長期譲渡所得とは?短期譲渡所得との違いは?

公開日:2022年12月21日
最終更新日:2023年09月12日

この記事のポイント

  • 長期譲渡所得とは、保有期間が5年超の譲渡所得のこと。
  • 譲渡所得は、保有期間が5年以内かどうかで短期と長期に区分される。
  • 保有期間は、譲渡した年の1月1日現在で5年超かどうか判定する。

 

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。
また、保有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」となり、それ以下の保有期間は「短期譲渡所得」に分けられ、長期の方が低い税率となります。
つまり、長期譲渡所得に該当すると税負担が軽減することになります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得

資産を売却したときの所得を、譲渡所得といいます。
譲渡所得については、所得税や住民税が課せられます。
譲渡所得は、譲渡する資産の種類等によって総合課税と分離課税に区分され、課税方式が決められています。

土地や建物などを譲渡した場合の譲渡所得は分離課税で、他の所得と区別して特別な税率が適用されます。
そして、土地や建物などの不動産を保有していた期間によって5年を境にして短期と長期に分かれます。そして、短期譲渡所得の方が税額は高く、長期譲渡所得については税率が軽減されます。
これは、短期譲渡所得については転売目的で売買して利益を得ている可能性もあるためです。

短期・長期の区分は、譲渡の日ではなく、資産を売却した年の1月1日現在で判定します。つまり、売却した年の1月1日時点で5年以内であれば「短期譲渡所得」、5年超であれば「長期譲渡所得」として課税されます。

その年の1月1日現在で
保有期間 5年以下
短期譲渡所得
その年の1月1日現在で
保有期間 5年超
長期譲渡所得

(1)そもそも「譲渡所得」とは

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得です。
譲渡所得とされる資産の譲渡には、売買、交換、競売、公売などのほか、法人に対する贈与または遺贈などについても、譲渡があったものとみなされ譲渡所得となります。

譲渡所得は、その譲渡する資産によって「総合課税」と「分離課税」に区分され、その区分ごとに課税方式が決められています。

譲渡資産 種類 所得区分 課税方式
土地(借地権含む)、建物、構築物等 不動産 分離課税の譲渡所得 申告分離課税
上場株式、同族会社株式、出資金等 有価証券 申告分離課税
源泉分離課税(※①)
骨とう品、美術品、書画、土石、砂利(※④)、立木等 動産 総合課税の譲渡所得 総合課税
ゴルフ会員権(※②)、借地権(立退料※③)、漁業権、特許権、営業権等 権利
※①上場株式等の取引で、「特定口座(源泉徴収口座)」を選択した場合
※②ゴルフ会員権は、「ゴルフ場の所有または経営に係る会社の株主または出資者でなければ会員となれない会員権」や、「預託金等を預託しなければ会員となれない会員権」、株主または出資者であり、かつ預託金等を預託しなければ会員となれない会員権」があるが、いずれの場合も同じ課税方式となる。
※③立退料のうち、借地権の消滅の対価に相当する部分は譲渡所得となる。
※④土地所有者が、その土地の地表または地中の土石、砂利等を譲渡したことによる所得は、譲渡所得となる。

(2)総合課税の譲渡所得

譲渡した資産が、土地建物等の不動産や株式等の有価証券以外の場合(ゴルフ会員権、借地権、特許権など)は、総合課税の譲渡所得となります。
総合課税の譲渡所得は、原則として譲渡する資産の取得の日から譲渡した日までの保有期間(取得から売却までの保有期間)が5年以内のものを「短期譲渡所得」、5年超のものを「長期譲渡所得」として区分します。
ただし、自己の著作に係る著作権など一定の資産については、その資産の保有期間にかかわらず「長期譲渡所得」に区分されます。

資産の種類 保有期間 長期・短期の区分
・自己の著作に係る著作権
・自己の研究成果である特許権、実用新案権、工業所有権
・自己の育成の成果である育成者権
・自己の探鉱により発見した鉱床に係る採掘権
長期譲渡所得
上記以外 5年超
5年以内 短期譲渡所得

(3)分離課税の譲渡所得(土地建物等)

土地建物等の譲渡によって得た所得は、原則として分離課税の譲渡所得となります。
土地建物等の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日において、譲渡資産の保有期間が5年を超えるものを「分離課税の長期譲渡所得」、5年以下のものを「分離課税の短期譲渡所得」として区分します。

長期譲渡所得と短期譲渡所得は、以下のとおり保有期間によって税負担が異なります。
長期譲渡所得は、譲渡による収入金額から取得費と譲渡費用の合計額を控除して長期譲渡所得金額(課税長期譲渡所得金額)を計算します。
所得税、住民税の税率は以下のとおりです。

長期譲渡所得
所得税 課税長期譲渡所得金額×15%
住民税 課税長期譲渡所得金額×5%

なお、短期譲渡所得については、短期譲渡所得の金額がそのまま課税短期譲渡所得となり、平成16年1月1日以後の譲渡について、以下の税率で課税されます。

短期譲渡所得
所得税 課税短期譲渡所得金額×30%
住民税 課税短期譲渡所得金額×9%

なお、総合課税の譲渡所得の赤字の金額は、原則として他の給与所得などと損益通算をすることができますが、土地や建物の譲渡による赤字や株式の売却によって生じた赤字の金額は、他の所得との損益通算ができません。

(4)長期譲渡所得の税額の計算

土地建物等の不動産の譲渡所得は、譲渡収入金額(売却代金)から、取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
マイホームや相続した空き家を売却した時など特定の場合には、特別控除も適用されます。たとえば、マイホームを売却したときは3,000万円の特別控除、公共事業などのために売却したときは、5,000万円の特別控除があります。

譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除 = 土地建物等の譲渡所得
譲渡所得 × 税率 = 税額

取得費:購入したときの代金や購入手数料、その後にかかった改良費など。ただし、代々引き継がれてきた土地など購入代金が不明な場合には、譲渡の収入金額の5%相当額を取得費とすることができる。

譲渡費用:売却のためにかかった費用。
不動産業者への仲介手数料や、借家人を立ち退かせるための立退料、建物を壊して更地にして土地だけ売る時の取り壊し費用など

(5)マイホームなどの特別控除

マイホームを売却したときや、優良住宅地などのための譲渡については、特例の軽減税率があります。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得 通常の売却 15% 5%
マイホームを売却したとき 6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円超の部分 15% 5%
優良住宅地などのための譲渡 2,000万円以下の部分 10% 4%
2,000万円超の部分 15% 5%
短期譲渡所得 通常の売却 30% 9%
国や地方公共団体への譲渡など 15% 5%

知っておきたい譲渡所得の基礎知識

資産の譲渡でも、譲渡所得とされず事業所得や雑所得などに区分されるものがあります。また、譲渡所得のなかには課税されない譲渡所得もあります。

(1)譲渡所得とされない資産の譲渡とは?

棚卸資産や営利を目的として継続的に譲渡される資産は、事業所得または雑所得に区分されます。
また、山林所得の立木は、取得した日から5年を超えて譲渡する場合には、山林所得、それ以外は上記所得または雑所得に区分されます。

譲渡する資産の種類 区分
棚卸資産およびこれに準ずる資産 事業所得または雑所得
営利を目的として継続的に譲渡される資産
山林の立木 取得した日から5年を超えて譲渡 山林所得
上記以外 事業所得または雑所得
金銭債権

(2)所得税がかからない譲渡所得とは?

生活用動産の譲渡による所得や、国や地方公共団体に対して寄付した場合の所得などは、所得税が課税されない譲渡所得(非課税所得)となります。
たとえば、メルカリなどで家財、衣服など生活に必要な動産を売却した場合は、非課税です。

主な非課税所得
①生活用動産の譲渡による所得
(衣服、家財など。貴金属、宝石、書画、骨とう、美術品などをのぞく)

②国や地方公共団体に対して寄付した場合の譲渡所得

③公益法人に対して財産を寄付した場合で、国税庁長官の承認を受けた譲渡

④相続財産を物納したことによる譲渡所得

⑤譲渡担保や買戻条件付き譲渡、または再売買の予約で一定の要件を満たすもの

まとめ

譲渡所得は、資産を譲渡した場合の所得で、なかでも土地建物等の不動産を売却して得た売却益は、特別にほかの所得と分けて分離課税で税金を計算します。
また、保有期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に区分され、短期の方が高い税率になります。
保有期間は、譲渡した年の1月1日現在で5年を超えているかどうかで判定されます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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