公開日:2019年11月02日
最終更新日:2022年06月13日
アパート・マンション経営などの不動産賃貸業は、サラリーマンの副業としても人気です。
不動産賃貸業というと、「資金をどのように調達するのか」「利回りは何%か」といった点を気にする人がほとんどでしょう。
しかし、見落としがちなのが、アパート・マンション経営に関する税金です。
実は、アパート・マンション経営していくうえでは、驚くほど多くの税金が課税されることになります。不動産賃貸を検討中の方は、アパート・マンション経営をしていくうえで課税される税金についても、事前にしっかり理解しておくことが重要です。
個人がアパート・マンションなどを貸して家賃などの収入を得た場合には、不動産所得として他の所得と合算され、所得税や住民税が課税されます。
また、不動産は持っているだけで固定資産税や都市計画税などの税金も課税されます。
不動産取得税 不動産取得税とは、土地や建物を購入したり新築したりした時に課税される税金です。 不動産の価格(固定資産税用価額)に対して、原則4%の税率によって課税されます。
住宅の取得については、特例税率が適用されて3%の税率となるほか、土地の取得についてはさらに軽減措置があります。 |
印紙税 不動産賃貸経営においては、不動産売買契約書やリフォームの請負契約書、金融機関から借入れをする際の金銭消費貸借契約書など、さまざまな契約書を取り交わします。 そして、これらの契約書を締結する際にかかってくるのが、印紙税です。 印紙税は、国が発行した印紙を購入して契約書に貼付することで納めます。 印紙の金額は、契約書の種類や契約書に記載された契約金額によって異なります。 なお租税特別措置法では、印紙税の軽減措置がとられているので、「不動産の譲渡に関する契約書」については、印紙税の税率が引き下げられています。 |
登録免許税 登録免許税とは、不動産の登記を行う際に課税される税金です。 不動産を取得した時には、その権利関係を明らかにするために、通常土地については「所有権移転登記」、建物については、新築の場合には「所有権保存登記」、中古の場合には「所有権移転登記」を行います。 なお、アパートやマンションを新築する場合で、金融機関などから建築資金の一部を借入する時には、建築するアパートやマンションと土地を担保として提供することになりますが、この際の登記を「抵当権の設定登記」といいます。 登録免許税の税率は、登記の種類によって異なります。 |
固定資産税とは、土地やアパート・マンションなどの家屋等の固定資産を所有している場合に課される税金です。1月1日現在、固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に対して課税されます。
第一期の納付月(4月~6月頃)に納税通知書が送付され、年4回に分けて納付することになります。
固定資産税の税額は、原則として、「固定資産税評価額×1.4%」の計算式で求められますが、税率は市区町村によって多少異なります。
建物、土地それぞれについて 固定資産税評価額×1.4% |
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固定資産税を計算する際に基となる「固定資産評価額」は、国が定めた固定資産税評価額基準によって市区町村が決定しますが、評価額も3年ごとに見直されて評価替えが行われることになっています。
不動産賃貸経営を行い、家賃収入を得られるようになると、その所得には所得税が課税されます。
この際の「所得」とは、入居者から入ってくる家賃収入から固定資産税や諸経費を差し引いた利益のことをいいます。
所得=収入-必要経費 |
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不動産所得がある人は、その年の翌年の3月15日までに所得税の確定申告を行なわなければなりません。
住民税についても、住所地の市区町村役場で申告書を提出しなければなりませんが、確定申告を行なっていれば、住民税の申告書も提出したものとみなされますので、別途申告書を提出する必要はありません。
市区町村から送付されてきた納税通知書に従って、住民税を納めればよいことになります。
アパートやマンションを10室以上所有している場合や、戸建ての貸家を10棟以上持っている場合など、不動産経営の規模が一定以上大きくなると、事業税がかかることがあります。
どのような時に事業税がかかるか否かについては、賃貸収入や管理状況などから総合的に考慮され、課税する側の都道府県が事業的規模と認定すれば、事業税を課税されることになります。
不動産賃貸業の事業税の税率は5%ですが、各都道府県によって多少異なります。
事業税の計算は、所得税の確定申告をする際の不動産所得を基にして、以下の計算式で計算します。
事業税には事業主控除として290万円の控除が認められますので、不動産所得の金額が290万円以下であれば、事業税は課税されないことになります。
事業税=(収入金額-必要経費-290万円)×3~5%(不動産貸付業は5%) |
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不動産賃貸業における消費税は、建物の用途や売上金額で課税・非課税が分かれます。不動産賃貸では、店舗や事務所、駐車場などの賃料には消費税がかかりますが、居住用の建物の賃料には消費税はかかりません。また、土地を貸す場合には更地については非課税です。
したがって、いくつかの不動産を所有している場合には、消費税の対象か否かで分ける必要があります。
消費税を納める課税事業者は、事業上のすべての取引について消費税の課税非課税を区別し、受け取った消費税と支払った消費税を集計し、その差額を納めなければなりません(原則課税)。
ただし、この計算は非常に負担が大きいため、課税売上高5,000万円以下の事業者であれば、受け取った消費税から課税売上高に一定割合(みなし仕入率:不動産賃付行は40%)を掛けた金額を差し引く「簡易課税」という方法を選ぶこともできます。
また消費税は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円超の場合に消費税課税事業者となりますので、1,000万円を超えなければ消費税は納めなくてよいことになります(消費税免税事業者)。
不動産賃貸に関する税金を正しく計算して納税するためには、お金の出入りを把握するために帳簿をつける必要があります。
かかった費用の領収書はきちんと整理し保存しておきます。
この帳簿に複式簿記を採用して青色申告を行えば、税額を大幅に軽減させることも可能です。
不動産所得の節税のポイントは、必要経費をもれなく計上して利益を圧縮することです。
必要経費に算入することができる費用としては、賃貸用不動産を購入したり建築したりするための借入金利子や、減価償却費、租税公課、修繕費、火災保険料、事務費、広告宣伝費などがあります。
これらの必要経費を収入から差し引いた所得が、課税されることになります。
不動産所得は、青色申告をすることで税額を軽減させることができます。
青色申告とは、正規の帳簿(複式簿記)をつけることでさまざまな税金上のメリットが受けられる制度です。
最も大きなメリットは、事業による所得から無条件で最高55万円(令和元年以前は最高65万円)を控除することとされています。
※令和2年分以後は、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合に、65万円の青色申告特別控除が受けられます。
このほか、事業に従事する家族への給与をすべて必要経費にできる「青色事業専従者給与」、事業の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる「純損失の繰越控除」なども青色申告のメリットで、青色申告のメリットは小さいものも含めると50以上あると言われています。
複式簿記というと難しく感じるものですが、「クラウド会計ソフト freee会計」を活用すれば、計算ミスもなく修正も簡単で、自動で帳簿を作成することができます。
不動産賃貸のために支出した費用は、通常はその全額がその年の必要経費となります。しかし、長期にわたって使用してその価値が年々減っていくような資産については、その取得費用を使用可能期間に応じて必要経費としていきます。
これを「減価償却」といいます。
不動産の場合には、建物や付属設備などが減価償却資産となります。
減価償却を行う使用可能期間を「耐用年数」といい、資産の種類ごとに決められた耐用年数から算出された償却率を掛けた金額が、毎年の減価償却費(必要経費)となります。
なお、建物とその付属設備の減価償却はまとめて減価償却することもできますが、分けて償却した方がお得です。なぜなら付属設備は建物よりも耐用年数が短いため、短期間で減価償却できるからです。
つまり付属設備と建物を分けて減価償却すると、建物と一緒に償却するよりも当初の必要経費を多く計上することができますので、有利となります。
不動産所得が赤字になった場合には、その金額をほかの所得から差し引くことができます。これを「損益通算」といい、赤字の分だけ総所得金額が少なくなるため、納税額が少なくなります。
「空室が多かった」「借入金の利子や減価償却費が多額になった」など、賃貸収入が思うように上がらなかったときには、赤字と黒字を相殺して節税をしましょう。
なお、赤字のうち土地の取得にかかる借入金の利子に対応する金額は、損益通算の対象とはなりませんので注意が必要です。
建物や設備は、思わぬ事故で壊れることがありますし、年月が経過すれば痛んだりします。このような修繕やメンテナンスのために支出した費用は、「修繕費」として必要経費になります。
ここで注意が必要なのが、修繕費が資本的支出に該当する場合があるということです。修繕を行うことで元の状態より価値が高くなったり使用可能期間が延びたりした場合には、資本的支出として全額をすぐに必要経費にせず、取得したときの金額に加えて減価償却することになります。
必要経費は、できるだけ一時に計上した方が税金上は有利になりますから、できるだけ修繕費として計上した方がお得です。
修繕費と資本的支出の判定は、なかなか難しいものですが、以下のようなものは修繕費とすることができます。
①修理、改良等に要した費用で20万円未満のもの ②おおむね3年未満の周期で行われる修理、改良等 ③支出した金額が60万円未満のときは、明らかに資産の価値を高めるものや耐久性を増すものを除いたもの |
以上、不動産経営をするうえで知っておきたい税金について、ご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、不動産経営をするうえでは、多くの税金が課税されます。これらの税金の知識を持っていないと、思わぬ損をすることもありますし、有効な節税対策を行うこともできません。
税理士に相談しながら、さまざまな軽減措置を上手に活用し、効果的な節税対策を行うようにしましょう。
また、サラリーマンの副業については下記の記事でまとめていますので併せてご覧ください。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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