法人の節税対策-決算前にすべき節税対策ガイド

公開日:2018年11月06日
最終更新日:2018年11月14日

目次

  1. 決算対策とは
    • 決算対策の必要性
  2. 決算対策-決算3カ月前
    • 利益予測・納税予測
    • 消費税の納税予測
    • 黒字化対策の必要性の検討
  3. 決算3カ月前の15個の節税対策
    • 1. 使用していない固定資産の除却
    • 2. 不良在庫の処分
    • 3. 1人当たりの飲食交際費の特例適用
    • 4. 含み損を抱える不要資産の売却
    • 5. 売上の計上基準の変更
    • 6. 決算日(事業年度)の変更
    • 7. 社会保険料・労働保険料・固定資産税の未払計上
    • 8. 未払費用で計上できるものはないか検討
    • 9. 減資(資本金を減らす)の検討
    • 10. 30万円未満の少額減価償却資産の特例の適用
    • 11. 中古の固定資産の購入
    • 12. 役員退職金の支給
    • 13. 出張旅費や日当を支払うための旅費規程の作成
    • 14. 中小企業退職金共済への加入
    • 15. 中小企業倒産防止共済への加入
  4. まとめ

法人税は、会社が自ら申告した内容にもとづいて、税金を納付します。
しかし、活用できる節税の制度を使わないままで申告してしまうと、結果的に税金を多く納めることになってしまいます。

しかし、税金を多く納めることになったとしても、税務署が親切に教えてくれることはありません。節税対策を行うためには、税制を習熟し、税理士に有効な節税対策についてしっかりアドバイスを受けることが大切です。

取るべき節税対策は、個々の事情によって異なりますが、決算期に近づくにつれて取れる方法が限られてきてしまいますので、早めに対策を検討しましょう。
ここでは、決算前に必ず検討しておきたい節税対策を中心に、ご紹介します。

決算対策とは

決算対策とは、払う税金を少なくするための節税対策、金融機関から融資を受けるために行う金融機関対策や決算前に行う事前の準備作業などのことをいいます。

節税対策や金融機関対策についてじっくりと検討することは、短期的な視点に立った決算対策という意味だけではなく、長期的な視点で将来を見据え、有効な経営計画を策定するためにも大変重要なことです。

決算対策の必要性

節税対策を十分に行わないまま決算を迎えてしまい、結果的に税金を多く納めることになってしまうケースは決して珍しい事ではありません。実際、「もっと早く対策しておけば」と後悔するケースも多々あります。

節税対策は、短期的に行える対策から中長期的な視野に立った対策などさまざまな方法がありますが、決算が近づくにつれて、取れる方法が限られてきてしまうものがほとんどです。
決算前に慌てて行うのではなく、ある程度時間をかけてしっかり検討するのが理想的です。

節税対策についてじっくり検討した結果、来期の資金繰りを考え「節税対策を行わないで、財務体質を強化する」と判断し、「今は黒字化対策を実行すべき」と判断するのもひとつの選択肢です。

大切なのは、長期的な視点に立ち、企業の経営にとって本当に必要な節税対策は何か、どのようなスケジュールで行うべきかを判断することです。

決算対策-決算3カ月前

決算対策を検討する際には、事前の利益および納税予測、節税対策や経費の見直しなど、さまざまな事項について精査する必要があります。
ですから、少なくとも決算の3カ月前には、利益予測を立てて納税額を予測し、必要な節税対策について検討しておくべきです。
なぜなら、この時点で経営状態が黒字か赤字かで、取るべき対策が全く異なってくるからです。

利益予測・納税予測

利益予測を行うためには、昨年の同時期の「月次推移損益計算書」があると、計算しやすいでしょう。

利益予測を行う際には、まずは大まかに売上の総利益を予測し、次に経費などを計算します。特殊な投資などがある時は、減価償却費がどれくらい計上されるのかなども試算します。
決算予測利益を算出できたら、納税予測を行うのは比較的簡単です。
所得が800万円以下の会社では、税率15.0%、所得が800万円超えなら、税率を23.2%として、法人税の納税予測を行います(※平成30年4月1日以降に開始する事業年度)。
中間納付している金額がある場合には、その金額を差し引くのを忘れないようにしましょう。

普通法人全て23.4%
中小法人所得が年800万円相当額以下15.0%
中小法人所得が年800万円相当額超え23.2%

消費税の納税予測

納税予測で忘れてはならないのが、消費税です。
消費税は、基準期間(課税期間の前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えたら課税されます。
課税対象事業者となった場合、特に中小企業では、法人税より納税額が高くなることもありますので、しっかり計算しておく必要があります。

消費税の計算方法は、原則課税方式と簡易課税方式の2種類があります。

原則課税方式:
課税売上高から課税仕入れ高を引いた額に税率を掛けて求める方法。
会社の売上高が、すべて消費税の課税対象であれば問題ありませんが、非課税取引などが含まれていると計算が大変になります。

簡易課税方式:
「売上の際に預かった消費税-売上消費税に一定のみなし仕入率を掛けた金額」で計算し、消費税の計算を簡単にする方法。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には、この簡易課税方式による計算も認められています。
簡易課税方式とは、課税売上高に業種によって定められたみなし仕入率を掛けた額を課税仕入れ高とする方法で計算する方法で、この計算方法だと税額を計算する手間が軽くすることができます。

みなし仕入率

第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業) 80%
第3種事業(製造業等)農林・漁業、建築業、製造業など 70%
第4種事業(その他)飲食店業など 60%
第5種事業(サービス業等)運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 50%
第6種事業(不動産業) 40%

簡易課税方式を選択する際には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に提出することが必要です。

原則課税方式と簡易課税方式のどちらで計算するかは、会社の判断に任されていますが、どちらの計算方法を選択するかで納税額に大きな差が出ることがありますので、注意しましょう。

なお、クラウドの「会計ソフトfreee」を導入していれば、取引ごとに課税区分を入力するだけで、自動計算してくれるので、作業が非常にシンプルで楽になります。

「会計ソフトって何?「クラウド会計ソフト」って何?」を読む

会計ソフトfreee「会計freeeを使った楽にできる消費税・税区分の設定」を見る

黒字化対策の必要性の検討

決算3カ月前には、来期に資金調達すべきかどうかについても検討します。
なぜなら、この時期に黒字化対策をするべきか否かを判断しなければならないからです。
金融機関からすると赤字の会社には融資しづらくなります。したがって、資金調達が必要な場合には、黒字化対策を実施する必要があります。

・経費の見直し
まず「翌期に回せる経費がないか」について検討します。
例えば、広告の出稿を数日ずらせことで、来期の広告宣伝費に計上することができます。

・少額減価償却資産
中小企業の場合、30万円以下の少額減価償却資産については、その全額を費用処理できます(2020年3月末日まで延長)。

参照:中小企業庁「中小企業・小規模事業者関係 税制改正について」

黒字化したい場合には、この特例をあえて使わずに、損金に算入せず資産として処理して減価償却を通じて費用計上するのです。
なお、この減価償却も任意なので、「今期は償却しない」と判断すれば、黒字化対策になります。

・売上の計上基準の見直し
今期の費用計上を少なくして、収入計上が多くならないか経理基準を見直します。
例えば、取引先に商品などが到着した時に初めて売上を計上する「受入基準」から、出荷した時点で売上を計上する「出荷基準」に変更します。
そうすると、早い段階で売上を計上することができるので、黒字化対策になります。

・経費削減の実施
まず黒字化対策として取り組むべきなのが、経費削減を実施することでしょう。
この時、固定費や変動費についても必ず見直します。
「人件費を外注費化して削減できないか」「店舗家賃の引下げについて家主と交渉できないか」などについてまで検討しましょう。

・役員給与の減額
役員給与を減額するのも、黒字化対策として有効な手段です。
ただし、一時的な資金繰りが目的で役員給与を減額することは、税法上認められていません。
役員給与の減額が認められるのは、代表取締役が平取締役に変更になった場合や、経営状況が著しく悪化した場合などに限定されます。

・生命保険契約の解約
不要な生命保険契約等の解約も、黒字化対策として有効です。
ただし、この時「解約返戻金>保険積立金」になっていなければ、黒字化対策を行ったことにはなりません。この点をしっかり確認してから解約の有無について判断するようにしましょう。

決算3カ月前の15個の節税対策

会社を強くして経営を安定させるためには、「税引き後の利益」を蓄積して、財務体質を強化していく必要があります。しかし、納税予想をしてみて「税金を支払う余裕がない」「来期の見通しが悪い」ということであれば、次に具体的な節税対策について検討していくことになります。

よく「節税になるから」と消耗品を大量に購入したり、3年ごとに車を買い替えたり、飲食費を盛大に使ったりしてしまうケースがありますが、これらの方法は、会社の現金残高を減らしてしまうことにもなりますので、よい節税対策とはいえません。
これらの方法は、必要経費にはなるかもしれませんが、その分お金も出ていくからです。
どの節税対策を行うかについて判断する際には、①資金をなるべく使わない(会社の現金残高を減らさない)こと、②節税効果が高いこと を基準にして判断するのがおすすめです。

ここでは、この2つの視点を踏まえ、決算3カ月前でも実行できる15個の節税対策リストをご紹介します。
自社の状況を踏まえ、税理士に相談しながら、実行の可否を判断しましょう。

1. 使用していない固定資産の除却

実際に使われていないパソコンや机、ロッカー、機械等などあれば処分してしまいましょう。これらは、帳簿に資産として計上されていますが処分することで、除却損を経費に計上することができます。
除却・廃棄には多少費用はかかるかもしれませんが、「スペースをその分空けることができる」などのメリットもあります。
また、償却資産税(償却資産税とは固定資産税のうち、償却資産に課せられる税金)は、持っている償却資産の対象となる資産の金額で決定しますが、償却資産の課税標準額の合計額が150万円未満であれば、免税扱いで課税されることはありません。
したがって、使っていない資産を除却すれば、償却資産税を払う必要もなくなることになります。

2. 不良在庫の処分

100万円で仕入れた商品を廃棄処分した際は、100万円の商品廃棄損を計上で きます。
なお、税務調査の際には「廃棄理由は妥当であるか」「期末までに廃棄が行われたことが証明できるか」をチェックされるので、これらについてきちんと説明できるようにしておきましょう。

3. 1人当たりの飲食交際費の特例適用

中小企業が支出する交際費等の額のうち接待飲食費を800万円まで損金に算入することができます(※2020年3月末日まで)

参照:総務省「平成 30 年度地方税制改正(税負担軽減措置等)要望事項」

4. 含み損を抱える不要資産の売却

含み損を抱えた固定資産を売却すると、繰越欠損金が出るため、節税になります。
欠損繰越金とは、簡単にいうと「今までの赤字」という意味です。
つまり、今までの赤字が残っている場合には、黒字の金額と欠損金を相殺することができるので、黒字の部分を減らすことができるので、節税となります。

5. 売上の計上基準の変更

売上の計上基準とは、商品を出荷した時に売上を認識する「出荷基準」や、取引先に商品を納品した時に売上を認識する「納品基準」などのことをいいます。
節税の観点からすると、売上の計上時期は遅らせた方が有利になるので、この売上の計上基準を「検収基準(取引先が商品を検収した時)」に変更できないか、検討します。

決算月に繁忙期になるような会社であれば、売上の計上基準をしっかり決めておかないと、会計・税金計算上、売上金額と入金タイミングがずれてしまい、損益をタイムリーに把握することができなくなり、支払ができなくなるなどの事態になってしまいます。

6. 決算日(事業年度)の変更

「急に利益が出ることになった」という時に使える節税が決算期変更という方法です。
決算期を変更することで、今期の決算で多額の納税をする必要はなくなり、約1年の猶予期間ができることになります。そして、その間にできる限りの節税対策を実行していくことになります。
決算を税理士に依頼している場合には、一時的に税理士への報酬が増えることになりますが、長い目で見れば経営状況を予測しやすい流れに変えることができるので、大きなメリットがあります。

7. 社会保険料・労働保険料・固定資産税の未払計上

社会保険料・労働保険料・固定資産税は、支払いが済んでいなくても債務が確定していれば、未払い費用として計上することができます。
例えば、社会保険料は、半額を従業員本人が負担し、残りの半額を会社が負担する仕組みですが、会社負担分の社会保険料を未払計上することで、損金に算入することができます。

8. 未払費用で計上できるものはないか検討

社会保険料・労働保険料・固定資産税以外にも未払い計上できるものはないか、検討します。

例えば、従業員に対する賞与は、支給した時に経費に計上するのが原則ですが、ただし、以下の条件を満たせば、未払い賞与を計上して、当期の費用とすることができるので、節税となります。

①事業年度終了日までにすべての使用人に対して各人別に支給額を通知していること
②事業年度終了日の翌日から1カ月以内に支払っていること。

なお、未払賞与の計上は役員賞与では認められません。また、税務調査が入った場合には、他の経費より厳密に判断されますので、注意が必要です。

また、既に請求書が来ていたりサービスの提供を受けたりしているのであれば、実際には支払いが済んでいなくても、税金の計算上経費にすることが可能です。
ただし、未払のものを経費にして、翌期に実際に支払いを行った時に再度経費に計上してしまうというミスには注意しましょう。

9. 減資(資本金を減らす)の検討

資本金の額を減らすと、さまざまなメリットがあります。

・資本金1,000万円未満
まず、会社設立時で大事な税務上の資本金の基準は、「1,000万円未満」であることです。
資本金が1000万円未満であれば、会社設立後2事業年度、消費税が免税されるからです。

・資本金3,000万円未満
資本金3,000万円以下なら、中小企業投資促進税制の税額控除の適用があります。
この制度は、中小企業者などが平成10年6月1日から平成31年3月31日までの期間の内に新品の機械や装置などを取得し、または製作して国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に使用した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認められるものです。

参照:国税庁「中小企業等投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」

・資本金1億円以下
資本金を1億円以下にすると、少額減価償却資産の特例が利用できる、欠損金の全額繰越控除が適用できるなど、税務上様々な特例が受けることができます。

設立後に資本金が増加していくと、税金が増えていくことがあります。その際判断すべき基準は1,000万円、3,000万円、1億円のラインです。増資する際には、これらの特例について税理士に確認してからにしましょう。

税理士検索freee「節税対策に強い税理士一覧」を見る

10. 30万円未満の少額減価償却資産の特例の適用

「少額減価償却資産の特例」の適用期限が2020年3月末日まで延長され、税法上の中小企業(資本金1億円以下・常時使用する従業員の数が1,000人以下)の法人に限り、「30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計金額300万円を上限に全額の損金算入(即時償却)することができます。
平成30年度税制改正大綱(与党大綱)において、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例について、適用期限の2年延長が決まりました。

参照:自民党「平成30年度税制改正大綱」

11. 中古の固定資産の購入

「中古のベンツは節税に使える」と聞いたことはないでしょうか。これは、通常ベンツの償却年数は6年ですが、中古になると償却年数がグッと短くなるので、早く費用にできるという理由からです。
中古の高級車は、4年経ったところでそれほど市場価格が落ちるわけではありません。しかし、法定耐用年数が短くなるので、かなりの金額を経費にできるのです。
固定資産を購入する時には、中古資産の購入を検討するのがおすすめです。

12. 役員退職金の支給

中小企業において役員退職金は、節税対策上非常に有効です。
課税所得の計算上、退職所得控除を控除できる。会社としては退職金として多額の費用を計上することができますし、退職金は分離課税なのでほかの所得があっても、税率が累進しないなどのメリットがあるからです。
なお、退職金は、株主総会の決議があれば、未払計上によっても損金に計上することができます。

13. 出張旅費や日当を支払うための旅費規程の作成

出張旅費規程を作成すれば、出張手当を支給することができます。
出張手当を支給した場合には、その全額を費用に計上することができますし、消費税計算において、税額控除も可能になります。
注意点としては、出張旅費規程を作成するだけでなく、出張をした証拠の資料もきちんと残しておくこと、全社員を対象とした規程とすることなどです。
税務署によけいな疑念を抱かせないためにも、念には念を入れて証拠資料を残しておくのが賢明です。

14. 中小企業退職金共済への加入

中小企業退職金共済とは、中小企業のための国の退職金制度で、掛金は税法上損金(法人)または必要経費(個人)に参入することができます。
役員や対象となりませんが、従業員の退職に備えて毎月掛金を支払い、節税をしながら、社外に退職金を積み立てることができる制度です。

参照:中小企業退職金共済

15. 中小企業倒産防止共済への加入

中小企業倒産防止共済とは、取引先が倒産などした場合に、掛金総額の10倍までの金額の融資が無担保無保証無利子で受けられる制度です。

参照:中小機構「共済制度」

掛金は税法上損金(法人)または必要経費(個人)に参入することができます。そして、掛金を40か月以上支払うと解約手当金が100%戻ってきますので、外部に積立しているのと同じことになります。掛金は年払いと月払いを選択でき、最高で年240万円まで、満額は800万円です。

まとめ

以上、中小企業が決算前にすべき節税対策についてご紹介してきました。
これまで述べてきたようにさまざまな節税対策がありますが、これらの節税対策を行うための基本は、「税制に習熟すること」の一言に尽きます。
税理士に相談して節税感覚を磨き、自社が活用できる節税対策はもれなく行い、上手に節税を行っていきましょう。

「決算対策の方法|利益予測と納税予測・節税対策」を読む

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