「格付け」とは|区分・内容・決められ方

公開日:2018年11月07日
最終更新日:2022年04月11日

この記事のポイント

  • 格付けとは、銀行が融資を行うか否か判断する際の基準のこと。
  • 格付けが上がれば融資は受けやすくなり、融資条件も良くなる。
  • 格付けは、決算書の分析結果や経営者の姿勢や経営方針の評価で決められる。

 

格付けとは、銀行が融資を行うか否か判断する際の基準のことをいいます。

銀行融資は、この「格付け」によってすべてが決まると言っても過言ではありません。銀行が企業に融資をするかしないか、融資をするとしたらどのような条件で融資をするかなどの取引方針は、この格付けによって決められます。

したがって、この格付けが下がれば融資条件が悪くなったり融資が出なくなったりすることもあります。また、格付けが上がれば融資は受けやすくなり、融資条件も良くなります。

ここでは、この格付けの意味と内容、格付けを良くするための工夫などについてご紹介します。

銀行融資の決め手「格付け」とは

銀行は、企業から融資の申し込みがあった場合に「その企業に融資を行うか否か」「融資を行う場合に金利はどう設定するか」などを判断する必要があります。
そして、その判断基準となっているのが、企業に対する「格付け」です。
格付けは、決算書の分析結果に基づく評価(定量的評価)や、経営者の姿勢や経営方針に関する評価(定性的評価)の2種類の評価で決められます。

(1)格付けは一般的には11段階に区分される

銀行の格付け基準は非公開ですが、一般的には次の11種類に振り分けられることが多いと言われています。
①から⑥までは、業績のよい企業と判断され、金利条件も低金利に設定されます。

債務者区分 格付け 内容 金利条件 融資条件
正常先 ①リスクなし 財務内容が優れていて、債務履行の確実性は極めて高い水準である。 低金利 積極的
②ほとんどリスクなし 財務内容は良好で、債務履行の確実性は高い水準にある。 段階的に厳しくなる 段階的に厳しくなる
③リスク些少 財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性は十分ある。
④リスクはあるが良好水準 財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性もある。
⑤リスクはあるが平均水準 債務履行の確実性は当面問題ない。
⑥リスクはやや高いが許容範囲 債務履行の確実性は、現在において問題はない。
要注意先 ⑦リスクが高く要管理先 業況が低調または不安定で、財務内容に問題がある。 高金利 消極的・
もしくは回収
要管理先 ⑧警戒先 財務内容に重要な問題がある。 融資対象外
破綻懸念先 ⑨延滞先 経営難の状態にある。
実質破綻先 ⑩実質破綻先 深刻な経営難の状態にあり、実質的な破綻状態である。
破綻先 ⑪事故先 法的・形式的な破綻の事実が発生している。

 
そして、それぞれの格付けは以下のように解釈されています。

①リスクなし
財務内容が優れていて、債務履行の確実性は極めて高い水準である。

②ほとんどリスクなし
財務内容は良好で、債務履行の確実性は高い水準にある。
ただし事業環境などが大きく変化した場合には、債務履行の確実性が低下するリスクも若干ある。

③リスク些少
財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性は十分ある。
ただし事業環境が変化した場合には、債務履行の確実性が低下する可能性がある。

④リスクはあるが良好水準
財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性もある。
ただし事業環境などは変化した場合には、その影響を受けて、債務履行の確実性が低下する懸念がやや大きい。

⑤リスクはあるが平均水準
債務履行の確実性は当面問題ない。
ただし事業環境などは変化した場合には、その影響を受けて債務履行能力が損なわれる要素が見受けられる。

⑥リスクはやや高いが許容範囲
債務履行の確実性は、現在において問題はない。
ただし業況や財務内容に不安な要素もあり、事業環境などが変化した場合に債務履行能力が損なわれる可能性があり、業況推移に注意する必要がある。

⑦リスクが高く要管理先
業況が低調または不安定で、財務内容に問題がある。
債務の履行に支障をきたすリスクが大きい。

⑧警戒先
財務内容に重要な問題があり、債務の履行状況に問題が発生しているかそれに近い状態にある。
今後、経営破綻に陥る可能性がある。

⑨延滞先
経営難の状態にある。経営改善計画等の進捗も芳しくない。
今後、経営破綻に陥る可能性が高い。

⑩実質破綻先
融資の返済が長期にわたって滞っていて、再建の見込みが薄い。
深刻な経営難の状態にあり、実質的な破綻状態に陥っている。

⑪事故先
法的・形式的な破綻の事実が発生している。

(2)格付けは「債務者区分」をもとに作成される

「格付け」は、金融庁のマニュアルによって決められた「債務者区分」をもとにして、銀行が作成しています。融資を受けている企業は、銀行からいずれかの債務者区分をつけられていて、この債務者区分が銀行から融資を受けやすいかどうかの大きなポイントとなっています。

債務者区分は、①正常先、②要注意先、③要管理先、④破綻懸念先、⑤実質破綻先破綻先、⑥破綻先の6つに分類されます。
※下記金融庁資料では、債務者区分は5つに区分されていますが、「要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい」と記載されていますので、ここでは要管理先を含めた6区分として説明します。

参照:金融庁「債務者区分」」

①正常先
正常先とは、業況が良好であり、かつ財務内容にも特段の問題がないと認められる企業です。
前述した格付けの①~⑥に該当するケースです。
業況が良好で、財務内容に特段の問題もなく、返済に延滞もない企業のことです。
金利条件も低金利で、無担保で融資が受けられる場合もあります。銀行も融資に積極的な姿勢を見せます。

②要注意先
要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある企業、業績不調で財務内容に問題がある、もしくは返済に延滞が生じている企業のことをいいます。
業況が定常で、財務内容に問題があるなどの企業です。

③要管理先
要管理先は、要注意先のなかでも、特に融資の全部または一部が要管理債権である企業です。
要管理債権とは、3カ月以上の延滞となっている融資、もしくは貸出条件が緩和されている債権のことをいいます。

④破綻懸念先
現状、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、経営改善計画などの進捗状況が芳しくない企業のことをいいます
既存融資の返済に非常に長い時間を要するなど、今後経営破綻に陥る可能性が大きい債務者です。

⑤実質破綻先
融資の返済が長期にわたって滞っていて、深刻な経営難の状態にある企業です。
再建の見込みが薄く、実質的に経営破綻に陥っている債務者のことをいいます。

⑥破綻先
法的・形式的な経営破綻の事実が発生している企業です。
民事再生法や会社更生法が適用された企業、破産を申し立てた企業、手形の不渡りなどによって取引停止処分となっている企業などが該当します。

格付けと債務者区分を上げるためには

債務者区分が正常先であれば格付けが上がり、その結果、銀行からの融資は受けやすく融資条件(金利など)も低金利になる可能性が高くなります。
債務者区分を上げるためには、まず自分の会社が銀行からどのような債務者区分に区分されているかを知る必要があります。

とは言うものの、銀行は格付けや債務者区分を言いたがらない傾向があります。
正常先で問題のない企業であればいいのですが、要注意先や要管理先の企業の場合、その事実を告げると「なぜ、要注意先・要管理先に区分されたのか」といったクレームを受ける可能性もあるからです。
したがって、債務者区分を質問する際には「債務者区分を把握して、その区分を良くするための経営努力をしたいので、教えてほしい」というような聞き方をするようにしましょう。

(1)自己資本比率を増やす

格付けを上げるためには、まず格付けのもとである債務者区分を上げなければなりません。
そのために有効なのが「自己資本比率」をアップするという方法です。
自己資本比率とは、総資本のなかで自己資本(自己資金など)が占めている割合のことです。

自己資本比率(%) = 自己資本 / 総資本 × 100

自己資本比率は、会社として借金に頼り過ぎていないかを見る指標で、高ければ「安全性が高い」、低ければ「安全性が低い」と判断されます。
つまり、他人資本(外部から調達した借入金)より自己資本が多ければ多いほど、資金繰りに余裕がある会社であると評価されます。

自己資本比率は業種にもよりますが、一般的には40%以上なら安全性に問題がなく、30%未満であると注意が必要なレベルと判断されます。

(2)決算書は税理士に作成してもらう

融資を受ける際には、決算書の提出を要求されます。この時には、電子申告によって税務署が受け付けたメール詳細も要求されます。それらの資料によって、銀行は「税務署に申告した決算書である」と確認しているのです。
さらに法人税確定申告書においては、税理士の署名押印欄もチェックします。ここに顧問税理士等の名前がないと、税理士の作成した決算書と見られないため、決算書の信ぴょう性が一気に下がってしまいます。
結果的に融資審査が通りにくくなってしまうので、決算書は税理士に作成してもらい署名押印してもらいましょう。
なかには、決算書を作成せず確定申告を行っていない企業もありますが、そのような企業は絶対に融資を受けることはできません。

(3)試算表は日頃から作成しておく

試算表とは、1年の損益の途中経過を表した資料です。
試算表は、決算月から3カ月以上経過している時に、最新状況を知るために提出が求められることがあります。
試算表は、銀行から提出を求められてから、あわてて作成する企業がありますが、普段から損益を把握するためにも試算表の作成は大変重要です。
したがって試算表は、日頃から経営管理のために毎月作成し、銀行から提出を求められたら、すぐに最新の試算表を提出できるように準備しておきましょう。

とくに、「前期の決算は赤字でも、今期は黒字に回復している」という場合には、試算表を提出して積極的にアピールをしたいものです。
損益計算書が赤字だったり、貸借対照表が債務超過だったりすると、債務区分が下がりますが、これらが一過性のものであり、次期決算では赤字が解消されることが確実な場合でれば、債務者区分が上がる可能性は十分にあります。
したがって、赤字や債務超過が一過性のものである場合には「この赤字や債務超過は一過性のものである」ということを説明できるように準備しておくことも効果的です。

(4)資金繰り表は、経常収支をプラスにする

月次資金繰り表とは、6カ月~1年先までの毎月の資金繰り予定をまとめたものです。まずは事業計画書を作成して、それを1カ月ごとの損益計画に区分して、入金予想、出金予想を立てます。
資金繰り表は、大きく経常収支、設備収支、財務収支に分けることができます。
経常収支とは、「事業自体でどのような資金繰りとなったか」をあらわすもので、設備収支とは「設備投資や設備売却によって、現金がどう動いたか」をあらわすものです。そして財務収支とは「資金調達と融資の返済による資金の動き」をあらわします。

そして、この時大切なのは経常収支をプラスにして、経常収支のプラスで財務収支のマイナスを補てんしているという内容であることです。経常収支がマイナスでそれを財務収支のプラスで補っているような資金繰りでは、経常収支の赤字を銀行からの借り入れで補てんしていることになってしまうからです。

資金繰り表は、自社の資金の動きを把握し対策を講じるためにも、大変重要な資料です。したがって、試算表と同様に資金繰り表についても、日頃から作成して管理しておきたいものです。

(5)決算書の内容が悪い企業は「事業計画書」を作成する

事業計画書とは、今後1年の損益や5年~10年の損益はどうしていくのか、そしてその計画を実現するためには、どのようなアクションを起こしていくのかを示した資料です。
決算書の内容が悪い企業では、それを挽回するために事業計画書を作成してアピールしたいものです。

事業計画書は何十ページも作成する必要はありませんが、少なくとも以下の項目を含んでいなければなりません。

(1)経営(ビジョン):事業のあるべき姿
(2)商品・サービスの概要:提供する価値
(3)販売計画:手段とコスト構造
(4)開発計画:自社の技術レベルの検討
(5)人員計画:人を活かすオペレーション
(6)収益計画:事業の儲かるしくみ
(7)アクションプラン:短期計画と中長期計画

上記のうち、収益計画(年次損益計画、月次損益計画)とアクションプランだけの提出でも構いません。全く事業計画書を作成しない企業より、ずっと評価はよくなります。
事業計画書は、どのように経営し、どのように利益をあげていくのか、その道筋を銀行に伝えることができるので、銀行から提出を求められなくても積極的に提出しましょう。

(6)事業主の借金状況やカードの滞納を改善する

銀行は、会社の業況だけでなく事業主の借金状況やカードの滞納なども見ています。
銀行の引き落とし口座がたまたま残高不足になっていただけとしても、そのような情報はすべてCIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)のデータに残されています。
銀行は、事業主本人の許可を得たうえで、このCICから情報を入手することがありますので、注意しましょう。

まとめ

以上、銀行融資の決め手「格付け」についてご紹介しました。また、銀行からの融資だけでなく、資金調達はさまざまな方法があります。
銀行からの融資を成功させるためには、格付けと債務区分を上げることが大切であり、融資審査の際に税理士に作成してもらった決算書や試算表、資金繰り表を準備し、どのようなアプロ―チをするべきか、しっかり把握しておくことが大切です。
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