固定長期適合率とは|貸借対照表から何が分かるか

公開日:2019年11月09日
最終更新日:2020年06月18日

目次

  1. 固定長期適合率とは
    • 固定比率との違い
    • 固定長期適合率が100%以上だと危険
    • 業種別で見る固定長期適合率
  2. 固定長期適合率以外の「安全性分析」
    • 流動比率・当座比率
    • 自己資本比率
  3. まとめ
    • 税理士をお探しの方

この記事のポイント

  • 固定長期適合率とは、「安全性分析」の指標のひとつである。
  • ここでいう「安全性」とは、負債を支払う能力があるかという意味。
  • 固定長期適合率が100%以下だと危険。

 

固定長期適合率とは、貸借対照表から見ることができる「安全性分析」の指標のひとつです。
安全性を見る視点には、短期の視点と長期の視点がありますが、固定長期適合率は長期的な視点から安全性を測るための指標です。

この記事では、固定長期適合率の意味や計算方法、業種別で見る固定長期適合率の平均値のほか、固定長期適合率以外の安全性分析の指標も併せてご紹介します。

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固定長期適合率とは

固定長期適合率とは、長期的な視点から見て、会社の安全性を分析するための指標のひとつです。

ここでいう「安全性」とは、負債を支払う能力があるかという意味で、安全性を分析する時には、長期と短期に分けて支払い能力について分析をします。また、十分な自己資本を持っているかという会社の財務体質の健全性を判断するのも安全性分析のひとつです。
このような安全性を分析する指標は、主に以下のようなものがあります。

短期の支払い能力を見る指標
流動比率、安全比率

長期の支払い能力を見る指標
固定比率、固定長期適合率

財務体質の健全性を見る指標
自己資本比率

固定長期適合率は、固定資産を取得するための資金が自己資金では足りない場合に「では、長期の借入金と合わせれば、賄えているか」を確認するための指標です。

固定長期適合率は、以下の計算式で計算します。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

会社は、自分で集めた資金と他人から借りた資金を使って運用しています。
その運用については、現金回収が短期間でできるもの(流動資産)と長期間かかるもの(固定資産)に分けられています。一方、資金を調達する方も短期間で返さなければならないもの(流動負債)と長期間かかって返すもの(固定負債)があります。

会社経営の「スムーズな資金の流れ」という視点で考えれば、回収に長期間かかる資産は長期の資金で賄うのが理想です。
つまり、安全性という視点からみれば、固定資産を取得するための資金は、できる限り自己資本や長期の借入金などで賄うことが重要といえます。

自己資本(返済する必要がない)と固定負債(長期の借入金)の合計額と固定資産の金額のバランスの指標である固定長期適合率を見れば、固定資産を取得するための資金を、自己資本と自己資本に近い長期の借入金で賄えているかを判断できる、つまり「会社の資金運用がきちんとできているか」を判断することができるわけです。

固定比率との違い

固定長期適合率と同じように、長期的な視点から安全性を判断する指標として「固定比率」があります。

固定比率は、固定資産を自己資本で割って計算します。

固定比率=固定資産÷自己資本×100

固定資産は、一度購入すれば数年間は使用します。また、事業に使用してお金を生み出していく期間も長期にわたります。したがって、固定資産の購入資金はできるだけ借入金ではなく返済義務のない株主からの出資や稼いだ利益で工面するのが望ましいといえます。固定比率は、固定資産をどの程度自己資本で賄えているかを見るための指標です。

一方、固定長期適合率は、固定比率の分母である自己資本に固定負債を加えます。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

固定負債は、自己資本に強い安定した資金といえます。
したがって、自己資本で賄えていなくても、固定長期適合率が高ければ長期的な支払い能力は安全だと判断することができるのです。

<Point>

固定比率=固定資産÷自己資本×100
…100%を超えていれば、固定資産を全額自己資本で賄っている

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
…100%を超えていれば、固定資産を全額自己資本と長期の借入金で賄っている

固定長期適合率が100%以上だと危険

固定長期適合率の目安は100%です。
100%以上だと、固定資産を自己資本と固定負債という安定した資金で賄えていないということになるからです。

前述した「固定比率」と比較すると、分子に固定負債をプラスしている分、甘い見方をしているので、固定比率だけでなくさらに固定長期適合率まで100%を上回っているようだと、長期の支払い能力はなおさら危険であるということになります。このような会社は、事業活動に充てるため短期に返済する予定で集めたお金が、長期的な設備投資に流用されていることを意味するので、お金の使い方を間違っている、つまり「会社の資金運用がきちんとできていない」と判断されてしまいます。

個人の生活に例えるなら、高金利の消費者金融で借りたお金でマイホームを購入するようなものです。したがって、固定長期適合率の目安である100%を上回る状態は危険と判断される場合があります。

業種別で見る固定長期適合率

固定長期適合率の目安は100%ですが、業種によって差があります。
たとえば建設業の固定長期適合率は201.5%ですし、製造業の固定長期適合率は160.7%です。
「中小企業実態基本調査」では、業種別の固定長期適合率について調査データを公表していますので、同業他社と比較してみましょう。

建設業 201.5%
製造業 160.7%
情報通信業 204.5%
運輸業、郵便業 135.0%
卸売業 173.7%
小売業 142.7%
不動産業、物品賃貸業 115.8%
学術研究、専門・技術サービス業 142.7%
宿泊業、飲食サービス業 103.7%
生活関連サービス業、娯楽業 106.1%
サービス業(ほかに分類されないもの) 166.8%

参照:中小企業庁「平成30年中小企業実態基本調査」

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固定長期適合率以外の「安全性分析」

安全性の分析を見る指標としては、固定比率や固定長期適合率などの「長期の支払い能力」をチェックする指標のほかにも、「短期の支払い能力」をチェックする流動比率・当座比率、そして「財務体質の健全性」を見る自己資本比率があります。
ここでは、固定長期適合率以外の安全性分析の指標についてもご紹介します。

流動比率・当座比率

流動比率、当座比率は、ともに会社の短期の支払い能力を見る指標です。

流動比率
流動比率とは、会社の短期の支払い能力を見る指標です。
流動比率は、流動資産を流動負債で割って計算します。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

流動資産と固定資産、流動負債と固定負債を分ける基準は「1年以内に現金化や返済ができるかどうか」です。つまり、流動比率で1年以内に返済すべきお金を流動資産で賄えているかを判断することができます。

当座比率
当座比率は、流動比率よりさらにシビアに短期の支払い能力を判断するための指標です。

当座比率=当座資産÷流動負債×100

流動資産のなかでも当座資産(現金・預金、受取手形、売掛金、有価証券)という、さらに現金に近い資産のみに着目し、すぐに支払わなければならない負債を賄えるかどうかをチェックするための指標です。

流動比率は、200%以上、当座比率は100%以上が安全性の高さの1つの目安となっています。

自己資本比率

自己資本比率とは、会社で運用している資金のうち、自分のお金(自己資本)で賄っている金額と他人のお金で賄っている金額の比率を見る指標です。

自己資本比率=自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)×100

自己資本とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計で、総資本とは、貸借対照表の「負債の部」と「純資産の部」の合計です。

他人で賄っている部分(負債)は、いつかは返済しなければなりませんが、自分のお金(「純資産)で賄っている部分については、返済する必要はありません。
会社が存続していくためには、他人のお金に依存している会社より自分のお金で成り立っている会社の方が安全だといえます。
つまり、自己資本比率が高い会社は、安全性が高い会社ということができます。

自己資本比率が低い場合には、増資によって資本金の額を増加させる方法や損益計算書での「税引後当期純利益」を利益剰余金の一部として社内に留保する方法などで、自己資本額をアップさせるなどの対策をとる必要があります。

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まとめ

以上、固定長期適合率の意味や計算方法、業種別の目安や、その他の安全性分析の指標などについてご紹介しました。
固定長期適合率は、固定資産を自己資本と固定負債の合計で割ったものであり、長期的な視点で支払い能力の安全性を分析する指標で、100%以上だと支払い能力が危険である可能性が高いといえます。
資金繰りが苦しくなる状況も想定されますので、早めに対策を検討しましょう。

なお、経営分析の指標としては、ここでご紹介した以外にも「収益性」を見る指標や「生産性」「成長性」を見る指標などがあります。
ここでご紹介したさまざまな安全性分析は、会社を経営するうえでは非常に大切な指標ではありますが、とはいえ安全性分析だけにこだわり過ぎても、必要な投資をする機会を失い、収益性や成長性に影響が出ることもあります。したがって、経営分析を行うためには、さまざまな視点から分析を行うことが必要なのです。

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