標準課税は、資本金1億円超の会社が対象となります。
外形標準課税では、法人の所得、付加価値額、資本金等の額の3つの金額が課税標準となります。そして、それぞれの課税標準に一定の税率を掛けたものを合算して、法人事業税額が計算されます。
所得に税率を掛けたものを「所得割」、付加価値額に税率を掛けたものを「付加価値割」、資本金等の額に税率を掛けたものを「資本割」といいます。
事業税の区分 | 改正後 令和4年4月1日以後に 開始する事業年度 |
改正前 令和3年3月31日までに 開始する事業年度 |
||||
標準税率 | 超過税率 | 標準税率 | 超過税率 | |||
軽減税率適用法人 | 400万円以下 の部分 |
1.0 | 1.18 | 0.4 | 0.495 | |
400万円超 800万円以下 の部分 |
0.7 | 0.835 | ||||
800万円超 の部分 |
1.0※ | 1.18 | ||||
軽減税率不適用法人 | ||||||
付加価値割 | - | 1.26 | - | 1.26 | ||
資本割 | - | 0.525 | - | 0.525 |
※標準税率は、東京都での適用はありませんが、特別法人事業税の基準法人所得割額の計算に用います。
本改正前は外形標準課税法人の場合も軽減税率を適用する場合がありましたが、本改正により、外形標準課税法人については軽減税率の適用対象外となりました。
各事業年度の付加価値割は、各事業年度の収益配分額(給与や支払利子、賃借料の合計額)と単年度損益との合算によって、計算します。
付加価値額 = 収益配分額 + 単年度損益 |
資本金等の金額は、各事業年度の終了の日における資本金額と資本積立金額の合計額です。
所得割の標準税率は、令和4年4月1日以後開始する事業年度から、1.0%となります。付加価値割の標準税率は、1.26%、資本割の標準税率は、0.525%が適用されます。所得割の事業税同様、各都道府県が政令で定めた規定によって課されるため、資本金の額や所得金額に応じて税率が異なります。
付加価値割1.26% | 資本割0.525% |
所得割1.0% | |
特別法人事業税 上記の所得割額 260% |
法人事業税や、法人税、法人住民税といった所得を課税対象とする税金は、損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」で処理をします。
ただし、法人事業税のうち外形標準課税の部分(付加価値割、資本割)については、販売費及び一般管理費の「租税公課」で処理をします。
法人事業税の種類 | 課税標準 | 損益計算書における表示区分 |
所得割 | 所得 | 法人税、住民税及び事業税 |
付加価値割 | 企業の活動価値 | 販売費及び一般管理費 (租税公課) |
資本割 | 資本等の金額 | 販売費及び一般管理費 (租税公課) |
※合理的な基準に基づく場合には、売上原価(当期製造費用)に配分することもできます。
法人事業税と名称が似た税金に「事業所税」というものがあります。
これは、東京23区と政令指定都市など特定の都市で、都市環境の整備・改善のために課税される税金です。
事業所税は、事業所の床面積や支払給与を課税標準として、税額を計算します。
事業所税は、販売費及び一般管理費の「租税公課」で処理し、未払分は貸借対照表の「未払金」に含めて計上します。
法人税、住民税及び事業税や未払法人税等には計上しませんので、注意が必要です。
外形標準課税については、対象となる要件が分かりにくく、また法人事業税は法人税・法人住民税と異なり一般の経費と同じように損金算入できることから、どのように会計処理すればよいのか分かりにくいというケースがあります。そこでここでは、外形標準課税についてよくあるご質問をご紹介します。
いわゆる有償減資とは、資本金等の額の減少と剰余金の配当という別々の取引を組み合わせて行うもので、通常の剰余金の配当を行わない減資は、「無償減資」といいます。
外形標準課税の均等割については、平成27年度の改正によって、無償減資による一定の欠損補てん保額を税率区分の基準となる資本金等の額から減額できるようになりました。
たとえば「事業年度開始時点では資本金が2億円あったが、減資をして事業年度末日時点では資本金6,000万円となった」というようなケースでは、事業年度末日時点で1億円以下となっているため、外形標準課税の対象外となります。
外形標準課税の対象か否かは、事業年度終了の日現在における資本金で判断し、期中の増資・減資等を勘案しないからです。
外形標準課税の対象となるか否かは、「資本金」の額が1億円を超えているかどうかで判断されます。したがって、「資本金等」の額が1億円を超えていても、「資本金」の額が1億円を超えなければ、外形標準課税の対象とはなりません。
たとえば、「資本金は9,000万円だが、資本金等の額は1億6,000万円である」という場合には、外形標準課税の対象とはなりません。
外形標準課税の豆知識
総務省の地方財政審議会は、2024年度税制改正に関する意見書を発表。「資本金1億円超」を基準とする外形標準課税の適用拡大のため「資本金と資本剰余金の合計額」が一定水準を超えた場合も課税対象に加えるよう提言したとのことです。これは、減資して税制上の中小企業になり節税する動きを防ぐ目的としています。
対象法人である場合には、念のため税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
参照:日本経済新聞「減資で節税防止「資本金+資本剰余金」を提言 地財審」
法人事業税の外形標準課税の対象となるのは、資本金1億円超の法人です。法人事業税の付加価値割と資本割については、所得(利益に関連する金額)を課税標準とする事業税ではありません。
したがって、原則として販売費及び一般管理費に計上します。
付加価値割は、各事業年度の付加価値額を課税標準として計算し、資本割は、資本金等の額を課税標準として計算します。不明点がある場合には、早めに税理士に相談しサポートを受けることをおすすめします。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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