有価証券売却益(損)の処理

公開日:2022年07月28日
最終更新日:2022年07月28日

この記事のポイント

  • 「有価証券売却益」とは、売却額が取得価額より高い場合に使う勘定科目。
  • 「有価証券売却損」とは、売却額が取得価額より低い場合に使う勘定科目。
  • 有価証券の売却益(損)は、個人事業主の場合は譲渡所得となる。

 

有価証券売却益(損)とは、有価証券を売却した際に、売却金額は取得価額を上(下)回るときの差額を処理するときの勘定科目です。
「有価証券」として処理するのは、売買目的有価証券と1年以内に償還される公社債、MMFなどです。

有価証券売却益(損)とは

有価証券とは、法律上は権利の移転及び行使が証券を持って行われることを要する財産権を表すものです。

有価証券を売却したときは、有価証券の帳簿価額と売却価額の差が有価証券売却益(損)となります。
売却額が取得価額より高いときは「有価証券売却益」、売却額が取得価額より低い場合には「有価証券売却損」となります。

(1)有価証券売却益(損)で処理する有価証券

有価証券は、その保有目的から以下の4つに分類されます。

保有目的 内容 勘定科目 決算上での区分
売買目的の
有価証券
運用目的で保有する有価証券のこと
時価の変動によって利益を得ることを目的として保有する有価証券
短期に売買することを目的とした株式
1年以内に満期が到来する社債
有価証券 流動資産
満期保有目的の
債券
満期まで保有する意思を持って保有する社債その他の債券 1年超に満期が到来する社債
国債
投資有価証券 固定資産
子会社株式および
関連会社株式
支配目的で保有する株式 子会社株式
関連会社株式
関係会社株式 固定資産
その他の有価証券 上記のいずれにも該当しないもの 持合株式など 投資有価証券 固定資産

このうち「有価証券」として処理するのは、売買目的証券、1年以内に償還される債券、安全性と流動性の観点から見てほぼ預金と同様の性格をもつMMFやMRFなどです。

(2)有価証券評価益(損)との違い

有価証券売却益(損)は、有価証券評価益(損)と混同しがちですが、有価証券評価益(損)とは、売買目的で保有している有価証券の帳簿価額と時価との差額であるという点で、有価証券売却益(損)と異なります。

売買目的で保有している有価証券と1年以内に満期が到来する債権は、期末に帳簿価額と時価との差額である評価損益を計上します。
売買目的の有価証券は、期末の時価をもって貸借対照表価額とされ、評価差額は当期の損益として処理されます。
有価証券評価益(損)は、このときの処理で使われる勘定科目です。

▶ 有価証券評価益(損)とは|求め方・勘定科目

(3)総平均法と移動平均法

有価証券の帳簿価額を計算する際の単価の計算方法として、総平均法と移動平均法があります。

総平均法は、期首保有分と一定期間の購入分との合計金額をその合計数量で割って、平均単価を計算する方法です。

一方、移動平均法とは、有価証券を購入するたびに直前の取得原価と購入金額の合計金額を購入後数量で割って平均単価を計算し直す方法です。

総平均法
原価配分が期末日にだけ行われます。その結果、売却益もそのときに計算されます。したがって、総平均法の場合、会計処理として以下のいずれの方法が考えられます。

①売却時に、売却価額をもって有価証券を貸方計上し、期末に有価証券勘定から売却益を算定する方法

借方 貸方
有価証券 200,000 有価証券売却益 200,000

②売却時に、有価証券勘定の代わりに仮受金勘定を用いて、上記①の処理を行い、期末は上記①と同じ処理を行う方法

移動平均法
原価配分が売却のたびに行われるため、そのたびに売却益を計算する方法

①7月1日 100株 12,000円(単価120円)で取得
②8月1日 100株 10,000円(単価100円)で取得
③9月1日 100株 11,500円(単価115円)で売却

(借方) 有価証券 12,000 (貸方) 普通預金 12,000
(借方) 有価証券 10,000 (貸方) 普通預金 10,000
(借方) 普通預金 11,500 (貸方) 有価証券 11,000
有価証券売却益 500
(12,000円+10,000)÷(100+100)=単価110

④10月1日 100株 9,000円(単価90円)で取得
⑤11月1日 100株 9,500円(単価95円)で売却

(借方) 有価証券 9,000 (貸方) 普通預金 9,000
(借方) 普通預金 9,500 (貸方) 有価証券 9,500
有価証券売却損 500
(11,000円+9,000)÷(100+100)=単価100

総平均法によると、同一期間において一部売却後に追加取得があった場合に、売却時に計算した売却損益を期末に計算し直さなければならないことから、一般的には、移動平均法を採用します。

有価証券売却益(損)の仕訳処理

有価証券を、証券会社を通じて売却した際には、売買委託手数料が差し引かれることがあります。この場合には、売買契約委託手数料を差し引いて処理をします。
また、計上するのは株式の引渡し日ではなく、契約日で計上します。

個人事業主の場合には、「譲渡所得」となるので、事業主勘定で処理をします。売却額は取得価額より高い場合には「事業主借」、売却額が取得価額より低い場合には「事業主貸」として処理をします。

有価証券売却益(損)は消費税の対象外ですが、有価証券の売却金額については非課税として処理をします。

(1)有価証券売却益

「50万円で取得した有価証券を、80万円で売却した。代金は普通預金に振り込まれた。」

法人の場合

借方 貸方
普通預金 800,000 有価証券 500,000
有価証券売却益 300,000

個人の場合

借方 貸方
普通預金 800,000 有価証券 500,000
事業主借 300,000

(2)有価証券売却損

「100万円で取得した有価証券を、80万円で売却した。代金は普通預金に振り込まれた。」

法人の場合

借方 貸方
普通預金 800,000 有価証券 1,000,000
有価証券売却損 200,000

個人の場合

借方 貸方
普通預金 800,000 有価証券 1,000,000
事業主貸 200,000

まとめ

有価証券売却益(損)は、売買目的で保有する株式等の有価証券を売却したときの売却額と取得価額の差額を処理するときに使う勘定科目です。
個人事業主の場合には、譲渡所得となり事業主勘定で処理する点について、注意が必要です。

有価証券売却益(損)について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から有価証券売却益(損)について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

有価証券売却益(損)について相談できる税理士をさがす

この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、相談することができます。

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop