公開日:2019年09月04日
最終更新日:2022年03月30日
相続トラブルを解決するための方法のひとつに、遺言書を残すという方法があります。
遺言書は大きくわけて「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。
自筆証書遺言書については方式が緩和され、法務局で保管する制度が創設されました。
遺言書とは、自分の死後、自分の財産をどのように分割してほしいという意思をあらわしたもので、それを残した人が亡くなった時から効力が生じます。
遺言書は亡くなった人の意思を正確に伝えるものであり、かつ遺言の偽造や変造を防ぐために法律で厳格な方式が定められています。
遺言書は大きくわけて「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。
①自筆証書遺言書 自筆証書遺言書とは、遺言者本人が書いた遺言書です。 これまでは相続開始後、家庭裁判所で検認を受けなければなりませんでしたが、方式が緩和され、法務局で内容を保管し確認することができるようになり、検認手続きが不要となりました。 ②公正証書遺言書 |
自分の財産をどのように分配するかを自由に決めることができるのが遺言書なので、遺言書がある場合には、基本的には遺言書の内容にしたがって遺産分割を行うこととなります。
法律は、人が自分の一生を終えようとする最後に残した言葉をできる限り尊重しようとしますので、遺言書が複数ある時には最も新しい日付の遺言が有効とされます。
自分の財産を誰にどのように相続させるかは、遺言者本人の自由でありそのために遺言書という制度があります。しかし、だからと言って自分の財産について無制限に自由を認めてしまうと、「すべての財産を愛人に相続させる」などといった遺言書が認められることになってしまえば、残された家族の生活が保障されなくなってしまいます。そこで、一定範囲の相続人(直系血族)については、最低限相続できる財産を保障している制度があります。これが「遺留分」という制度です。
遺留分とは、相続人が最低限受け継ぐことができるという最低限の取り分のことで、遺留分に満たない財産を相続した相続人が、相続の内容に不満がある時には、多くの財産を引き継いだ相続人に遺留分に満たない分の財産を請求することができます。
したがって、いくら遺言書があるからといっても、すべての財産が他人に渡るということは基本的にありません。
遺言書を作成する場合には、この遺留分にも十分配慮して作成する必要があります。残された家族の相続トラブルを回避するために良かれと思って作成した遺言書が遺留分を侵害してしまうと、遺言書の存在がかえって相続トラブルの元になってしまうことがあるからです。
遺留分の割合は、相続人の状況によって異なりますので、遺言書と遺留分の関係について心配な場合は、相続に詳しい税理士や弁護士、司法書士などに相談するとよいでしょう。
遺言できる項目は主に10種類で、財産に関するものだけでなく子どもの認知や未成年者の相続人の後見人の指定などもできます。
①子どもの認知 婚姻届を提出していない女性との間にできた子どもとの間に、法律上の親子関係を生じさせその子どもに財産を相続させることができます。 ②遺贈 ③相続の排除と廃除の取消し ④後見人の指定 ⑤相続分の指定・指定の委託 ⑥遺産分割の禁止 ⑦遺産分割方法の指定・指定の委託 ⑧遺言執行人の指定・指定の委託 ⑨相続人相互の担保責任の指定 ⑩遺言減殺方法の指定 |
自筆証書遺言は、誰でも簡単に作成できる遺言書で最もポピュラーな遺言書です。
自筆証書遺言書については、これまで「自分で保管しなければならず、遺族に発見されない恐れがある」「死後に発見されても、故意に隠されてしまう」などといったデメリットがありましたが、法務局で内容を確認できるようになったことから、これらのリスクがなくなりました。
遺言書を作成した本人が法務局に届けるので、内容について疑いが生じることもありませんし、法務局に保管されるので、紛失するということもありません。
さらに、法務局で保管される自筆証書遺言については、相続開始後に家庭裁判所で行う「検認」という手続きも不要となりました。
また自筆証書遺言書は、これまでは直筆による作成しか認められませんでしたが、財産目録についてはパソコン等によるものも認められるようになりました。
これまでは、不動産の件数や預金の種類が多い時、そのすべてを手書きで作成しなければならず大変でしたが、財産目録の作成がパソコンでも認められるようになったことから、自筆証書遺言を作成しやすくなりました。
これまでは、自筆証書遺言書は遺言者によって、本文、氏名、日付のすべては自筆されなければなりませんでした。
しかし、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成31年(2019年)1月13日に施行)によって、自筆証書によって遺言をする場合でも、例外的に自筆証書に相続財産の全部または一部の目録(財産目録)を添付するときは、その目録については自書せず、パソコンなどで作成することも可能となりました。
ただし、その財産目録の各ページには署名押印が必要であり、財産目録以外は全て自書する必要があります。
参照:法務省「遺言書の様式等についての注意事項」 |
法務局では、遺言書の原本の保管だけでなく、その内容をデータ化して保管してくれます。法務局で遺言書をデータ化して保管してくれることで、遺言者が亡くなった後、相続人は全国の法務局で遺言書の有無や内容の確認ができるようになります。
保管申請にあたっては、遺言者自身が作成した遺言書であることを確認するために、本人の出頭が義務づけられています。
また、申請する際には封をしていない自筆証書遺言を持参しなければなりません。
遺言者が申請手続きを行うと、遺言書保管所、保管番号などが記載された保管証が渡されます。
これまでは、自筆証書遺言書を作成したあとは、貸金庫などで保管したり弁護士などに保管を依頼したりしなければなりませんでした。そのため、相続開始後に遺言書の所在が分からなかったり、発見が遅れたりしてトラブルになるといったケースがありました。
しかし、今回の法改正によって、自筆証書遺言書を法務局で保管手続きする場合は、法務局で内容を確認されるので、家庭裁判所における検認手続きが不要となりました。
検認手続きは、手間も時間もかかる手続きなので、これらの手続きが不要になることで残された家族の負担が大きく軽減されることになります。
相続開始後は、相続人らが遺言書の有無を保管所に確認する必要があります。
つまり、相続が開始すると自動的に保管所から相続人らに「遺言書が保管されていますよ」と連絡がくるようなシステムとはなっておりませんので、その点については注意が必要です。
相続人らは、保管所に遺言書の閲覧請求もしくは遺言書の内容の証明書に関する申請を行い、遺言書の内容を確認します。
遺言書は、保管ファイルに記録されており、その記録事項を証明した書面を「遺言書情報証明書」といいます。
なお、この遺言書情報証明書の交付を申請できるのは、遺言書に記載されている遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等の「関係相続人」と呼ばれる人たちです。
遺言者が亡くなった後、遺言書保管所に保管されている遺言書について関係相続人が遺言書を閲覧したり遺言書情報証明書の交付を受けたりした時には、遺言書保管官がその他の関係相続人等に対して、遺言書保管所に遺言書が保管されている旨を通知します。
この結果、その他のすべての関係相続人等に遺言書が保管されていることが伝わることになります。
遺言書は相続トラブルを回避するために大切なものですが、遺言書の内容によっては、かえって相続トラブルを引き起こしてしまうこともあります。
遺言書を作成する前から「誰に何をどのように相続するか」「相続トラブルを防ぐためには、どのような点に注意すべきか」などについて、相続税に精通した税理士、弁護士、司法書士などに相談することをおすすめします。
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