公開日:2024年04月16日
最終更新日:2024年04月16日
資金調達というと、以前は銀行や日本政策金融公庫からの融資などが一般的でしたが、最近はクラウドファンディングによって資金調達を行うケースが増えてきました。
また、クラウドファンディングによって資金調達をする側でなく、支援者として金銭を支払うことも増えてきたのではないでしょうか。
この記事では、クラウドファンディングの実施者、支援者の会計処理を、購入型、投資型、寄附型といった類型ごとに解説していきます。
クラウドファンディング実施者の税金と会計処理は、クラウドファンディングの類型によって異なります。
クラウドファンディングの類型としては、大きく①購入型、②寄附型、③株式投資型、④ファンド型に分類されます。
株式投資型は、リターンとして提供するものが株式や新株予約権などであることから、会社法や金融商品取引法などの規制を受けます。
また、ファンド型は、資金を集めて投資を行いそこから生まれた収益を支援者に分配するというスキームであることから有価証券とみなされ、金融商品取引法などによる規制を受けます。
購入型クラウドファンディングとは、これから開発予定の商品やサービスをリターンとして提供する類型のクラウドファンディングです。
実施者にとっては資金を獲得してから新商品やサービスの開発をスタートできるというメリットがあります。
実施者が法人の場合
購入型クラウドファンディングは、市場に出る前に予約販売できる意味合いを持つことから、実際は売買契約に基づいて行われる商取引と同じものと考えられます。
したがって、クラウドファンディング実施者が法人である場合には通常の売買取引と同様の会計処理を行い、実施者が受け取った支援金は、益金となり法人税の課税対象となります。
ただし購入型クラウドファンディングは、代金が支払われるタイミングが通常の売買取引と異なります。
クラウドファンディングは、商品の完成前に代金が支払われることから、予約販売に該当するものとして、支援金を受け取った時点では「前受金」として処理をして、リターンとして商品やサービスの提供が終わった時点で「売上」に計上することになります。
支援金300万円が集まり、事業者への手数料である60万円を差し引いた残りの金額は振り込まれた。
新サービスを開発し、支援者にリターンとして提供した。
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出展:クラウドファンディングの実務(第一法規)P129
なお、リターンの時価が低すぎる場合には、時価と支援金の差額は支援者から寄付を受けたものとみなされ、受増益として法人税の対象となります。
実施者が個人の場合
実施者が個人の場合には、プロジェクトの内容が事業から生じる売上金額とみなされる場合には「事業所得」となり、支援者から集まった支援金の総額が総収入金額となり、製作費や仕入原価、クラウドファンディング事業者に支払う手数料などは必要経費になります。
プロジェクトの内容が本来の事業とは関係ない場合には、「雑所得」となります。
寄附型クラウドファンディングの支援者は、見返りを求めて支援しているものではなく善意の気持ちを表すものであることから、寄附に関する税制が適用されます。
実施者が法人の場合
クラウドファンディングの実施者が法人の場合には、受贈益となり法人税の課税対象となります。
ただし、消費税の課税対象にはなりません。なぜなら、寄附型は支援金に対する対価としてのリターンが必要ないことから、購入型とは違って対価性が認められないからです。
実施者が個人の場合
実施者が個人の場合には、支援者が法人であれば「一時所得」として課税され、支援者が個人であれば、贈与税が課税されます。ただし、贈与税には110万円の基礎控除があることから、贈与税は1人の人がもらった財産の合計額から、この110万円を差し引いた残りの金額に課税されます。
したがって1人のクラウドファンディング実施者が1年間に行ったクラウドファンディングで、個人の支援者から受けた支援金の合計額が110万円以下であれば、贈与税の申告も納税も不要となります。
また、公益事業用財産には贈与税は課税されないため、社会福祉事業や育英事業、慈善事業などの公益を目的とする事業を行う実施者で、かつ一定の要件を満たす人がクラウドファンディングの実施者であり、さらに支援金を公益目的の事業に使うことが確実である場合には、贈与税はかかりません。
株式投資型クラウドファンディングとは、クラウドファンディング実施者である未上場の企業が、新株または新株予約権を発行して、投資家から支援金という名目で出資を募るクラウドファンディングです。
支援金には税金がかからないので、集めた資金を元手に新規事業等に活用することができます。
支援金は通常の出資と同じような価値を持ち、受け取った支援金は資本金または資本準備金として計上します
また、クラウドファンディング事業者への手数料は、株式交付費または新株予約権の発行に関する費用として、営業外費用の部に計上します。
その他、審査料などの手数料が発生することがありますが、手数料等は株式交付に関する費用ではないので、販売費及び一般管理費として費用計上します。
株式投資型クラウドファンディングで株主を募集した。その結果、支援金1,000万円が振り込まれた。
支援金の2分の1の金額を資本金に振り替えた。
クラウドファンディング事業者に、審査料10万円と募集取扱手数料200万円を支払った。
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出展:クラウドファンディングの実務(第一法規)P166
なお、法人税は資本金の額によって税務上の取り扱いが変わります。
払い込まれた支援金の一部は資本金ではなく資本準備金に組み入れた方が、税制上のメリットを受けられる可能性がありますので、増資により納税額にどのような影響があるのかは、十分に検討する必要があります。
ファンド型クラウドファンディングとは、少量の資金を多数の投資家から集め、まとまった資金を必要とする法人に貸し付けるしくみの金融サービスです。
ファンド型クラウドファンディングは、融資型と事業投資型の2つに区分され、以下のように違いがあります。
投資返還の期限 | 分配金の業績連動 | 経営への関与 | |
融資型 | あり | なし | なし |
事業投資型 | あり | あり | なし |
融資型の場合は、実施者は支援者ではなく、匿名組合の営業者と金銭消費貸借契約を交わし、通常の融資と同じように借入金として計上します。
返済期限が決算の翌日から1年以内に到来する場合には流動負債、1年を超える場合には固定負債となります。
ファンド型クラウドファンディングで3,000万円の資金調達を行い、500万円の手数料を差し引いた2,500万円が振り込まれた。
利息300万円を、匿名組合に支払った。
返還期日(契約期間満了)となり、借入金を返済した。
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事業投資型の場合は、調達した資金は実施者の資本ではなく、匿名組合の預り金となります。
1,000万円の目標額を達成したため、クラウドファンディングの事業者から、手数料100万円を差し引いた900万円が振り込まれた。
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クラウドファンディング支援者の会計処理も、クラウドファンディングの類型によって異なります。
購入型クラウドファンディングの場合は、適切な勘定科目で販管費に計上します。
株式投資型クラウドファンディングの場合には、支援者が法人の場合には市場性のないその他有価証券として処理をします。
購入型クラウドファンディングで支出した支援金は、リターンとして受取る商品やサービスの対価として支払ったものです。
原価は売上原価に計上しますし、通常の営業活動の一環として使用する場合には、適切な勘定科目を使って販売費及び一般管理費に計上します。
お付き合いの意味で支援したもので、事業と関連性が認められない場合には寄附金として処理をします。
リターンの品物が10万円以上で、かつ使用可能期間が1年以上である場合には、原則として耐用年数に応じて減価償却をします。
中小企業者等である場合には、10万円以上30万円未満であれば、その年に一括で損金に算入できる特例があります。
寄附型クラウドファンディングの場合には、寄附金課税が適用されます。
実施者が国や地方公共団体の場合には、支払った支援金全額が損金に算入されます。また、支援金が指定寄付金(公益法人等に対する寄附で、一定の要件を満たすと財務大臣が指定したもの)に該当するときも、全額を損金に算入することができます。
実施者が、特定公益増進法人に該当するときは、損金算入に制限があります。
特定公益増進法人とは、公共法人や公益社団法人、社会福祉法人などで、この場合には、一般の損金算入限度額とは別枠で損金算入することになります。
また、実施者が認定NPO法人等である場合にも、一般の損金算入限度額とは別枠で損金算入します。
株式投資型クラウドファンディングで、支援者が株式を取得したときは、市場性のないその他有価証券を取得したことになり、貸借対照表の資産の部に計上します。
支援者である法人が配当金を受け取ったときは、受取配当金として営業外収入として計上します。
ただし、支援者が内国法人でかつ実施者も内国法人の場合には、受け取った配当等の金額のうち、法人税法上益金に算入されない部分があります。
配当を支払う法人との関係 | 株式保有割合 | 益金算入されない金額 |
①完全子法人株式等 | 100% | 受取配当等の額×100% |
②関連法人株式等 | 3分の1超100%未満 | 受取配当等の額-その配当等にかかる利子の額に相当する金額 |
③非支配目的株式等 | 5%以下 | 受取配当等の額×20% |
上記①~③のいずれにも該当しない場合 | 5%超3分の1以下 | 受取配当等の額×50% |
ファンド型クラウドファンディングに、個人が投資しただけの場合には、課税されることがないので確定申告は不要です。
ただし、融資型で分配金を受けとる場合には「雑所得」として課税されます。また、事業投資型で受け取る分配金の累計額が出資額を超えた場合にも、同じく雑所得として課税されます。
クラウドファンディングによる雑所得の金額が48万円以下で、他に所得がない人や、1カ所からのみ給与をもらっている人で、クラウドファンディングによる雑所得の金額が20万円以下である場合は、確定申告の必要はありません。
クラウドファンディングを実施した場合や支援した場合の会計処理や税金は、クラウドファンディングの類型によって異なります。
購入型クラウドファンディングの場合には、一般的な売買取引と同じように処理します。
投資型クラウドファンディングの場合には、支援金を受けとったら、資本金または資本準備金として計上します。
ファンド型クラウドファンディングは、融資型と事業投資型の2つに区分され、それぞれ処理が異なります。
クラウドファンディングに関する会計・税務については、顧問税理士等に早めに相談することをおすすめします。
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・クラウドファンディングで支援した時の帳簿の付け方について 「イベントの支援クラウドファンディング(3万円)をしました。…」 |
・扶養について 「扶養している大学院生の息子(24歳 県外別居)が、クラウドファンディングで社会人サークルの活動資金を募る事になりました。…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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