減価償却とは|「そもそも減価償却って何?」から図入りで分かりやすく

公開日:2019年09月03日
最終更新日:2023年05月18日

この記事のポイント

  • 減価償却とは、資産は時間が経つにつれて、価値が減っていくという考え方。
  • 減価償却費とは、資産価値の目減り分を、資産の価値から差し引く価格。
  • 時間が経っても価値が減らないものには適用されない。

 

事業を経営するうえで避けては通れないのが「減価償却」です。
減価償却は、決算や財務分析、キャッシュ・フローなどに影響を与えるもののひとつであり、経理作業を行ううえでは欠かせない知識ですが、初心者には分かりにくいものです。

そこで、この記事では徹底的に初心者目線に立って、減価償却の意味や仕訳の方法などについてご紹介します。

 

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減価償却費とは

減価償却費とは、固定資産の取得にかかった費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分しその期に相当する金額を費用に計上する時に使う勘定科目です。減価償却の対象となる固定資産を「減価償却資産」といいます。

たとえば「営業用車両100万円を現金で購入した」というケースでは、以下のように仕訳処理をします。

借方 貸方
車両運搬具 1,000,000 現金 1,000,000

そして、「決算期にあたり営業用車両の当期分の減価償却費10万円を計上した」時には、以下のように仕訳処理をします(※直接法にて処理した例)

借方 貸方
減価償却費 100,000 車両運搬具 100,000

勘定科目とは、「ペンを買った」「電話代を支払った」などの取引を、その性質ごとに記録するための項目をいいます。
たとえば、ペンを買った場合には、「事務用品費」という勘定科目で記録し、電話代を支払った場合には「通信費」という勘定科目で記録します。

取引 勘定科目での仕訳
ペンを買った 事務用品費
電話代を支払った 通信費
会社案内を作成した 広告宣伝費
固定資産を買って当期分を計上する 減価償却費

このように勘定科目ごとに記録することで、事業を行ううえで「お金がどのように入り、何に使ったのか」が分かるようになっています。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、資産は時間が経つにつれてその価値が減っていくという考え方です。少し金額の高い車やパソコン、応接セットなどを購入した時、その購入代金を、購入した年に一度に経費とするのではなく、分割して少しずつ計上するルールのことをいいます。

たとえば、250万円の車を買ったとします。車は、長期間使っていくうちに徐々に価値が減り、最後には資産としての価値がなくなります。

そこで、この時「今年は車を購入したので、250万円かかりました」と、250万円すべてを経費とするのではなく、「今年は50万、翌年に50万、翌々年に50万円…」というように、250万円を何年かで少しずつ経費にするというルールがあるのです。これが減価償却です。

減価償却ってなぜするの?

減価償却のそもそもの考えは、「年月が経つことによって劣化したり性能が落ちたりしてその価値が減っていく固定資産は毎年一定額や一定の割合で、分割して費用にしましょう」というものでした。それでは、減価償却はなぜ行うのでしょうか。

たとえば、パン屋さんの例で考えてみましょう。
パン屋さんが新しくパンを焼く機械を500万円で購入したとします。それを減価償却しなかったら、どうなるでしょうか。500万円をそのまま経費としたら、それまで毎年黒字だったのに赤字になってしまうかもしれません。赤字になれば、銀行からの融資を打ち切られてしまう可能性すらあります。
そこで、500万円の機械を減価償却して少しずつ購入代金を経費としていくことで、毎年の利益が正確に表されるようになるのです。

減価償却の用語を知っておこう

減価償却の大まかな意味が分かったところで、次に減価償却をするうえで必要となる関連用語をおさえておきましょう。

用語 意味
減価償却資産 減価償却の対象となる資産
減価償却費 減価償却した分の経費となる金額
取得価額 その資産の購入代金
耐用年数 その資産について、税法で定めた使用期間
事業供用日 その資産を使い始めた日
減価償却累計額 減価償却した今までの合計額
未償却残高 その資産でまだ減価償却されていない部分
未償却残高=取得価額-減価償却累計額

上記のなかでも、減価償却の計算をする時には「いつから使い始めたのか」「その資産について、税法で定めた使用期間は何年か」が特に重要となるので、まずは取得価額と事業供用日、耐用年数の意味は理解しておきましょう。

減価償却できる資産

これまでご紹介してきたように、減価償却できる資産を「減価償却資産」といいます。
減価償却ができる資産は、以下のいずれにも当てはまる場合です。

①業務で使用している資産
②時間が経つにつれて劣化する資産

形のあるものを「有形固定資産」といい、形のないものを「無形固定資産」といい、減価償却できる有形固定資産、無形固定資産には、それぞれ以下のようなものがあります。

減価償却する有形固定資産
建物、構築物、機械装置(パソコン、プリンターなど)、車両…など
減価償却する無形固定資産
ソフトウェア、特許権、商標権、意匠権…など

減価償却できない資産

固定資産であれば、何でも減価償却できるというものではありません。
以下に該当している資産は、減価償却の対象とはなりません。

①業務に使っていない固定資産
②時間が経っても劣化しない固定資産

たとえば、土地や借地権は時間が経っても劣化しないですし、書画・骨董品など歴史的な価値があるものなども、劣化して価値が下がる資産とはなりません。
また、稼働休止中の資産も減価償却をすることはできません。稼働が休止している状態では、業務に使用中であるとはいえないからです。

減価償却できない資産
土地・借地権等、電話加入権、書画・骨董等、稼働休止中の資産…など

中小企業の特例

これまでご紹介したように、減価償却の対象となる資産は、耐用年数に応じて長期間で費用計上しますが、中小企業で青色申告など一定の要件を満たす場合には、30万円未満の固定資産について一度に必要経費にすることができる特例があります。
この特例は、令和4年(2022年)3月31日までの期限付きの特例(※ただし延長の場合あり)ですが、30万円未満の固定資産であれば減価償却せず一度に経費として計上して所得を減らすことができるお得な制度です。固定資産の購入予定がある場合には、この期限に注意して検討することをおすすめします。

参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

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減価償却の処理

減価償却の処理を行う際には、まず固定資産が減価償却の対象となるか、耐用年数はどれくらいかを確認して、「減価償却費」という勘定科目に仕訳をする必要があります。

減価償却はいつから始める?

減価償却をいつから始めるかについては、「その固定資産を事業のために使った時から始める」というルールがあります。支払いが済んでいたか否かは関係ありません。
たとえば、固定資産を購入しても、納品が遅れるなどしてその期中に固定資産が稼働しなかった時には、その期の減価償却費として計上することはできません。

耐用年数はどこで確認する?

耐用年数(その資産の使用可能期間)とは、「その資産がどれくらい使えるのか」という期間のことで、その資産ごとに異なります。
たとえば、金属製事務机や椅子の耐用年数は15年、複合機の耐用年数は5年、パソコンの耐用年数は4年です。
耐用年数が5年なら、5年にわたって減価償却費を計上していくことになります。
税法では、固定資産の種類や構造、利用方法によって固定資産の耐用年数を規定していて、これを「法定耐用年数」といいます。法定耐用年数は、国税庁や東京主税局のページで確認することができます。

参照:東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数」

減価償却の方法「定額法」と「定率法」って?

減価償却費の計算方法は、毎年一定の金額を償却する「定額法」と毎年一定の割合で償却する「定率法」があります。

定額法は、1年目から耐用年数の最後の年まで定額で償却する計算方法で、費用負担は毎年同じです。
一方、定率法は、1年目の負担額が最も大きくだんだん小さくなる計算方法です。


建物や無形固定資産は、定額法に限定されますが、そのほかは固定資産ごとに定額法か定率法かを選択することができます。会社や個人事業主の場合には、早く費用化できる定率法を選ぶのが一般的です。初期の費用負担をどうするかなど、個々の状況に応じて選択するようにしましょう。

また、決算整理時には、減価償却の仕訳には「直接法」と「間接法」があります。
直接法は、固定資産から減価償却費を直接減らしていく方法で、間接法は新たに「減価償却累計額」という勘定科目を設ける方法です。

たとえば、決算にあたり営業用車両の当期分の減価償却費10万円を計上した場合、直接法では以下のように仕訳します。

借方 貸方
減価償却費 100,000 車両運搬具 100,000

一方間接法では以下のように仕訳します。

借方 貸方
減価償却費 100,000 減価償却累計額 100,000
直接法と間接法の主な違い
直接法と間接法の主な違いは、間接法だと元の固定資産の価額が残るように表示するという点です。
決算書の表示としては、簿記の原則にのっとれば、間接法を選ぶのが一般的です。
しかし、簿記がよくわからないという個人事業主の方や経営者おひとりの会社であれば、「直接法」のほうが決算情報を掴みやすい特徴があります。

固定資産が中古だった場合は?

固定資産が中古だった場合でも、取得価額の決め方に違いはありません。
新品か中古かで最も大きく変わる要素が「耐用年数」です。
中古資産は、それまでに他の人に使われてきた資産なので、資産としての価値は減り、残りの使用可能年数も、中古の方が短くなります。
そこで、中古資産用の耐用年数は短くなり、早い年数で経費を計上することができることになります。

会計ソフトなら自動計算できる!

以上、減価償却の意味や関連用語、仕訳方法、計算方法などについてご紹介しました。
ここまでご紹介した内容から「何となくわかったけど、減価償却って、面倒くさそう」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時に活用したいのが「クラウド会計ソフト freee会計」です。
「クラウド会計ソフト freee会計」なら、必要な項目を入力すればあとはソフトが自動で計算をしてくれて減価償却費の処理も簡単に行うことができます。定額法、定率法なども自由に設定することができ、決算時も自動仕訳されるのでミスがありません。
さらに「クラウド会計ソフト freee会計」では、固定資産台帳へ資産登録することでこの減価償却費の記帳を自動で行います。

最初はとっつきにくいイメージのある減価償却ですが、ここでご紹介した基本ルールをおさえ、さらに「クラウド会計ソフト freee会計」を活用すれば、特に難しい処理は必要ありません。
また、記事内でご紹介したような「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用したり、固定資産を中古で購入し耐用年数を短くしたりすれば、節税効果も期待できます。
固定資産を購入する場合には、事前に税理士に相談して節税につながるような購入方法を検討してみるのもよいでしょう。

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この記事の監修者

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遠藤 光寛えんどう みつひろ

遠藤光寛税理士事務所 代表

土地以外の有形固定資産は、使用や時の経過とともに資産価値が減少しますので、その資産について、税法で定めた使用可能期間にわたって減価償却により費用化します。減価償却の方法は、一般的には定額法と定率法が採用され、税務上は特に届出をしなければ定率法を採用しているとみなされます。
耐用年数が1年未満で、取得価額が10万円未満の有形固定資産は、事業用に使用した時点で費用として処理をします。10万円以上20万円未満の資産については、3年間で均等償却します(これを一括償却資産の損金算入方式といいます)。また、中小企業者の場合には、30万円未満の資産について即時償却の特例があります。これを「少額減価償却資産の損金算入制度」といい、有効に利用すれば節税を図ることができます。したがって、減価償却についての不明点や疑問点等は、早めに税理士等に確認することをおすすめします。
遠藤光寛税理士事務所は、経営者の皆様のグチ聞きに特化した事務所です。 グチが出るのは、理想と現実にギャップがあるから。 理想を現実にする方法について、当事務所と一緒に考えませんか? 問題解決の手段は無限大です。安定した財務基盤の構築、 資金調達支援、経営管理会計支援、財務会計整備支援、人材管理の負担軽減、経理業務の安定化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化など日々の「経営課題」「運営課題」に対し共に取り組み、「資金と管理面」の戦略的コンサルティングにより業績アップへ導きます。

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