顧問税理士の選び方とは?知っておくべき8つのポイント

公開日:2019年05月25日
最終更新日:2024年03月07日

この記事のポイント

  • 顧問税理士を選ぶ際に大切なのは「人間性」次に「専門性」
  • 「無借金経営」を勧めてくる税理士は、経営の本質を理解していない可能性がある
  • リスクを提示し正しい意思決定をサポートしてくれる税理士を選ぶことが大切

 

会社の経営者の最も大切な仕事は、会社を成長し拡大させることです。
しかしそれを、意欲や情熱、技術などだけで成し遂げるのは困難です。とくに中小企業の経営者は、あれもこれもと一人で抱え込んだうえに、さらに最終的な決定もすべて1人で行わなければならないという孤独な状況に置かれているケースが多いものです。

進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは「強い者が生き残るとは限らない。賢い者が生き残るとも限らない。生活環境に合わせて自分自身を変えることができた者だけが生き残る。それが淘汰の原則だ」と言っていますが、これは会社を経営するうえでも同じです。

会社を成長させ拡大させるためには、変化する世の中に合わせてさまざまな施策を講じる必要があります。そしてその施策を行う経営者のサポートを行ってくれるブレーンのひとりが「よい顧問税理士」です。

ここでは、顧問税理士を選ぶ際に最低限知っておくべき8つのポイントについてご紹介します。
 

顧問税理士の豆知識

税理士に決算書を作成してもらうことで、税務調査の対象となりにくくなり、資金調達力が強化されるというメリットがあります。
たとえば、税理士法33条の2による書面添付や中小会計要領チェックリストの活用です。
これは、税理士が経営者と共同して決算書を作成したことを証明する制度で、決算書の信頼性を向上させることができます。
この制度を活用すれば、税務署は「この決算書は、専門家である税理士が作成している」と見るため税務調査の対象となりにくくなりますし、金融機関もこの制度を重視していますので、融資を受ける際に有利になります。
また、個別注記業に会計処理の基準として中小会計要領に拠っている旨を記載する方法も有効です。この記載があることで、融資を受ける際に金融機関に適正な判断をしてもらうことができます。
また、中小会計要領チェックリストを作成する目的も、決算書の信頼性を高めることにあります。そしてこのチェックリストを金融機関に提出した場合には、やはり決算書の信用力が高いと判断されますので、審査で有利に判断される可能性があります。

顧問税理士を選ぶときに知っておくべき8つのポイント

顧問税理士とは、簡単に言えば顧問契約を締結した税理士のことです。
税理士には確定申告や決算などスポットで依頼することもできますが、スポットで依頼すると十分な節税対策ができないといった理由から、顧問契約を結ぶケースがほとんどです。
顧問税理士には、税務申告や経理システムの構築、金融機関からの資金調達や補助金申請のサポートを行ってくれることもありますし、経営コンサルタントとしてサポートをしてくれることもあります。

(1)税務申告以外の業務はどこまで依頼できるか

税理士というと「税務申告を行ってくれる専門家」「経理作業を代行してくれる専門家」というイメージを持つ人が多いと思います。

現在は、クラウド会計ソフトの登場によって、経理作業も格段に楽に行うことができるようになりましたので、顧問税理士にどこまでの業務を依頼するのかは会社の状況によって変わります。

経理全般業務を依頼することもあれば、給与計算業務までの業務をすべて依頼することもあります。また、事業承継、資金繰り、補助金や助成金申請に関するアドバイスを積極的に行ってくれる税理士もいます。

たとえば、資金繰りに関してです。当然ながら会社はキャッシュが不足しないようにすることが何より重要であり、スムーズに融資を受けられるよう体制を構築しておく必要があります。そして金融機関が審査をする際には、決算書だけでなく資金繰り表や事業計画などの資料の提出を求められることがあります。
そのようななかで経営者の知識や経験だけでは不足している部分を補ないつつ必要なデータを作成してくれる税理士の存在は欠かせません。
したがって、>税理士を選ぶ際には、自社の状況をふまえながらどこまで税理士に依頼するのか、求めるものは何なのかをはっきりさせておく必要があります。
そして、資金繰りや資金調達の相談までしたいなら、その旨をしっかりと税理士に伝えておくようにしましょう。

(2)大規模事務所か小規模事務所か

税理士事務所には、規模が大きい事務所と規模が小さい事務所があります。
大規模事務所は多数のクライアントを抱えているため、ネットワークが広く事務所内に経験値が蓄積され、イレギュラーな問題が発生してもすぐに対応してくれることが多いというメリットがあります。また、事務所が組織化されているので業務が属人化することなく、仮に担当の税理士が退職しても別の税理士がすぐに対応してくれます。
一方、小規模事務所は経営者との距離が近いため親身になって対応してくれますし、経営者にとって必要な情報を迅速に提供してくれるなどのメリットがあります。
以上のように、大規模事務所も小規模事務所も一長一短があることになりますから、自社の状況や成長度合いに応じて選択することをおすすめします。

(3)大切なのは「人間性」次に「専門性」

税理士を選ぶうえでもっとも大切なのは、「相性が合うかどうか」。これは、顧問税理士を選ぶ際に最も重要なポイントです。

「税理士が得意とする業種や分野が事業に合致しているか」「クラウド会計ソフトに対応しているか」という点ももちろん重要ですが、これまで述べてきたように、顧問税理士は経営者にとって右腕ともなる存在です。
単に記帳代行を依頼するだけなら、相性はそれほど問題にはならないかもしれませんが、経営の悩みを打ち明けながら長くサポートを受けたいと思うなら、やはり人間性が重要になってきます。

相性が合うかどうかを見極めるためには、実際に面談をして話をしてみることをおすすめします。分かりやすい説明をしてくれるか、じっくり時間をかけて話を聞いてくれるか、自分の味方となってくれそうかといった点を見極めるためにも、できれば複数の税理士と何度か面談をして、検討するようにしましょう。

(4)必要な情報を適切に提供してくれるか

経営者にとって最重要なのは事業の継続であり、経営者はそのために毎日正解のない選択と決断を繰り返しています。
そして、この選択・決断を行う際の重要な役割の一端を顧問税理士が担うことがあります。

顧問税理士のメリットは、会社設立時からの支援をはじめ、税務に関するアドバイス、自計化支援、経営計画の策定等、あらゆるフェーズで相談できるパートナーであるという点です。
経営者が情報をしっかりと提供することで、税理士はその情報をもとに課題やリスクをふまえ、必要な情報を提供してくれます。

たとえば税理士に資金状況や事業の特性、ポイントとなる指標など必要な情報を提供すれば、事業活動でどうすれば売上が上がるのか、重点的にみていく費用は何かといったアドバイスや、資金調達サポート、活用できる補助金や助成金の情報を提供してもらったりすることが期待できます。

もちろん、すべての情報提供を税理士に丸投げするわけにはいきませんが、会社経営のために活用できるものは活用するというスタンスは経営者に必須といえます。

とくに中小企業の経営者や個人事業者は、孤独な状況のなかで経営判断をせまられることが多いものです。経営判断というものは、簡単に白黒の判断がつくようなものではなく、難しい判断や辛い判断を迫られることもあります。
顧問税理士は、そのような経営者や個人事業者の良き相談相手となり、不安を解消し、判断の礎となるデータを示してくれる存在になり得るのです。

(5)無借金経営を勧める税理士ではないか

企業は常に投資をして事業を成長させていくものです。そのためには、必要に応じて借金が必要になるものです。
もちろん、利益を少しずつ蓄え自己資金のキャッシュフローが十分になった時点で新規事業を始める方が堅実といえるかもしれません。しかしそれでは、自己資金を準備するまでにビジネスチャンスを逃してしまうリスクがあります。

資金を調達できれば新しい設備投資や人材への投資ができますし、広告宣伝費もかけられるでしょう。
もちろんその事業の収益性については十分に分析する必要はありますが、会社が大きく成長するためにはそれなりの資金が必要になるわけです。
それなのに、「借金は控えて、安定的な経営をしたほうがいい」というアドバイスばかり行う税理士は、経営の本質を理解していない可能性があります。
企業経営に借金はつきものであり、自己資金のみではビジネスチャンスを逃してしまうリスクがあることを十分理解してくれる税理士を選ぶことは、事業を成長させたい経営者にとって非常に重要なのです。

(6)リスクをあらかじめ提示してくれるか

売上を増やしたいのであれば、新規事業に取り組んだり既存事業を拡大したりといったリスクをとることも必要です。
このような時、顧問税理士であれば、事業を進めた場合にどのようなリスクがあるのかをアドバイスしてくれるでしょう。

資金調達のタイミングをアドバイスしてくれたり、資金ショートが心配だったりする場合には借換えやリスケジュール等の経営改善計画の作成など、積極的な経営支援を行ってもらうことも可能です。税金の支払いも加味した資金繰りの予定を立てることは、税理士法上からしても税理士しかできない業務です。
そういう意味でも顧問税理士は、経営を後押しすることはもちろん、状況によっては「引く」ことも提案しながら、正しい意思決定をサポートしてくれる存在であるといえます。

もちろん、税理士に経営の責任を問うことはできないので最終的な決断は経営者が行います。
しかし、事前に分かる財務的なリスクについては、教えてもらう方がそれを十分検討したうえで事業を進めていくことができるはずです。
大切なのはリスクをきちんと指摘してくれる税理士がいること、そして税理士に指摘されたリスクをふまえた上で、経営判断をしていくことです。

(7)「税金を払ってお金を残せ」と言ってくれるか

事業を成長させるためには、売上を伸ばすだけではなく経費を削減し多くの利益を確保し「売上高」を伸ばす必要があります。
同じ売上高でも顧問税理士がいるといないとでは、支払うべき税額に大きな差が出ることがあります。
それは、顧問税理士は経営状況に応じて適切な節税対策を提案してくれるからです。
また、中小企業にはさまざまな税制上の措置が用意されているので、顧問税理士がいれば、このような税制上の優遇措置についても提案してもらうことができます。
税理士と相談し、利用できる制度は積極的に活用し、会社に多くの現金を残すよう努力することで、納税額は大きく減らすことができるのです。

ただし、やみくもに節税するのは得策ではありません。
前述したような有効な節税対策は行うべきですが、単に利益の繰り延べであったり資金の流出であったりする対策は絶対に避けるべきです。「いったん費用化しておいて、将来赤字になった際に戻し入れをする」という方法は、赤字を目指して会社経営をするようなもので合理性はありません。
結局のところ成長する企業というのは、利益を出し納税して、手元に資金が残るような会社です。

「正しく税金を払って資金を残しましょう。そしてそのための施策を行いましょう」と進言してくれる税理士こそが、本当の意味での経営のパートナーと言えるのではないでしょうか。

(8)クラウド会計ソフトを活用できる税理士か

クラウド会計とは、インターネット上の仮想空間に会社の財務会計ファイルを開設し、情報を一元化することができる会計ソフトです。
クレジットカードやネットバンキングと連携することで明細が反映されますので、日々の仕訳をほぼ自動化することができます。
クラウド会計ソフトは、インターネット上で会計データを管理することができるので、顧問税理士にリアルタイムで会計データを確認してもらえるだけでなく、もし自動仕訳した段階の総勘定元帳や試算表でミスがあれば、すぐに税理士に修正してもらうことができます。
記帳作業は自社内で行い、決算・申告・資金調達といった場面では、顧問税理士のサポートを受けるようにすれば、顧問料を下げることも可能です。
クラウド会計ソフトを活用できる税理士か否かは、今後ますます重視されるポイントとなってくると思われます。

まとめ

以上、顧問税理士選びのポイントについてご紹介してきました。
顧問料がかかるという点から「顧問税理士を依頼する余裕がない」「スポットで依頼したい」という考えの方もいらっしゃるでしょう。
確かに税理士と顧問契約を締結すると顧問料が発生しますので、経営者としてはその点が気になるのはもっともなことです。
しかし、顧問料がかかることを踏まえても、顧問税理士がいることのメリットは大きいといえるのではないでしょうか。

また、顧問税理士がいることで税務調査の対象となりにくいというメリットもあります。
決算書に税理士の印鑑が押してある場合には、「この会社は○○税理士が顧問だから、脱税などしていないだろう」という印象を税務署に与えることができるからです。
顧問税理士がいる多くのメリットを認識したうえで、自社の事業分野に詳しい相性のよい税理士を選ぶようにしたいものです。

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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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