公開日:2019年11月21日
最終更新日:2022年10月25日
事業承継とは、経営者としての地位を後継者に譲り渡し、その際に株式や事業に使用している土地、建物、預金、現金などの一切の財産を譲り渡すことをいいます。
事業承継は一朝一夕でできるものではなく、確実に実行するためには適切な現状分析やそれをもとにした事業承継計画を立てなければなりません。
事業承継を行うことはさまざまなメリットがあります。
現経営者からみれば、事業を存続することができますし、引退する際に保有する自社株式を後継者に売買することで、生活資金を確保することができます。
また、後継者からすればすでに事業として成立している事業を譲り受けることができるため、事務所を借りたり取引先を開拓したりといった多額の費用や時間を削減することができます。
事業承継の中身は、大きく①経営権の譲渡②自社株式の譲渡③事業用資産の譲渡に分けられます。
①経営権の譲渡 経営する権利(経営上の決定権、財産についての処分権など経営者としての一切の権利) ②自社株式の譲渡 ③事業用資産の譲渡 |
中小企業の事業承継では、経営権と財産権の2つを承継することが必要です。
経営権だけ承継しても、金融機関から借入れがある場合には現社長の連帯保証を解除してもらえなかったり、現社長が亡くなった場合に相続した親族とトラブルに発展したりする可能性があるからです。
事業承継支援では、事業承継計画を立てる前に会社の現状(ヒト・モノ・カネ)や経営者自身の資産等の現状について、正確に把握することを行います。
親族への承継は、税制上のメリットも多く関係者からも受け入れられやすいのですが、現在は子供が継がない・継げないケースも多く、その場合には子供以外の従業員に承継することも検討することになります。
後継者には財務・税務を理解する力、信頼感、判断力などさまざまな資質が求められますが、それだけでなく後継者候補の強い覚悟も必要です。
後継者について検討した結果、親族にも従業員にも承継する者がいない場合には、第三者の承継としてM&Aが選択肢になります。
経営権の引継ぎとは、社長としての能力や実態を引き継ぐことです。
いきなり「明日から社長が交代します」と宣言しても、従業員や取引先に理解を得ることはできません。
そこで、時間をかけて実務を経験させて経営学を学ばせ、従業員との関係を構築し、取引先などの関係者とネットワークを広げていくことが必要です。
特に、古くからいる従業員との関係構築は難しいこともあるので、現社長は十分にバックアップする必要があります。
経営権を承継するための後継者教育は、5年、10年といった長期計画で取り組まなければならないケースもあります。
事業者支援では、後継者候補のリストアップやM&A等の検討、後継者教育の支援・実施まで受けることができます。
経営権を安定させるためには、財産権を承継することが欠かせません。
財産権である株式の承継方法は、売買・贈与・相続の3つの方法があります。経営権を安定させるためには、少なくとも後継者に3分の2以上の株式を承継すべきです。
①売買 後継者がお金を払って株式を取得する方法です。 相続でもめるリスクも少なく、後継者としての地位が安定するというメリットがありますが、後継者に買い取るだけの資金力がない場合もあります。 ②贈与 ③相続 |
いずれの方法を選択するかは、後継者が親族か・従業員か、資金負担はどの程度になるかなど、状況に応じて検討することになります。
中小企業のM&Aで一般的なのは、株式譲渡、事業譲渡、会社分割の3つですが、もっとも多いのは株式譲渡です。
事業譲渡と会社分割は、いずれも一部門のみを切り離して譲渡する方法ですが、従業員や取引先との契約関係の問題も絡んでくることから、しっかりとした対策が必要となります。
スムーズな事業承継を行うためには、なるべく税負担を軽減するなどの対策が必要です。具体的には、株価を引き下げる・贈与を活用するなどの方法がありますが、いずれの対策も専門的で煩雑な作業が必要になります。
株価を下げる 後継者の買い取り負担や税負担を軽減するために、資産を整理し利益を圧縮するなどして、株価を引き下げて譲渡します。 資産整理とは、含み損のある資産を評価し直したり、不良在庫や滞留資産を処分したりすることです。 ただし、第三者に譲渡するM&Aの場合には、自社株の引き下げは高く売却することができなくなり逆効果になってしまいます。 贈与の活用 この他、相続時精算課税制度を利用して2,500万円まで非課税で贈与する方法もあります。株価を十分引き下げたこところで実施すれば、節税効果があります。ただし、この制度の適用を受けた財産は、相続税の計算をする際に相続財産にすべて合算されることになりますので、その点については注意が必要です。 生命保険の活用 納税猶予制度を活用 |
これまでご紹介してきたように、事業承継の対策は、1年や2年で実行できるような簡単な問題ではありません。
「この先何十年も安定した事業形態を維持できる」と言えるためには、長期的なプランを立てて計画的に進める必要があります。
そして、そのために重要となってくるのが、経営者自身の事業承継に対する強い問題意識と事業承継に強い税理士と共に事業承継の課題に向き合い、綿密な計画を立てることです。
ここでは、自社株評価や財産評価や想定されるリスク分析等を正確に行ない、かつ後継者の選定・育成を含めたワンストップの事業承継支援サービスを提供してくれる税理士をご紹介します。
北海道・東北エリアでは、中小企業の事業の承継の円滑化を図るため、後継者の育成などに関する研修を実施し、事業承継に関する情報提供を積極的に行っています。税理士などの専門家による相談体制も整備されています。
関東エリアでも、他のエリアと同じように中小企業の後継者が不在であれば廃業や休業を余儀なくされる状況にあります。ただ、ほかの地域に比べるとM&A案件数が多い傾向があります。中小企業のM&Aは、組織や人材、経営状態をできるだけそのまま引き継ぐ形をとらないと、あっという間に会社が傾いてしまいます。したがって、M&Aによる事業承継に精通した税理士と共に、綿密な対策を練ることが必要です。
中部・近畿エリアは、大手企業も多く存在していますが、中小企業の割合が高く、M&Aや会社売却、事業承継が今後ますます増加していく傾向にあります。
中部・近畿エリアの各地方自治体も事業承継支援の強化を図っていて、相談できる税理士も増加しています。
中国・四国・九州・沖縄エリアでも、後継者不在のよって廃業を余儀なくされるケースが増えています。他方、事業の多角化・販路の拡大・人員の確保などを目指す会社も増えています。
したがって、後継者育成から事業承継をサポートする体制、M&Aの実施をサポートする体制のいずれも整備されつつあります。
中国・四国・九州エリアで事業承継について相談できる税理士一覧
以上、事業承継の手順やポイント、事業承継について相談できる税理士についてご紹介しました。
事業承継は、「株式会社の場合、保有している株式をどのように引き継がせるのが得策なのか」「後継者選びはどのように行うのがベストか」「事業継承後の株主体制、組織体制はどのような形がよいのか」など、検討すべき課題が多く、さらにこれらの問題は、節税対策とも連動し、さらに税目が横断的に関係し合うため非常に複雑です。
円滑な相続・事業承継のための対策に、早すぎるということはありません。なるべく早めに税理士に相談し、中長期計画を立て実行することが会社を成長・発展させる秘訣にもなるのです。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、事業承継について相談できる税理士を検索することができます
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
事業承継について相談できる税理士をさがす
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、事業承継について相談することができます。
クラウド会計ソフト freee会計