コスト分析とコスト削減の方法

公開日:2024年04月17日
最終更新日:2024年05月02日

この記事のポイント

  • コストは、前年対比、損益分岐点売上高などで分析する。
  • 分析をしたら、コスト削減の対象と目標値を設定する。
  • コスト削減の方法は、従業員のモチベーションなども併せて検討する。

 

会社を経営するうえで資金繰りを改善するためには、売上を上げると同時にムダなコストを削減する必要があります。まずはコストの分析を行い、そのうえで削減対象を把握します。
ただし、単に費目を個別に見るだけでなく、市場分析、顧客の状況、将来性の見込みなどを短期・注記・長期的な視点から見て削減対象を見極めることが大切です。

コスト分析

コスト削減を検討するうえでは、コストを時系列で分析し、削減の効果を測定する必要があります。具体的な分析の方法としては、前年対比、損益分岐点売上高、ROIなどがあります。

(1)前年対比を行う

前年対比とは、過去の財務比率との比較を行う方法です。
売上高に対して個々の経費の比率がどのように変化しているのか、削減した場合には損益にどのような影響をもたらすのかを把握することができます。

(2)損益分岐点売上高を把握する

損益分岐点売上高とは、売上高と費用の額が等しくなり損益がトントンになる点です。
損益分岐点売上高は、「赤字と黒字の境目」であり、「固定費 ÷ 限界利益(※)」で計算します。削減対象の費目が固定費と変動費のどちらに属するのか、削減した場合には損益分岐点にどのような影響があるのかを把握する必要があります。
※限界利益は「売上高-変動費」で計算します。

(3)ROIの変遷を見る

ROIとは、投資資本に対する利益の割合を見る指標です。
ROIは、総合的に会社の収益性を判断する際に活用できる指標で、何を資本にするかによって、以下の4種類に分けることができます。

①総資産経常利益率(ROA)
すべての運用した資金が、どれだけの利益を生み出したかを測定する指標です。
総資産経常利益率(ROA)=経常利益÷総資産

②経営資本営業利益率
本業の事業活動に使われた経営資本(OA)が、どれだけの営業利益をもたらしたかを知るための指標です。
経営資本営業利益率=営業利益P÷(経営資本OA)

③使用総資本利益率(ROCE)
会社が調達した資本(有利子負債と自己資本)を使って、どれだけの利益を稼ぐことができたかを測定する司法です。
使用総資本利益率(ROCE)=税引き後利益÷使用総資本(有利子負債と自己資本)

④投下資本利益率(ROIC)
資金の調達と資金の運用両方を見て、いかに有効に資産運用してビジネスで成果を上げているかを見る指標です。
ROIC(投下資本利益率) = 税引後営業利益 ÷ 投下資本

これらの指標を分析し、費用をどれだけ削減すると、ROIはどのように変遷していくのかをシミュレーションする必要があります。

コスト削減

コスト分析が終わったら、次に削減対象の費目を検討していきます。
この時注意すべきなのは、費用削減による効果と影響力をしっかり検証することです。
また、どのような費目を見直すのか、いくらの削減を目指すのか削減の対象と目標値を設定します。
次にコスト削減の方法を検討しますが、コスト削減といってもダイレクトにコストカットするだけでなくさまざまな方法がありますので、慎重に選択していくことが大切です。
従業員のモチベーション低下につながりかねないコスト削減は、事業にとって逆効果となるリスクがあるため避けましょう。

(1)不動産賃料は売上高の10%以内

不動産の賃料削減について検討する際には、まず賃料がそもそも妥当な額なのかを検討します。
業種によって異なりますが、小売業では売上高の2~6%、飲食業だと売上高の10%以内に抑えることが目安と言われています。
賃料は妥当であっても、発生する共益費や水道光熱費、管理費などの付随費用が高額である場合もあります。
最近は、リモートワークも増えているので、そもそもオフィススペースがそれほど必要ない会社も多いので、従来よりも狭いスペースで事業を行なえるか検討してみましょう。

また、賃料や付随費用が妥当でない場合は、賃料削減交渉を行うのもひとつの手です。不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法もありますが、鑑定料というコストが発生しますし、不動産仲介会社に交渉を依頼すれば、仲介料や更新手数料が発生しますので、これらのコストも視野に入れておきましょう。

(2)広告宣伝費は本当に効果があるか

広告宣伝費は、自社製品やサービスを認知してもらい、売上高増加やイメージアップにつなげることが目的ですから、やみくもに削減するのは避けるべきでしょう。
広告費と売上高の相関関係を測定しるのは難しいものですが、可能な限り効果の測定を行ってみましょう。
たとえば、顧客にアンケートを実施すれば相対的な効果を把握することが可能です。
そのうえで、広告宣伝の効果が明確であれば、原則として広告宣伝費を見直す必要はありません。
費用対効果がないと判断した場合には、代替案について検討するか、広告宣伝自体を行わないことも検討しましょう。

(3)在庫管理費は適正在庫がカギ

在庫管理の目的は、コスト削減だけでなく適正在庫によって欠品等が生じないようにすることです。
在庫管理は「必要なときに必要な分だけ」を心がけ、タイムリーに在庫を使用する必要があります。
ムダな在庫を減らせば、保管コストを節約することができますし、商品の廃棄損を減少させ、キャッシュ・フローを改善することにもつながります。

また、在庫管理が適切に行われていても、在庫を維持する付随管理費用等が妥当かも検討する必要があります。倉庫の移動や物流戦略なども検討しましょう。複数の物流拠点がある場合には、この拠点を集約するとコスト削減につながります。

(4)保険料は保障内容を見直す

保険料については、目的と保障内容を確認することから始めます。
目的に適っているか、補償内容は十分であるかを検討し、さらに代替保険商品についても検討してみましょう。
そのうえで、目的に適っていないと判断した場合には、解約や見直し、あるいは減額を検討します。
保障内容が十分でない場合には、保険商品の見直しを検討します。

(5)営業時間当たりの売上高の検討

今までどおりの営業時間や客単価で問題ないのかを、検討します。
営業時間当たりの売上高が妥当かを検討するうえでは、時間ごと、曜日ごと、月ごとの客数と客単価について分析します。
客数や客単価が伸びる余地がないと判断した場合には、営業時間の見直しを行い時間短縮を検討します。
営業時間を短縮することで、人件費やその他のコストの見直しを行うことができます。

(6)ソフトウェアライセンスの見直し

ソフトウェアのライセンスについては、現場で必要な数を把握できていないために余分なライセンス数を契約しており、不必要な支払いが続いているケースが多々あります。
ソフトウェアのライセンスとは、たとえば、Microsoft365やGoogle Workspace、Adobe、Zoomなどがあります。
どのサービスも社内で必要なライセンスの数を管理して現場の水準に合わせたプランを選択する必要があります。
これらのライセンス数については、現場での利用実績をもとに取捨選択していくことを検討しましょう。
なかには、PCを破棄する場合に利用可能な欄センスを端末から回収しないで処分してしまっていることがありますが、通常のライセンス契約では端末間のライセンス移管は許諾されているものが多いので、かならず回収するようにしましょう。

(7)業務委託費は、適正水準の見極めが大切

業務を行ううえでは、常にコストの削減について要求されるものです。
しかし取引先に「価格を下げてほしい」と依頼したところで、大抵の場合は「これ以上は下げられない」という返答があるものです。
このような場合には、無理に価格を下げてもらうのは得策ではありません。相見積もりなどをしっかりとって、見直し余地のある単価を見極め、適正水準に修正してもらうよう交渉します。そうすることで、現実的な価格や改善余地が見えてくることもあります。
ただし、価格だけで業者を選定するのはNGです。品質や運用面で実態が伴わなければ、トラブルにつながりかねませんし、後々値上げ交渉されてしまったりすれば、元も子もなくなります。

(8)携帯プランの見直しは案外効果がある

従業員に配布する携帯プランについて、高い割引率を得るために長期契約を締結しているケースがよく見られます。
しかし、あまり利用されていない携帯に過剰なサービスオプションが適用されていたり、ムダにハイスペックな携帯が支給されていたりするケースがあります。
会社全体で同じオプションを選択するのではなく、部門ごとの利用実績やニーズを確認して、それぞれに応じたプランを適用すべきですし、オプションサービスも部門ごとに検討すべきです。
携帯ごとの通話実績は大きく異なるのに、一律に「かけ放題プラン」を適用するのも避けて、各プランの内容を十分確認して選択することが大切です。
なお、政府の要請もあり、携帯通信の料金プランは大幅な値下げ傾向が続いています。いくら長期契約でいくらかの割引料が付いていても、1~2年後にはその割引率を大きく上回る格安プランが提供される可能性は大いにあります。
現在長期契約プランを選んでしまっている場合でも、残り1年程度であれば、料金水準が契約条件を下回っているかもしれません。この場合には、契約期間の満了を待たずに条件見直しの交渉をしてみることをおすすめします。

なお、携帯電話を内線化できる携帯電話と固定電話の融合ソリューションサービスを利用するのもひとつの手です。大掛かりな工事は必要なく、おとくラインが適用されれば、社外の従業員間の通話は定額(無料)になります。

まとめ

コロナ禍による売上の急減や、国際情勢の不安定化に伴う原材料価格の高騰など、企業の業績や収益はまだまだ先が見えない状態が続いています。
この非常事態に対応するためには、キャッシュアウトを回避するためのコスト削減が必要です。
コスト削減というと、一般的には最も高額な人件費のカットが検討されるケースが多いものですが、人材への投資は将来に向けた投資でもあるので、むやみに削減すると将来への影響が懸念されます。
したがって、まずは人件費以外のコストを分析して中身を確認し、コスト削減の具体的な方法を探り、非常事態に対応できるだけの企業体質を作り上げることが大切です。

コスト分析について相談

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、コスト分析やコスト削減などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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