事業承継対策はなぜ必要か~事業承継対策すべき企業の特徴

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2019年05月22日

目次

  1. 事業承継対策はなぜ必要か
    • 事業を存続させるため
    • 相続トラブルを回避するため
  2. 「事業承継対策は早いほど良い」のはなぜか
    • 経営者が突然亡くなるリスク
    • 老老承継の悲劇
  3. 事業承継対策すべき企業とは
    • オーナー企業
    • 後継者がいない
    • 相続トラブルのリスクがある
  4. 事業承継の流れ
    • 現状を分析する
    • 資産を評価する
    • 後継者を選定する(親族)
    • 後継者を選定する(親族以外)
    • 後継者を選定する
    • 資産承継方法を選定する(生前贈与)
    • 資産承継方法を選定する(遺言書)
    • 資産承継方法を選定する(会社による買取り)
    • 資産承継方法を選定する(会社法活用)
    • 事業承継計画の作成と実行
  5. まとめ
    • 事業承継に強い税理士を探す

経営者の高齢化や後継者不足などから、中小企業の事業承継が円滑に進まないケースが増えています。
「後継者が見つからない」、「相続トラブルで事業承継が進まない」などの理由から、やむを得ず廃業しそれに伴い雇用が失われて、産業基盤の弱体化も危惧されています。

経営者は引退の時期を自ら決めることができずに対策を先送りしがちですが、事業をトラブルなく引き継ぐためには、できるだけ早く事業承継対策に取りかかることが必要です。

この記事では、事業承継対策に早く取りかかるべき理由と、特に対策が必要なケースをご紹介します。

事業承継対策はなぜ必要か

中小企業で事業承継対策が必要な理由には、事業を存続させることや相続トラブルを回避することなどがあげられます。
適切な事業承継対策を行わなかったことで、後継者へのスムーズな事業承継が進まず、経営が不安定になってしまい、廃業を余儀なくされる中小企業もあります。

事業を存続させるため

事業承継は経営者が交代すればそれで済むわけではなく、経営に必要な三つの資源(ヒト、モノ、カネ)を一体のものとして後継者に引き継ぐ必要があります。どれか一つが欠けても事業は存続できなくなってしまうからです。
経営者が交代したのちも事業を存続させるためには、綿密な計画のもとで事業承継対策を実施する必要があります。
とくに、後継者候補の不在は、会社解散の危機につながります。
平成24年度の中小企業庁委託調査:「中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業作業報告書」によると、中小企業の経営者が「廃業したい理由」について、半数以上(52.4%)が、後継者不足を上げています。

参照:中小企業の事業承継に関するアンケート調査

相続トラブルを回避するため

会社の経営者が亡くなった場合は、後継者が事業を引き継ぐだけでなく、会社の株式や事業用の資産を残された親族同士で分け合うことになります。この時、遺産を誰がどれだけもらうかでトラブルが起こります。
裁判所の司法統計で見ると、こうした相続トラブルに関する件数は、ここ10年で約3割増加しています。

参照:裁判所 司法統計「遺産分割件数」

後継者と他の親族が対立して経営権が分散してしまえば、経営どころではなくなってしまいます。
経営が安定化しないということは、すなわち資金繰りの要と言えるメインバンクの信用を失いかねないということになりますし、さらに取引先の信頼関係にも影響を及ぼす可能性があります。
さらに、個人事業主だった経営者が亡くなった場合は、相続が開始すると、遺産分割協議がまとまらない限り亡くなった親の口座からは1円もお金を下ろせなくなるリスクもあります。
こうした相続トラブルを回避するためにも、事業承継対策は欠かせません。

「事業承継対策は早いほど良い」のはなぜか

事業承継は今の経営者に影響力がある間に行っておくことが重要で、死亡したり判断力が衰えたりしてからでは手遅れになってしまいます。万が一のことが起こる前に早めに手を打たなければなりません。

経営者が突然亡くなるリスク

事業承継対策が早いほどよい理由の一つは、経営者が突然亡くなるリスクに備えることができるという点です。特に高齢になるにつれて突然亡くなるリスクは高まっていきます。
事業承継対策がないまま経営者が亡くなると、従業員だけでなく取引先にまで事業の継続に対する不安が広がります。
自分自身が亡くなることを前提に対策をすることは気が進まないものですが、家族や従業員から経営者に事業承継対策を行ってくれるよう提案するのは、さらに気が進まないものです。
経営者が残された家族や会社のことをしっかり考えるのであれば、健康上の不安がないうちからできるだけ早く事業承継対策を始めるようにしたいものです。

老老承継の悲劇

事業承継対策が早いほどよいもう一つの理由は、老老承継が起こりやすくなる点です。
経営者が高齢になっても経営を続けていれば、その間に後継者も年を重ねていき、事業の承継が必要な時に、「老老承継」とも呼ばれる状況になります。後継者が先に亡くなったり認知症になったりするケースも否定できません。そして、事業承継ができたとしても後継者が短期間で亡くなる可能性もあります。

事業承継対策すべき企業とは

事業承継対策はすべての中小企業に必要ですが、特に対策が必要なケースは①オーナー企業②後継者がいない③相続トラブルのリスクがある の3つのケースです。
ここでは、この3つの企業が特に事業承継対策をすべき理由についてご紹介します。

オーナー企業

オーナー企業の経営者(特に創業者)は、事業を一手に担っていることがほとんどです。
オーナー会社では、現経営者が会社に運転資金を貸し付けたり、会社の銀行借入金に対して連帯保証人となっていることが多く、会社と現経営者の財布が事実上一体化しているケースが多くあります。
しかし、突然経営者が変わるようなことがあれば、経営の一体性や継続性が損なわれ、事業が立ち行かなくなってしまいます。
創業者にとっては、事業はいわば分身のようなものですが、事業を存続させるためには、徐々に後継者に引き継いでいくことも必要です。

後継者がいない

後継者がいない場合は、後継者を探してきて育成するところから始めなければなりません。後継者探しや育成には、多大な時間とエネルギーが必要になります。
後継者の育成から事業承継を始める場合はおよそ10年かかるとも言われており、早めの着手が必要です。
経営者の予期せぬ病気やけがを理由に、経営から退くことになってからでは、手遅れになってしまいます。

相続トラブルのリスクがある

後継者の候補が複数いる場合も対策が必要です。相続人が複数いる場合で、そのうちの1人に事業を引き継ぐケースでは、高い確率で相続トラブルが起きると考えておくほうがよいでしょう。
例えば、遺産を公平に分けることを優先させてしまって株式を複数人で相続すると、その後の経営がしづらくなりますので、中長期計画を立て、後継者に自社株を移転していくことが必要です。
仲の良い兄弟でも、いざ相続が始まると考えが変わることもあります。
経営者の予期せぬ相続発生によって残された親族間で利害が対立し、会社の財産と経営が分断されてしまうと、経営どころではなくなってしまうので、注意しましょう。

事業承継の流れ

事業承継は思い立ってすぐにできるものではなく、綿密な計画のもとで実施する必要があります。事業承継計画は次の手順で作成します。

現状を分析する

会社や事業の現状を知らなければ事業承継計画を立てることはできません。
後継者問題、税負担の問題、さまざまな利害関係者との調整など、さまざまな問題を分析し、解決するための対策を検討していく必要があります。
経営者であれば現状は知り尽くしていると思いがちですが、意外と見落としたり思い違いをしたりしている部分もあります。

具体的には以下のような項目について確認します。

○後継者には誰がふさわしいか
後継者候補を把握するためには、まず親族内に後継者がいるかどうか検討することが一般的です。もし、親族内に後継者がいなければ、経営幹部や取引先などに候補者がいないか検討することになります。

○相続があった場合にどのような問題が起こるか
株式が分散されていると、経営のコントロールの妨げとなるおそれがあるため、分散された株式を、どのように後継者に集約させるか、検討する必要があります。

○会社の資産について
従業員に関する情報や、取引先のコネクション、技術力、ノウハウ、特許、許認可、現状の財務内容(資産、負債、キャッシュ・フローなど)について分析します。
会社の過去の実績から、会社の強み、弱み、機会、脅威となる要因を整理することは、事業承継だけでなく、経営戦略を検討するうえでも非常に重要です。

・社会情勢など踏まえた場合、事業の将来の見通しについて
会社が将来どれくらいのキャッシュを生み出すかは、納税資金を確保するうえでも大変重要です。
将来どれくらいのキャッシュを獲得するかの利益予測と、必要な納税資金及び自社株の買取計画はセットで考えて行きます。

資産を評価する

現経営者が保有する自社株、事業用資産、自宅、預貯金の資産や債務など、相続財産の評価を行います。

会社にどれぐらい資産があるかの評価は、後継者が株式を買い取るときの価格のほか、贈与税・相続税の算定根拠としても必要です。中小企業の株式は、上場株式のように市場価格があるわけではないので、会社の財務状況をもとに株価を算定することになりますが、株価の算定は難解です。
オーナー企業の株式の評価は、原則的評価(会社の価値を基準に評価する方法)によって評価しますが、その評価の具体的な方法は、会社の規模(大企業か中企業か小企業か)によって、さらに異なります。
このように、中小企業の株の評価はややこしくて大変難しく、個人では難しいため、事業承継に精通した税理士に依頼しましょう。

後継者を選定する(親族)

次に後継者を選定します。後継者の最も有力な候補としては、まず経営者自身の子供など親族内で検討するのが一般的です。
後継者が長年にわたって役員や従業員として勤務していれば、事業内容に精通しているうえ関係先の信頼も得ているため、事業承継が円滑に進むでしょう。
一方、親子同士でお互いに遠慮なくぶつかり合った結果、亀裂が深まり、それが経営に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。

後継者を選定する(親族以外)

長年にわたって勤務している役員や従業員も後継者の有力候補です。取引している金融機関から後継者を招くことも広く行われている方法です。
親族以外の人を後継者にする場合は、いきなり社長にするのではなく、まずは役員として経営に携わってもらうほうが、従業員の理解を得ることができるでしょう。

後継者を選定する

適切な後継者がいない場合は、M&Aで会社を売却するか廃業するかの選択を迫られることになります。
M&Aといえば敵対的に会社を乗っ取るケースが目立ちますが、M&Aで新しい経営者に引き継ぐことで事業が存続し、経営者は株式の譲渡代金を借入金の返済や今後の生活資金に充てることができますし、大部分は事業を譲る側と引き受ける側が友好的に話し合って成立しています。

M&Aは中小企業の事業承継でも有力な選択肢になっていますが、経営者が希望する事業の買い手候補を見つけることは、なかなか難しいのが実情です。

資産承継方法を選定する(生前贈与)

生前贈与とは、一般的には将来の相続発生前に、個人が妻や子、孫に財産を贈与することをいいます。今の経営者が健康なうちに後継者に株式を贈与する生前贈与は、事業承継における資産承継方法の一つです。
ただし、生前贈与は一旦贈与すると贈与者である現経営者が自由に贈与の撤回をすることができなくなるというデメリットもありますので、いつのタイミングで贈与を行うかについては、しっかり検討する必要があります。

また、生前贈与をする時は、後継者に贈与税を支払うだけの資金があるかどうかを考慮する必要があります。自社株の贈与を受ければ後継者の地位が安定するというメリットはありますが、業績が良いほど株式の評価額は高くなり、贈与税も高くなり、相続税と比較すると税負担の重い贈与税を払う必要があるからです。

なお、税負担については、事実上免除される事業承継税制を適用することもできます。
事業承継税制は、平成30年度税制改正され、納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限を撤廃し、全株式を適用することが可能となりました。
また、納税猶予割合が100%に拡大することで、承継時の税負担をゼロにすることが可能です。
この制度の対象は、事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「事業承継税制」を、今後5年以内に特例承継計画を提出すること及び、10年以内に実際に承継を行う者とされています。詳しくは事業承継を専門にしている税理士に相談するのがおすすめです。

参照:中小企業庁「中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充」

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資産承継方法を選定する(遺言書)

遺言とは、遺言によって遺言者の財産を無償で譲ることをいいます。
相続で資産承継をする場合には、対策の1つとして遺言書を作成することが大変重要です。自社株や事業用資産などの事業継続に必要な資産を後継者に集中させるため、相続または遺贈させる旨の遺言書を作成して、これらの財産を後継者に取得させるよう記載しておく必要があります。

なお、一定の相続人には最低限相続できる遺留分がありますから、この遺留分を考慮して遺言書の内容を定めなければなりません。ただし、中小企業の株式に関しては遺留分の特例がありますので、事業承継の専門家の助言を受けながら遺言内容を定めるとよいでしょう。

なお、もし遺言書がない場合には、通常は相続する人たちの間で話し合い(遺産分割協議)で決定することになります。
しかし、財産が事業用資産や自社株など評価が難しかったり分割が難しかったりする場合には、協議がまとまらなくなるケースが多く、協議が長期化することがあります。
協議が長期化すれば、相続税の優遇措置の適用が受けられなくなることもあります。

資産承継方法を選定する(会社による買取り)

自社株や事業用資産が既に後継者以外の親族に分散されているか、もしくは相続で資産承継をして複数の相続人に株式が分散してしまうリスクがある場合には、後継者が他の株主に交渉して自社株や事業用資産を買い取るか、会社が新株を後継者のみに発行して後継者の出資比率を高める方法で、資産を後継者に集中させます。

資産承継方法を選定する(会社法活用)

会社法では、相続が発生した際に自社株を後継者に集中させたり、後継者以外の相続人への分散を防いだりするため、株式の譲渡を制限することができます。
例えば、定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない」と規定しておきます。
また、定款で普通株式と配当優先の無議決権株式の二種類の株式を発行できるよう規定しておけば、経営者が亡くなったときに後継者は普通株式を相続し、他の相続人は無議決権株式を相続することになるので、スムーズに承継を進めることができます。

また、会社法では、相続人による売渡請求制度があります。
定款で、その会社が相続によって後継者以外の相続人等に移転した譲渡制限株式については、会社に売り渡すよう請求して、株式を強制的に買い取るのです。
この方法で、分散された株式を強制的に買い取れば、後継者は安定的な経営を行うことが可能になります。

事業承継計画の作成と実行

現状分析を行い、後継者と事業承継方法が選定できれば事業承継計画を立てます。
事業承継は10年スパンで税金対策を実施する必要がありますし、後継者の選定・育成にも時間がかかります。
したがって、着実に実施するためにも、年度ごとに実施すべき事項を明確にして定期的に進捗を確認する機会を作るようにしましょう。定期的な確認をしなければ、通常業務に紛れて結局は計画どおりに実施できなくなってしまいます。
なので、事業承継を円滑に行うためには、これらの計画を確実に実施できるようサポートしてくれる社内外の協力者、ブレーンの存在が不可欠です。
後継者の方のマネジメント力診断、社内幹部の状態など総合的に評価して円滑な事業承継をサポートするためにも、事業承継に精通している税理士、会計士などに早めに相談を行うことをおすすめします。

まとめ

以上、事業承継対策はなぜ必要かについてご紹介いたしました。企業の事業を円滑に次の世代に引き継ぐためには、できるだけ早く事業承継対策に取りかかることが大切です。経営者がすでに高齢である会社や後継者がいない会社は、特に対策が必要なので事業承継に強い税理士に相談するのがおすすめです。

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