株の税金|特定口座(源泉なし)で利益が出た場合の確定申告

公開日:2019年04月05日
最終更新日:2022年12月02日

この記事のポイント

  • 株取引で証券会社に開設する口座には「特定口座」と「一般口座」がある。
  • 特定口座(源泉なし)は、原則として申告が必要。
  • 特定口座(源泉なし)は譲渡し損益の計算は証券会社が行う。

 

株取引を行っている場合には、利益が出たら自分で確定申告をして税金を納めるのが、本来の姿です。
しかし、特定口座「源泉あり」を選択している場合には、証券会社・銀行が売却損益・税金の計算を行ってくれたうえに、税金を売却代金から差し引いてくれるので確定申告は原則として不要です。しかし、特定口座で「源泉なし」を選択している場合には、確定申告が必要です。

ここでは、特定口座で「源泉なし」を選択していて利益が出た場合の確定申告の方法、申告書の記載方法や注意点についてご紹介します。

特定口座(源泉徴収なし)とは

株取引で証券会社に開設する口座には「特定口座」と「一般口座」があります。
特定口座は、さらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選択することができます。
特定口座「源泉徴収なし」とは、証券会社が源泉徴収して税金の納付までは行われませんが、証券会社が譲渡損益の計算を行い、特定口座年間取引報告書まで作成してくれる口座です。

(1)特定口座のしくみを知ろう

特定口座「源泉徴収あり」を選択すると、証券会社などが取引ごとに税金を清算し源泉徴収までてくれますので、忙しい人や細かい計算が苦手な人には便利な仕組みといえるでしょう。
「それなら源泉徴収なしを選択するメリットって、ないのでは」と思われる人もいると思いますが、そんなことはありません。「源泉徴収あり」だと、他の取引との損益通算や各種特例の利用などまで対応してくれないからです。

また、サラリーマンや年金所得者の場合、年間の譲渡所得(利益)が20万円以下の場合には、申告・納税は原則として不要であるにもかかわらず源泉徴収されてしまうため、納付しなくても済む税金まで徴収されているからです。

また、「源泉徴収あり」で譲渡損が出たときは確定申告をすれば向こう3年間の譲渡損を繰り越すことができますが、確定申告をしなければ年間の譲渡所得を含めた給与所得の合計が20万円以下でも、すでに源泉徴収された所得税の還付はできないので、繰越の特例を受けることはできません。

口座の種類 譲渡損益の計算・
メリット・デメリット
確定申告の有無
一般口座 自分で計算する 確定申告が必要
特定
口座
での
取引
源泉徴収ありの口座
での取引
・証券会社が計算する。
・同一の特定口座内での取引も証券会社が損益通算を行ってくれる。
・利益が20万円以下でも源泉徴収されてしまう。
確定申告が不要
源泉徴収なしの口座
での取引
・証券会社が計算する。
・利益が20万円以下の場合、源泉徴収されない。
・利益が20万超の場合、確定申告・納税を自分で行わなければならない。
確定申告が必要

(2)特定口座と一般口座の違い

前述したとおり、株取引で証券会社に開設する口座には「特定口座」と「一般口座」があります。
以前は、みなし所得費の特例を使えるという点が一般口座のメリットだったのですがこの特例が廃止されたため、新たに株取引を始める人にとっては、メリットが少ないといえます。
一般口座は、証券会社から送付される取引報告書をとりまとめて、損益通算の計算も確定申告も自分で行います。

(3)特定口座(源泉なし)|利益が出た場合

特定口座「源泉徴収あり」を選択している場合には、原則として確定申告は必要ありません(ただし、あえて確定申告をした方が得する場合もあります)。
しかし、特定口座で「源泉徴収なし」を選択している場合で利益が出た場合には、譲渡損益の計算までは証券会社が行ってくれますが、利益が20万円を超えて出た場合には自分で確定申告を行なう必要があります。

(4)利益が20万円以下なら申告の必要なし

特定口座「源泉徴収なし」のメリットは、利益が20万円以下の場合源泉徴収されないという点です。
年収が2000万円以下のサラリーマンで、年末調整を受けた給与所得以外に株式の譲渡による所得しかない場合には、その株式の譲渡による譲渡益が20万円以下であれば、所得税の確定申告は必要ありません。

(5)特定口座(源泉なし)で損失が出たら

損失が出た場合には、税金がかからないのはもちろん、確定申告を行うことで向こう3年間の譲渡損を繰り越すことができます。赤字の場合には確定申告は必要ありませんが、翌年以降の税金を少なくするために確定申告をしておくべきです。

なお、上場株式等以外の株式等(非上場株式など)について生じた譲渡損失については、繰越控除ができません。

特定口座(源泉なし)の確定申告

株式等の譲渡による所得に対しては、所得税率15.315%(+住民税5%)で課税されます。
特定口座「源泉徴収なし」を選んでいる場合は原則として確定申告が必要ですが、証券会社から送られてきた特定口座年間取引報告書と、源泉徴収票(サラリーマンの場合)を転記する作業がほとんどなので、それほど難しくありません。

確定申告とは、個人がその年1月1日から12月31日までの1年間の収入・支出、医療費や寄付、扶養家族状況などから所得を計算して確定申告書を作成し、税務署へ提出して納税額を確定することをいいます。

株取引で利益が出た場合、利益を計算して確定申告をして税金を納めるのが原則ですが、特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合には、証券会社・銀行が売却損益・税金の計算を行ない、税金を売却代金から差し引いてくれるので、すでに納税が行われていることになります。
しかし、前述したとおり特定口座で「源泉あり」を選択している場合でもあえて申告した方が得することもあります。

(1)譲渡所得を計算する

株式の譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
譲渡価額から差し引くことができる必要経費は、取得費や譲渡費用、借入金利子です。

譲渡価額-必要経費=譲渡所得
譲渡所得の金額×税率(15.315%)=所得税額
※基準所得税額×2.1%の復興特別所得税が別途加算されます。

(2)取得費が不明なとき

取得費が不明なときは、売却価額の5%としてもよいとされています。
同じ銘柄の取得費については、「総平均法に準ずる方法」によります。

年月日 内容 数量
(株)
単価
(円)
価額
(円)
2022.1.3 購入 3,000 100 300,000
2022.2.3 購入 1,000 200 200,000
2022.3.3 売却 2,000 (300,000円+200,000円)÷(3000株+1000株)=125円
2022.4.3 購入 3,000 300 900,000
2022.5.3 売却 1,000 (250,000円+900,000円)÷(2000株+3000株)=230円

(3)確定申告書の作成

株式を売却して利益が出た人の確定申告書は、国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、簡単に作成することができます。

①「株式等の譲渡所得等」を選択
国税庁のHP「確定申告書等作成コーナー」にログインし、「収入金額・所得金額」の入力画面まで進み、「株式等の譲渡所得等」を選択します。

②特定口座年間取引報告書の内容を入力
「特定口座年間取引報告書の内容を入力する」を選択し、当てはまる項目をチェックします。

③取引内容の入力
「源泉徴収の選択」をチェックし、証券会社から送られてきた「年間取引報告書」を見ながら、取引口座の種類、譲渡で得た収入、取得費などの内容を入力していきます。

まとめ

以上、特定口座「源泉なし」の申告書の作成方法や作成手順、記入する際の注意点についてご紹介しました。
基本的には、会社から受け取った源泉徴収票と証券会社から送られてきた特定口座年間取引報告書から転記する作業がほとんどなので、国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、簡単に作成することができます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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