譲渡所得(土地・株式等)とは|計算方法は?特別控除額は?

公開日:2021年09月02日
最終更新日:2023年02月19日

この記事のポイント

  • 譲渡所得とは、土地や建物の資産を譲渡したり交換したりした時に生じる所得のこと。
  • 譲渡所得には、総合課税と分離課税がある。
  • 土地や建物等の譲渡所得は、分離課税の課税所得となる。

 

モノを買ったり持ったりすると、さまざまな税金がかかりますが、モノを売った時にもその所得に税金がかかります。
個人が財産を売却して利益が出た場合には、所得税と住民税がかかります。所得は事業所得、雑所得など10種類に区分されますが、単発的な譲渡益は「譲渡所得」に区分されます。

譲渡所得とは

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。
譲渡所得は単発的な場合の所得で、繰り返し行われる場合には事業所得や雑所得となります。

「資産」とは、土地建物の他、機械、船舶車両、ゴルフ会員権、鉱業権、ソフトウェア、有価証券、書画、骨とうなど、売買の対象として経済的な価値のあるすべてのものをいいます。

また「譲渡」とは、売買のほか交換、現物出資、代物弁済、競売など、所有権その他の財産上の権利を移転させる一切の行為をいいます。

(1)譲渡所得は総合課税と分離課税がある

譲渡所得のうち、書画、骨とう、美術品などの動産や、ゴルフ会員権などの権利についての譲渡は、総合課税の譲渡所得となりますが、土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得には、他の所得と区分して特別な税率を適用する特例である「分離課税」という方法がとられます。

譲渡資産 種類 所得区分 課税方法
土地、建物、構築物等 不動産 分離課税の
譲渡所得
申告分離課税
上場株式、同族会社株式、出資金等 有価証券 申告分離課税・
源泉分離課税
書画、骨とう、美術品、土石・砂利等 動産 総合課税の
譲渡所得
総合課税
ゴルフ会員権、漁業権、特許権、営業権等 権利

 

(2)譲渡所得と事業所得・山林所得との違い

棚卸資産やこれに準ずる資産の譲渡は、事業所得または雑所得となります。また、営利を目的として継続的に譲渡される資産も事業所得です。
また、山林の立木については、取得した日から5年を超えて譲渡した場合には山林所得、それ以外は事業所得または雑所得となります。

譲渡する資産の種類 所得区分
棚卸資産およびこれに準ずる資産 事業所得または雑所得
営利を目的として継続的に譲渡される資産
山林の立木 取得した日から5年を超えて譲渡 山林所得
上記以外 事業所得または雑所得
金銭債権

(3)土地や建物などの譲渡所得は「分離課税」

譲渡所得のなかでも、土地や建物などの不動産を売って得た利益は特別に、他の所得とは分けて「分離課税」で税額を計算します。

また、保有期間が5年を超える「長期譲渡所得」とそれ以下の「短期譲渡所得」に区分され、短期譲渡所得の方が高い税率となります(※後述)。

上場株式や出資金なども分離課税の譲渡所得ですが、上場株式等の取引で「特定口座(源泉徴収口座)」を選択した場合には、源泉分離課税として課税されます。

(4)譲渡所得は、長期と短期で税額に大きな差がある

譲渡所得にかかる税率は、その不動産を所有していた期間によって、5年を境に短期と長期で分かれます。
これは、所有期間が短い不動産は転売目的で売買して利益を得ている可能性もあるためで、長期で所有していた不動産よりも短期で所有していた方が税率は高くなります。

短期譲渡所得

税の種類 税額
所得税 課税短期譲渡所得金額×30%
住民税 課税短期譲渡所得金額×9%

長期譲渡所得

税の種類 税額
所得税 課税長期譲渡所得金額×15%
住民税 課税長期譲渡所得金額×5%

※所得税には、別途復興特別所得税が課税されます。

この保有期間は、譲渡した年の1月1日現在で5年超となっているかどうかを判断するので、注意しましょう。

(5)譲渡所得とみなされる「みなし譲渡」とは

譲渡所得は、資産を譲渡して得た所得ですが、著しく低い価額による譲渡や法人に対する現物出資なども「みなし譲渡」として、譲渡所得となります。

譲渡があったとみなされるのは、以下のようなケースです。

①法人に対する贈与または遺贈
②法人に対する著しく低い価額による譲渡
③法人に対する現物出資

※著しく低い価額とは、通常の取引価額の1/2に満たない金額です。また、現物出資した場合には、その法人の株式を取得することになりますので、たとえば不動産を現物出資した場合の譲渡所得の収入金額は、これによって取得した株式または出資持分の時価となります。

譲渡所得の計算方法

不動産の譲渡所得の金額は、譲渡価額から取得費、譲渡費用、特別控除額を差し引いて計算します。
マイホームを売った時や優良住宅地などのための譲渡など、特定の場合には特別控除も適用できます。

(1)譲渡所得の税額の計算

譲渡所得は、譲渡による総収入金額から、土地・建物などの取得費、譲渡費用を差し引いたもので、特定の場合には特別控除分も差し引くことができます。

土地・建物の譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡所得×税率=税額

土地、建物などの不動産の譲渡所得の税率は、前述したとおり長期譲渡所得(保有期間5年超)とそれ以下の短期譲渡所得に区分されます。

マイホームを売った時や優良住宅地などのための譲渡については、特別の軽減税率があります。
不動産の譲渡所得に関する主な税率は、以下のとおりです。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得 通常 15% 5%
マイホームを売った時 6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円超の部分 15% 5%
優良住宅地などの譲渡 2,000万円以下の部分 10% 4%
2,000万円超の部分 15% 5%
短期譲渡所得 通常 30% 9%
国や地方公共団体への譲渡など 15% 5%

(2)譲渡所得の「取得費」とは

不動産の譲渡所得の取得費とは、買ったときの代金や購入手数料、その後にかかった改良費などをいいます。
ただし、先祖代々引き継がれてきた土地など、購入代金が分からない場合には、譲渡の収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。
また、借入金で取得した資産については、借入金の利子のうちその資産の購入日から使用開始日までの期間に対応する金額を取得費に加算することができます。
譲渡所得は、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算しますので、取得費を差し引くことを忘れてしまうと、税額が高くなってしまうため、注意が必要です。

(3)譲渡所得の「譲渡費用」とは

譲渡費用とは、資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記もしくは登録に要した費用、その他資産を譲渡するために要した費用をいいます。
借家人を立ち退かせるための立退料、建物を壊して土地だけ売る時の取り壊し費用なども譲渡費用に含まれます。

(4)譲渡所得の「特別控除」とは

不動産のなかでもマイホームを売った時には、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例、買い替え特例などがあります。これらの特別控除が適用される場合には、節税や税金の還付につながります。
特別控除については、後ほど詳しくご紹介しますので、要件に該当する場合にはもれなく手続きを行うようにしましょう。

譲渡所得の特別控除

これまでご紹介してきたように、譲渡所得については、内容に応じてさまざまな特別控除や軽減税率の特例が適用されます。
ここでは、この特例の要件等について詳しくご紹介します。

(1)マイホームを売った時の3,000万円特別控除

7年間住んでいたマイホームを売却した時には、3,000万円の特別控除を受けることができます。
つまり、譲渡益が3,000万円以下なら税金がかからなくなります。
この特例は、保有期間の長短にかかわらず受けることができるので、ほとんどの人が適用可能となっています。

この特例が受けられる住居は、個人が住んでいる場合で、以下のように居住用家屋とその敷地(土地や借地権)を譲渡した場合です。

①現在、自分が住んでいる家屋と敷地
※店舗兼住宅の場合には、居住用に使っている部分に限定される
住居が9割以上の場合は、全体を居住用とする

②過去に自分が住んでいた家で、以下のような場合
・現在は扶養親族が住んでいるが、自分が今住んでいるところは自己所有ではない場合で扶養親族が住んでいる家屋と敷地
・住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却する家屋と敷地

③上記①、②の家屋とともに譲渡する敷地

④家屋を取り壊して譲渡する敷地で、取り壊した後譲渡契約までに敷地を人に貸したりしていないこと
・取り壊した日から1年以内に譲渡契約を交わし、かつその家に住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡すること

なお、譲渡先が配偶者、直系血族、生計を一にする親族、内縁の配偶者などの場合には、特例を受けることはできません。

(2)所有期間10年を超えるマイホームの譲渡の税負担軽減

所有期間が10年超のマイホームを売却した時には、先ほどご紹介した3000万円の特別控除に加えて、軽減税率の適用を受けることができます。
譲渡所得6,000万円までの部分については、所得税は15%の税率が10%に軽減され、住民税は5%の税率が4%に軽減されます。

課税長期譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円超の部分 600万円+(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15% 5%

(3)マイホーム買換(交換)の特例

買換(交換)の特例とは、居住期間が10年以上、所有期間が10年超のマイホームを1億円以下で売却し、売却した年の前年から3年以内にその売却代金で新たにマイホームを購入した場合の特例です。

たとえば、今まで住んでいた住居を5,000万円で売却し、新たに6,000万円の住居を購入したとします。この場合、トータルで1,000万円のマイナスになり、その譲渡はなかったものとみなされ課税されません。ただし、4,000万円で買い替えた時には1,000万円のプラスが出ますのでその分には課税されます。

この特例の要件は、以下の要件をすべて満たした国内にある家屋とその敷地(土地と借地権)です。

①譲渡対価が1億円以下であること
②本人の所有期間が10年超である居住用財産
③所有期間10年超の居住用財産の課税の特例が受けられる家屋とその敷地であること

 
また、買い換える資産の範囲も以下の要件に該当する必要があります。

①譲渡資産を譲渡した者が住むために買い換えた家屋またはその敷地で、日本国内にあるもの
②一定の新耐震基準に適合するものであること
③家屋の床面積が50㎡以上であること。土地についてはその面積が500㎡以下であること
さらに既存の中高階耐火共同住宅の場合には、築25年以内であること

 
買換特例は、買い換えを奨励するための特例ですが、行き過ぎるとバブル時代の住宅価格の高騰を招きかねないため、上記のように厳しい条件がありますので、該当するか否かは、かならず税理士に確認しましょう。

まとめ

以上、譲渡所得の意味や所得、税額の計算方法、特別控除の内容や要件などについて、ご紹介しました。
土地や建物などの譲渡所得は、短期と長期で税額に大きな差が出ます。また、マイホームを売却した時には、特別控除の他、軽減税率の特例が適用される場合があります。
また、ここでご紹介した以外にも、空き家を相続して売った時には「空き家特例」を受けることができますし、不動産を売った時の特例は、頻繁に税制改正をされています。
受けられる特例をもらさず受けるためにも、税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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