区分記載請求書等保存方式とインボイス制度の違い

公開日:2019年11月05日
最終更新日:2022年12月26日

この記事のポイント

  • 「区分記載請求書等保存方式」は、令和5年(2023年)9月30日までの経過措置。
  • 「区分記載請求書」には、税率の異なるごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額の記載が必要である。
  • 令和5年(2023年)10月1日以降は、インボイス制度が開始する。

 

令和元年(2019年)10月1日の消費税率の引き上げにあわせて義務づけられたが、「区分記載請求書等保存方式」です。

令和元年(2019年)10月から令和5年(2023年)9月30日までの4年間は、消費税率が8%と10%の複数税率になることから、経理処理をする時に、取引をそれぞれの税率ごとに区分して記載しなければならないことになります。このような処理を「区分経理」といいます。

令和5年(2023年)10月1日以降は、インボイス制度が開始しますので、この記事では現行の「区分記載請求書」と、インボイス制度開始後の適格請求書の違いを中心にご紹介します。

区分記載請求書とは

令和元年(2019年)10月1日から、消費税が10%に引き上げられました。
しかし低所得者層に配慮された措置で、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定額購読契約された週2回以上発行される新聞」は税率8%とされます。これを軽減税率制度といいます。

この軽減税率制度の導入によって、消費税が10%と8%という複数の税率が採用されることになったため、請求書や納品書、領収書、レシートなどを発行する事業者は区分経理に応じた請求書等を作成しなければならなくなりました。これが、区分記載請求書です。

1つの請求書等に税率が異なる課税仕入れが記載されている場合には、その税率を明らかにする必要があります。仕入税額控除の要件として保存する請求書等には、軽減税率の対象となる場合にはその旨と税率ごとの支払対価の額の合計額の記載が必要です。

なお、標準税率10%のみを取り扱う事業者は、従来どおりの請求書等を作成すればよいということになります。

(1)区分記載請求書等保存方式は経過措置

軽減税率の導入は消費税を複数税率制度とするものであり、適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)への移行については、事業者の負担が予想されました。そこで、区分記載請求書等保存方式は経過措置として導入されたわけです。

なお、取引の形態によって請求書等を保存することが困難である場合には、事務負担に配慮する観点から、請求書等の保存がなくても仕入税額控除の適用が認められる特例も設けられています。

(2)令和5年10月以降はインボイス制度

令和5年(2023年)10月1日からはインボイス制度が導入されるため、区分記載請求書等保存方式はそれまでの経過措置であり、令和5年(2023年)10月1日からはインボイス制度に移行されることになります。

区分記載請求書等は誰でも発行することができますが、適格請求書等を発行するためには、事前に税務署に申請を行って、「適格請求書発行事業者」として登録を受けておく必要があります。

(3)区分記載請求書と適格請求書の違い

現在の区分記載請求書と適格請求書との記載事項の違いは、「事業者の登録番号」「課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率」「税率ごとの消費税額及び適用税率」が記載されているか否かという点です。

適格請求書と区分記載請求書保存方式との違いは青文字部分
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(4)区分記載請求書に記載すべき事項

①軽減税率の対象と分かることが大切
区分記載請求書を作成する場合には、課税資産の譲渡が軽減税率対象資産の譲渡等であることが明確で、8%と10%の異なる税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)であることが分かるように作成しなければなりません。

なお、請求書で、軽減税率の対象となる商品に「※」や「☆」などの記号を表示して、「※」は、軽減税率の対象と表示する方法でもよいということになっています。

②一定期間の取引をまとめてもOK
取引においては、1日から月末までの期間の納品について、まとめて請求書を発行するというケースもあるでしょう。
このようなケースでは、納品書と請求書の関連性が明確で、これらの書類全体で「区分記載請求書等」の記載事項を満たす場合には、これらの書類をまとめて保存すれば、区分記載請求書等の保存があるものとして扱うことができます。

③金額表記は税込でも税抜でもOK
区分記載請求書等に記載する金額は、税込でなくても、「本体価格(税抜)+消費税額」という記載でも構いません。
たとえば、請求書に「全商品が軽減税率の対象」と記載し、請求書等に記載したすべての取引が軽減税率対象であることを明記すれば、「本体価格(税抜)+消費税額」としてもOKです。
なお、軽減税率の対象となる商品がない場合には、わざわざ8%、10%と記載する必要はありません。

④帳簿の記載する時も軽減税率の対象と分かることが大切
帳簿に記載する時にも、軽減税率の対象と分かるようにしなければなりません。
なお、どのように記載するかについては、軽減税率の対象となるものについては「※」の記号をつけておくという方法でも問題ありません。
また、請求書が1カ月分まとめて作成されるという場合には、その期間分をまとめて帳簿に記載して問題ありません。
軽減税率の対象に「※」と記載する方法、帳簿に税率区分欄を設けて[8%」と記載する方法、税率コードを記載する方法も認められています。

参照:国税庁「帳簿および区分記載請求書等の記載に係る留意点」

(5)簡易課税制度では区分記載請求書の保存は必要ない

簡易課税制度とは、実際の課税仕入れについて、売上に係る消費税額にみなし仕入率を適用して控除対象仕入税額を計算する制度です。

この簡易課税制度は、仕入税額控除における事務負担から中小事業者の負担を軽減するために設けられている制度ですから、区分記載請求書等の保存は必要されません。

令和5年10月スタート「インボイス制度」とは

令和5年10月1日からは、インボイス制度がスタートします。
インボイス制度では、仕入税額控除の要件として、原則適格請求書発行事業者から交付された適格請求書の保存が必要となります。

(1)事業者登録制度が基礎

インボイス制度において適格請求書を交付しようとする課税事業者は、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者」の登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があります。
この登録申請書は、e-Taxを利用して提出することもできますし、個人事業主はスマートフォンでも手続きが可能です。
なお、適格請求書発行事業者に登録できるのは課税事業者のみで、免税事業者は登録することはできません。

参照:国税庁「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度) 申請手続」

(2)事業者登録しないと仕入税額控除できない

インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外から行った課税仕入れについて、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません。
適格請求書が交付されない課税仕入れについては、仕入税額控除の対象から除外しなければなりません。

ただし、インボイス制度の導入後6年間は、インボイス制度で仕入税額控除が認められない課税仕入れについても、区分記載請求書等保存方式で仕入税額控除の対象となるものについては、一定の割合で税額控除が認められます。

区分記載請求書等の保存で仕入税額控除ができる割合
令和5年10月1日~令和7年9月30日 80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日 50%

(3)区分記載請求書等保存方式とインボイス制度の違い

区分記載請求書と適格請求書の記載事項については、前述しましたが、インボイス制度では事業者登録制度がある、免税事業者等からの課税仕入れが仕入税額控除の対象とならない(ただし経過措置あり)など、異なる点があります。

区分記載請求書等保存方式 適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
登録制度 事業者登録制度なし 事業者登録制度あり
免税事業者等からの課税仕入れ 免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額控除の対象となる 免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額控除の対象とならない(ただし、6年間の経過措置あり)
売り手の請求書等の交付義務 売り手に請求書等の交付義務なし 売り手に適格請求書の交付義務有(免除特例あり)
免税事業者等の交付 免税事業者の交付可 免税事業者、事業者未登録者は交付不可

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freee請求書を利用することで、入力漏れや計算ミスなどを未然に防ぎ、正確な書類をスピーディに作成できるようになります。

2023年10月から開始されるインボイス制度にも対応

2023年10月からインボイス制度が施行されます。インボイス制度の制度施行に伴い、インボイス制度の要件を満たした適格請求書の交付、計算方法の変更、インボイスの写しの保存義務化など請求書業務の負担が増えることが予想されています。
freee請求書では金額を入力するだけでインボイスの計算方法で自動計算し、適格請求書の項目も満たした請求書を作成・発行することが可能です。また、作成した請求書は電子保存されるため、インボイスの写しの保存義務化にも対応できます。

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まとめ

以上、令和元年(2019年)10月から令和5年(2023年)9月30日までの4年間義務づけられる「区分記載請求書等保存方式」と令和5年(2023年)10月1日からスタートする「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の違いについて、ご紹介しました。

「区分記載請求書等保存方式」は4年間のみの経過措置で、令和5年(2023年)10月1日からは、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に移行されることになります。
スムーズに新制度に移行するためにも、何が消費税8%なのか、10%なのか、適格請求書等保存方式に対応するためには、早めに税理士に相談してサポートを受けるようにしましょう。

(1)インボイス制度について相談する

消費税額の計算は、徴収した消費税額と負担した消費税額の2つの要素が必要であり、課税標準額を計算し仕入控除税額を計算する必要があります。
さらに消費税改正による複数税率に伴い、経理処理はさらに煩雑になります。
税理士に相談すれば、前述した「クラウド会計ソフト freee会計」の活用やインボイス制度への対応についてアドバイスをしてもらうことができます。

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、freee会計の導入や区分記載請求書等保存方式、適格請求書等保存方式(インボイス制度)について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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(2)この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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