ひとり親控除(2020年創設)とは?|ひとり親の税金はどう変わった?

公開日:2021年08月21日
最終更新日:2024年07月28日

ひとり親控除とは、令和2年(2020年)に創設された所得控除です。
申告者本人が合計所得金額500万円以下のひとり親であり、一定の要件に該当する場合には、その年の総所得金額等から35万円が控除されます。

この記事では、ひとり親控除の要件や寡婦(夫)控除の変更点などについてご紹介するとともに、ひとり親控除のよくある質問についてもご紹介します。

ひとり親控除(2020年創設)とは

ひとり親控除とは、令和2年(2020年)に税制上の措置として導入された所得控除のひとつです。
母子家庭には特別な控除として「寡婦控除」が設けられていましたが、同様の立場にある父子家庭に対する「寡夫控除」については、適用要件などに差がありました。
しかし男女平等の観点からすれば、このような差があるべきではないということで、寡婦(寡夫)控除の適用要件と控除額について見直されることになりました。
また、未婚のひとり親については、寡婦(寡夫)に該当しないことから、「寡婦(夫)控除」が適用されませんでしたが、この点も見直されることになり、結婚せずに生まれた子を持つひとり親家庭についても、所得税における税制上の措置が必要であるという観点から、寡婦(夫)控除について見直されることになりました。

(1)ひとり親控除の要件

ひとり親控除は、結婚していない人や配偶者の生死が明らかでない一定の者のうち、以下の要件に該当する人に適用されます。

①その者と生計を一にする子(他の者の同一生計配偶者または扶養親族とされている者を除き、その年分の総所得金額等の合計額が48万円以下のものに限る)。

②合計所得金額が500万円以下であること。

③その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる以下に挙げる者がいないこと。
ア)その者が住民票に世帯主と記載されている場合には、その者と同一の世帯に属する者の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫または妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされた者

イ)そのものが住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫または妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされている時のその世帯主

※つまり、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者は対象外となります。

なお令和6年度税制改正によって、ひとり親の所得要件について現行の合計所得金額500万円以下が、1000万円に引き下げられています。また、ひとり親控除の所得税の控除額について現行の35万円が38万円に引き上げられ、合わせて住民税の控除額について現行の30万円が33万円に引き上げられます。
これらの見直しについては、令和8年分以降の所得税と令和9年分以降の個人住民税の適用について、扶養控除の見直しと合わせて結論されるとしています。

(2)ひとり親控除の判定の時期

ひとり親の判定は、その年の12月31日の時点で判定します。
事実婚や内縁関係であった場合には、当然ながら適用はありません。また結婚の回数は関係ありません。

(3)ひとり親控除と寡婦(夫)控除の判定

ひとり親控除が創設されましたが、一定の寡婦については引き続き寡婦控除が継続されます。

寡婦控除・ひとり親控除の判定 控除区分 控除額
本人の合計所得金額が500万円以下 婚姻
なし
男性 扶養する子あり ひとり親控除 35万円
扶養する子なし 非該当
女性 死別 扶養する子あり ひとり親控除 35万円
扶養する子なし 寡婦控除 27万円
離婚 扶養する子あり ひとり親控除 35万円
扶養する子なし 扶養親族あり 寡婦控除 27万円
扶養親族なし 非該当
未婚 扶養する子あり ひとり親控除 35万円
扶養する子なし 非該当

(4)ひとり親控除創設で、寡婦(夫)控除はどう変わったか

これまで寡婦(夫)控除の対象となっていた人も、ひとり親控除の創設で対象とならなくなったり控除額が変更になったりします。
また、以前は夫と死別・離婚して、子どもか扶養親族のいる人であれば、所得制限はありませんでしたが、令和2年分からは、「合計所得が500万円以下」という所得制限が設けられました。したがって、以前は寡婦(夫)控除の対象だった人も、合計所得が500万円以上の人は令和2年分からは対象から外れることになります。

寡婦控除、寡夫控除の変更点について、下記にまとめましたので参考にしてください。

【寡婦控除】
令和元年まで(本人が女性、特定寡婦35万円、寡婦27万円)

配偶関係 死別・生死不明 離婚
本人所得 ~500万円 500万円超 ~500万円 500万円超
扶養義務 あり 35万円 27万円 35万円 27万円
子以外 27万円 27万円 27万円 27万円
なし 27万円

 ↓
令和2年(2020年)より(ひとり親控除35万円、寡夫控除27万円)

配偶関係 死別・生死不明 離婚 未婚のひとり親
本人所得 ~500万円 500万円超 ~500万円 500万円超 ~500万円
扶養義務 あり 35万円 35万円 35万円
子以外 27万円 27万円
なし 27万円
【寡夫控除】
令和元年まで(本人が男性、寡夫控除27万円)

配偶関係 死別・生死不明 離婚
本人所得 ~500万円 500万円超 ~500万円 500万円超
扶養義務 あり 27万円 27万円
子以外
なし

 ↓
令和2年(2020年)より(ひとり親控除35万円)

配偶関係 死別・生死不明 離婚 未婚のひとり親
本人所得 ~500万円 500万円超 ~500万円 500万円超 ~500万円
扶養義務 あり 35万円 35万円 35万円
子以外
なし

 

(5)ひとり親控除の手続き(確定申告の場合)

「ひとり親控除」は、本人がひとり親である場合に所得の合計額から35万円を控除できる所得控除です。
サラリーマンの場合には、年末調整でひとり親控除について適用されているので確定申告をする必要はありませんが、個人事業主など確定申告をする人でひとり親控除の要件に該当する人は、確定申告の際にひとり親控除の適用を忘れないようにしましょう。

ひとり親控除の新設で、確定申告用紙も「寡婦、寡夫控除」から「寡婦控除」「ひとり親控除」に変更されています。

従来は、控除の対象者が結婚をしていた人に限られていましたが、令和2年(2020年)分からは未婚の方でも子どもを養っていれば、「ひとり親」として35万円の控除を受けることができます。

一方、令和2年(2020年)分から、すべての方について「合計所得が500万円以下」という所得制限が設けられましたので、以前は寡婦控除の対象だった方が令和2年(2020年)からは対象から外れる可能性がありますので、注意しましょう。

①確定申告書第一表
「寡婦控除」「ひとり親控除」の欄に、控除額を記入します。
ひとり親の控除額は35万円、寡婦控除の控除額は27万円、特定の寡婦に該当する場合には35万円です。

②確定申告書第二表
寡婦に該当する方は、「本人に関する事項」の「寡婦」に〇をつけ、死別、離婚など該当するカ所にチェックを入れます。
ひとり親に該当する人は「ひとり親」に〇をつけます。

(6)ひとり親控除の手続き(年末調整の場合)

サラリーマンなどの給与所得者については、会社などで年末調整が行われる際に提出する「扶養控除等(異動)申告書」の「ひとり親」欄に、記入をすれば、控除されます。

①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄で、寡婦の人は、「寡婦」にチェックを入れ、ひとり親の人はひとり親にチェックを入れます。

ひとり親控除よくあるQ&A

ひとり親控除が創設されたことで、「どのような人が対象なのか」など、疑問点をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、ひとり親控除に関するよくあるご質問をご紹介します。

(1)子どもと2人暮らしのシングルマザーの場合

–Aさんは、6歳の子どもと暮らすシングルマザーです。Aさんの住民票には未届の夫の記載はなく、合計所得金額は400万円です。ひとり親控除の対象となりますか?」

Aさんは、ひとり親控除の対象となります。
ひとり親控除は、婚姻していない人または配偶者の生死が不明な人で、生計を一にする子は総所得金額等が48万年以下であり、かつ適用を受けようとする人の合計所得金額が500万円以下であることが要件となります。

Aさんの所得は400万円以下であり、6歳の子どもがいて、住民票に未届の夫の記載もないことから、ひとり親控除の対象となります。

(2)子どもが父の扶養親族となっているシングルマザーの場合

–Bさんは、夫を交通事故で亡くし、実家に子どもを預けて働くシングルマザーです。子どもはBさんの父親の所得税の計算において扶養親族となっています。Bさんは、ひとり親控除の対象となりますか?」

Bさんは、ひとり親控除の対象となりません。
ひとり親控除の適用を受けるためには、「生計を一にする子は総所得金額等が48万年以下」であることが必要ですが、Bさんのお子さんはBさんの父親の扶養親族とされているので、要件を満たさないこととなり、ひとり親控除を受けることはできません。

まとめ

ひとり親控除は、夫と死別した人、夫と死別・離婚して扶養親族(子どもを含む)のいる人、妻と死別・離婚して子どものいる人、未婚で子どもがいる人が受けられる控除です。
寡婦の時には27万円、ひとり親控除の時には35万円、寡夫控除の時には35万円の控除を受けることができます。
所得控除については近年頻繁に改正が行われており、ひとり親控除は、創設間もない制度であることから、確定申告や給与計算の際に、迷われる方も多いと思いますが、税理士に相談してミスのないようにしたいものです。

ひとり親の確定申告について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、ひとり親の確定申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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・昨年度の年末調整の訂正
「昨年末に会社に提出する年末調整の令和4年分扶養控除申告書の訂正は今から行えますか。私はひとり親に該当しておりレ点し提出しましたが、会社から「あなたは婚姻歴があるから寡婦になる」と言われて訂正させられました。それにより令和4年の控除額が変わる事があるのでしょうか。
・令和5年扶養控除申告書 ひとり親
「ひとり親で来年子供が大学を3月に卒業、4月に就職して扶養から外れます。
①扶養控除の申請は出来ますか。
②令和5年中の所得の見積額‥子供は3月までバイト、4月から就職となりますのでそちらの合計金額を見積りするのでしょうか。
②異動月日及び事由‥異動があった場合と記載してありますが、就職する4月の日付を書き入れるのでしょうか。
・ひとり親と寡婦の違い
「私は大学生の子供をもつシングルマザーです。年末調整で「ひとり親」と「寡婦」のどちらにも当てはまり選択出来ずにいます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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