粉飾決算とは?デメリットは?やってしまうとどうなる?

公開日:2019年11月11日
最終更新日:2024年03月01日

この記事のポイント

  • 「粉飾決算」とは、経営成績や財政状態を事実と異なる金額で計上して利益を操作すること。
  • 黒字を赤字に見せかける行為は、「逆粉飾」と呼ばれることもある。
  • 「粉飾決算」は詐欺罪であり、逮捕される可能性がある犯罪行為である。

 

本当は黒字なのに赤字であると申告したり、逆に赤字なのに黒字であると申告したりすることを「粉飾決算」といいます。

しかし、一度このような粉飾をしてしまうと取り戻すのが大変です。粉飾した決算書で融資を受けた場合には詐欺になりますし、脱税は逮捕される可能性がある犯罪です。

この記事では、粉飾決算がなぜ起こるのか、粉飾決算を行った場合のリスク、そして粉飾決算を防止するための施策などについてご紹介します。
 

粉飾決算の豆知識

粉飾決算は、絶対にしてはいけません。粉飾決算は、一度してしまうと毎期続けなければならなくなります。なぜなら、決算書は前期の数字をもとに作成しますから、粉飾決算をした期から連続性をもつものだからです。それに粉飾決算をしていると、明らかに決算書の数字に異常値があらわれるので、粉飾決算はいずれ発覚してしまいます。
もし、すでに粉飾決算をしてしまっているなら、すぐに適正な会計処理を行って粉飾決算を是正しなければなりません。手続きとしては、会計上の処理と法人税法上の処理が必要となります。
今すぐ税理士に相談して、必要な処理についてアドバイスを受けることをおすすめします。

粉飾決算とは

上場企業の粉飾決算のニュースが流れるのを、耳にしたことがある人も多いでしょう。
粉飾決算とは、企業が経営成績や財政状態を事実と異なる金額で計上して利益を操作することをいいます。
狭義の意味では、利益を実際より高く操作することが「粉飾決算」で、利益を低く操作することは「逆粉飾」といったりします。

たとえば、売上を水増し計上したり翌期計上すべき売上を前倒しで計上したり、子会社を利用した売上操作を行ったり、費用や負債を帳簿に計上しないなどの操作を行うことは、すべて粉飾決算です。

逆粉飾の例としては、売上を少なく計上したり、費用を過大に計上したりするケースがあります。
ここでは利益を高く操作することも低く操作することも、まとめて「粉飾決算」と表現することとします。

上場企業は、監査法人の監査が入りますので、粉飾をするのは簡単なことではありません。
しかし、中小企業の場合には、監査法人の監査は入らないので、本当は赤字だけど黒字にしたり、黒字だけど赤字にしたりするなどの操作が簡単にできてしまいます。

しかし、粉飾した決算書で融資を受けた場合には、詐欺罪に当たることもありますし、脱税をすれば逮捕されることもあります。
粉飾は、後々面倒なことになりますから、絶対に避けるようにしましょう。

(1)粉飾決算の理由①株価維持

上場企業の粉飾決算は、その多くが株価の維持を目的としています。つまり投資家に対して業績をよく見せたいという目的から行われます。また、上場企業の場合には、株式市場の上場廃止基準に抵触しないようにするために行われるケースもあります。
いずれにせよこれらの粉飾決算は、業績がよく見えるよう取り繕うために行われているということになります。

(2)粉飾決算の理由②銀行対策

中小企業でよくみられる粉飾決算としては、赤字だと銀行から融資を受けられないため、銀行対策として赤字を黒字に見せかける操作が行われるケースがあります。つまり、架空売上をつくるのです。

たとえば、もともと損失が50万円あったのに、架空の売上を100万円計上し、50万円の利益があったと見せかけ、銀行に「この会社は利益が出ている」と思わせて融資を受けるのです。
このような架空売上は、いったんは仕方なく「売掛金」として計上するケースがほとんどですが、所詮は架空売上なので誰からも入金はありません。そして、ずっとそのまま残ることになります。けれども、いつまでも同じ売掛金が残っているのは不自然です。
決算書をよく見せたい、銀行に対する格付けを引き上げたいという経営者の心情はよく理解できますが、仕方なく現金で回収したと見せかけても、いずれは歪みが出てきて粉飾がばれてしまいます。

(3)粉飾決算の理由③海外子会社

子会社や関連会社の粉飾決算も増加しています。
下記は、子会社や関連会社の調査データです。
子会社や関連会社が当事者となって不適切会計が行われた件数は、2008年には5件(全体の20%)であったものが、2019年には27件、2020年には26件、2021年には17件となっています。

参照:東京商工リサーチ「不適切な会計・経理の開示をした企業は54社、最多は製造業の20社【2021年度】」

そして、子会社や関連会社の不適切会計の内容としては、「売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立っている」と指摘されています。
このような子会社や関連会社の粉飾決算が増加している理由のひとつが、日本企業の海外進出が増加し、それに伴って海外に設立された子会社や関連会社数が増加しており、粉飾決算が発覚する件数が増加している可能性があります。
海外子会社等の粉飾決算の場合、その規模がそれほど大きくないことが多く、発覚しにくいという側面がありますが、海外市場への進出の重要性が高まっている今こそ、海外子会社等で不正を起こさせないような仕組みの整備が求められているといえるでしょう。

(4)粉飾決算の理由④脱税(逆粉飾)

前述したケースとは逆に、黒字を赤字に見せかける「逆粉飾」と呼ばれる操作があります。
たとえば、売れ残りである在庫をなかったものと見せかけるのです。
仕入にかかった費用は、売れた分しか費用として計上することができないので、在庫があると税金が高くなってしまいます。
そこで、在庫があると税金が高くなるなら、なかったことにしてしまおうというわけです。しかし、在庫をなかったことにすれば、例年と比べて売上原価の割合が大きくなり、やはり歪みが出てきてしまいます。
税務署から「なぜ今期だけ、在庫がないのだ」と疑われれば、そこから粉飾が発覚してしまいます。
このような操作は、脱税行為として逮捕される可能性もある犯罪行為です。
脱税で逮捕されれば、社会的な信用も一気に失ってしまいます。

粉飾決算が発覚するとどうなる

粉飾決算は、最悪の場合倒産という事態を招きかねません。
また、倒産を免れることができても、高すぎる代償を支払わなければなりません。粉飾決算によって得るものは、何もないと言うことを十分理解しておく必要があります。

(1)過年度の決算訂正・公表措置

売上高や利益などの過大計上を行った場合には、過年度の決算訂正をしなければなりません。さらに上場企業の場合には、有価証券報告書等による開示情報に虚偽があったとして、証券取引所から「公表措置及び改善報告書の徴求について」といった公表がされてしまううえに、課徴金納付命令勧告が出されることもあります。

(2)詐欺行為にあたることも

当然ですが、粉飾決算を行うことは犯罪行為にあたります。もし、粉飾決算を行ってしまうと、粉飾に関わった人、主に企業の上層部の人は多くの代償を伴います。
なかでも取締役には、適正な財務諸表を作成する責任があるため、これに違反して粉飾決算を行った場合には、会社法、民法などさまざまな法律によって責任を追及されます。
また、粉飾決算によって違法な配当を行って会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害賠償責任を負いますし、虚偽の記載によって投資家などの第三者に損害を与えた場合には、その第三者に対しても損害賠償責任を負います。

粉飾した決算書で銀行から融資を受ければ、それは銀行に「利益が出ている」と嘘をついて融資を受けたことになるので、詐欺罪に当たります。
粉飾決算による融資詐欺等の場合、詐欺罪(刑法246条)に該当し、10年以下の懲役が科せられることもあります。

さらに、粉飾した決算書で銀行から融資を受けてこれが悪質だと判断されれば、刑事事件とみなされ逮捕されることもあります。
2019年にも、東証1部上場のある住宅関連会社では、粉飾決算が疑われ、前会長や元幹部が逮捕されました。
複数の関係先が家宅捜索され、社会的な信用を一気に失ってしまうことになりました。

粉飾決算をしないためには

経営者として、「銀行融資を受けたい」「株価を維持したい」という気持ちは、理解できます。けれども1度粉飾をしてしまうと、その歪みを取り戻すのは非常に大変です。
なかには、「税務署用の決算書は利益を少なめに」「銀行用の決算書は、利益を多めに」と決算書をいくつも作成している会社がありますが、これも当然絶対にやってはいけない行為です。

(1)社内モニタリング機能の強化

粉飾決算などの不正会計を防止するためには、社内におけるモニタリング機能の強化が非常に重要です。
取引先、契約内容といった項目はかならずチェックする必要がありますし、必要に応じて取引先に適切な与信を設定することも必要となります。
管理部門からの牽制機能が十分発揮する体制づくりも重要です。
事業部門が強すぎて管理部門が弱くては、管理部門の牽制機能が発揮できず、事業部門の暴走につながりかねないからです。

(2)業務・意思決定プロセスの改善

業務・意思決定プロセスの改善も重要です。
特定の個人、部署に権限が集中しないよう、相互のチェック機能が働くような体制づくりが必要です。
属人的になっている業務については、恣意的な判断を排除するように決済プロセスを見直す必要がありますし、重要な業務については複数の担当者によってクロスチェックを行う体制も必要でしょう。

(3)日々の数字の可視化

粉飾決算の誘惑に勝つためには、日々の数字を把握し早め早めの対策を検討することです。
「クラウド会計ソフト freee会計」では、資金繰りが可視化されるので、あらかじめ資金不足になるタイミングを予想することができます。つまり、早目早目に適切な資金繰り対策を行うことができるようになるのです。
資金調達するために、あわてて粉飾して銀行から融資を受ける必要がなくなり、いっときの誘惑に流されずに、適切な対策を行うことができるのです。
きちんとした数値に基づいて将来の見通しが立つので、間違った経営判断もなくなりますし、会計データをリアルタイムで税理士に見てもらうことができるので、問題があれば早めに必要な対策を提案してもらうことができます。

経営者は孤独であるとよく言われますが、ひとりで抱え込んで悩んでいてもいけません。何でも信頼できる、相談できる税理士を経営のパートナーとして持てば、粉飾決算といった誘惑に流されることはありません。

(4)すでに粉飾してしまっている場合は

すでに粉飾してしまっている場合には、早めに税理士に相談して適正な会計処理を行い、粉飾決算を是正しましょう。
粉飾決算の事実を認めて、会計・税務処理上の適切な処理を行ないます。
会計上の処理としては、過年度の粉飾決算した金額を、損益計算上、前期の損益修正損に計上するなどの修正を行います。
法人税法上の処理としては、会計上の決算に基づいた確定申告書を提出して、更正の請求、申出を行います。
粉飾決算は何年にもわたって行われることが多く、修正すべき額は多額になることもあります。
早めに税理士に相談して、正しく表示された決算書を作成し、今後はくれぐれも粉飾決算に手を染めないようにしましょう。

まとめ

以上、粉飾決算についてご紹介しました。
粉飾決算は、利益等を課題に表示した決算のことで、売上高を水増ししたり費用を圧縮したりして利益を過大に計上する操作のことをいいます。会社の対外的な信用を維持したり、銀行から融資を受けやすくしたりするために行われることが多いですが、社会的信用を失いますし、悪質な場合には刑事事件として逮捕されることもあります。
粉飾決算などしなくてもいいように、信頼できる税理士をみつけ、適切な対策をアドバイスしてもらうようにしましょう。

粉飾決算の防止について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、粉飾決算を防止するための体制づくり、適切な決算対策を行うための方法について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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