公開日:2019年11月26日
最終更新日:2022年07月12日
労使協定には法令違反や罰則を免れる効果がありますが、ただ締結しただけでは足りず、労働基準監督署に提出いなければならない協定もあります。
労使協定を締結しなかったり労働基準監督署に提出しなかったりするなど、労働時間法制に違反した場合には、6カ月以上の懲役または30万円以下の罰金刑に科されることもあります。
労使協定とは、労働者(労)と使用者(使)との間で締結することで、本来は法律を逸脱する行為について免罰的効果を生じさせる協定のことです。
労使協定は、「時間外労働・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)」や「賃金控除に関する労使協定」「フレックスタイム制に関する労使協定」など、さまざまな種類があります。
たとえば、「時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)」の場合には、労働時間は休憩時間を除いて1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと労働基準法によって規定されています。そして、この規定に違反すると6カ月以上の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられることになっていますが、「時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)」を締結して、労働基準監督署に提出した場合には、その協定で定められた範囲内で、労働基準法の制限を超えて労働させても違反とはならないという免罰的効果(罰則を免れる)を生じることになります。
労使協定と労働協約は、いずれも労使間の書面化された合意ですが、その意義や機能、効力は異なります。
労働協約とは、労働条件について労働組合と使用者が合意をしてそれを書面化したうえで両当事者が署名したものです。
労使協定と労働協約の主な違いは、以下のとおりです。
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労使協定を締結すると、本来は法律を逸脱する行為についても免罰的効果が生じますが、労働基準監督署に提出しないと免罰的効果が生じないものもあります。
たとえば、前述した36協定は労働基準監督署に提出しないと免罰的効果が生じません。
したがって、36協定を締結しても労働基準監督署に提出しなければ、労働者に時間外労働を命じると労働基準法違反となります。
労使協定には、36協定以外にもさまざまな種類があります。
以下の表で、届出義務の有無とあわせてご紹介しますので、自社のケースで届出義務があるのに届出をしていない協定があれば、すぐに社会保険労務士などに相談して対応を検討するようにしましょう。
労使協定名 | 届出の義務 |
---|---|
時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定) | ○ |
社内預金に関する労使協定 | ○ |
1年単位の変形労働時間制に関する労使協定 | ○ |
1週間単位の非定型的労働時間制に関する労使協定 | ○ |
専門業務型裁量労働時間制に関する労使協定 | ○ |
1カ月単位の変形労働時間制に関する労使協定 | △ |
事業場外労働に関する労使協定 | △ |
フレックスタイム制に関する労使協定 (清算期間が1か月を超えない場合) |
× |
賃金控除に関する労使協定 | × |
一斉休憩の適用除外に関する労使協定 | × |
賃金控除に関する労使協定 | × |
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定 | × |
年次有給休暇の賃金に関する労使協定 | × |
育児休業制度の適用除外者に関する労使協定 | × |
介護休業制度の適用除外者に関する労使協定 | × |
割増賃金の代替休暇に関する労使協定 | × |
年次有給休暇の時間単位付与に関する労使協定 | × |
労働基準法では、締結された労使協定について労働者に対する周知手続きをとらなければならないとされ、違反した場合には30万円以下の罰金という罰則を定めています。
周知の方法とは、①常時各作業場の見やすい場所へ提示し、または備え付けること、②書面を労働者に交付すること、③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録して、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することのいずれかの方法です。
なお、派遣労働者の待遇決定協定については、FAXもしくはメールによる送信方法、データベースにアクセスする方法も認められています。
前述したとおり、以下の労使協定については労働基準監督署に提出しなければ、労働者に時間外労働を命じると労働基準法違反となります。
・時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定) ・社内預金に関する労使協定 ・1年単位の変形労働時間制に関する労使協定 ・1週間単位の非定型的労働時間制に関する労使協定 ・専門業務型裁量労働時間制に関する労使協定 |
法人も個人も送検される 労働基準法に定める罰則の対象は、違反行為を行った「使用者」です。この使用者の範囲について労働基準法10条では「この法律の使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」と規定しています。 したがって、労働基準法違反を行った経営者個人だけではなく、事業主である法人についても責任が及びます。 たとえば、賃金不払い残業いわゆるサービス残業によって取締役が書類送検されることがありますが、その際には法人としての会社も一緒に送検されていることを意味しています。 |
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金とされるもの 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が処せられる労働基準法違反は、労使協定に関するものだけではなく主に以下のようなものがあり、内容は違反事項によって異なります。
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30万円以下の罰金とされるもの 30万円以下の罰金が処せられる労働基準法違反は、主に以下のようなものがあります。
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以上、労使協定の意味や種類、労働基準法違反の罰則などについてご紹介しました。労働基準法違反と指摘される件数でも多いのは労働時間と割増賃金についてです。
従業員とのトラブルを避けるためにも、また労働基準法違反と指摘を受けないためにも、労使協定を締結し必要に応じて届出を行いましょう。
なお、それぞれの労使協定の内容や締結の方法については、社会保険労務士に相談しサポートを受けることをおすすめします。
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監修:「クラウドfreee人事労務」
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