公開日:2018年10月31日
最終更新日:2023年10月17日
会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などの種類がありますが、そのなかで最も一般的な会社形態が株式会社です。
株式会社を設立するためには、以前は1,000万円以上の資本金を用意する必要がありましたが、この最低資本金規制はなくなったことから簡単に株式会社が設立できるようになりました。
とはいうものの、株式会社を設立するためには、代表印の作成や、定款の作成・認証などさまざまな手続きが必要であり、設立費用もかかります。また業種によっては、許認可を取得する必要もあります。
ここでは、一般的な株式会社の設立方法についてご紹介します。
株式会社とは、株式を発行することで資金を調達し、その資金で事業活動を行なう会社のことをいい、法人として最も一般的な形態の会社です。
株式会社を設立するためには、以前は最低でも1,000万円の資本金と、取締役3名以上、監査役1名以上の就任が必要でしたが、現在は資本金1円、取締役1人でも設立することができるようになりました。
株式会社の資本金は、ひと株あたりの価格を決め、誰が何株持つのか(出資するのか)を決めて、それを定款に記載します。
この株式を所有する人たちを株主といい、株主たちが集まるのが「株主総会」です。
株式会社においては、この株主総会が「最高意思決定機関」となります。
これから起業したいと思っていて、自分が代表取締役になるのであれば、必ず半数以上、できれば3分の2以上の株数を持つようにしてください。株主総会や取締役会で多数決になった場合でも、株数を3分の2以上持っていれば解任されるようなことはないからです。
会社には株式会社、合同会社、合資会社、合同会社の4つの種類があります。また、一般社団法人、NPO法人などの形態もあります。自分のビジネスにはどの形態がいいのか、よく考えてから設立するようにしましょう。
合資会社・合名会社 合資会社:有限責任社員と無限責任社員で構成される会社組織。 合名会社:直接連帯責任を負う無限責任社員のみで構成される会社組織。 合資会社、合名会社の歴史は古く、老舗の造り酒屋では、合資会社などの法人形態を維持しているところも多くあります。 |
合同会社(LLC) 合同会社:会社法によって新しく創設された新しい種類の会社形態。 出資者は全員が有限責任社員であるという点で、株式会社と同じですが、株主総会などする必要がなく、社員全員の合意で意思決定をします。 合同会社は、株式会社に限りなく近く、会社の設立費用も抑えることができるので、最近増えている会社形態です。 |
・「合同会社(LLC)のメリット・デメリットと設立手続き」を読む
会社設立は、書類作成、定款認証、登記など、さまざまな手続きが必要です。
ここでは、株式会社を設立するための8つの手順をご紹介します。必要となる手続きや書類については、早めに準備しておきましょう。
① 会社の名前(商号)
会社の名前のことを「商号」といい、人間一人ひとりに名前があるのと同じように、会社も法務局に登記した商号が正式な名前になります。
基本的に、商号は自由につけることができますが、「名前の前か後に必ず『株式会社』をつける」「銀行以外の会社が『銀行』という文言は使えない」「♪、!などの記号は使えない」など、一定の制限があります。
また、同じ住所に同じ商号の会社があると、登記することができませんので、事前に法務局の「商号調査簿」で確認をする必要があります。
② 会社の住所
会社の住所のことを「本店所在地」といいます。
本店とは、本社という意味ではなく、事務所や店舗などのことで、どこを本店にするかは会社が自由に決めることができます。
なお、この時賃貸物件で会社名義にすると、事業所としてだけでなく役員社宅としても経費にできるので、節税効果は絶大です。
ただし法人登記ができない物件もありますので、法人登記できる物件については不動産屋に相談するようにしましょう。
本店の所在地が決まると、その管轄の法務局に登記申請をすることになります。
③ 会社の目的
会社が行う事業内容のことを「目的」といいます。
個人事業と違って、会社はあらかじめ定款で決めた目的以外の事業を行うことができません。目的の数は制限されているわけではないので、行う可能性のある事業については、最初から定款に記載しておくとよいでしょう。
会社設立後に事業目的を追加すると、お金がかかりますし手続きが必要になるからです。
会社設立時には、いろいろな印鑑が必要になります。
なかでも会社の印鑑は、必ず作成する必要があります。
会社の代表印を作成する際には、会社の商号について法務局の「商号調査簿」で確認してからにしましょう。
同じ住所に同じ商号の会社があると、登記することができなくなってしまうので、せっかく作成した印鑑を破棄しなければならなくなってしまいます。
発起人と役員の印鑑証明書をとる
会社の発起人と役員は、個人の実印が必要です。
実印を登録するためには、住民票の所在地の役所の窓口に、登録する予定の印鑑と本人確認のための書類(パスポートなど)を持参して、手続きします。
すでに印鑑登録している人の場合は、市区町村の役所窓口で印鑑証明書を発行してもらいます。
この印鑑証明書は、通常は発行日から3カ月という有効期限がありますので、注意しましょう。
なお、個人の実印が必要となるのは、以下のような時です。
定款認証の時 公証人役場で公証人に認証してもらう定款には、発起人全員の実印が必要です。 また、印鑑証明書を1通ずつ添付する必要があります。 登記書類印鑑届出書作成時 取締役就任時 |
会社の組織や運営に関する基本規則を定めたものを、「定款」といいます。
定款は、会社の憲法のようなもので、会社を設立する際には、必ず定款を作成し、発起人全員がこの定款に署名押印しなければなりません。
定款の記載事項については、必ず記載しなければならない絶対的記載事項が法律で定められている他、相対的記載事項、任意的記載事項があります。
絶対的記載事項 絶対的記載事項に記載するものは以下のとおりで、記載漏れがあったり記載内容が法律に違反したりするとその定款が無効になってしまうので、注意が必要です。 ① 商号 |
相対的記載事項 相対的記載事項は、記載されていなくても法的には有効ですが、定款に記載することで法的な効力を持つ事項をいいます。 ① 株式の譲渡制限をつけるか |
任意的記載事項 任意的記載事項については、法律に違反してさえなければ、自由に決めることができます。 定款に記載することで会社の基本ルールとなり、株主や取締役などの会社の機関を拘束する役割を果たす場合もあります。 ① 会社の事業年度 |
定款を作成したら、公証役場で認証を受けます。
認証とは、発起人が作成した定款に間違いがないか、公証人が確認し証明することをいいます。
定款は、このように公証役場で認証を受けることで、はじめて法的な効力を持ちます。
認証の手続きは、会社の本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
なお、公証役場で認証を受けなければならないのは、会社設立時だけです。それ以降に定款変更したい場合には、株主総会の決議で行います。
登記をする際には会社の実印を登録するので、法人の印鑑を作成します。
実印の登録先は、個人と異なり市区町村役場ではなく会社の本店所在地を管轄する法務局です。
わざわざ事前に登録をする必要はありませんが、登記の時に提出する書類には会社の実印を押さなければならないため、それまでに印鑑をつくっておきましょう。
法人の印鑑を登録すると「印鑑カード」が法務局から発行されます。印鑑カードは、会社設立の登記が終わってからでなければ発行されないので、印鑑証明書も会社設立の登記が終わってからでないと取得することができません。
定款が認証されたら、資本金を払込みます。
資本金は、本来なら会社の口座に振り込みますが、設立前で会社の口座がないので、発起人の個人名義の口座に、それぞれの発起人が自分の出資分を振込みます。
資本金は1円からOKですが、取引先が登記簿で会社の資本金の額を確認することもありますので、ある程度の額を振込んでおいた方が無難です。なお、業種によっては、資本金の額が許認可の要件となっていることがありますので、確認しておきましょう。
資本金を払込んだら、①通帳の表紙、②裏表紙、③通帳の2ページ目、④資本金の振込みが分かるページをコピーして、払込みがあったことを証する書面を作成します。
資本金を払込んだら、登記用の書類を作成し、法務局で登記の申請をします。
この時申請する法務局は、本店所在地を管轄する法務局です。
登記するために必要となる主な書類は、以下の通りです。
①株式会社設立登記申請書 登記しようとしている会社の商号や本店所在地、登記の事由、登記すべき事項、資本金の額、登録免許税額などを記載します。 ②登記免許税貼付台紙 ③認証済定款 ④払込を証する書面と通帳のコピー ⑤取締役の印鑑証明書 ⑥登記すべき事項 ⑦印鑑届出書 |
登記用申請書類は、順番に注意して、重ねて左側をホッチキスで止めて提出します。
書類に不備があると、申請書に書いた電話番号に補正の連絡が入りますので、法務局に出向いて書類を訂正する必要があります。
本店となる場所の管轄法務局に、登記申請をします。
登記申請をした日が会社の設立日となりますので、日付にこだわりがある場合にはその日に提出するようにしましょう。
登記が完了したら、法務局で「登記事項証明書」を取得します。これは「登記簿謄本」と呼ばれるもので、登記した内容を法務局が証明してくれるものです。
申請する人の住所、氏名、会社の商号、本店所在地などを記入寿司、600円の印紙を貼付して申請します。
株式会社の設立はほとんどの方が初めての経験ということもあり、疑問点や不明点が多くとまどうことが多いようです。
そこでここでは、株式会社の設立に関するよくあるQ&Aをご紹介します。
会社設立手続きは煩雑な手続きが多いですし、書類に不備があるとその都度法務局に出向く必要があります。設立前に税理士に相談すれば、司法書士や弁護士などと連携し、定款や議事録などの書類の作成などについてアドバイスをもらうことができます。
また、会社設立後には税務署への届出が必要となりますので、会社設立前から税理士に相談すれば、税金に関する相談のほか、税務署などに提出する申告書、申請書の作成や提出についても、あわせて依頼することができます。
① 設立段階からの節税アドバイスを受けることができる
設立時だからこそ可能な節税対策や、税務面からみてメリットのある資本金の額や決算時期、事業目的、役員の構成等についてアドバイスを受けることができます。
そして、設立後の運営をスムーズに進めていくためのアドバイスなども受けることができます。
② 本業に専念できる
創業期は次から次へと対応すべき業務や手続きが発生する大変な時期です。
煩雑な設立手続きを専門家に依頼することで、時間を大幅に節約することが可能となります。
③ 融資・資金調達サポート
会社設立サポートに力を入れている税理士は、創業助成金や各種補助金の申請、資金調達や融資を引き出すための支援も積極的に行っています。
各種助成金は、申請のタイミングも重要なので、後々後悔することがないよう、早めに相談しましょう。
④ 経理業務・記帳指導
会社設立後は、記帳や、決算処理、税務申告書作成や提出といった業務が必要になります。
税理士に相談すれば、簿記の専門知識が不要な会計システムの指導を受けることができ、節税対策や税務調査対策など、税務・会計・経営に関する疑問や悩みについて相談することができます。
業種によっては、許認可が必要な業種もあります。
許認可制度とは、国などが衛生面や技術面で一定水準を保つために、資格制限を行っている制度をいいます。
旅行代理店を開業するためには、旅行業法に基づいて都道府県知事の登録を受けなければならず、人材派遣業の会社を設立するためには、労働者派遣事業の認可の他、事業に使用しうる面積が20㎡以上の事業所の確保なども必要になります。また、食品を販売する場合には、食品の種類に応じた保健所の営業許可が必要になります。
行政官庁の許認可や免許を得なければならない事業は、実にたくさんあります。うっかり許認可を取得しないで事業を始めてしまうと、後から営業停止処分を受けてしまうこともありますので、しっかり調べておきましょう。
許認可は自分で手続きすることもできますが、複雑な許可や免許取得の場合には、行政書士に任せた方がスムーズです。
なお、許認可や免許は、申請すればすぐに取得できるわけではありません。
場合によっては、申請後書類審査と実地調査が必要になることもあり、申請から許可まで1カ月~3カ月かかることもあります。
正式な許可証が届くまでは営業を始めることができないので、早めに準備しておきましょう。
保健所 | 届出 | 理容業・美容業・クリーニング店など |
許可 | 食品製造・食品販売・飲食業・ドラッグストアなど | |
都道府県庁 | 登録 | 旅行業・ペットショップなど |
許可 | 建設業・介護事業など | |
免許 | 不動産業など | |
警察署 | 許可 | リサイクルショップ・アンティークショップ、中古車販売・金券ショップ・質屋・ゲームセンターなど |
認定 | 警備業 | |
都道府県労働局 | 許可 | 人材派遣業など |
税務署 | 免許 | 酒屋など |
銀行が中小企業への融資審査を行う時には、決算書による格付けが必要です。
そのため経営実績のない起業したばかりの企業では、民間の金融機関から借入するのは困難です。
しかし、そんな経営実績のない中小企業でも利用できるのが、「創業資金融資制度」です。
起業時に活用したい「創業資金融資制度」
「創業資金融資制度」としては、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「新規開業資金」、都道府県や市区町村などの自治体の「創業融資制度」などがあります。
これらの創業融資は、実績がなくてもお金を借りられるため、ぜひ活用したい制度です。
freee創業融資 創業融資をお考えの方は、「freee創業融資」がおすすめです。 「freee創業融資」は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を申請する際に必要な計画書類などを自動で出力できるうえに、資金繰りシミュレーションを使って最適な融資額を提案してくれます。 希望者には作成した事業計画書をもとに、税理士による面談を無料で受けることができます。また、融資手続きの申請サポートを依頼でき、その際は融資が成功した場合のみ成功報酬が発生するので、失敗してしまった場合でもリスクがなく安心して依頼できます。(現在、専門家によるサポートは事業所在地が東京の方限定) |
補助金や助成金の確認
管轄する役所や必要な手続きは異なるが、どちらも返済する必要のないお金です。
補助金・助成金は、必要となる書類や条件が厳しいうえに、ほとんどのケースで「後払い」で、すぐにもらえるお金というわけではありませんが、何と言っても「返済不要である」という点が魅力です。
「自社に当てはまる補助金や助成金があるのに、活用できなかった」と、後から後悔をすることがないよう、設立前から活用できる補助金・助成金がないか、税理士や社労士に相談するのがおすすめです。
会社を設立すると、期間を区切っていくら儲かったのか、資本金がどれくらい増えたのかなどを計算しなければなりません。これらの作業を「決算」といい、区切った期間を「事業年度」といいます。
決算から2か月後には、税務署に税金の申告をしなければならないので、登記が終わってからすぐに決算が来ないように気をつけましょう。
たとえば、6月決算の会社を6月10日に設立してしまうと、20日後には「決算→申告」という事態になってしまうからです。
また資本金1,000万円未満の会社であれば、最初の2年間は消費税の免税業者となることができます。そこで、消費税メリットを最大限生かせるように、設立の日から数えてできるだけ長く12か月後が決算期になるように検討します。
ただし、設立1年目から売り上げがみこめる場合には、設立日から7か月目に決算が来るように設定します。
決算期の設定は、個々の状況によって異なりますので、ぜひ早めに税理士に相談することをおすすめします。
会社を設立した後も、実にさまざまな手続きが必要です。
税務署には法人税や消費税など国に治める税金に関する書類を提出しなければなりません。また、自治体には事業を開始したことを証明する届出が必要であり、従業員を雇えば、労災の手続きも必要になります。
各種書類の届け出については、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
株式会社を設立するためには、社名、住所、会社の代表印の作成や個人の印鑑証明書の取得など、さまざまな手続きが必要です。また、定款の作成・認証、資本金の振り込みなども必要になります。
そこでおすすめしたいのが、「freee会社設立」です。
「freee会社設立」」を使えば、会社設立に必要な書類を一括で作成することができ、あわせて法人口座やカードの申請等も可能です。また、設立後に必要な備品等を安価に購入できる優待サービスもございます。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士を決める際に参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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