非課税所得とは|税金がかからない所得【まとめ】

公開日:2021年09月08日
最終更新日:2022年07月07日

この記事のポイント

  • 一定の所得については、課税されない「非課税所得」がある。
  • 非課税所得は、課税されない半面、所得から生じた赤字もなかったこととなる。
  • 非課税所得のなかには、一定の手続きが必要となるものもある。

 

所得税は、原則として居住者が得たすべての所得に対して課税されますが、一定の所得については課税されない「非課税所得」があります。
非課税所得については、判断を誤りやすいものが多いので、注意が必要です。

非課税所得とは

非課税所得とは、所得税が課税されない所得をいいます。
所得税は、原則として個人がその年に得たすべての所得について課税されます。しかし例外として、社会政策上の配慮や二重課税防止、課税技術等の問題などの理由から、一定の所得については所得税がかからない措置がとられています。

非課税所得は、課税されない半面でこの所得から生じた赤字はなかったものとされます。たとえば、家具、衣類などの生活に通常必要となる動産を譲渡して得た所得については非課税となりますが、損失が出た場合にもその損失はなかったものとされ、ほかの所得から差し引くことはできません。

(1)利子・配当にかかるもの

利子・配当にかかるもののうち一定のものについては、非課税となります。

①障がい者や所定の障がい年金を受けている人、遺族年金などの受けている妻や児童扶養手当を受けている児童の母が受ける利子のうち、以下のもの
ア)元本350万円を限定とする少額公債の利子
イ)元本350万円を限度とする少額預金の利子
※非課税貯蓄申込書の提出など、一定の手続きが必要です。

②勤労者財産形成住宅(または年金)貯蓄の利子等で、元本550万円(一定の場合は385万円)を限度とするもの
※非課税貯蓄申込書の提出など、一定の手続きが必要です。

③税金の納付のために引き出された納税準備金にかかる利子

④当座預金の利子(年利率が1%を超えるものを除きます)

⑤オープン型の証券投資信託の収益の分配金のうち、元本の払戻しに相当する特別分配金

⑥小学校・中学校・高校、義務教育学校の子ども銀行の預貯金等の利子

⑦非課税口座(NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA内の少額上場株式等にかかる配当等)

(2)給与にかかるもの

給与所得者の出張旅費や通勤手当(月額15万円まで)なども、非課税所得となります。

①給与所得者の出張旅費、転任旅費

②給与所得者の通勤手当(月額15万円まで)

③給与所得者の職務上定められた制服など

④外国政府、国際機関などの職員が受ける給与

⑤外国に勤務する居住者が受ける在外手当

⑥特定の取締役などが受ける新株予約権の行使(ストックオプション)による経済的利益(権利行使価額の年間限度額:1,200万円)

⑦学資金(役員など一定の人は除きます)

(3)資産の譲渡にかかるもの

生活に通常必要な動産の譲渡による所得や、非課税口座内の少額上場株式等にかかる譲渡所得などは、非課税所得となります。
生活に通常必要でないぜいたく品などは、課税対象となります。

①家具、衣服、通勤用自動車など生活に通常必要な動産の譲渡による所得
※1個または1組の値段が30万円を超える宝石や貴金属、骨とうなどの譲渡による所得は課税対象です。

売却資産 具体例 所得税法上の取り扱い
売却益 売却損
生活に通常必要な動産(生活必需品) 家財道具、衣服、通勤用の自動車など 非課税 生じなかったものとされる
生活に通常必要でない動産(ぜいたく品) 高級外車、ヨット、30万円を超える貴金属、骨とうなど 課税 ほかの所得から控除はできないが、同一区分の総合譲渡所得等から控除することはできる
事業用動産 事業で使用している自動車、パソコンなど 課税 他の所得から控除することができる

②資力がなく債務を弁済することが著しく困難な個人が、競売などの強制換価手続き(滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売や破産手続など)などにより、資産を譲渡した時の所得

③非課税口座(NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA)内の少額上場株式等にかかる課税所得等

④相続税を納めるために財産を物納した時の所得

⑤国や地方公共団体、公益法人(国税庁長官の承認を受けたもの)に資産を寄付した場合の所得

⑥保証債務の履行のために、土地等を譲渡し、求償権が講師できない場合の所得

⑦特定の国宝、重要文化財などを、国や地方公共団体に譲渡した場合の所得

⑧個人に資産を贈与した時の所得(贈与を受けた人には、原則として贈与税が課税されます)

(4)その他(慰謝料など)

その他、損害保険金や損害賠償金、見舞金、健康保険・介護保険などの保険給付なども非課税所得です。
なお、生命保険金を受領した場合には、保険料負担者、被保険者、保険金等受取人によって、課税関係が異なりますので注意が必要です。
また、損害賠償金の受領についても、債務不履行に係る損害賠償金等については課税対象となります。

①傷病者や遺族などが受ける恩給、年金、特別給付金など

②地方公共団体が、心身障がい者扶養共済制度に基づき支給する給付金

③皇室の内廷費、皇族費

④文化功労者年金等や学術奨励金等で財務大臣が定めるものなど

⑤学資金(給与などの対価としての性質をもつものを除きます)および、扶養義務者が扶養義務を履行するために給付する金品

⑥心身に加えられた損害または突発的な事故によって資産に加えられた損害に起因して取得する損害保険金、損害賠償金、障害給付金、慰謝料、見舞金など
※損害賠償金等を受領した時の課税関係については、債務不履行により受ける損害賠償金や、棚卸資産などの収入金額に代わる性質を有するものは、課税対象となります。

取得原因 課税非課税判定
債務不履行により受ける損害賠償金等 課税 違約金、遅延利息
必要経費に算入される金額を補てんするために受ける損害賠償金 従業員の給料、一時借店舗の賃借料その他通常の維持管理費用などを補てんするもの
身体の傷害または心身に加えられた損害につき受ける損害賠償金 給与または収益の補填 非課税 給与所得者が加害者から受ける給与の補償料および事業所得者が加害者から受ける収益の補償料
慰謝料その他精神的補償料など 示談金、慰謝料
見舞金 災害見舞金などで相当と認められるもの
資産の損害につき受ける損害賠償金等 棚卸資産などの収入金額に代わる性質を有するもの 課税 棚卸資産の火災保険金、特許権の侵害による保証金
店舗、車両等の固定資産 収益の種類 復旧期間中の休業補償金(資産の補償等によりその期間の補償として受けるもの)
資産そのものの損害の補償 補償を約したもの 収用等により漁業権、水利権等が消滅することで受けるもの
突発的なもの 非課税 店舗の損害によって受ける損害賠償金、火災保険金(ただし必要経費に算入される金額を補てんする部分は除きます)
見舞金 災害見舞金などで相当と認められるもの

 
⑦相続、遺贈または個人からの贈与によって取得するもの(所得税は非課税ですが、相続税、贈与税の対象にはなります)

⑧公職の候補者が、選挙運動に関して法人から受ける寄付で、公職選挙法による報告がされたもの

⑨葬祭料、香典、災害等の見舞金(その金額が受贈者の社会的地位、贈与者との関係等からみて、社会通念上相当と認められるものに限られます)

⑩健康保険、介護保険などの保険給付や一定の健康被害救済給付金、感染救済給付金など

⑪雇用保険の失業給付、労働者災害補償保険の保険給付金など

⑫生活保護のための給付、児童福祉のための支給金品、児童手当、児童扶養手当、高校の実質無償化に係る高等学校等就学支援金など

⑬宝くじの当選金など(海外の宝くじ当選金は、一時所得となり課税対象となります)

⑭生命保険受取人が被保険者の一定の場合
※生命保険金等を受領した場合の課税・非課税の判定は、下記のとおりとなります。

保険料負担者 被保険者 保険金等受取人 傷害 死亡 満期
非課税 一時所得
B 一時所得(※1) 一時所得(※3)
B 相続税 贈与税
B 非課税
B 一時所得(※1) 贈与税
A 1/2 B 相続税
C 1/2 贈与税
法人 従業員 従業員またはその親族 非課税(※2) 相続税 一時所得(※2)

※1:保険金受取人が被保険者の一定の親族の場合には、非課税です。
※2:保険金受取人が法人で、その保険金が従業員の退職金や支払うべき給与などに充当された場合には、退職所得や給与所得となります。
※3:保険金を年金で受給した場合は雑所得となります。

非課税所得よくあるQ&A

これまでご紹介したように、非課税所得については「課税されるのか、非課税なのか」といった課税関係の判定に関するご質問が多くあります。
そこでここでは、非課税所得に関するよくあるご質問をご紹介します。

(1)新型コロナ関連の支援金は非課税か

–「新型コロナウイルス感染症関連の支援金は、課税対象となりますか」

新型コロナ関連の支援金については、課税対象となるものと非課税となるものがあります。

所得税では、新型コロナウイルス感染症への対応として、臨時特例が設けられました。

①1人10万円の特別定額給付金
→市町村から支給された、1人10万円の特別定額給付金は非課税となります。

②持続化給付金
感染拡大防止協力金(お店への自粛要請への対応等)
→課税対象となりますので、確定申告の際には収入に計上する必要があります。

(2)新型コロナに関するの従業員への見舞金は非課税か

–「介護施設の従業員は、コロナ渦において平常時には感じないような不安を感じながら事業に従事しています。そこで、事業主が社会規定を改定し『緊急事態宣言下において介護サービスに従事する従業員に対しては、5万円の見舞金を支給する』としました。この見舞金は非課税所得となりますか。」

非課税所得となります。
新型コロナウイルス感染症に関連して従業員に支給する見舞金については、以下の3つの要件を満たす場合には非課税所得となります。

①その見舞金は心身または資産に加えられた損害につき、支払いを受けるものであること。
ア)使用人等やその親族が新型コロナウイルスに感染したため、支払いを受けるもの
イ)緊急事態宣言下において、事業の継続を求められる使用者の従業員等で次のいずれかに該当する者が支払いを受けるもの
・多数の者との接触を余儀なくされる業務など、新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高い業務に従事している者
・緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者

②その見舞金の支給額が、社会通念上相当であること
・感染する可能性や感染の事実に応じた金額となっていて、それが社内規程などに照らして相当と認められるもの

③その見舞金が、役務の対価という性質を有していないこと
・感染の可能性の程度に関わらず、従業員に一律に支給されているものなどは、課税対象となる可能性があります。

(3)子どもが締結した火災保険で父が受領した保険金は非課税か

–「父の建物に子どもが火災保険契約を締結し、その保険金を父が受領した場合には、その保険金は課税対象となりますか。」

課税対象とはなりません。
火災保険契約では、保険金が契約者ではなく保険の目的である建物の所有者に支払われます。また、資産の損害に基因して支払いを受けた保険金は、非課税とされています。
したがって、建物の所有者である父が受け取った保険金は、非課税所得となります。

まとめ

以上、非課税所得についてご紹介しました。非課税所得については、とくに生命保険金等を受領した場合や生活用動産等を譲渡した場合において、課税・非課税の判定が誤りやすいものです。
後から税務署に指摘を受けないよう、あらかじめ税理士に相談してから確定申告等することをおすすめします。

非課税所得について相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から所得税の確定申告や、非課税所得について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

個人確定申告を税理士に依頼したい方はこちら

この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、非課税所得や所得税の計算、確定申告などについて相談することができます。

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop