法人の節税対策とは

公開日:2018年11月06日
最終更新日:2022年03月14日

この記事のポイント

  • 節税対策は、重要な経営戦略でもある。
  • 節税対策は、タイミングが重要である。
  • 節税対策は、中長期的視野で考えることが重要である。

 

節税対策とは

節税対策とは、法律の範囲内で払う税金を少なくするため行う対策をいいます。

節税対策や金融機関対策についてじっくりと検討することは、短期的な視点に立った対策ではなく、長期的な視点で将来を見据え有効な経営計画を策定するためにも大変重要なことです。

(1)節税対策は長期的な視点で行う

節税対策を十分に行わないまま決算を迎えてしまい、結果的に税金を多く納めることになってしまうケースは決して珍しい事ではありません。「もっと早く対策しておけば」と後悔するケースも多々あるものです。

節税対策は、短期的に行える対策から中長期的な視野に立った対策などさまざまな方法がありますが、決算が近づくにつれて、できる方法が限られてきてしまいます。
したがって、節税対策は決算前に慌てて行うのではなく、ある程度時間をかけてしっかり検討するのが理想的です。

節税対策についてじっくり検討した結果、来期の資金繰りを考え「節税対策を行わないで、財務体質を強化する」と判断し、「今は黒字化対策を実行すべき」と判断するのもひとつの選択肢です。

大切なのは、長期的な視点に立ち、企業の経営にとって本当に必要な節税対策は何か、どのようなスケジュールで行うべきかを判断することです。

(2)節税は経営戦略でもある

節税対策というと「どうせ税金で取られるくらいなら、使ってしまおう」と考える人がいますが、それは単にムダな資金を流出させているだけにすぎません。
効果的な経費の使い方とは、資金を留出させることになってもそれが将来別の形で回収されるべき戦略のもとで支出されるべきです。
したがって、節税対策は経営計画の一環として計画を立てるとよいでしょう。タイミングに合わせて効果的な節税対策を行い長期的に有効な対策を講じることこそが、経営戦略であるといえるのです。

節税対策は遅くとも決算3カ月前から行う

決算対策を検討する際には、事前の利益および納税予測、節税対策や経費の見直しなど、さまざまな事項について精査する必要があります。
ですから、少なくとも決算の3カ月前には、利益予測を立てて納税額を予測し、必要な節税対策について検討しておくべきです。
なぜなら、この時点で経営状態が黒字か赤字かで、取るべき対策が全く異なってくるからです。

(1)利益予測・納税予測を立てる

まずは利益予測を立てて、納税予測を行います。
利益予測を行うためには、昨年の同時期の「月次推移損益計算書」があると、計算しやすいでしょう。

利益予測を行う際には、まずは大まかに売上の総利益を予測し、次に経費などを計算します。特殊な投資などがある時は、減価償却費がどれくらい計上されるのかなども試算します。
決算予測利益を算出できたら、納税予測を行うのは比較的簡単です。
法人税は、中小企業の税負担を軽くするため資本金1億円以下の法人について、所得金額のうち年800万円以下の部分について税率が軽減されています。

所得が800万円以下の会社では、税率15.0%、所得が800万円超えなら、税率を23.2%として、法人税の納税予測を行います(※平成30年4月1日以降に開始する事業年度)。
中間納付している金額がある場合には、その金額を差し引くのを忘れないようにしましょう。

法人税のしくみと税率

区分 税率
資本金1億円以下の法人など 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15%
適用除外事業者 19%
年800万円超の部分 23.2%
上記以外の普通法人

(2)消費税の納税予測を忘れない

納税予測で忘れてはならないのが、消費税です。
消費税は、基準期間(課税期間の前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えたら課税されます。
課税対象事業者となった場合、特に中小企業では法人税より納税額が高くなることもありますので、しっかり計算しておく必要があります。

消費税の計算方法は、原則課税方式と簡易課税方式の2種類があります。

原則課税方式:
課税売上高から課税仕入れ高を引いた額に税率を掛けて求める方法。
会社の売上高が、すべて消費税の課税対象であれば問題ありませんが、非課税取引などが含まれていると計算が大変になります。
簡易課税方式:
「売上の際に預かった消費税-売上消費税に一定のみなし仕入率を掛けた金額」で計算し、消費税の計算を簡単にする方法。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には、この簡易課税方式による計算も認められています。
簡易課税方式とは、課税売上高に業種によって定められたみなし仕入率を掛けた額を課税仕入れ高とする方法で計算する方法で、この計算方法だと税額を計算する手間が軽くすることができます。

第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業) 80%
第3種事業(製造業等)農林・漁業、建築業、製造業など 70%
第4種事業(その他)飲食店業など 60%
第5種事業(サービス業等)運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 50%
第6種事業(不動産業) 40%

参照:国税庁「簡易課税制度」

簡易課税方式を選択する際には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に提出することが必要です。

原則課税方式と簡易課税方式のどちらで計算するかは、会社の判断に任されていますが、どちらの計算方法を選択するかで納税額に大きな差が出ることがありますので、注意しましょう。

「クラウド会計ソフト freee会計」を導入していれば、取引ごとに課税区分を入力するだけで、自動計算してくれるので、作業が非常にシンプルで楽になります。

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(3)黒字化対策の必要性を検討する

決算3カ月前には、来期に資金調達すべきかどうかについても検討します。
なぜなら、この時期に黒字化対策をするべきか否かを判断しなければならないからです。
金融機関からすると赤字の会社には融資しづらくなります。したがって、資金調達が必要な場合には、黒字化対策を実施する必要があります。

・経費の見直し
まず「翌期に回せる経費がないか」について検討します。
例えば、広告の出稿を数日ずらすことで、来期の広告宣伝費に計上することができます。

・少額減価償却資産
中小企業の場合、30万円以下の少額減価償却資産については、その全額を費用処理できます。

黒字化したい場合には、この特例をあえて使わずに、損金に算入せず資産として処理して減価償却を通じて費用計上するのです。
なお、この減価償却も任意なので、「今期は償却しない」と判断すれば、黒字化対策になります。(令和4年3月31日までの措置でしたが、令和4年税制改正で2年延長される見込みです。)
参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

・売上の計上基準の見直し
今期の費用計上を少なくして、収入計上が多くならないか経理基準を見直します。
たとえば、取引先に商品などが到着した時に初めて売上を計上する「受入基準」から、出荷した時点で売上を計上する「出荷基準」に変更します。
そうすると、早い段階で売上を計上することができるので、黒字化対策になります。

・経費削減の実施
まず黒字化対策として取り組むべきなのが、経費削減を実施することでしょう。
この時、固定費や変動費についても必ず見直します。
「人件費を外注費化して削減できないか」「店舗家賃の引下げについて家主と交渉できないか」などについてまで検討しましょう。

・役員給与の減額
役員給与を減額するのも、黒字化対策として有効な手段です。
ただし、一時的な資金繰りが目的で役員給与を減額することは、税法上認められていません。
役員給与の減額が認められるのは、代表取締役が平取締役に変更になった場合や、経営状況が著しく悪化した場合などに限定されます。

・生命保険契約の解約
不要な生命保険契約等の解約も、黒字化対策として有効です。
ただし、この時「解約返戻金>保険積立金」になっていなければ、黒字化対策を行ったことにはなりません。この点をしっかり確認してから解約の有無について判断するようにしましょう。

顧問税理士のいる方は節税対策について相談しましょう。いない方は、節税対策に強い税理士を探して相談してみるのがおすすめです。

まとめ

以上、中小企業が決算前にすべき節税対策についてご紹介してきました。節税対策を行わなかったり税額計算を間違ったりして税金を多く納めることになったとしても、税務署が「税金を納め過ぎていますよ」などと親切に教えてくれることはありません。節税対策を行うためには、税制を習熟し税理士に有効な節税対策についてしっかりアドバイスを受けることが大切です。

取るべき節税対策は、個々の事情によって異なりますが、決算期に近づくにつれて取れる方法が限られてきてしまいますので、早めに対策を検討しましょう。

節税対策について相談する

これまで述べてきたようにさまざまな節税対策がありますが、これらの節税対策を行うための基本は、「税制に習熟すること」の一言に尽きます。
税理士に相談して節税感覚を磨き、自社が活用できる節税対策はもれなく行い、上手に節税を行っていきましょう。

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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