フレックスタイム|導入するための手順(事例付き)

公開日:2019年10月30日
最終更新日:2020年04月21日

目次

  1. フレックスタイム制とは
    • フレックスタイム制のメリット・デメリット
  2. フレックスタイム制を導入する手順
    • 就業規則などに規定する
    • 労使協定を締結する
    • 時間外労働となる場合は36協定が必要
    • フレックスタイム制に関する協定例
  3. フレックスタイム制のポイント
    • 会議はコアタイムに行う
    • 時間外労働となる場合
    • 休憩・休日に関する規則との関係
    • 出張の取り扱い
  4. まとめ
    • 社会保険労務士をお探しの方

この記事のポイント

  • フレックスタイム制度を導入するためには、就業規則などに規定し労使協定を締結する必要がある。
  • 就業規則では、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を規定する。
  • 労使協定では、フレックスタイム制を適用留守労働者の範囲などを規定する。

 

フレックスタイム制は、「通勤ラッシュを避けることができる」「時間外労働を削減できる」などメリットの多い制度です。しかし、導入するためにはいくつかの要件を満たす必要があり、また就業規則などに規定し労使協定を締結する必要があります。

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フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、最長3カ月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間の範囲内において、労働者がその枠内で各日の始業および終業の時刻を自主的に決定して働く制度です。
一般的なフレックスタイム制では、以下のように労働者が必ず勤務しなければならない時間帯(コアタイム)と、その時間帯のなかであればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)との分けているケースがほとんどです。

なお、フレキシブルタイムが極端に短くてほとんどがコアタイムというようなケースでは、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねたとはいえませんから、フレックスタイム制とはみなされません。

フレックスタイム制を導入するためには、清算期間(原則1カ月)の総労働時間(1週あたり40時間の範囲内)を決めておく必要があります。つまり、1カ月の暦日数が30日の月は171時間、31日の月は177時間が最大となります。
そして、決定した総労働時間比べて実労働時間の方が少なければ、その分の給料を引きます。この時不足分として給料を引かず翌月に持ち越しても問題ありません。
逆に実労働時間の方が多ければ、残業代として支払います。この場合には翌月に持ち越すことはできず、必ずその月に支払わなければなりません。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

フレックスタイム制は、「通勤ラッシュを避けることができる」「時間外労働を削減できる」「従業員の自主性が尊重される」など多くのメリットがある制度です。
しかし、業務の繁閑にあわせて勤務してほしいというニーズがある会社にとっては、フレックスタイム制を導入してしまうと、業務が忙しい時に遅い出勤、早い退社をする従業員に対抗する手段がなく、業務がまわらなくなってしまうというデメリットがあります。また、フレックスタイム制は、満18歳に満たないものについては適用することはできません。
したがって、導入する場合には、対象となる職種や従業員の選定についてよく検討するようにしましょう。

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フレックスタイム制を導入する手順

フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則その他これに準ずるもので、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めなければなりません。また事業場の過半数労働組合、それがない場合には過半数代表者と労使協定を締結する必要があります。

就業規則などに規定する

フレックスタイム制を導入する場合には、始業・終業の時刻の決定を労働者に委ねる旨を就業規則(就業規則の作成義務のない場合には、労働者に周知される文書)に定める必要があります。また、この時には同時にコアタイムやフレキシブルタイムについても就業規則に定める必要があります。

(フレックスタイム)の規定例
第○条
会社は、従業員の全部または一部に対し、労働基準法第32条の3第1項に定められる労使協定を締結の上、その協定で定められるところに従って、各人の始業及び終業時刻の決定をそれぞれの労働者に委ねる制度(以下、フレックスタイム制という)を適用することがある。
ただし、この場合も従業員の決定に委ねる始業・終業の時間帯(フレキシブルタイム)及び勤務しなければならない時間帯(コアタイム)については、以下の各号の制限に従わなければならない。

 ①フレキシブルタイム
   始業時刻 8時から10時
   終業時刻 16時から19時
 ②コアタイム
   10時から15時

労使協定を締結する

フレックスタイム制を導入する場合には、事業場の過半数労働組合、それがない場合には過半数代表者と労使協定を締結する必要があります。

労使協定においては、いかの各事項を定める必要があります。

①フレックスタイム制を適用留守労働者の範囲
労働者の範囲については、法令上の制限はないので、「正社員だけに限る」「全労働者」「特定の職種の労働者」などと規定することもできます。また、個人ごと、課ごと、グループごとなど、さまざまな範囲で規定することもできます。

②1カ月以内の清算期間とその起算日
これまでのフレックスタイム制は、清算期間の上限が「1カ月」までとされていましたが、『働き方改革』によって、清算期間の上限が「3か月」に延長されました。
したがって、清算期間は、3カ月以内の期間であれば、1カ月でも2カ月でも差し支えありません。
しかし、1カ月以内の期間とする場合と、1カ月を超えて3カ月以内の期間とする場合で、協定事項や労働時間の限度について違いがあります。

・清算期間が1カ月の場合
清算期を平均して、1週間の労働時間が週法定労働時間の範囲内となるように規定しなければなりません。

・清算期間が3カ月の場合
清算期間が1カ月を超える場合には、清算期間を平均して1週間の労働時間が週法定労働時間の範囲内になるよう定めなければなりません。また、清算期間の初日から起算して1カ月ごとに、それぞれの1カ月の期間内における1週間あたりの平均労働時間が50時間を超えないように定める必要があります。

③標準となる1日の労働時間
フレックスの下で年休を取得した場合の賃金の算定基礎となる労働時間などの長さを決めるもので、時間数のみ定めればよいとされています。

④労働者が労働しなければならない時間帯(コアタイム)
コアタイムを定めるか否かは自由です。
定めなかった場合には、期間内の総労働時間を勤務すれば、まったく出勤しない日があってもよいということになります。
コアタイムを定める場合でも、それが標準時間帯と一致している時には、始業・終業の時刻を労働者に委ねたことにならないとされます。

⑤労働者が労働しなければならない時間帯(フレキシブルタイム)
フレキシブルタイムに制限を設けるかも自由です。
ただし、フレキシブルタイムを定めないと、労働者は深夜に出勤することも可能になってしまうので、会社は深夜の割増賃金を支払う必要が出てきますので、制限を設けた方がよいでしょう。
また、フレキシブルタイムの時間帯に制限を定める場合、あまりにもその制限が過度に及ぶと、実質的に始業及び終業の時刻を労働者の自由に委ねたことにはならないとみられることになってしまいますので、注意が必要です。

⑥起算日
フレックスタイム制を導入する時には、就業規則または労使協定で、清算期間の起算日を明確に定めておく必要があります。

⑦有効期限と労働基準監督署への提出
また、清算期間が1カ月を超える場合には、労使協定で有効期間の定めをするとともに、労使協定を所轄労働基準監督署に提出する必要があります。

時間外労働となる場合は36協定が必要

フレックスタイム制を導入すると、定められた範囲内で労働者が自由に始業・終業の時刻を決定することができます。
しかし、期間内の総労働時間を超えた時にはその超えた時間について時間外労働となります。また、清算期間が1カ月を超える場合には、清算期間のうち1カ月を平均して週当たり50時間を超える労働時間(各月単月の総枠を超える時間)についても時間外労働となります。
したがって、この場合には36協定を締結いて届出が必要であり、割増賃金の支払いも必要です。特に、月あたりの合計が60時間を超えるときは、5割以上の割増率により計算された割増賃金の支払いが必要となりますので、十分な注意が必要です。

フレックスタイム制を導入する場合の36協定の記載例は、以下を参考にしてください。

参照:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

フレックスタイム制に関する協定例

フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則に定める他、労使協定を締結して労働基準監督署に届け出る必要があります。

フレックスタイム制に関する労使協定の例

株式会社○○○と過半数代表者○○○は、労働基準法第32条の3のフレックスタイム制につき、次のとおり協定する。

(適用対象者)
第1条
対象者は正社員とする。

(清算期間)
【清算期間を1カ月とする場合】
第2条
清算期間は、毎月21日から翌月20日までの1カ月とする。
ただし、清算期間の途中から、フレックスの適用を受けることになった従業員については、フレックス適用日から、翌月20日までを清算期間とする。

【清算期間を3カ月とする場合】
第2条
清算期間は、5月1日から7月30日まで、8月1日から10月30日まで、11月1日から1月31日まで及び1月1日から月31日までとする。
ただし、清算期間の途中から、フレックスの適用を受けることになった従業員については、フレックス適用日から、その日の属する月の末日までを清算期間とする。

(清算期間における総所定労働時間)
【清算期間を1カ月とする場合】
第3条
清算期間における総所定労働時間(以下、「総所定時間」という。)は、当該清算期間の所定労働日数に7時間を乗じた時間数とする。

【清算期間を3カ月とする場合】
第3条
清算期間における総所定労働時間(以下、「総所定時間」という。)は、当該清算期間の所定労働日数に7時間を乗じた時間数とする。

(標準となる1日の労働時間の長さ)
第4条
標準時間は、1日7時間とし、年次有給休暇を取得した日については7時間の労働があったものとして取り扱う。

(休憩)
第5条
休憩時間は、12時から13時までとする。

(コアタイム)
第6条
フレックスの適用対象者であっても、10時から16時までは、勤務しなければならないものとする。

(フレキシブルタイム)
第7条
フレックスの適用対象者が、選択により労働することができる時間帯は、次のとおりとする。
 開始 7時から10時まで
 終了 15時から19時まで

(時間外労働と賃金の控除)
第8条
第3条の契約時間を超えて労働した場合は、賃金規定の定めるところにより、時間外手当を支払う。この場合、法定労働時間を超えて労働した場合には、賃金規定の定めるところに従って、割増賃金を合わせて支払う。
第3条の契約時間に満たない場合は、その不足時間分を賃金規定の定めるところにより控除する。

(休日及び休日勤務)
第9条
休日は次のとおりとする。
①土曜日
②日曜日
③国民の祝日
休日に労働を命ぜられた場合には、実労働時間に応じて賃金を支払う。
法定休日に労働した場合には、賃金規定の定めるところに従い、割増賃金を支払う。

(深夜労働)
第10条
深夜に労働することを命ぜられ、これを行った者に対しては、賃金規定の定めるところにより深夜割増手当を支払う。

(遅刻、早退、欠勤の取扱い)
第11条
遅刻、早退に関する就業規則の定めは、第6条のコアタイムの時間につき、これを適用する。
コアタイムの時間につきまったく勤務しなかった者については、就業規則の欠勤に関する扱いを適用する。ただし、その者がフレキシブルタイムに勤務した場合には、その時間に相当する賃金を支払う。

(フレックスタイムの適用解除)
第12条
毎月の総所定時間を下回る勤務がしばしばに及ぶ者については、フレックスタイムの適用を解除し、通常勤務を命ずることがある。

(フレックス期間途中の異動等)
第13条
清算期間の途中で退職、解雇、異動等があり、フレックスの適用を受けなくなった場合の総所定時間は次のとおりとし、清算期間途中までの実労働時間がこれを超える場合は、超えた時間について時間外手当を支払い、不足がある場合については、賃金の控除は行わない。この場合、法定労働時間を超えて労働した場合には、賃金規定の定めるところに従って、割増賃金を合わせて支払う。

総所定時間=フレックス適用期間中の所定労働日数×標準時間

(有効期間)第14条
本協定は○年4月1日より1年間有効とする。ただし、有効期間満了の3カ月前までに労使のいずれかから、書面による異議の申出がない場合は、さらに1年間更新するものとし、以降も同様とする。

※最後に署名捺印する

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フレックスタイム制のポイント

フレックスタイム制は、労働者に始業・終業の時刻を委ねる労働時間制度ですから、管理職が早朝出勤や時間外労働を命じることはできません。また、フレキシブルタイム中の会議、研修への参加命令についいてもその開始時刻を指示することも許されなくなります。
したがって、フレックスタイムを導入した場合には会議や打ち合わせの必要性を見直し、できるだけ合理的に行うように検討する必要があり、コアタイムを設定して、会議や打ち合わせはコアタイムに行うなどの工夫が必要です。

会議はコアタイムに行う

フレックスタイム制を導入する以上、時刻を指定して会議や打ち合わせに出席することを義務づけることはできません。
しかし、「勤務時間は自由なのだから、そうした会議には出席しない」という従業員がいると業務が十分遂行できないと判断されることがあります。その場合には、従業員を評価する際のマイナス査定の材料とすることや、フレックスタイム制の適用対象者から外すことは差し支えないと解釈されています。

時間外労働となる場合

フレックスタイム制の場合には、割増賃金の対象となる時間外労働は、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間ということになります。
また、前述したとおり、時間外労働については36協定を締結し届け出ることが必要です。

休憩・休日に関する規則との関係

フレックスタイム制を導入した場合でも、休憩時間に関する原則や休日に関する原則は当然適用されます。当然、法定休日に労働させれば、休日労働となります。
コアタイムに遅れれば遅刻となり、コアタイムの終了時刻まで勤務しなければ早退という扱いになりますが、コアタイムに勤務しなかった場合であっても、フレキシブルタイムに勤務していれば、その日1日を欠勤として1日分の賃金を差し引くことはできません。ただし、コアタイムに勤務しないことを評価の際のマイナス材料としたりフレックスタイム制の適用についての不適格者として、フレックスタイム制の適用対象者から外いたりすることはできます。

出張の取り扱い

フレックスタイム制の適用者であっても、出張命令を発することは可能ですが、時間を指定しての出張は命じることができなくなります。
ただし、時間を指定しての出張を命じることはできませんが、出張にも「勤務時間は自由なはずだ」と主張して業務に支障が出るようであれば、その従業員について評価の際のマイナス材料としたりフレックスタイム制の適用についての不適格者として、フレックスタイム制の適用対象者から外したりすることはできます。
なお、出張時の労働時間については、標準時間労働したものとして算定することになります。

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まとめ

以上、フレックスタイム制を導入するメリット・デメリット、フレックスタイム制を導入するための手続きなどについてご紹介しました。
フレックスタイム制を導入するためには就業規則にその旨を定め、労使協定を締結しなければなりません。
なお、フレックスタイム制については、働き方改革(2019年4月施行)によって法改正が行われ、清算期間が3カ月になるなどの措置が行われています。
すでにフレックスタイム制を導入している会社でも、改正点等を見直すためにも、社会保険労務士に相談し、手続きや内容に不備がないかを確認することをおすすめします。

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