連結納税制度のメリットとデメリットを分かりやすく解説

公開日:2019年12月24日
最終更新日:2022年07月11日

この記事のポイント

  • 連結納税制度とは、親会社と子会社を1つの会社とみなして、法人税を計算する制度。
  • 連結納税を適用するか否かは、企業の任意である。
  • 連結納税制度を適用しようとする場合は、原則として事業年度が開始する3カ月前までに申請を行う。

 

連結納税制度とは、企業グループの一体性に着目して、企業グループを1つの法人のようにとらえ、企業グループ内の法人の所得と欠損を通算して所得を計算して法人税を課税するしくみをいいます。

企業グループ内に黒字会社と赤字会社がある場合には、その損益が通算されるので大きな節税効果があります。

連結納税制度とは

連結納税制度とは、企業グループの一体性に着目し、親会社と子会社を1つの会社とみなして、法人税を計算する制度です。
親会社とその親会社の完全支配下にあるすべての子会社で構成される企業グループを1つの納税単位とみなして、親会社がそのグループの連結した所得の金額を1つの申告書(連結確定申告書)に記載して、法人税の申告・納付を行ないます。

(1)連結納税制度のメリット

連結納税の最も大きなメリットが、納税額が軽減されるということでしょう。
たとえば、グループ会社A会社(親会社)、B会社(子会社)、C会社(子会社)が単独申告をするとします。

単独申告の場合には、A会社の所得金額が1200、B会社の所得金額が500、C会社の所得金額が△300であったとすると、グループ全体の納税額は、
400+150+0=550となります(税率30%とする)。

単独申告の場合

所得金額 法人税額
A会社(親会社) 1,200 400
B会社(子会社) 500 150
C会社(子会社) △300 0

単独申告の場合には、グループ全体の納税額は、
400+150+0=550

一方、連結納税制度を選択すると、グループ各社の所得金額を合計して法人税を計算することになりますから、A会社の所得金額が1,200、B会社の所得金額が500、C会社の所得金額が△300であれば、所得金額1,400について法人税を計算することになり、法人税額は420となります。

単独申告の場合には、グループ全体の納税額は、400+150+0=550で、連結納税を選択した場合には、(1,200+500+△300)×30%=420ですから、単独申告より、130(550-420)法人税が軽減されることになります。

(2)連結納税制度のデメリット

連結納税制度のデメリットとしては、企業グループ内に中小企業がある場合です。
交際費の定額控除限度額などの中小企業向けの特例は、親会社の資本金などによって適用されるか否かが変わるため、連結納税のもとでは特例を受けられなくなることもあります。
また、事業税や住民税、消費税は、連結納税制度がないため、法人税を連結納税してもこれらの税金は単体での申告・納付が必要となります。
このように、連結納税制度は従来の法人税法と比較して制度が複雑で、事務負担が増えるという点もデメリットの1つといえるでしょう。

なお、子会社が相当数増加して、事務負担が著しく過重になると認められるなど、やむをえない事情が生じた場合には、すべての連結法人による申請をすることで、その適用を取りやめることができます。

(3)連結納税制度の適用対象となる会社

連結納税制度の適用対象となる会社は、内国法人で外国法人には適用されません。
そして、内国法人である親会社と100%子会社であり、一部の100%子会社だけを適用対象とすることはできません。
さらに連結納税制度の適用対象となる親会社は、普通法人、協同組合等に限定され、連結納税制度の適用対象となる100%子会社は、普通法人に限定されます。

(4)連結納税の適用を受けるための手続き

連結納税の適用を受けようとする時には、以下の区分に応じてその申請期限までに、親会社およびその親会社の完全支配関係にあるすべての子会社の連名で、承認申請書を親会社の所轄の税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければなりません。

申請期限は、原則として最初にその適用を受けようとする親会社の事業年度開始の日の3カ月前の日までです。

原則

申請期限 みなし承認日
最初にその適用を受けようとする親会社の事業年度開始の日の3カ月前の日まで 最初にその適用を受けようとする親会社の事業年度開始の日

 
特例
親会社の設立事業年度からの適用

申請期限 みなし承認日
つぎのうち、いずれか早い方
・設立事業年度開始の日から1カ月を経過する日
・設立事業年度終了の日から2カ月前の日
承認申請書を提出した日から2カ月を経過する日

 
親会社の設立事業年度の翌事業年度からの適用

申請期限 みなし承認日
つぎのうち、いずれか早い方
・設立事業年度終了の日
・翌事業年度終了の日から2カ月前の日
承認申請書を提出した日から2カ月を経過する日
ただし、翌事業年度開始の日が承認申請書を提出した日から2カ月を経過する日である場合、翌事業年度開始の日となる。

なお、連結法人について、帳簿書類の備付け、記録または保存が適正に行われていなかったり、帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいまたは仮装して記載していたりする場合には、国税庁長官は連結納税の承認を取り消すことができることとなっています。

(5)連結納税の申告と納付

連結グループ法人税額の申告・納付は、原則として連結事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に、連結親会社が行わなければなりません。
つまり、通常の法人税の申告および納付の期限と同じです。

申告期限の延長申請が認められた場合には、4カ月以内に申告することになりますが、納付については延長期間について利子税がかかるので、一般的には2カ月以内に見込み納付を行います。

なお、令和2年度の税制改正のよって、令和4年4月1日以後に開始する事業年度からは、連結納税制度はグループ通算制度に移行されます。

①申告納税について:
親会社→グループ各社で行います。

②電子申告について:
任意→強制となります。

③修正申告等:
グループ内で再調整して親会社で修正申告等→各会社のみで修正申告等をすることとなります。

まとめ

以上、連結納税制度の概要やメリット・デメリットについてご紹介しました。
連結納税制度は、大きな節税効果が期待できる大変メリットのある制度ですが、制度が複雑で情報が不足していることもあり、まだまだ普及していないのが実情です。
また、事務手続きなどについては今後も改正があることが予想されます。
ただし、会社を複数持っている経営者が、大きく法人税が節税される場合がありますので、連結納税制度について一度検討してみることをおすすめします。

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