仮払消費税とは|仮受消費税との違い・仕訳方法など

公開日:2021年11月11日
最終更新日:2023年05月17日

この記事のポイント

  • 仮払消費税とは、税抜方式で消費税の処理をしている場合に使う勘定科目。
  • 決算時に「仮受消費税」と相殺し差額を「未払消費税等」で処理する。
  • 1年分の仮受消費税と仮払消費税を合計した金額の差額が、納付すべき税額のベースとなる。

 

仮払消費税とは、税抜方式で消費税の処理をしている場合に使う勘定科目で、仕入れや経費などの代金にかかる消費税分のことです。
商品を仕入れた時に、商品代金と消費税額を分けて処理し、支払った消費税額を「仮払消費税」として、決算時に「仮受消費税」と相殺し差額を「未払消費税等」で処理をします。

仮払消費税とは

仮払消費税とは、消費税を税抜方式で経理処理している時に使う勘定科目です。仕入れや固定資産の購入、経費にかかる消費税を「仮払消費税」として処理します。
一方、仮受消費税とは、税抜方式で消費税の経理処理をしている場合に、売上などの代金にかかる消費税分をいいます。
決算にあたっては、仮払消費税と仮受消費税の相殺処理をして、未払消費税等で処理をします。

(1)消費税の経理処理「税抜方式・税込方式」

消費税の経理処理については、「税込経理方式」と「税抜経理方式」があります。

税込経理方式:
消費税等の額とその消費税等に係る取引の対価の額を区分しないで経理処理する方法

税抜経理方式:
消費税等の額とその消費税等に係る取引の対価の額とを区分して経理処理する方法

消費税等の経理処理とて税込経理方式と税抜経理方式のどちらを採用するかは、原則として法人の任意選択となっています。ただし、どちらの経理方式を選択するかで所得金額に影響が出ることがありますので、選択する際には慎重に検討する必要があります。
税込経理方式は事後処理が簡単であるというメリットがありますが、税抜経理方式の方が、消費税等をのぞいた金額が損金不算入の金額を計算するうえでの対象となるため、有利となる場合が多いからです。

たとえば、少額の減価償却資産または少額の繰延資産として、取得価額または支出額を一度に損金に算入できる限度額は、10万円未満(中小企業の場合は30万円未満およびその合計額は300万円未満)とされています。この場合、税抜処理をしていれば税抜金額で10万円未満かどうかを判定します。したがって、税抜経理方式の方が有利となります。

税抜経理方式は、経理処理が煩雑になる点がデメリットではありますが、「クラウド会計ソフト freee会計」を利用すれば、税込経理方式とあまり作業量は変わらず簡単に処理をすることができます。

(2)仮払消費税と仮受消費税の関係

仮払消費税とは、税抜経理方式を採用している場合に、受け取った消費税等の額を処理するための勘定科目であり、仮受消費税とは、税抜経理方式を採用している場合に、支払った消費税等の額を処理するための勘定科目です。
そして、仮払消費税と仮受消費税を相殺した差額が消費税の納税額ということになります。

仮払消費税 仮受消費税
支払った消費税額 受け取った消費税額

(3)仮払消費税と仮受消費税の差額が「未払消費税」

税抜経理方式を採用している場合には、日々の仕訳で売上の際に預かった消費税は「仮受消費税」、仕入れや経費の支払いの際に支払った消費税は「仮払消費税」として計上しているので、決算においては、1年分の仮受消費税と仮払消費税をそれぞれ合計した金額の差額が、納付すべき税額のベースになることになります。

仮払消費税と仮受消費税の相殺

(4)仮払消費税の期末の処理

決算にあたっては、仮払消費税と仮受消費税の相殺処理を行い、翌期に納付する消費税を「未払消費税等」で計上します。

「決算にあたり、未払消費税等で計上した。」

借方 貸方
仮受消費税 80,000 仮払消費税 40,000
未払消費税等 40,000

(5)消費税の計算「簡易課税」とは

これまでご紹介したように、消費税を納める事業者は原則として預かった消費税と支払った消費税の差額を計算し納付税額を計算します。ところが、預かった消費税はともかく支払った消費税の額を計算するのは、とても大変です。
なぜなら、消費税は電話代や備品、営業車などあらゆる経費に含まれているからです。
そこで、中小事業者に対しては消費税を簡便に計算する特例が認められています。
これは、預かった消費税額に一定の率(みなし仕入率)を掛けた金額を支払った消費税額とみなして納税額を計算するという方法です。

みなし仕入れ率は、業種別に以下のように決められています。

中小事業者の特例「みなし仕入率」

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業
(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
90%
第2種事業 小売業
(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
80%
第3種事業 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く。 70%
第4種事業 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業など。なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となる。 60%
第5種事業 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除く。 50%
第6種事業 不動産業 40%

 
参照:国税庁「簡易課税制度の事業区分[令和3年4月1日現在法令等]」

仮払消費税のよくある仕訳

仮払消費税は、税抜経理方式を採用している時に使用する勘定科目です。
ここでは、仮払消費税に関するよくある仕訳例についてご紹介します。

なお、「クラウド会計ソフト freee会計」を使用すれば、税抜経理方式・税込経理方式を簡単に設定することができ、消費税額が自動で計算されます。
決算時の処理も自動で行われるため、税込経理方式と変わらない作業量で処理をすることができます。

「クラウド会計ソフト freee会計」の消費税・税区分の設定
 

▶ freeeヘルプセンター「消費税・税区分の設定を行う」

(1)商品を掛けで仕入れた時の仮払消費税

「商品20万円(消費税2万円)を掛けで仕入れた。」

借方 貸方
仕入 200,000 買掛金 210,000
仮払消費税 10,000

(2)備品を現金で購入した時の仮払消費税

「PC備品1万円(消費税1,000円)を現金で支払った。」

借方 貸方
消耗品費 10,000 現金 11,000
仮払消費税 1,000

仮払消費税よくあるQ&A

仮払消費税については、「仕入れ商品を返品した場合の処理」や「商品を小切手で仕入れた場合の処理」について、質問が多くあります。
ここでは、仮払消費税に関するよくあるご質問をご紹介します。

(1)商品を返品した時の仮払消費税の処理

– 仕入れ商品の一部に不備があり、返品した場合に、税抜経理方式ではどのように処理をすればいいか ——

→商品を仕入れた時の消費税は「仮払消費税」で計上しているので、返品した場合の消費税は「仮払消費税」の反対の仕訳をすることになります。

【商品の仕入時】
「商品11万円(消費税込)を掛けで仕入れた。」

借方 貸方
仕入 100,000 買掛金 110,000
仮払消費税 10,000

【商品の返品時】
「仕入れた商品2万2,000円(消費税込)に不備があったため、返品した。」

借方 貸方
買掛金 22,000 仕入 20,000
仮払消費税 2,000

(2)消費税が還付されるときの仕訳

– 消費税が還付されるときには、どのように処理をすればいいか ——

消費税の課税事業者で、仮払消費税の方が仮受消費税より多かった場合には、原則として税金が還付されます。この時の還付予定の消費税は未収金として計上します。なお、簡易課税制度の適用を受けている場合には、還付されることはありませんので注意が必要です。

「決算にあたり「仮払消費税」150万円、「仮受消費税」130万円の相殺処理をし、還付予定の消費税20万円を未収計上した。」

借方 貸方
仮受消費税 1,300,000 仮払消費税 1,500,000
未収金(未収消費税等) 200,000

まとめ

以上、仮払消費税についてご紹介しました。
仮払消費税は「支払った消費税額」であり、仮受消費税は「受け取った消費税額」で、消費税の経理処理を税抜経理方式で行っている時に使用する勘定科目です。
消費税の経理処理については、税込経理方式の方が「処理が簡単である」という点がメリットではありますが、税抜経理方式の方が「節税効果が期待できる」というケースもあります。「クラウド会計ソフト freee会計」であれば、税込経理方式と税抜経理方式の手間はあまり変わりません。
どちらの経理方式を採用すべきかは、税理士のアドバイスを踏まえ、トータルで判断することをおすすめします。

仮払消費税について相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から仮払消費税の処理や、消費税の経理処理について「税込経理方式」と「税抜経理方式」のどちらを選択すればよいのかなどについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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・消費税簡易課税制度について
「個人事業主で年収は1000万以下ですが、取引先が企業が多いため、インボイス制度に登録する予定です。消費税には原則課税と簡易課税があり、簡易課税は届出が必要ということなのですが、消費税簡易課税を選択すべきでしょうか。
・課税売上から非課税売上に変更した際の仕訳について
「当初課税売上で110,000円計上していたところ、非課税売上で100,000円であることが判明しました。
・適格請求書(領収書)について
「公益法人等にあたる団体で、これまで免税事業者でしたがインボイス登録をして、適格請求書発行事業者となりました。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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