決算とは|決算の目的・内容・決算前でもできる節税対策

公開日:2018年10月31日
最終更新日:2022年07月02日

決算とは

決算とは、1年間の利益を計算して、期末日の財産や負債を確定させることをいいます。
決算は、どの会社でも期末日を迎えたら行う必要があります。
現在の商取引においては、飲食業などの特定の業種を除けば、売掛金や買掛金に代表される“信用取引”が中心となっており、正しく損益を計算するためには、決算期末に調整が必要になるのです。
また、年度の途中では集計していなかった在庫金額を集計したり、先払いしていた経費のうち、当期分のみを計算したりといった作業などが必要となります。

(1)決算を行う目的とは

決算では、損益計算書、貸借対照表といった決算書を作成します。
これらの決算書は、今後の経営判断の資料としたり、税金の申告を行う際の資料として必要となります。
つまり、決算は主に社外の利害関係者(株主、国、取引先など)に、会社の財政状態と経営成績を報告することを目的としています。

(2)「決算整理事項」とは

決算時に行う特有の経理処理に「決算整理」があります。決算整理では、主に棚卸と売上原価の算定、減価償却、収益および費用の見越し、繰延べ、貸倒引当金などの引当金の計算などを処理します。このような処理を行うことで、1年間の利益と期末日の財産や負債を確定させることができるのです。

決算業務(決算整理事項)

決算整理とは、経営成績や財政状態を正しく表すために、期末時点での各勘定科目の残高を確定させることをいいます。
棚卸資産は、実地棚卸を行い、実際の残高を把握します。
株券などで、購入時と価格が変わっている資産があれば現在の価値に修正し、固定資産については減価償却費を計算します。
ここでは、主な決算整理事項についてご紹介します。

(1)棚卸で売上原価を確定する

商品や製品のほか、原材料や仕掛品などの棚卸資産を正しく把握し、売上原価を計算します。
決算では、当期に売れた商品(製品)に対する仕入原価(製造原価)だけを、当期の売上原価とするので、在庫金額を正しく計算しなければならないのです。

期末の在庫単価は、個別法、先入先出法、移動平均法などがあります。届け出ていない場合には、最終仕入原価法が適用されます。

▶ 棚卸とは|実地棚卸や棚卸資産についてわかりやすく

売上原価は、前期末の在庫金額(期首棚卸資産残高)に、当期の仕入れ分(当期仕入高)を加えた金額から、今期末の在庫金額(期末棚卸資産残高)を差し引いて計算します。

売上原価=期首棚卸資産残高+当期仕入高-期末棚卸資産残高

(2)減価償却費を計算する

建物や機械設備、ソフトウェアなどの固定資産は、長期間使用されその価値が減少していくものです。
そこで、このような固定資産の購入費用は、購入時に全額費用処理せず、いったん固定資産として計上し、税法上で決められた使用期間にわたって費用処理します。
この費用処理を「減価償却」といいます。

固定資産は、10万円未満であれば、減価償却せず、消耗品費として費用処理できます。
また、購入金額が10万円以上20万円未満であれば、通常の減価償却に代えて3年間の均等償却という方法も選択できます(一括償却資産)。
さらに、資本金が1億円以下など一定の要件に該当する中小企業であれば、購入金額が30万円未満の固定費を資産計上せず費用処理できる特例があります。

▶ 減価償却とは|「そもそも減価償却って何?」から図入りで分かりやすく

(3)収益・費用の見越し・繰延べをする

売上高のうち、まだ入金されていないもので期末までに売り上げた分は、当期の売掛金として売上計上します。同じように、受取利息があれば「未収収益」として計上します。
また、売上高のうち、入金されていて来期の売上とすべきものがあれば「前受金」として計上します。

費用のうち、まだ支払いはされていないもので期末までの分があれば「未払金」もしくは「未払費用」として費用処理します。
また、費用のうち支払いはされているもので来期の分があれば、「前払費用」として計上します。

(4)引当金を計算する

引当金とは、将来的に高い確率で支払いや損失が発生すると見込まれ、その原因が当期にある場合に計上されるものです。
引当金には、貸倒引当金、賞与引当金などがあります。

貸倒引当金とは、受取手形や売掛金、貸付金などの金銭債権が貸し倒れることによって回収できなくなるリスクに備え回収できなくなる部分を見込んで計上するものです。

引当金の計上は、細かく規定されていて認められる種類も限定的で、計算方法も細かく定められています。税法で認められない部分は、税金を計算するうえで費用とはなりませんので注意が必要です。

▶ 貸倒引当金って何?計算方法や節税効果を解説

(5)法人税を計算する

法人税は、会社が通常年1回決算を行って、申告納付します。
法人税は、会社の所得に対して税率を掛けて計算しますが、この「所得」は会社の「利益」と同じではありません。
多くは、利益に加算・減算して「所得」を求めます。

当期利益-申告調整(加算・減算)=課税所得
益金算入… 加算
益金不算入…減算
損金算入… 減算
損金不算入…加算

▶ 会社の税金|法人3 税(法人税・法人住民税・法人事業税)まとめ

決算前から検討したい節税対策

年間の利益の動きというのは、業種ごとに大まかな予想は立てることが可能なので、会計期間の残り3カ月くらいになれば、年間の利益を予想することが可能です。
ですから、決算の3カ月くらい前から決算対策を行っていきましょう。

利益予測から納税額の予測を立てれば、種々の税務上の調整項目を経て、所得予測を行うことができます。そこから適用すべき税率などを当てはめて計算していくと、納税予測を行うことができます。納税額が非常に高い金額となることが予想された場合、どのようにこの金額を低くすることができるか、税法上の種々の節税規定を用いてシミュレーションしていくことになります。

会社を経営するうえで大切なのは、小手先の決算対策ではなく、事前に十分な検討と準備を行ったうえで、長期的な視点に立った事業計画を立て、そのうえで、取りうる対策を選択していくことですが、ここでは決算3カ月前でもできる主な節税対策についてご紹介します。

(1)急な利益が出たら事業年度を変更

期末近くになって、急に利益が出ることが判明する場合があります。
決算直前に慌てて必要経費を使っても、単なるムダ遣いになってしまいますし、これから投資計画などを進めて損金算入を計画することも難しく、取りうる節税対策が限られてしまいます。

その場合には、事業年度を変更することによって、利益が出る月を翌会計期間に含ませるということも可能です。そうすれば、翌会計期間に余裕をもって節税計画を行うことができます。何回も行うと、税務署から目を付けられる可能性は高いですが、突発的な利益が出た際には検討する価値のある方法といえます。

事業年度の変更は、大企業などであれば対外的な問題が出てくる可能性があるので、実施は難しいのですが、中小企業においては、事前に臨時株主総会を開き税務署に届け出を行うことで、比較的容易に手続きを進めることが可能です。

また、もう一つのお勧めできる方法として、従業員に決算賞与を支払うことです。
支出自体はありますが、損金算入することができるため節税が可能となりますし、従業員のモチベーション向上が期待できるので、業績アップにつながる可能性があります。

(2)減資して特例を利用する

減資、つまり会社の資本金を減らすことによっても、節税を行うことが可能な場合があります。中小企業を対象とした減税制度は多くありますので、減資を行うことにより自社を中小企業に分類させれば、特例制度が適用されるからです。

・少額減価償却資産の特例の利用
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

・課税所得800万円までの軽減税率
決算時点の資本金が1億円以下、または資本金を有しない法人であれば、所得800万円までは、法人税率が軽減されます。

(3)損金算入される役員退職金を活用

役員退職金として支払う金額は損金算入され、会社の法人税負担は下がることになります。また、役員退職金を受け取った役員の所得税面を考えてみると、退職金は退職所得となるため、一定の退職控除があり節税効果があります。
また、退職所得は分離課税であるために、より低い税率を使って所得税を計算することが可能となるため、この意味でも節税効果が期待できます。

仮に、役員退職金を支払うほどの資金がない場合でも、まずは退職金の支払を行い、その退職役員からの貸付という形で資金を戻すという処理を行うと税務上有利になります。

なぜなら、その期の所得金額を考えてみると、退職金の支払を行わない場合は、損金の金額が増えずその分税金の負担がありますが、退職金の支払を行う場合は損金の金額が増え、税金の負担が減少することになります。この場合、退職者の貸付として資金が戻ることになるので、会社に残る財産は両者変わらないことになります。もちろん退職者の貸付となっているわけですから、将来的に資金が減少するのは退職金の支払を行った会社となりますので、その点を留意すべきです。

(4)損金算入される短期前払費用を活用

前払費用とは、何らかのサービスなどを受けるために前もって支払った支出の中で、まだそのサービスを受けてない期間に対応する支出のことをいいます。この前払費用は、本来、税務上は損金には算入されない項目です。
しかし、1年以内にサービスを受ける予定があるもので支出が済んだものであり、かつ継続的に同じ処理を続けることを前提とした場合には、短期前払費用の損金算入が認められることになります。しかし、翌年度の損金になるものは今期損金算入されたものは除かれることになるので、あくまでも「課税の繰延」という効果しかないという点は注意が必要です。

(5)保険の節税効果は課税の繰延べ

「保険に加入すれば、節税できる」というイメージを持っている人は多いと思います。
これは、掛金の一部または全額を、損金に算入することが可能となるからです。
しかし、解約する際の返戻金は益金に算入されることになりますし、累積掛金のうちどのくらいの割合が戻ってくるのかというのは保険ごとに異なります。

ですから保険の設計書でしっかり内容を確認し検討することをおすすめします。また、保険の節税効果は一般的に課税の繰延という効果に留まります。

(6)小規模企業共済に加入する

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業者のための積立による退職金制度です。つまり、法人ではなく、個人の税制にかかる保険ということになります。
小規模企業共済の掛金は、全額損金算入され、節税効果を受けることができます。しかし、共済金や解約手当金を受け取る際には、退職所得や雑所得として課税されることになります。

(7)経営セーフティ共済に加入する

経営セーフティ共済とは、取引先の倒産などによる連鎖的な経営難に備えるための共済制度です。支払った掛金を全額損金に算入することが可能なので、節税することができます。また、累積掛金の10倍まで無担保、無保証、無利子で借入を行うことができるようになります。

ただし、40カ月未満の解約は全額返金されませんので、資金不足の時には注意が必要です。さらに、返戻金は益金算入されますので、注意が必要です。

まとめ

以上、決算の目的や内容、決算3カ月前でも実行できる主な節税対策についてご紹介してきました。

節税にはさまざまタイプがありますし、自社に最適な節税対策は、個々によって異なります。
大事なことは節税の仕組みを理解すること、そして目先の節税対策に捉われずに長期的な経営計画を実行するうえで有効な対策を選択していくことです。

経営のために本当に必要な節税方法を効果的に実行しながら会社の資金を守り、安定した経営を心掛けていきましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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