CVP分析(損益分岐点分析)を事例・図入りで解説

公開日:2023年06月22日
最終更新日:2023年06月22日

この記事のポイント

  • CVPとは「Cost(費用)-Volume(販売量)-Profit(利益)」の頭文字。
  • つまり、CVP分析とは、原価、販売量、利益の関係を分析すること。
  • CVP分析で、この仕事は得をするか損をするかを判断することができる。

 

CVP分析(損益分岐点分析)とは、利益管理(この仕事は得をするか損をするか)や現場での経営判断に役立つ分析方法です。一定期間における原価、操業度、利益の関係を分析します。
損益分岐点の売上が低い会社というのは、小さな売上でも利益が出る会社=儲かりやすい会社ということができます。
そして、CVP分析(損益分岐点分析)を行うことで、「この仕事は得をするか損をするか」「儲かりやすい会社か否か、儲かる会社か否か」を知ることができます。

CVP分析(損益分岐点分析)とは

CVP分析(損益分岐点分析)とは、会社全体の費用と利益を分析して、利益管理(この仕事は得をするか損をするか)を行い、現場での経営判断に役立つ分析を行い、会社の体質改善をはかるための方法です。

CVPとは、「Cost(費用)-Volume(販売量)-Profit(利益)」の頭文字です。固定費と変動費を分解したあと、企業活動の分析、見直しを行い、コスト削減とともに、売上高拡大を目的として利益を拡大する施策を検討する際の手法として活用されます。

①採算管理・利益管理
(目標利益の設定、限界利益率の設定)

②事業の意思決定
不採算事業の判断、利益に貢献する商品の選択の判断

③経営判断
経営の安全余裕度の分析
(損益分岐点比率、安全余裕率)

(1)そもそも「損益分岐点」とは何?

CVP分析(損益分岐点分析)の「損益分岐点」とは、損失も利益も生じない売上高のことで、いわば損益トントンとなる損と儲けの分かれ目のことです。
つまり、損と儲けの分かれ目である売上高に達するまでは会社は赤字であり、この売上高を超えたところから利益が出るというわけです。

損益分岐点を分析することで、経営者は目標利益を達成するためにはどの程度の売上高が必要となるのか、またはコストはどの程度に抑えるべきなのかを判断することができます。

この損益分岐点を計算式であらわすと、以下のようになります。

損益分岐点 = 売上高 -費用(固定費+変動費) = 0(利益も赤字もない)

そして、利益も赤字も出ない損益分岐点売上高を計算式であらわすと、以下のようになります。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - ( 変動費 ÷ 売上高 )}

(2)「損益分岐点」を図にあらわすと?

損益分岐点の計算式を理解するための図として、損益分岐点図表があります。
横軸は売上高を、縦軸は費用の額をあらわし、右上に向かって伸びる対角線が「売上高線」です。
固定費とは、売上高によって変化しない一定額の費用なので、横軸に直角で交差する水平線の線になります。
変動費は、売上高に比例して増加する費用なので、右上に向かって変動費率の角度で伸びる直線となります。
固定費線の上にあるのは「総費用線」で、この総費用線は固定費と変動費の合計をあらわします。

損益分岐点のグラフは、損益分岐点より右側に売上高があるときに利益が生じ、左側にあるときに損失であるということをあらわしています。

損益分岐点の売上が低い会社とは、小さな売上でも利益が出やすい会社です。一方で、損益分岐点の高い会社は、利益を出すのに大きな売上を必要とする会社ということになります。


A:【理想的な会社】固定費、変動費ともに低いため、損益分岐点が低く利益が出やすい。
B:【内製型の会社】固定費が高く変動費が低い。ハイリスクハイリターンな会社
C:【リストラが必要かも…】固定費、変動費ともに高く、損益分岐点が高く利益が出にくい。
D:【外注多めな会社】変動費は高いが固定費は低いローリスクローリターンな会社

上記からも分かるように、損益分岐点が低い会社となるためには、ムダな設備投資などを控えて固定費の発生を抑え、コストダウンに取り組んで変動費を下げる努力が必要です。

(3)CVP分析で採算管理

採算管理とは、販売数量の増減や費用の額の増減によって利益がどのように変化するかを予測し、目標利益を達成するための売上高の把握を管理することをいいます。

採算管理を行うためには、まず費用を変動費と固定費に分解することが必要です。
変動費とは、材料費のように売上に比例して増減する費用で、売上高に対する率は一定です。
固定費とは、販売費・管理費などのように、まったく商品が売れなくても固定的に発生する費用であり、金額は一定ですが売上高に対する率は変わります。

そして、売上高から変動費を差し引いた利益を「限界利益」といいます。

限界利益 = 売上高 - 変動費

限界利益は、売上高に比例して増加するため、変動費+固定費=売上高となる損益分岐点を上回る売上高を達成すれば、利益を計上していることになり利益は増加します。

そして、売上高に対する限界利益の割合を「限界利益率」といいます。

限界利益率(%)=限界利益/売上高×100

そして、売上高に対する変動費の割合を「変動費率」といいます。

変動費率(%)=変動費/売上高×100

売上高から変動費を引いたものが限界利益ですから、変動費率と限界利益率は100%となります。
損益分岐点とは固定費=限界利益となってしまう売上高のことをいいますが、固定費は一定なので、限界利益が増加すれば経常利益が増加することになります。

損益分岐点売上高
= 変動費 + 固定費
= 売上高 × 変動費率 + 固定費
= 固定費 / (1 - 変動費率)

たとえば、「売上高2,000万円、変動費1,200万円、固定費が600万円、利益が200万円」のケースで考えてみます。
まず、変動費率は1,200万円/2,000万円×100=60%となり、限界利益率は、800万円/2,000万円×100=40%です。
したがって、損益分岐点売上高は600万円/40%=1,500万円となります。

(4)CVP分析で利益管理

損益分岐点は、利益管理に活用することもできます。
損益分岐点の計算式から、「現状の利益額を上回る利益を確保した場合には、どれだけの売上高が必要なのか」を、逆算することができるからです。

目標利益達成のための必要売上高 = (固定費 + 目標利益) / (1 - 変動費率)

たとえば、「現在売上高は1,000万円で、変動費・固定費はともに400万円、利益は200万円であるが、これを利益300万円に増やしたい」という利益計画を立てるとします。
この場合には、増加させたい利益300万円を固定費と同じように考えます。つまり、限界利益は「400万円+300万円=700万円」と考えます。
現在の限界利益は、「1,000万円-変動費400万円=600万円」ですから、固定費を700とすると、損益分岐点売上高は以下のように計算します。

固定費700/限界利益率60%=1,167

つまり、利益を200万円から300万円に増やしたいのであれば、売上高を1,000万円→1,167万円に増やせばよいということになります。

(5)CVP分析で経営判断

売上高が損益分岐点を超えていれば、利益が出ていることになります。
損益分岐点比率とは、現状の売上高から見た損益分岐点の高さのことで、損益分岐点売上高を上回れば上回るほど利益幅は大きくなりますから、損益分岐点は低いほど良いということになります。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 / 現状の売上高 × 100

そして損益分岐点を反対側から見た指標が「安全余裕率」です。

安全余裕率 = (1 - 損益分岐点売上高 / 現状の売上高) × 100

安全余裕率は、損益ゼロとなってしまうまでの余裕を表すもので、現状の売上高から見ていくら下がると赤字になってしまうのかを判断することができます。

たとえば、損益分岐点比率が90%の会社の場合には、あと10%売上数量が下がってしまっても黒字をキープすることができます。この10%を「安全余裕率」といいます。

まとめ

CVP分析は、事業ごとの売上高、限界利益率、固定費の関係から必要利益を獲得するための施策を見出すための手法です。
CVP分析を行い余裕のある経営を目指すためには、変動費率を下げること、固定費総額を節約すること、1個当たりの販売価格を上げる(少なくとも下げない)などの施策を行うことが必要です。

また、より深く分析を行うためには時間当たり生産性で有利な商品を見つけることも大切です。
固定費の中でも最も大きい人件費は、労働時間に応じて発生している費用ですから、時間当たりの付加価値の高い商品に時間を使う、つまり時間当たりの限界利益が高い商品を把握することができて、不採算分野からは思い切って撤退するという意思決定を行うこともでき、効率よく利益をアップさせていくことができます。

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