事業承継の方法と事業承継の相談機関

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2019年04月04日

目次

  1. 事業承継の方法
    • 親族の場合
    • 親族以外の場合
    • M&A
  2. 親族への承継
    • 後継者の教育
    • 株式・資産の分配
    • 遺言の活用
    • 会社法の活用
    • 経営承継円滑化法
    • 生命保険・任意保険の活用
    • 個人保証・担保の活用
  3. 税理士に依頼できること
    • 相続財産と相続税の試算
    • 相続税(節税)対策の提案
    • 相続税の納税資金の準備対策
  4. まとめ
    • 税理士をお探しの方

この記事のポイント

  • 親族のなかから後継者を選定した場合には、後継者教育が重要である。
  • 中小企業では会社の所有と経営が一体化していることから事業承継対策が必要である。
  • 事業承継対策を行う際には、節税対策も併せて行う必要がある。

 

事業承継の方法には、①子どもなどの親族に承継する方法、②親族以外の従業員などに承継る方法、③M&Aなど社外に承継する方法などがあります。
①の中小企業の子供など親族に継がせるケースは減少傾向ではありますが、依然として事業承継の主流です。親族が後継者であれば社内外の理解が得られやすく、スムーズに承継できるというメリットがあるからです。しかし、親族を後継者として選定した場合にも、後継者教育や資金調達など解決すべき課題も多くあります。

この記事では、中小企業の経営者が親族に事業を継がせる場合の課題や注意点、必要な手続きなどについてご紹介します。

事業承継対策を怠ると、相続税の額に大きな影響を及ぼしたり思わぬ相続トラブルに発展したりして、事業の継続どころでなくなることもありますので、税理士や弁護士などに相談したり、さまざまな相談機関を活用したりして対策を進め、円滑な事業承継を実現しましょう。

事業承継の方法

事業承継とは、後継者に経営権を引き継ぐ一連のプロセスのことをいいます。経営者にとって後継者にバトンをわたす事業承継は、重要課題のひとつです。
中小企業では、会社の所有と経営は一体化しているため、後継者に株式を譲渡することで経営権を引き継ぐことになります。
事業承継で後継者を選定する際には、以下の順番で検討していくのが一般的です。

① 子をはじめとする親族

② 親族以外の役員・従業員

③ M&Aによる事業売却

最近は、後継者が見つからず廃業に追い込まれるケースが増えているものの、子どもなど親族への事業承継は、従業員や取引先の理解も得やすいことから、今でも主流の事業承継の方法となっています。

親族の場合

子供など親族への事業承継は、従業員や取引先の理解も得やすいことから今でも主流となっています。
親族に経営権を譲るには、通常の売買、生前贈与、相続のいずれかで株式を譲渡します。相続で株式を引き継げる点は、親族以外への承継にはない特色です。

親族以外の場合

親族に適任者がいない場合は、役員や従業員に事業を継がせることを検討します。
役員や従業員への承継では、通常の売買か生前贈与のいずれかで株式を譲渡します。親族以外の後継者は株式の購入や贈与税の納税のための資金を持っていないことが多いため、金融機関からの借入や役員報酬の増額などで資金を融通する必要があります。

M&A

事業承継の第3の選択肢としては、M&Aによる事業売却があります。
会社のことを良く知る取引先や顧問税理士、仲介機関に依頼するなどして、引き継ぎ先を探すのが一般的です。
方法としては、現経営者が保有している株式を譲る方法が多いですが、一部の事業を切り出す事業譲渡や、事業ごとに会社を分割していずれか一方を譲渡するケースもあります。

親族への承継

前述したように、事業承継の方法はさまざまありますが、ここでは経営者の子どもなど親族に事業を継がせるときのプロセスをご紹介します。
後継者を親族とするメリットは、会社内外の関係者からの理解が得やすいという点、また後継者を早期に選定すれば、それだけ後継者教育などの期間を設けることができるという点などを挙げることができます。
一方デメリットとしては、相続人が複数いる場合には、後継者を誰にするか検討することが必要であること、そして選定した後継者に自社株や事業用資産を集中して相続させることが、相続トラブルに発展するリスクなどを挙げることができます。

いずれにせよ、通常は後継者の選定、資産承継方法の検討の段階から完全に経営をバトンタッチするまでには、10年以上の中長期計画が必要とされています。
これらのメリット・デメリットを理解したうえで、早めに事業承継計画を立てるようにしましょう。

後継者の教育

親族のなかから後継者を選定した場合には、事業を継ぐために必要な経営ノウハウを教育します。
後継者が複数いる場合には、現経営者の予期せぬ相続発生によって、後継者候補同士が対立して経営が混乱することを防ぐために、早期に後継者を選定する必要があります。

どのように教育するかは個々の会社によって異なりますが、業績や財務状況など数字に基づいて経営判断できるようにしておくことが大切です。事業承継に10年かけるとすれば、そのうちの7年は後継者の教育にあてる方がベターなケースも多く存在します。

後継者教育としては、大きく社内教育と社外教育に分けられます。
社内教育では、後継者に自社の事業をローテーションで担当させ、経験と必要な知識を習得後従業員・役員として育成します。

社外教育では、業界内の外部の会社に勤務させたり、取引先などに修行に出したりして、後継者の経験を積ませることもあります。親子という関係では、必要以上に厳しくなるか甘くなるケースもありますし、後継者が新しい知識、人脈、組織風土等を得るためには有効であると考えられています。

株式・資産の分配

中小企業では会社の所有と経営が一体化していることから、経営権を後継者に継がせるためには株式を譲渡します。株式は、通常の売買、生前贈与、相続のいずれかの方法で譲渡します。

① 通常の売買

現経営者が生前に後継者に株式を売却する方法です。後継者は株式の購入資金を準備する必要があり、現経営者は株式の譲渡益に所得税が課税されます。

業績が好調で会社の価値が向上していれば、株式の購入資金だけでなく株式の譲渡益も思いがけず高額になることがあります。

② 生前贈与

現経営者が、生前に後継者に株式を贈与する方法です。後継者は株式の購入資金を準備する必要はありませんが、そのかわり多額の贈与税を負担しなければなりません。
そこで、中長期計画を立てて、計画的に贈与していく必要があります。
例えば、株式を一括で贈与すると贈与税が高額になりますが、年あたり110万円まで贈与税がかからない基礎控除を活用して複数年にわたって贈与することもできます。子供や孫への贈与であれば2,500万円まで控除される相続時精算課税を適用することもできます。

また、事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)が適用できれば、贈与税は事実上免除されます。
事業承継税制の適用を受けるためには、都道府県庁に「特例承継計画」を提出するなど、いくつかの要件を満たしている必要がありますので、早めに税理士に相談しておくようにしましょう。

遺言の活用

経営者が遺言書を作成し、自身の死後に後継者に株式を相続させるよう指定します。
相続で株式を承継する場合は、自社株や事業用資産を後継者に相続または遺贈させる旨の遺言書を作成するようにしましょう。
遺言書がないと、経営者が保有していた株式や事業用資産を複数の相続人で分け合うことになりかねず、そうなると株主が複数いると権限が分散して経営が迷走してしまうリスクがあるからです。

遺言書は、大きく分けて自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。公正証書遺言は、作成までに手間が費用がかかりますが、確実に経営権を後継者に移転するためには、公正証書遺言の方が望ましいと考えられます。

それぞれの遺言書のメリット・デメリットは、「435遺言の種類|公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言それぞれのメリット・デメリット」をご覧ください。

なお、相続で株式を承継すると、後継者は株式以外の相続財産も対象にした相続税を支払わなければなりません。なお、前述した事業承継税制は相続の場合にも適用できる場合があり、その場合には相続税が事実上免除されます。

会社法の活用

会社法では会社の株式に関するさまざまな制度を定めていて、会社にとって望ましくない人物に株式が渡るのを防いだり株式の譲渡を制限したりして、事業承継や相続の対策に役立てることができます。

例えば、家族経営しているような会社で、家族以外の経営に非協力的な人物に株が渡ると、会社としての意思決定が円滑に進まなくなってしまうことがあります。そこで、このような事態を避けるために株式の売買、譲渡に制限をかける必要が出てくるのです。

また、経営者が死亡したときに後継者が普通株式を相続し、他の相続人は無議決権株式を相続するようにしておけば、経営権を後継者に集中させることができます。また、すでに少数株主に株式が分散している場合は、会社が少数株主から株式を買い取って金庫株(自社株式)として保有することもできます。

経営承継円滑化法

中小企業では、資金の不足や遺留分の問題から事業の承継が困難になるケースが数多くありました。遺留分とは一定範囲の相続人が最低限受け取れる遺産割合のことで、この遺留分をめぐって相続トラブルが起こるケースがあったのです。

このような相続トラブルを防ぎ中小企業の事業承継を円滑に進めるため、民法、税法の特例や金融支援を定めた経営承継円滑化法が制定されました。

遺留分のある相続人全員の合意のもと、後継者が取得した株式を遺留分の対象から除外したり、評価額を固定したりできます。ただし、特例を適用するためには、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
経営承継円滑化法の認定を受けると、税制支援や金融支援、遺留分に関する民法の特例などを受けることができます。

参照:中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」

生命保険・任意保険の活用

生命保険は、相続税対策としては納税資金の確保や相続税の軽減に有効ですが、円滑な財産の分割という点でも有効です。

具体的には、被保険者を現経営者、保険受取人でを相続人として保険契約を締結することで、現経営者の相続発生時に相続人が受け取る死亡保険金を納税資金として、確保することができるのです。
そこで、死亡保険金の受取人を後継者以外の相続人として指定し、後継者に自社株等を相続することにすれば、相続させる財産のバランスをとることができるので、相続トラブルを回避することができるようになります。

個人保証・担保の活用

後継者に十分な資金がない場合は、会社の借入金に個人保証や担保の差し入れをすることができない場合もあります。このようなときの対策としては、事業を承継した後も現経営者の個人保証や担保の差し入れを継続することがあげられます。また、後継者の負担が大きくならないように、経営を引き継ぐまでに債務を整理する必要もあります。

税理士に依頼できること

事業承継の計画から実行には専門家のサポートが必要不可欠です。とりわけ、税務に関する問題は資金面で大きな影響があるため、税務の専門家である税理士に相談することが重要です。ここでは、事業承継で税理士に依頼できる項目をご紹介します。

相続財産と相続税の試算

現経営者が死亡したときの相続財産を洗い出し、相続税の税額を試算します。税額の試算では、財産の価値をどのように評価するかによって結果が大きく左右されます。特に、土地や中小企業の株式は財産評価の方法が複雑ですし、評価によって納税額が大きく変わるので、税理士による試算が重要になります。

相続税(節税)対策の提案

相続税は遺産の額が高くなるほど税率が高くなるしくみになっています。
一方で、配偶者の相続や自宅など生活に欠かせない資産の相続では、税額を大幅に軽減する特例が設けられています。また、事業承継では相続税の納税猶予も受けることができます。

税理士は、相続税の節税対策としてこれらの特例の適用のほか、相続財産そのものの評価額を引き下げる対策を提案をしてもらうことができます。

① 自社株対策

自社株の評価額は業績が良くなるほど高くなる傾向があります。自社株の評価額を引き下げるためには、役員報酬を増額して利益を圧縮するといった対策があります。

② 不動産の有効活用

相続税の計算上、不動産は実勢価格に比べて評価額が低くなります。遺産全体の評価額を低くするために、現金を不動産に換える場合があります。

③ 生命保険の活用

生命保険の死亡保険金は、相続人1人あたり500万円まで相続税が非課税になります。この非課税枠は、実際に保険金を受け取った人数にかかわらず適用することができます。相続税の節税のために、保険料を一括で支払う生命保険に加入することも対策の一つの方法です。

相続税の納税資金の準備対策

相続税は、死亡から10カ月以内に税額を計算して一括で納付しなければなりません。延納や物納をすることもできますが、条件が厳しいため、可能な限り期限に間に合うように納税資金を準備することが重要です。

まとめ

以上、事業承継対策のうち、親族に継がせる場合の課題や検討事項について、ご紹介しました。これまでご紹介してきたように、親族を後継者として選定した場合には相続トラブルを回避するための対策や、納税資金を確保するための対策など、さまざまな対策が必要となりますし、事業承継は中長期計画を立てて実行する必要があります。
可能限り早めに、税理士等の専門家に相談して、必要な対策について検討を開始したいものです。
なお、前述した事業承継税制の適用を受け相続税の免除を受ける場合は、認定経営革新等支援機関として認定された専門家のアドバイスを受ける必要があります。
まずは経営革新等支援機関の認定を受けている税理士に相談士、必要なアドバイスやサポートを受けるようにしましょう。

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