公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年06月24日
ベンチャーキャピタル(venture capital)とは、ベンチャー企業に出資を行い、その投資先が株式公開(または事業売却)することによって、キャピタルゲイン(資産を売却することによって得られる売買差益)を得ることを目的とした会社です。
最近は、このベンチャーキャピタルを利用して株式公開するベンチャー企業が増えていて、起業家たちの間でも注目が高まっています。
しかし、ひとくちにベンチャーキャピタルといっても、政府系ベンチャーキャピタルや銀行系ベンチャーキャピタルなど、さまざまな種類があります。
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業の株式などを引き受けるなどの方法で出資を行い、その投資先が後々株式公開した時に、キャピタルゲイン(株式を売却することによって得られる売買差益)を得る会社です。
「venture capital」を略して「VC」と呼ばれることもあります。
最近は、会社設立から10年ほどの会社でも株式公開を実現しています。
株式公開には、ビジネスチャンスの拡大、会社および従業員の社会的信用力の増大など、さまざまなメリットがあります。しかし、創業間もない会社が銀行から借入れたり、経営者が持株比率にこだわったりしていれば、このようなスピード感を持った株式公開は不可能と言わざるを得ません。
しかし、ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させれば、会社の成長スピードを格段に加速させ、早期の株式公開も十分可能となるのです。
ベンチャーキャピタルというと「資金を出してくれるところ」というイメージがあることから、銀行とそれほど変わらないのではないかと思う方もいると思います。
しかし、実際はベンチャーキャピタルと銀行は、全くビジネスモデルが違います。
まず、銀行からのお金は「融資」であり、将来返済しなければなりません。
これに対して、ベンチャーキャピタルからのお金は「出資」であり、将来返済する義務はありません。
また、銀行は融資したお金を返済する際の金利を得ることをビジネスモデルとしていますが、ベンチャーキャピタルは、株式公開をした時のキャピタルゲインで回収するというビジネスモデルで成り立っています。
また、お金を出す際の審査でも、銀行がその会社の返済能力などの安定感に着目するのに対して、ベンチャーキャピタルが着目するのは、その会社の将来性などです。
ベンチャーキャピタルと銀行の違い
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ベンチャーキャピタルは、将来株式公開できるような有望な会社に出資をし、その会社が株式公開後に株式を市場で売却し、キャピタルゲインで回収するというビジネスモデルで成り立っています。
キャピタルゲインとは、株式や債券を売却することによって得られる売買差益のことを言います。
たとえば、20万円で購入した株式の価格が高騰し、40万円になったときに売却した場合、税金や手数料を除いた差額の20万円の利益を得ることができます。
これがキャピタルゲインと呼ばれるものです。
このように、ベンチャーキャピタルは、良い会社の株式を安く買って高く売ることを目的としています。
ベンチャーキャピタルは、出資するか否かを判断する際に、起業家の資質を最も重視すると言われています。
ではベンチャーキャピタルは、起業家にどのような資質を求めているのでしょうか。
元JAFCO社長の今原禎治氏は、成功する起業家の資質として「強い体力」「過剰なぐらいの自信」「持続する能力」「問題解決意欲」「リスクを恐れない」「失敗を活かす能力」「批判を受け入れる姿勢」「専門家の活用」を挙げています。
また、Uberに出資した投資家ジェイソン・カラカニス(Jason Calacanis)は、「小さく考えていれば人間が小さくなる。私はスタートアップ創業者には小さい成功を狙わず、ビッグな目標を負ってもらいたいと常に考えている。」と語っています。
これらのことから踏まえると、ベンチャーキャピタルが求めている起業家は、強い意思と目標を持ち、強烈な個性を持ち、実行力と反省できる能力を兼ね備えた人物であるといえることができるでしょう。
ベンチャーキャピタルは、有望なベンチャー企業を発掘して、割安な株価で出資をし、株を高く売るために出資先が株式公開することを望んでいます。
したがって、株式公開が比較的短期間で可能な事業に出資したいと考えています。つまり、どんなに事業の内容が魅力的であっても、将来株式公開を目的としていない会社は投資対象とはなりません。
ベンチャーキャピタルが出資をする際に重視しているのが、「10倍ルール」です。10倍ルールとは、従来の製品やサービスと比較して、同じコストもしくはそれ以下のコストで10倍以上の価値を提供できるというルールです。10倍以上の価値を提供できるような革新的な技術であれば、ベンチャーキャピタルはリスクをとってでも投資をする可能性があります。
ベンチャーキャピタルとひとくちに言っても、さまざまな種類があり特徴があります。出資を受ける際には、それぞれの特徴を理解したうえで、その特徴に沿って準備を進める必要があります。
政府系ベンチャーキャピタルとは、政府や公的な機関によって運営されているものです。
①東京中小企業投資育成 東京中小企業出資育成は、1986年に民間法人化されたため、現在ではそれほど国の関与はないとされています。 ②産業革新機構 参照:株式会社INCJ |
証券会社系ベンチャーキャピタルとは、証券会社の傘下にあるものをいいます。
創業間もないアーリー・ミドルステージの会社にも積極的に投資する傾向があります。
ジャフコ 野村証券系のベンチャーキャピタルです。 アーリー・ミドルステージへの出資にも力を入れています。 経営や事業拡大にも積極的にコミットする傾向があります。 参照:ジャフコ |
銀行系ベンチャーキャピタルとは、銀行、地銀、信用金庫の傘下にあるものです。銀行からの出向者も多く、やや融資に近い審査体制(安定感の重視)という特徴があります。
①SMBCベンチャーキャピタル ②みずほキャピタル 参照:みずほキャピタル |
事業会社系ベンチャーキャピタルとは、出資を本業としない通常の事業会社の傘下にあるものです。審査機関は、通常1カ月ほどですが、経営体制が未成熟な会社については、投資実行までに1~2年ほどかかるケースもあるようです。
①NTTドコモ・ベンチャーズ NTTドコモの完全子会社です。 メディアコンテンツ、マーケティング・広告など、さまざまな業種に対して積極的に投資しています。 ②TBSイノベーション・パートナーズ ③フジ・スタートアップ・ベンチャーズ |
ベンチャーキャピタルから出資を受けるためには、出資案件の審査・評価を経て、出資条件について交渉し、契約締結へと進むことになります。
出資を受けるためには、当たり前のことですが、ベンチャーキャピタルと接触する必要があります。
ベンチャーキャピタルは絶えず投資先を探していて、新聞、雑誌、ネット記事などを積極的にチェックしています。
また、直接連絡がくることもありますし、さまざまな人脈から紹介を受けることもあります。
たとえば、会計事務所や税理士事務所、法律事務所経由でベンチャーキャピタルの紹介を受けることもあります。
特に、会計事務所や税理士事務所は会社の経理を見ていることから、会社の財政状況を把握しています。資金調達の選択肢のひとつとして、ベンチャーキャピタルの活用を提案してもらうことができます。
接触することができたら、NDA(秘密保持契約書)を締結し、事業計画書や決算書などの必要書類を提出します。
ベンチャーキャピタルはそれらの書類を確認し、経営者自身と面談など行って、出資可能か否かについて、審査・評価を行うことになります。
ベンチャーキャピタルの出資担当者と数回面談を行い、出資について本格的に検討してもらえる段階になったところで、ベンチャーキャピタルによる審査(デューデリジェンス)を受けることになります。
デューデリジェンスでは、出資先の財政状況を調査し出資の可否を決定します。
ベンチャーキャピタルは、投資の可否を決定する際に、監査法人のショートレビューを行う場合があります。ショートレビューでは、将来の株式公開に向けて、会社の決算書についてチェックしたり、社内の管理体制の整備具合を検証したりします。
収益の水増し、費用の過少計上、滞留在庫なども細かくチェックされますので、監査法人の監査を受けることに備えて、早めに税理士に相談しアドバイスを受けることをおすすめします。
審査の結果、ベンチャーキャピタルが出資に前向きになったら、投資額や持株比率、株価などの条件交渉を行います。
出資が決定すると、投資契約書を締結します。
この時、起業家の持ち株比率の低下を招いてしまうことがありますから、それに対応するためにストックオプションの仕組みを活用するなど、十分な戦略を練ってから交渉に挑むようにしましょう。
以上、ベンチャーキャピタルの種類についてご紹介しました。
ご紹介してきたように、ベンチャーキャピタルは個々の会社ごとに方針が違い、起業間もない会社でも積極的に出資を行うベンチャーキャピタルもあれば、事業がある程度軌道に乗った会社を対象とするベンチャーキャピタルなどさまざまです。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるためには、ベンチャーキャピタルの概要をよく理解し、知識を身に着け、税理士などのサポートを受けながら、納得させられるだけの説得力のある事業計画書を作成するようにしましょう。
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