公開日:2018年11月09日
最終更新日:2022年07月12日
セルフメディケーション税制とは、一定のスイッチOTC医薬品などを購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができる制度です。
セルフメディケーション税制の適用を受けるためには一定の要件が必要ですが、要件を満たせば自分が使用した特定一般用医薬品だけでなく「生計を一にする配偶者やその親族」が使用した医薬品についても利用することができます。
セルフメディケーション税制とは、2017年(平成29年)から始まった新しい医療費控除の特例です。
2017年(平成29年)1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの間に、「特定一般用医薬品等購入費」を支払った際に、一定の金額の所得控除を医療費控除として受けることができます。
セルフメディケーション税制は、創設当初は平成29年(2017年)1月から令和3年(2021年)12月までの時限措置として創設されましたが、3年間の利用者数は延べ8万人にとどまることから、令和3年(2021年)に制度が見直され、適用期限が5年間延長されることになりました。あわせて、医薬品範囲が見直され、確定申告手続きが簡素化されています。 |
特定一般用医薬品等購入費とは、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品や一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)をドラッグストアなどで購入した際の購入費用のことをいいます(※後述)。
ちなみに、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること」と定義されていて、セルフメディケーションを推進していくことは、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを推進し、医療費の適正化に資することになります。
自分が使用した特定一般用医薬品だけでなく「生計を一にする配偶者やその他親族」が使用した分の医薬品も含みます。
セルフメディケーション税制は、「自発的に健康管理や疾病予防について一定の取り組みを行うようにすること」を目的としています。
したがって、セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、健康診断や予防接種など健康の維持増進や疾病予防に一定の取り組みを行っている必要があり、具体的には下記の要件のいずれかを満たしている必要があります(すべてを満たしている必要はありません)。
①加入している健康保険の健康診断を受けている ②予防接種(定期接種またはインフルエンザワクチン)を受けている ③特定健康診査(メタボ検診)まやは特定保健指導 ④市町村が実施するがん検診を受けている ※市町村が自治体の予算で住民サービスとして実施する健康診査は対象ではありません |
「特定一般用医薬品」とは以下の2種類に該当するものです。
①医師によって処方される医薬品
②ドラッグストアで購入できる「スイッチOTC医薬品(OTC医薬品に転用された医薬品)」OTCとは「Over The Counter」の略で、「カウンター越しに薬を販売」という意味です。つまり、医師の処方箋を必要とせずにドラッグストアなどで購入できる、いわゆる市販薬のことをいいます。
なお、令和4年1月1日からは、スイッチOTC以外にも対象となる商品が追加されました。
また、セルフメディケーション税制の対象医薬品の品目については、下記で公表されています。
参照:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」
セルフメディケーション税制の対象となる商品には、購入した際のレシートにセルフメディケーション税制の対象商品であることを示す以下のようなマークが掲載されています。
所得から控除できる額は、実際に支払った特定一般用医薬品購入費の合計額から、1万2,000円を差し引いた金額です。
この金額には、保険金などで補てんされた金額は含まれません。
なお、控除されるのは、最高8万8,000円までです。
特定一般用医薬品購入費の合計額が20万円の場合には、20万円-1万2,000円の18万8,000円が控除額になるのではなく、控除額は限度額の8万8,000円までです。
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例なので、従来の医療費控除に加えてセルフメディケーション税制を使うことはできず、選択適用(よりトクする方を選ぶ)となります。
つまり、セルフメディケーション税制を利用する場合には、従来の医療費控除は使えず、従来の医療費控除を使う時には、セルフメディケーション税制を利用することはできません。
従来の医療費控除だと、原則10万円を超えなければ適用されませんでしたが、セルフメディケーション税制の導入によって、対象者の幅が広がったことになります。
セルフメディケーション税制を受けるためには、確定申告が必要です。また、健康診断などを受診したことを示す証明書類、購入したセルフメディケーション税制の対象医薬品のレシートなどが必要となります。
証明書類は、①氏名、②受診年月日、③健康診断などを行った保険者、事業者、自治体の名称、医療期間または医師名が記入された領収書、結果通知表、予防接種済証などです。
証明依頼の書面は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
参照:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について|証明依頼書」
確定申告の際には、セルフメディケーション税制の適用に関する事項を記載した確定申告書を所轄税務署長に提出する必要があります。
また、以下の2点の書類が必要です。
①セルフメディケーション税制の明細書
②要件を満たしていることを証明する書類(健康の維持増進や疾病予防に一定の取り組みを行ったこと)
確定申告の際には、「セルフメディケーション税制の明細書」を貼付する必要があります。
明細書の記載事項につては、下記の例を参考にして下さい。
セルフメディケーション税制を受けるための要件は、「健康診断や予防接種など健康の維持増進や疾病予防に一定の取り組みを行っていること」なので、その取り組みを行ったことを証明できる書類(健康診断書などの控え)の添付が必要です。
具体的には、以下のような書類が必要です。
結果通知表を貼付する場合には、健診結果部分を黒塗りにするか、または切取りなどをした写しなどでも構いません。
・インフルエンザの予防接種又は定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)の領収書又は予防接種済証 ・市区町村のがん検診の領収書又は結果通知表 ・職場で受けた定期健康診断の結果通知表 ・特定健康診査の領収書又は結果通知表 ・人間ドックやがん検診をはじめとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知表 |
健康検査などの健康の保持推進および疾病の予防への取り組みをおこなったことを明らかにする書類については、令和3年(2021年)の制度見直しにより、確定申告書への添付または確定申告書の提出の際の提示が不要となりました。
ただし、税務署長は確定申告期限等から5年間、取り組み関係書類の提示または提出を求めることができるため、取り組み関係書類について提示または提出が求められた時には、すぐに対応できるようにしておきましょう。 |
特定一般医薬品等購入費を証明できる書類は、領収書でもレシートでも問題ありませんが、いずれの場合も次の項目が記載されていることが必要です。
・商品名
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確定申告の際の煩雑な手続きがセルフメディケーション税制の利用を妨げていると考えることから、健康の保持増進及び疾病の予防への取組みを行っていることを証明する書類について、確定申告書を提出する際の提示は不要となりました(令和4年・2022年以降の確定申告から適用)
また、e-Taxの場合にもレシート管理アプリとの連携によって医薬品名の入力を省略するなど入力手続きの簡素化を図る対策について厚生労働省で検討されています。
さらに、令和3年の制度見直しにおいては、対象となる医薬品の具体的な範囲についても、今後専門的な知見を活用して対象医薬品の範囲を拡大することが示されました。
以上、「セルフメディケーション税制」についてご紹介しました。セルフメディケーション税制は医療費控除の特例なので、医療費控除とセルフメディケーション税制を同時に使うことはできず、どちらを選択するかは自身で判断することになります。
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