決算3か月前に始めたい決算対策の方法|利益予測と納税予測・節税対策

公開日:2018年10月31日
最終更新日:2019年05月02日

目次

  1. 決算とは
    • 3カ月前でもできる決算対策
    • 利益予測と納税予測をたてる
    • 利益計画書の作成
    • 納税予測から行う「節税対策」
  2. 節税対策チェックリスト
    • 固定資産台帳と売掛台帳のチェック
    • 従業員教育
    • 急な利益が出た場合
    • 減資のメリット
    • 役員退職金の活用法
    • 短期前払費用
    • 保険の活用
    • 小規模企業共済(中小機構)
    • 経営セーフティ共済(中小機構)加入

会社経営において、利益を出すことはもちろん重要ですが、適切な節税対策を行うことも非常に重要です。節税対策は、決算前に慌てて決算前に経費を捻出するといったイメージを持つ人もいますが、節税対策は月次決算を行いながら丁寧に検証し、既存の特例制度を最大限利用することで、より効率的に大きな節税効果を生み出す事が可能となります。
少なくとも決算3カ月前に利益予測、所得予測を行ったうえで節税対策を行えば、大きな節税効果が期待できます。

決算とは

決算とは、一事業期間における会社の経営成績を確定させる会計期末の一連の作業のことをいいます。そもそも、売上や費用は現金の出入ベースで計上されておらず「発生主義」で計上されています(現預金の受取・支払に限らず、支出および収入発生の原因(=経済的事実)が発生した期間に計上)。
現在の商取引においては、飲食業などの特定の業種を除けば、売掛金や買掛金に代表される“信用取引”が中心となっています。しかし、日頃の取引では現金ベースで計上(現金等の入出金時に認識・計上)されているケースも多く、発生主義で計上した取引と現金主義で計上した取引にズレが生じてしまいます。
したがって、正しく損益を計算するためには、発生主義による会計処理が必要であり、決算期末に調整が必要になるのです。

3カ月前でもできる決算対策

年間の利益の動きというのは、業種ごとに大まかな予想は立てることが可能なので、会計期間の残り3カ月くらいになれば、年間の利益を予想することが可能です。ですから、決算の3カ月くらい前から決算対策を行っていきましょう。
この時には来期の資金繰りなども考慮する必要があります。
会社を経営するうえで大切なのは、小手先の決算対策ではありません。事前に十分な検討と準備を行ったうえで、長期的な視点に立った事業計画を立て、そのうえで、取りうる対策を選択していくことです。

利益予測と納税予測をたてる

まずは、年間の利益の予測そして年間の所得を予測し、納税額の予測を立てる必要があります。
税務上の「所得」は、会計上の利益に税務調整項目(会計と税務の取り扱いに差異がある項目を調整する項目)を加減算することで算出します。
そして、その所得に税率を乗じると年間の納税額を算出することができます。
この他に、所得控除や税額控除なども控除します。
したがって、納税額をシミュレーションする場合は、会計上の利益、税務調整項目、所得控除、税額控除をそれぞれ計算する必要があります。

利益計画書の作成

納税予測をたてるためには、まず利益予測をたてる必要があります。
過去9か月の実績利益から決算までの未来3カ月間の利益予測をシミュレーションすることができます。
なおこの時には、費用項目を変動費と固定費に分けて分析するとよいでしょう。

変動費:会社の商品等の売上量に比例して費用も変動する項目。
固定費:会社の商品等の売上量に関係なく常に一定額発生する項目。

変動費、固定費を分けずに利益予想をすると、それぞれの販売量での利益の動きが予測できないことになります。色々な費用の発生形態がありますが、おおざっぱに分ければ変動費か固定費かのいずれかには当てはめることができます。
変動費、固定費を分けて費用の金額をそれぞれ予測することにより、全体の費用の正確な金額の予測が可能になり、さらに利益の正確な金額の予測が可能になるのです。

納税予測から行う「節税対策」

利益予測から納税額の予測を立てれば、種々の税務上の調整項目を経て、所得予測を行うことができます。そこから適用すべき税率などを当てはめて計算していくと、納税予測を行うことができます。納税額が非常に高い金額となることが予想された場合、どのようにこの金額を低くすることができるか、税法上の種々の節税規定を用いてシミュレーションしていくことになります。

節税対策チェックリスト

決算3カ月前に行った利益予測から、計上される勘定科目、そして貸借対照表で計上される項目について大体把握することができます。
したがって、この時点で、どのような節税ができるかという「節税対策チェックリスト」を作成することができます。
どのような節税対策を行うことができるかは、個々の会社によって異なりますが、ここでは、代表的な節税対策についてご紹介します。

固定資産台帳と売掛台帳のチェック

会社の貸借対照表の左側にある「資産の部」の資産科目のなかには、器具備品や機械装置、ソフトウェアなどいわゆる固定資産が記載されていて、これらの金額は多額となっているはずです。
また、併せてこれらの固定資産の詳細が記載されている書類にあたる「固定資産台帳」もチェックしてみましょう。
そのなかには、すでに廃棄してしまっている資産が除却処理(固定資産を取壊したり、廃棄すること)されずに計上されてしまっている場合があります。
ですから、固定資産台帳をチェックし、除却処理するべき固定資産が計上されてしまっていないかどうか確認しましょう。
すでに使われていない資産があれば、廃棄処理や有姿除却ができるかどうかを検討することになります。

また、売掛金に関しても、回収可能性がないものなどは貸倒損失(取引先の倒産などにより、売掛金・貸付金などの金銭債権が回収できなくなった損失)に計上することができる項目がないかどうかをチェックし、貸倒引当金が適切に計上されているかを確認します。

従業員教育

教育・研修にかかる支出は従業員に対する経済的利益の提供となりますので、基本的には給与となりますが、業務を行う上で必要と認められる場合は、教育・研修費として損金算入することができます。

加えて、将来の収益獲得のための従業員教育ということになりますので、非常に有用な経費の使い方ということができます。
ただし、費用を計上する際に支出も出ていくことになりますので、節税対策にはなるとはいえ、無駄な支出にはならないように注意を払う必要があります。

急な利益が出た場合

期末近くになって、急に利益が出ることが判明する場合があります。
決算直前だと、慌てて必要経費をつかっても、無駄な節税対策になってしまうケースが多いですし、これから投資計画などを進めて損金算入を計画することも難しく、取りうる節税対策が限られてしまい、大幅に納税額が膨れ上がってしまうことになります。

その場合には、事業年度を変更することによって、利益が出る月を翌会計期間に含ませるということも可能です。そうすれば、翌会計期間に余裕をもって節税計画を行うことができます。何回も行うと、税務署から目を付けられる可能性は高いですが、突発的な利益が出た際には検討する価値のある方法といえます。
事業年度の変更は、大企業などであれば対外的な問題が出てくる可能性があるので、実施は難しいのですが、中小企業においては、事前に臨時株主総会を開き、税務署に届け出を行うことが必要ですが、比較的容易に手続きを進めることが可能です。

また、もう一つのお勧めできる方法として、従業員に決算賞与を支払うことです。
支出自体はありますが、損金算入することができるため節税が可能となりますし、従業員のモチベーション、意欲の向上が期待できるので、業績アップにつながる可能性があります。

減資のメリット

減資、つまり会社の資本金を減らすことによっても、節税を行うことが可能な場合があります。中小企業を対象とした減税制度は多くありますので、減資を行うことにより、自社を中小企業に分類させ、減税の特例制度が可能となるケースは多々あるからです。
以下に主な特例をご紹介します。

資本金3,000万円以下
資本金,3000万円以下の特定中小企業者に該当すれば、中小企業等投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)の特別償却又は税額控除の適用があります。
この制度は、3,000万円以下の特定中小企業者などが平成10年6月1日から平成31年3月31日までの期間内に新品の機械及び装置などを取得し又は製作して国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるという制度です。

資本金5,000万円以下
信用保証協会とは、中小企業者の記入円滑化のために設立された公的機関です。
常時使用する従業員数または資本金のいずれか一方が下表に該当していれば、保証協会付融資の対象会社になることができます。

業種 資本金 従業員数
製造業等 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
医療法人等 300人以下

下記の政令特例業種については規模要件が異なりますのでご注意ください。

業種 資本金 従業員数
ゴム製品製造業等
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円以下 900人以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
宿泊業(旅館業を除く)、娯楽業 5,000万円以下 100人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

参照:東京信用保証協会「ご利用いただける中小企業とは」

資本金1億円以下
・少額減価償却資産の特例の利用
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます(平成32年3月31日までの延長措置)。

・課税所得800万円、までの軽減税率
決算時点の資本金が1億円以下、または資本金を有しない法人であれば、所得800万円までは、法人税率が軽減されます。

役員退職金の活用法

役員退職金として支払う金額は損金算入され、会社の法人税負担は下がることになります。また、役員退職金を受け取った役員の所得税面を考えてみると、退職金は退職所得となるため、一定の退職控除があり、節税効果があります。
また、退職所得は分離課税であるために、より低い税率を使って所得税を計算することが可能となるため、この意味でも節税効果が期待できます。

仮に、役員退職金を支払うほどの資金がない場合でも、まずは退職金の支払を行い、その退職役員からの貸付という形で資金を戻すという処理を行うと税務上有利になります。なぜなら、その期の所得金額を考えてみると、退職金の支払を行わない場合は、損金の金額が増えず、その分税金の負担がありますが、退職金の支払を行う場合は、損金の金額が増え、税金の負担が減少することになります。この場合、退職者の貸付として資金が戻ることになるので、会社に残る財産は両者変わらないことになります。もちろん、退職者の貸付となっているわけですから将来的に資金が減少するのは退職金の支払を行った会社となりますので、その点を留意すべきといえるでしょう。

短期前払費用

前払費用とは、何らかのサービスなどを受けるために前もって支払った支出の中で、まだそのサービスを受けてない期間に対応する支出のことをいいます。この前払費用は、本来、税務上は損金には算入されない項目です。
しかし、一年以内にサービスを受ける予定があり、支出が済んだものであり、かつ継続的に処理を続けることを前提とした場合には、短期前払費用の損金算入が認められることになります。しかし、翌年度の損金になるものは今期損金算入されたものは除かれることになるので、あくまでも「課税の繰延」という効果しかないという点は注意が必要です。

保険の活用

「保険に加入すれば、節税できる」というイメージを持っている人は多いと思います。
これは、掛け金の一部または全額を損金に算入することが可能となるからです。
しかし、解約する際の返戻金は益金に算入されることになりますし、累積掛金のうちどのくらいの割合が戻ってくるのかというのは保険毎に異なります。ですから保険の設計書でしっかり内容を確認し検討することをお勧めします。保険の節税効果は一般的に課税の繰延という効果に留まります。

小規模企業共済(中小機構)

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業者のための積立による退職金制度です。つまり、法人ではなく、個人の税制にかかる保険ということになります。
小規模企業共済の掛金は、全額損金算入され、節税効果を受けることができます。しかし、共済金や解約手当金を受け取る際には、退職所得や雑所得として課税されることになります。

経営セーフティ共済(中小機構)加入

経営セーフティ共済とは、取引先の倒産などによる連鎖的な経営難に備えるための共済制度です。支払った掛金を全額損金に算入することが可能となり、節税することができます。また、累積掛金の10倍まで無担保、無保証、無利子で借入を行うことができるようになります。しかしながら、40カ月未満の解約は全額返金されませんので、資金不足の時には注意が必要です。さらに、返戻金は益金算入されますので、注意が必要です。

以上、決算3カ月前に実行できる、主な節税対策についてご紹介してきました。

節税には種々のタイプがありますし、それぞれの対策にはデメリットもあることもあります。大事なことは節税の仕組みを理解すること、そして目先の節税対策に捉われずに長期的な経営計画を実行するうえで有効な対策を選択していくことです。

経営のために本当に必要な節税方法を効果的に実行しながら会社の資金を守り、安定した経営を心掛けていきましょう。

税理士検索freee「法人決算のノウハウを持つ税理士一覧」を見る

税理士検索freee「節税対策のノウハウを持つ税理士一覧」を見る

月次で面談・監査にノウハウを持つ税理士を探す

地域から月次で面談・監査に実績がある税理士を探す

より細かいカテゴリから税理士を探す

人気記事

タグ一覧

業種

その他

PageTop