事業計画書の役割・作成方法

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2024年05月20日

この記事のポイント

  • 事業計画書とは、「事業をこれからどうするか」「どう稼いでいくのか」に関する構想を示すもの。
  • 事業計画書は、読み手とのコミュニケーション・ツールである。
  • 事業計画書には、事業への気持ち、背景となるニーズ、数値計画、管理体制などを記載する。

 

事業計画書とは、簡単に言うと「事業を進めるための計画を示した書類」のことです。対社内では、当面達成すべき目標を示すための役割を持ち、対外的には、取引先や顧客、投資家や出資者、銀行の融資担当に自社の成長戦略の達成をコミットする役割を持ちます。

特に、銀行からの融資を受けたり投資家から出資を受けたりするなど、事業資金の調達を考えている事業者にとっては、事業計画書は重要な書類です。
とくに起業資金を調達する際は、これまでの実績を示す決算書等の書類がないため、融資をするか出資をするかについては、この事業計画書を中心に判断せざるを得なくなります。

したがって、事業計画書には「事業への熱い想い」だけを書いただけでは足りませんし、かといって分析した数値だけを並べればそれで説得力を持つかというと、そうでもありません。

この記事では、読み手とのコミュニケーション・ツールとして効果的な事業計画書を作成するためには、どのようなポイントに注意すればよいのかについてご紹介します。
 

事業計画書の豆知識

事業計画書とは、起業をする際や社内で新規事業を立ち上げる時に「誰に」「何を売って」「どのように儲けるか」「どのように事業を立ち上げるか」といった事項についての考えを整理するものです。
事業計画書の内容は、矛盾が生じないような内容であることが大切で、かつ仲間を募ったり事業の資金調達のためにも使うものであることから、分かりやすく説得力のある内容を書く必要があります。
なお、事業計画書の作成には時間をかけることは禁物です。作成しているうちにタイミングを逃したり、せっかくいいアイデアだったのに競合が現れたりしてチャンスを逃してしまうことがあるからです。
また、事業計画書を作成する際には数値やスケジュールに矛盾がないように作成することが大切ではありますが、結局のところは、その事業についてどれだけ深く考えたか、どれだけ熱意を持っているかということも表現する必要があります。
なお、事業計画書を作成したら第三者に意見をもらうことをおすすめします。客観的な意見をもらうことでブラッシュアップすることができますし、自分だけでは思いつかなかったようなアドバイスを得ることができるからです。
そして、意見をもらう相談相手としては税理士が最適です。税理士であれば、数値の矛盾を指摘してもらうことができますし、多くの企業に関わっているので、思わぬアイデアをもらえる可能性があるからです。

事業計画書とは

事業計画書とは、事業を進めるための計画、つまり「事業をこれからどうしていくのか」「どのようにこれから稼いでいくのか」という将来の計画、構成を示した書類のことをいいます。
計画ですから、現在対象としている事業を行っていない場合でも、その事業の将来性とその実現可能性を示す必要があります。

事業計画書は、顧客や取引先などのメンバーと対話するためのコミュニケーション・ツールとして使用されることもありますが、投資家や銀行の融資担当から事業を行うための資金を調達する際にも必要不可欠なツールです。

たとえば、銀行から融資を得るためには事業計画書を使って、事業の中身を理解してもらう必要があります。
事業計画書では、単に中期目標や数値計画、管理体制などについて記載するだけでなく、事業への気持ち、背景となるニーズを丁寧に分かりやすく説明する必要があります。

▶ 銀行融資を引き出す事業計画書の書き方

(1)事業計画の役割

事業計画の役割は、大きく対社内・対社外の2つの役割があります。

対社内では、当面達成すべき目標を示し、業務や役割分担、責任の所在、期限を明確に示す役割を持ちます。
進むべき方向性と実現すべき価値観を明示し、それらを達成するために必要となる施策をしっかり策定する必要があります。

対社外には、取引先や顧客、投資家や出資者、銀行の融資担当に自社の成長戦略の達成をコミットする役割があります。
特に、銀行やベンチャーキャピタル(以下VC)、エンジェル投資家(以下、エンジェル)など、事業を成長させるうえで必要な資金調達を目的とするので、事業計画の説明はもちろん、それを達成するための明確なコミットメント(単なる約束ではない、具体的な仕組み)が求められます。
また、銀行は、全額返済してもらえるかどうか、金利をきちんと支払えるかどうかを見極めようとしますし、VCやエンジェルは出資がどのような形でメリットをもたらすかを知ろうとします。したがって、この場合には返済期間までの計画なども必要となります。

(2)事業計画に示すべきこと

事業計画書が、事業を推進するための将来の計画や構成を示すものであることから、事業計画書には、少なくとも「誰に対して」「どのような商品・サービスを提供するのか」という事業のコンセプト、業務と役割分担や期限、そしてどのようにその事業を推進していくのかという具体的な行動を含んだ内容である必要があります。

事業計画書のフォーマットには決まったものはありませんが、少なくとも以下の項目を含んでいなければなりません。

(1)経営(ビジョン):事業のあるべき姿
(2)商品・サービスの概要:提供する価値
(3)販売計画:手段とコスト構造
(4)開発計画:自社の技術レベルの検討
(5)人員計画:人を活かすオペレーション
(6)収益計画:事業の儲かるしくみ
(7)アクションプラン:短期計画と中長期計画

(3)事業計画書は「読み手」とのコミュニケーション

事業は1人で行うものではなく、多くの人のサポートが必要です。
サポートを受ける人は上司かもしれませんし、チームメンバーかもしれません。また、社外の融資を受けたい銀行や、出資してもらいたい投資家であるかもしれません。

このように、事業を行ううえでサポートを受けたいさまざまな関係者とコミュニケーションをとるためのツールのひとつが、事業計画書ということです。

その人たちに「今度こういう事業をやろうと思っている」「そのためには、このような計画で実施するつもりだ」「まずは、今後3年間で事業をこのように成長させようと思ってる」と説明して、その人たちに「この事業は、確かに魅力的だからサポートしよう」と思ってもらわなければなりません。
つまり、事業計画書は、まわりの共感とサポートを得るために必要なものということになります。

また、どれだけ緻密な計画を立てても、実際にスタートしてみると思いがけない事態が生じてうまくいかないことがあります。そのような時には「どこが悪かったのか」を見直して、修正するプロセスが必要になります。このような時にも事業計画書があれば、「この計画のここに問題があったから、このように修正しよう」というポイントが把握しやすくなります。そして、そのポイントを説明しやすくなります。事業計画書は、このようなコミュニケーション・ツールとしても活用することができます。

事業計画書の構成

事業計画のなかでは、経営理念やどんな商品・サービスを提供するのかという事業のコンセプトや、どのようにその事業を実現していくのかという具体的な行動の道筋(アクションプラン)などを、分かりやすく記載する必要があります。
事業計画書を策定するうえでは、以下の4つの事項を行ったり来たりしながら、精緻化していきます。

①事業の意義を明確にする
事業を行う意義(どのようなニーズがあるのかなど)を明確にします。

②ビジネスモデルを考える
どのように事業を行うのか、儲けのしくみを考えます。

③期待成果を検証する
その事業を行った時に、どのような期待効果を得ることができるのかを考えます。

④具体的な行動(アクション)を明確にする
その事業を実現するために、どのようなアクションが必要となるのかを考えます。

(1)経営(ビジョン):事業のあるべき姿

経営理念とは、事業を進めていくなかで将来あるべき姿、事業の進める上での展望、想いなどのことをいいます。
事業計画書では、まず経営理念をしっかりと示す必要があります。

経営理念というと抽象的なイメージがあることから、「資金調達の際には、それほど重要ではないだろう」と思われがちですが、経営理念は、事業計画書でかならずチェックされます。
なぜなら、すべての数値計画や事業活動は、この経営理を念軸として実行されるものだからです。
事業は「売上見込みが大きい」とか「採算がとれるか」といったことも、もちろん大切ですが、この「思い」がどれだけ強いのかを読み手に共有することは、ミッションを明確にするうえでも大切です。
したがって、事業の方向性は理解しやすく、その意図が把握されやすい経営理念を、しっかりと説明できるようにしておきましょう。

経営理念はなるべく簡潔に文章は3文以内に収まる範囲で事業の全体を伝えます。これは創業計画書でも新規事業の計画書でも同じです。

特に創業計画書の場合は、代表者がなぜその事業を行おうと考えたのかという動機も含めて書くと良いでしょう。新規事業の場合はその事業を行う理由を既往の事業も含めた全社的な視点で書く必要があります。
既往事業とのシナジー効果について説明すると説得力を持つ場合があります。

たとえば、スターバックスの実質的な生みの親であるハワード・シュルツ氏が挙げたのが、以下のミッションです。

「都会的なトレンドに敏感なお客様に、自宅でも職場でもない、第3の場所を提供する」

つまり、提供しているのはコーヒーではなく、家庭でも職場でもない場所で、自分らしく過ごすことができる場所である、そしてそのためには、良質なコーヒーを提供し、BGMやソファーでくつろげる雰囲気を演出することをミッションとして掲げているのです。

(2)商品・サービスの概要:提供する価値

意義のあるミッションも大切ですが「儲かるかどうか」という経済性との両立も大切です。
そこで、何を売るのかという「商品・サービス」の概要を説明する時には、事業の魅力度を伝えるための市場調査などが必要です。
事業を進めるうえでの大きな要素は、顧客が商品やサービスに価値やありがたみを見出し、対価として代金を支払うことだからです。
顧客がいなければどんなに良い商品・サービスでも売上が立たないわけですから、一見当たり前のようなことですが、事業計画書のなかでは、この価値やありがたみが単に「自己満足」でしかない場合も多いものです。

顧客にとっての価値やありがたみを説明するためには、マーケティングや経営戦略立案の現場で使われるようなフレームワークを利用すると簡潔に説明できるのでオススメです。

事業の魅力度を考えるフレームワークとして、一番適しているのが「3C」です。
3Cとは、「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字で、「市場(customer)=消費者に提供しようとしている商品やサービスに対してニーズがあるか」、「競合(competitor)=競合はどのような強みを持っているのか」「自社(company)=自社はどのような強みを武器に、この市場でどの程度勝てる見込みがあるのか」ということを明らかにする手法です。

市場(customer)
市場(customer)調査の方法としては、まずは手近なGoogleでの検索や、身近な人へのヒアリングなどから着手します。そして「ある程度、この市場はいけそうだ」というニーズを把握したら、つぎにその市場規模を調査します。
手元にある情報や世の中ですぐに入手できる情報では、事業計画書においてはあまり説得力を持ちません。
まずは、ざっくりと市場規模を推定したら、景気変動、人口・流行の変化、法律改正などの社会的な変化を見つけ出し、購買人口、潜在顧客ニーズ、購買決定者、購買要因、購買決定プロセスの分析を行う必要があります。
競合(competitor)
「競合(competitor)」のサービスや商品については、実際に使ってみるなどの体験も重要です。さらに、競合のサービスと商品の結果である売上や利益といった事業の結果となる企業の業績については、企業のホームページや「四季報」などで確認することができます。
一番わかりにくいには、競合にサービスや商品を生み出す「仕組み」でしょう。「仕組み」の情報は、他社にマネされたら困りますから、企業のホームページにも書かれていません。したがって、ほぼ推測するしかなくなります。推測とは、「こういう商品をこの価格でつくっているんだから、コスト構造はこうなっているかな」とか「記事で、こんな発言をしているから、組織体制はこうなっているかな」といったことです。したがって、競合分析もそれなりの時間をかけて行う必要があります。
自社(company)
「自社(company)」の分析とは、「市場(customer)」「競合(competitor)」の結果を踏まえ、あらためて自社の強みや弱みを分析することです。市場の流れに対してどのような施策を競合他社が行っているのか、それと比較して自社が提供できる顧客への価値は何なのかを考えていきます。この時大切なのが、顧客目線で競合をとらえること、そして自社の強みを設定する時には、競合と比較して設定しないとひとりよがりになってしまうということです。
自社の強みは、自分が考える強みではなく、競合と比較して出てきたものでなければ、「自分では強みだと思っていたけど、他社はもっと強かった」となりかねません。

(3)ビジネスモデル:手段とコスト構造

ビジネスモデルとは、儲けるためのビジネスの仕組みです。
ビジネスモデルは、まずモノやサービスを生み出し、利用者に届けるプロセスを明確にし、自社が提供する付加価値を明確にする必要があります。また、そのなかでは自社が担当しない部分について外部パートナーとの連携を検討する必要がありますし、対価を得る仕組みについても考える必要があります。

販売計画においては、自社の商品やサービスを売るための手段とそのコスト構造を示します。具体的には、仕入先→自社→顧客などのサービスの構造に合わせ、コストを示します。

ポイントとしては、何よりも実現可能性を全面に押し出すことが大切です。
また、単に将来の数値をシミュレーションしただけではなく、具体的な施策を考え、その戦略がどのように指標に影響が出るかも記載する必要があります。

(4)開発計画:自社の技術レベルの検討

プロジェクトマネージャー等が作成するプロジェクト計画がそのまま流用できる場合もありますが、IT業界に強い一部のVCなどはともかく、一般的にはIT業界の常識や用語に関して理解できないケースがほとんどです。

開発計画を示す際には、ソフトウェア開発計画で要件定義書や設計書が必要になるわけではありません。いかにハイレベルな開発を行っているのかを語っても、それは自己満足に過ぎません。
何よりも大切なのは、可能な限り分かりやすい言葉で開発工程などを伝え、確実に製品が完成するということを説明することです。

また、開発計画においては、自社の技術レベルを細かく検討する必要があります。
たとえばお菓子メーカーの場合であれば、サクサク感のある生地をつくろうという「商品企画」があって、サクサク感のある生地をつくる「開発」の工程があります。
量産するために材料を調達して製造し、小売店に流通させて販売します。
「加工/製造」をするというステップについては、最初に工場の設備をつくる「設備構築」、従業員を採用する「人員採用」、実際につくる「加工/製造」、品質テストする「品質保証」などのプロセスに区分することができます。
自社内で十分な設備があれば、製造に特化するという判断もできますが、「製造はできるけど、企画力はない」ということなら、他社と連携することも検討します。

(5)人員計画:人を活かすオペレーション

事業を行ううえでは、無駄なく、無理なく、むらなく、適正な人員を確保する必要があります。
人員は即戦力、提案力、企画力、組織的実行力など事業規模の変化によって求める能力が異なりますから、その点も見極めて計画する必要があります。

既往の事業の人材を新規事業の責任者として登用するのか、どのような知見を持った人物を配属するのか等を説明すると良いでしょう。
人員計画を策定するうえでは、以下の4つの役割を誰にするのかをまず決める必要があります。

実行責任者
事業を行ううえで責任を持つ人です。物事に対して決定権をもち、タスクごとの責任者も明確にするという役割を持ちます。
それぞれのタスクの責任者も決める必要があります。

説明責任者
実際の事業の進捗、状況の把握と共有、そしてそれらを説明する責を持つ人です。

サポート者
有用な情報やアドバイスをもらい、事業を推進するうえでサポートをしてくれる人です。
たとえば、商品企画のプロジェクトであれば、商品開発部の人にアドバイスをもらう必要があります。情報を共有し、やりとりをしながら、巻き込んでいきます。

情報提供者
アドバイスやサポートは求めないものの、事業を推進するにあたり、情報を提供する人です。

また、事業の規模拡大に伴い新規人材の確保が必要な計画であれば、どのタイミングで、どのような人材をどのように雇用するのかなど、具体的に書くようにしましょう。

(6)アクションプラン:事業の儲かるしくみ

アクションプランは、具体的な数値計画をふまえた説得力のあるプランを提示する必要があります。

数値計画とは、事業計画実施期間の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計画(または資金繰り計画)のことをいいます。

損益計算書(PL)
ある一定期間にどれだけの儲けを出すことができたのかを示す資料です。
この1年間にどれだけ売上をあげて、どれだけ利益が儲かったのかを示します。

貸借対照表(BS)
ある一時点における会社のストックを示します。
「今日、この時点で会社にどのくらいの現金が残っているのか」を示します。

キャッシュフロー計算書(CF)
ある一定期間に、現金がどれだけ増減したのかを示します。

この時、会社全体の損益計算書だけ作成し、貸借対照表を作成しない場合もありますが、融資担当には「貸借対照表がないということは、資金繰りを管理できていないことだ」と判断されてしまいますので、事業計画そのものの信ぴょう性すら、疑われてしまうこともありますのでおすすめできません。

数値計画においては、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計画、財務計画のゴール、事業別の損益計算書、得意先別の売上(営業利益まで)などをしっかり用意する必要があります。

行動計画は、数値計画の策定に従って、具体的な施策をまとめます。
行動計画は、現状認識と計画上の数値のギャップをいかに埋めるかを明示する必要がありますので、目的、施策の概要、実施年月、実施の確度などについて説得力のある数値に基づいて説明する必要があります。

まとめ

以上、事業計画書の役割・作成方法についてご紹介しました。
事業計画書は、事業の本質を示す非常に重要な書類です。
公的な文書ではないので、決められたフォーマットがあるわけではありませんが、標準的なフォーマットのようなものは存在し、一般的には、事業概要、財務諸表、参考資料といった要素から成り立っています。

説得力のある事業計画書を作成することが、資金調達できるか否かを決定づけることもあり、資金調達に精通した税理士であれば、どのような点に注意して事業計画書を作成すれば、資金調達を成功させられるかを熟知しています。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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