サラリーマンの確定申告|年末調整をしていても確定申告が必要な場合とは

公開日:2018年10月30日
最終更新日:2024年01月26日

この記事のポイント

  • サラリーマンでも確定申告をしなければならない人がいる。
  • 義務ではないが、確定申告する方がお得な人もいる。
  • 確定申告をすることで、納め過ぎた税金が戻ってくることもある。

 

サラリーマンの場合、通常は自分で所得税や住民税を納めることはありません。
会社が毎月給料から所得税を「源泉徴収」し、そして年末に「年末調整」を行うことで所得税の納税手続きが完了しているからです。つまり、納税のために必要な手続きは、原則として会社が行ってくれているのです。

ただし、サラリーマンでも確定申告をしなければならない人もいます。確定申告をしなければならないのに確定申告をせず、所得税を納めなかった場合には、ペナルティがありますので注意が必要です。
 

サラリーマンの確定申告の豆知識

サラリーマンは、給与や賞与から天引きで所得税を納めています。これを源泉徴収といいます。そして年末には、源泉徴収された税額の年間合計額と実際に納めるべき納税額との過不足を調整する作業を行います。これが年末調整です。
したがって、サラリーマンは基本的に確定申告は不要ですが、一定の条件を満たす人は確定申告が必要です。たとえば、給与の収入金額が2,000万円を超える人や2カ所以上の勤務先から一定以上の収入を得ている場合、副業による所得の合計額が20万円を超える時は、確定申告が必要です。
また、年末調整では受けられない控除もあり、その場合は確定申告をしなければ税金が還付されません。

サラリーマンでも確定申告する必要がある人

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と所得税を計算して、税務署に申告し、所得税を納める手続きです。

確定申告が必要な人は、個人事業主やフリーランスなどの自営業者や、400万円を超える公的年金を受け取っている人、事業所得や不動産による収入を得ていて、所得税から配当控除を引いた額がプラスになる人などです。
サラリーマンは、勤務先の会社が従業員に代わって申告・納税を行ってくれるので、原則として自分自身で確定申告を行う必要はありません。
サラリーマンが納める税金は、毎月給料から源泉徴収(天引き)されて勤務先が社員全員の税金を代わりに納めているからです。

しかしサラリーマンのなかには、年末調整をしていても確定申告が必要な人がいますし、そもそも年末調整がされていないため自分で確定申告をしなければならない人もいます。

(1)副業の所得が20万円超えた人

サラリーマンでも、副業で20万を超える所得があった場合には、確定申告をしなければなりません。
所得は、収入から必要経費を差し引いて計算します。仮に年間の副業の収入が21万円でも、経費が2万円だった場合には所得は「21万円-2万円=19万円」となりますので、確定申告を行う必要はありません。

最近は、メルカリなどで洋服や生活用品などの不用品を売って収入を得る人が増えましたが、不用品の売却は非課税所得になるので、基本的には課税されません。ただし、1点30万円以上の貴金属や美術品を売って得た所得は、譲渡所得として課税対象となります。

なお、副業による収入が20万円以下の場合には、確定申告をする必要はありませんが、還付金を受けとれる可能性があれば、確定申告を行うようにしましょう。

確定申告をする際には、所得の種類ごとに収入を集計して、申告をします。
副業の所得が、給与所得なのか雑所得なのかなど、確認しておくようにしましょう。

(2)不動産を売却した人

不動産を売った時には、確定申告が必要です。
不動産の売却による所得は、譲渡所得に分類され分離課税(他の所得とは分離して税額を計算して納税する課税方式)となり、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超か5年以下かによって計算方法が異なります。

短期譲渡所得

税の種類 税額
所得税 課税短期譲渡所得金額×30%
住民税 課税短期譲渡所得金額×9%

 
長期譲渡所得

税の種類 税額
所得税 課税短期譲渡所得金額×15%
住民税 課税短期譲渡所得金額×5%

※所得税には、別途復興特別所得税が課税されます。

ちなみに、売却した不動産がマイホームの場合には、譲渡益が3,000万円まで税金がかからないという特例があります。また、所有期間が10年超のマイホームを売却した時には、3,000万円の特別控除に加えて軽減税率の適用を受けることができます。
また、居住期間が10年以上、所有期間が10年超のマイホームを1億円以下で売却し、売った年の前年からマイホームを購入した場合には、基本的に税金がかからない「買換特例」もあります。
これらのマイホーム関連の特例を受けるためには、さまざまな条件を満たす必要がありますので、詳細は税理士に確認をしてください。

▶ 不動産の税金について相談できる税理士一覧

(3)相続した空き家を売却した人

親などから相続したものの、空き家となっていた実家を売却した場合には、確定申告をする必要があります。
平成28年度の税制改正によって、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が新設され、相続した家屋に耐震リフォームを行ったり、更地にした後に売却したりした場合には、その譲渡所得から3,000万円が控除されます。この特例を利用するためには、さまざまな条件を満たしたうえで市区町村から受け取った「被相続人居住用家屋等確認書」を提出する必要があります。
この特例は、当初令和元年12月31日までとされていましたが、令和5年12月31日まで延長されました。該当する空き家を所有している人は、ぜひ活用しましょう。

(4)株取引で特定口座(源泉あり)を指定していない人

株の売買や退職金などは、給与所得などのほかの所得と合算せず、その特定の所有に対して課税していく「分離課税」なので、サラリーマンも給料とは別に計算されます。

一般口座で取引している人は基本的に確定申告が必要ですから、自分で売買損益の計算をしなければなりません。ただし、年収2,000万円以下のサラリーマンで、年間の譲渡所得を含めた給与所得以外の合計が20万円以下なら確定申告は不要です。

特定口座の「源泉徴収選択口座」を選んでいれば、証券会社などが譲渡所得に対する税金をすでに源泉徴収で差し引いているので、確定申告は不要です。ただし、年間トータルで譲渡損が出た時には、確定申告をすれば向こう3年間の譲渡損を繰り越すことができます。

投資信託では、1つのファンドで株式や債券、不動産などさまざまな運用が行われるので、税金はその商品の内容によって異なります。
投資信託に関する税金は、ほとんどのケースで源泉徴収されるので、確定申告の必要はありません。
「株式型」の場合、売却、償還、解約に関わらず、利益が出た場合には20%(所得税15%+住民税5%。実際はこれに復興特別所得税が加算される)の税金がかかります。
いずれの場合も特定口座(源泉あり)を選んでない場合には、原則として確定申告をする必要があります。
ただし、「特別分配金」という非課税となる分配金もあります。

(5)保険の満期金を受け取った人

保険が満期になったり解約したりして受け取った保険金は「一時所得」となり、確定申告が必要です。
一時所得は、総収入金額からその収入を得るために支出した金額と特別控除額(最高50万円)を差し引いて計算します。
サラリーマンの場合には、「副収入による所得が20万円以下の場合、確定申告が不要」となるので、払込保険料を差し引いた金額が70万円であれば、「70万円-50万円(特別控除額)=20万円」となり、確定申告をする必要はありません。

なお、生命保年を年金形式で受け取る時には「雑所得」となります。また、保険金を受け取る時に、保険料を負担していた人と受取人が異なると、贈与税や相続税の対象となるので、注意が必要です。

▶ 非課税所得とは|税金がかからない所得【まとめ】

(6)給与が2,000万円超の人

給与収入が2,000万円を超えた場合には、会社で年末調整は行われないので、確定申告をしなければなりません。
つまり年末調整で行われる社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除などについて、自分で確定申告をして所得控除を行います。
この場合には、給与以外の所得(20万円以下の副業の収入も)もすべて申告しなければなりません。
ただし、預金の利息や非上場株式の少額配当など、申告しなくてもいい所得もあります。

(7)2カ所以上から給与をもらっている人

2カ所以上の複数の収入がある人は、合算して確定申告をしなければなりません。
ただし、「主たる給与以外の所得」が20万円以下の場合には、申告は不要です。
この場合には、勤務先で年末調整は済んでいるので、扶養控除などの所得控除の計算はする必要はありません。

(8)再就職して年末調整しなかった人

年の途中で転職した場合には、2つの会社から給料が支払われることになります。
通常は、前の会社の源泉徴収票を提出すれば、今の会社で給料を合算して年末調整をしてもらえるので、確定申告は必要ありません。
けれども、前の会社の源泉徴収票を提出しないと年末調整は行われませんので、自分で確定申告をする必要があります。

なお、結婚や出産などで再就職しなかった場合にも年末調整はされていません。この場合には確定申告をすることで税金が戻るケースが多いようです。
ただ、再就職しないで家族の扶養親族になる場合、税法上の扶養親族は合計所得が38万円以下かどうかで判断するので、扶養控除の対象になる可能性もあります。

サラリーマンでも確定申告した方がお得な人とは

これまでは、サラリーマンでも確定申告しなければならない人についてご紹介してきましたが、確定申告を行う義務がない人でも、確定申告をすることで税金の還付を受けたり、税金を払わなくて済んだりする場合があります。
必ず申告をしなければならないわけではありませんが、申告をしないと還付の恩恵を受けることができませんので、しっかり確認しておきましょう。

会社員は、各種控除について会社が年末調整をしてくれるので、原則として確定申告をする必要はありませんが、①医療費控除、②寄付金控除、③雑損控除については、年末調整がされないため、自分で確定申告をする必要があります。

(1)高額な医療費がかかった人(医療費控除)

申告者自身や家族の医療費を10万円以上支払った人は、医療費控除の対象となることがあります。
この場合には、自分自身の医療費だけでなく、生計を一にする家族の分の医療費も対象となります。また、病院に支払った診察費や治療費代はもちろん、通院の際の交通費なども含まれます。

なお、医療費控除と選択できる制度として「セルフメディケーション税制」があります。これは、指定された市販薬を購入した際に所得控除を受けることができる制度です。1年間に1万2,000円以上購入すると、その超えた金額分を所得控除することができます(ただし、上限は8万8,000円)。

医療費控除は、5年前までの分ならさかのぼって申告することができるので、まずは税務署か国税庁のホームページで問い合わせをしてみましょう。

▶ 医療費控除とは|2017年の特例創設(2021年改正)、控除額の計算方法など

(2)寄附を行った人(寄附金控除)

ふるさと納税など、控除対象となっている寄付を行った場合には、寄附金控除の対象となります。寄附金控除は、会社で年末調整をしてくれないので、原則として自分で確定申告をする必要があります。
ただし、ふるさと納税については、平成27年度から「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が導入されたため、サラリーマンなどの給与所得者で、ふるさと納税の納付先の自治体が1年間で5つまでの人であれば、確定申告をする必要はなくなりました。

また、自治体によっては「新型コロナウィルス医療対策支援」として、ふるさと納税制度を利用して寄附を募り、寄付金控除を受けられるしくみを構築しているケースもあります。医療従事者を応援したいという場合には、このような制度を利用するのもよいでしょう。

なお、寄附金控除の対象となる団体は限定されていて、寄附をしても寄附金控除が受けられない場合もありますので、注意しましょう。

(3)災害や盗難にあった人(雑損控除)

自然災害や火災などの被害に遭った場合や、盗難・横領などで被害を受けた時には、所定の金額から控除することができます。これを「雑損控除」といいますが、これも前述したように会社では年末調整をしてくれませんから、確定申告をする必要があります。
確定申告をする際には、災害による支出領収書や、警察署、消防署の証明が必要になる場合があります。

(4)ローンを組んで住宅を購入した人

「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得または増築等を行った場合には、所得税から控除される制度です。住み始めてから10年間、住宅ローンの年末残高の1%または住宅価格の1%のうち少ない方(最高額40万円)が所得税額から毎年控除されます。
さらに、消費税10%が適用される人は期間が3年間延長され、「建物価格の2%の3等分」もしくは「借入金の年末残高1%」のどちらか少ない方の金額が控除されます。
住宅ローン控除は、居住1年目はサラリーマンも確定申告が必要で、確定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」や登記事項証明書、売買契約書の写しなどを添付して提出する必要があります。
サラリーマンは、2年目以降は会社の年末調整で控除を受けることができます(必要書類の提出が必要)。

(5)株式取引で損をした人

株式の取引で損失が出た場合、別の証券会社の口座で利益が出ていれば、その金融商品の売買で得た所得や所有する株式の配当金から損失を差し引いて、所得税を軽減させることができます。これを「損益通算」といいます。
また、すべての口座を通算して損失が残った場合には、確定申告を行えば以降3年間は株式売買による利益や配当利益と損益通算することができます。

(6)自宅を売却して損失が出た人

不動産の売却で譲渡所得がマイナスになった時には、譲渡所得には課税されませんので確定申告は不要です。しかし、その損失をほかの所得から差し引く「損益通算」が可能となることもあるので、その場合には確定申告をする方がお得です。
この特例を受けるためには、売却したのがマイホームであることが必要です。売却によって生じた損失は、一定の限度でその年の給与所得などとの間で損益通算ができ、以降3年間にわたって繰越控除ができます。

(7)年末調整で控除の適用もれがあった人

「扶養家族が増えた」「マイホームを取得した」「配偶者と死別または離婚した」など、納税者の個々の事情に合わせ税額の負担を調整する作業が年末調整ですが、これらの事情があったにも関わらず年末調整の際に書類を提出し忘れていた場合などは、確定申告をすることで税金を取り戻すことができます。

まとめ

以上、年末調整をしていても確定申告必要な場合について説明しました。併せて下記の記事では、サラリーマンでも活用できる11個の節税対策について、ご紹介しています。

▶ サラリーマンが実践できる11個の節税術

自身の状況に該当する場合にはもれなく対策をして、必要に応じて確定申告して、節税対策を行いましょう。

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この記事の監修者:遠藤光寛税理士事務所

監修者

遠藤 光寛えんどう みつひろ

遠藤光寛税理士事務所 代表
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所得税の申告では、まず収入を大きく10種類に区分してそれぞれの所得を計算します。そして所得から所得控除を差し引きます。さらに所得税額計算後に税額そのものから控除できる税額控除もあります。
サラリーマンの場合は、給与から税金が源泉徴収され、会社の年末調整で税金を清算が済んでいます。しかし、年末調整を受けられない場合や、医療費控除・雑損控除・寄附金控除・寄附金特別控除・配当控除・外国税額控除・住宅ローン控除の適用を受ける場合には、確定申告が必要です。
節税で大切なのは、正しい税金の知識を身につけることが大切です。自分にあてはまる所得控除や税額控除はもれなく適用することで、自分の所得にかかる税金を軽減することができます。
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