同族会社とは|3つの判定基準と自社株対策が必要な3つの理由

公開日:2019年12月06日
最終更新日:2022年07月02日

この記事のポイント

  • 同族会社とは、経営者一族が会社の出資持分の全部またはほとんどを所有している会社のこと。
  • 「同族会社=中小企業」のイメージがあるが、大企業にも同族会社はある。
  • 同族会社には、税金逃れのための取引や計算を行われないよう厳しい制限がある。

 

同族会社とは、経営者一族によって出資持分の全部またはほとんどを所有している会社をいいます。

中小企業では、出資はもちろん従業員もすべて一族で、個人事業主が会社組織にしているに過ぎないようなケースもありますが、大企業にもこのような同族会社は多く存在しています。
同族会社は経営者の独断により事業が行われやすいことから、厳しい特別規定が適用されることがあります。

同族会社とは

同族会社とは、経営者一族が会社の出資持分の全部またはほとんどを所有している会社のことです。民法上は同族会社の規定はありませんが、税法上の用語が一般化して一般的に「同族会社」として呼ばれています。

税法では、同族会社に対して特別な取扱いがされることから、同族会社となるかならないかは、大変重要です。
税法でいう同族会社とは、①その会社が発行している株式数の50%超を、②3グループ以下の株主が保有している会社をいいます。ここでいう50%超の判定は、自己株式であればそれを除いて計算します。
また、グループは、ある株主とその株主と特別な関係のある個人や会社を1グループとします。

同族会社は、早い意思決定が可能であり、かつ株式上場が不要であるなどのメリットはあるものの、経営者の独断により事業が行われやすいという懸念があることから、税法上厳しい措置が設けられていたり経営者の死亡がそのまま会社の存続の危機につながったりするなどのデメリットもあります。

たとえば、同族会社は、主要な株主が経営者となることが多いので、経営者の独断により事業が行われやすいことから、税金逃れのための取引や計算を行わないよう、行為計算の否認や、留保権課税制度という厳しい措置がとられています。

なお、同族会社というと中小企業をイメージする人も多いと思いますが、大企業にも同族会社は存在しています。

(1)同族会社と非公開会社との違い

同族会社というと、非公開会社というイメージを持つ人も多いですが、法人税法上の同族会社と会社法の非公開会社は、その定義が異なります。

同族会社とは、上位株主グループ3人以下で、発行済株式総数等の50%超保有率を有する会社で、非公開会社は、すべての株式の譲渡制限のある会社です。また、公開会社とは株式の譲渡制限はないものの一部の株式の意譲渡制限のある会社ですが、公開間もない企業では、創業者が50%超の株式を保有していて、同族会社となるケースも多く見受けられます。

(2)同族会社のメリット

同族会社は、上場会社のように会社監査報酬や幹事証券会社への手数料などの経費がかからないというメリットがあります。また、意思決定がスムーズでスピーディな運営が可能となるというメリットも考えられます。

(3)同族会社のデメリット

同族会社のデメリットとしては、経営がオーナの実力によるところが大きいこと、そして経営者の資産保有状態が信用維持につながっていることが多く、経営者の死亡のがそのまま信用低下に結びつくリスクがあること、後継者の選択肢が少ないことなどを挙げられます。

(4)同族会社に対する制限

同族会社は、ごく少数の株主によって支配されている会社です。そのため、同族会社でなければできないようなことをすることも考えられることから、①行為計算の否認と、②一定の利益留保額に特別税率による法人税が課される、③使用人兼務役員になれないといった措置がとられています。

①行為計算の否認
行為計算の否認とは、通常は考えられないような経済行為によって税金逃れを図る行為があった場合に税務署長が税額の計算をすることができるというものです。
たとえば、同族会社は一族で経営判断ができることから、不必要な別荘やヨットを購入したり高額な役員報酬の支給をしたりすることも、簡単にできてしまいます。そこで、このような事態に備えて、法人税法上、同族会社の行為計算の否認規定が設けられているのです。
②留保権課税制度
同族会社は、一族で意思決定することが可能なので、株式上場した会社のように一般の株主からの配当要求もありません。したがって、剰余金も自由に処分することができることから、内部留保した金額のうち一定額を超える金額については、通常の法人税とは別に特別の法人税が課されることになります。これを「留保権課税制度」といいます。
つまり、同族会社が、利益の中から配当や役員給与として出さずに会社の内部に留保した場合には、その留保した利益が一定額を超えると特別な税金がプラスされるということです。
③使用人兼務役員になれない
取締役であっても、部長や課長という使用人の地位にあって、常に使用人と同じ仕事をしている人を「使用人兼務役員」といいます。しかし、同族会社で一定割合以上の株式を持っている役員は、たとえ使用人と同じ仕事をしていても、使用人兼務役員になることができません。

(5)同族会社と判定されるポイント

税法上、同族会社は①持分基準②議決権基準③社員数基準の3つの基準のいずれかに該当する会社をいいます。

①持分基準
発行済株式数のうち、上位3人以下で50%以上の株式を保有していると同族会社とみなされます。
たとえば、発行済株式総数が200株で、株主はA~Eの5人の例で見てみましょう。
株主AとEが夫婦で、夫Aが75株、妻Eが15株持っていて、Bは40株、Cは35株、Dは25株持っているとします。
そうすると、上位3順位は90(A+E)+40(B)+35(C)=165となり、これを総株式数200で割ると、82.5%となり、A+Eが50%を超えることになりますので、同族会社ということになります。

発行済株式総数 200株
株主A:75株
株主B:40株
株主C:35株
株主D:25株
株主E:15株
その他:10株
上位3順位の株式数
90(A+E)+40(B)+35(C)=165
165÷200=82.5%>50%
②議決権基準
株式の総数とは別に、議決権の過半数を有しているかどうかも判定の基準となります。

たとえば、発行済株式総数が200株で、株主はA~Eの5人の例で見てみましょう。
株主AとEが夫婦で、夫Aが75株、妻Eが15株持っていて、Bは40株、Cは35株、Dは25株持っていて、議決権はそれぞれ20個持っているとします。

そうすると、上位3順位の議決権数は、40(A+E)+20(B)+20(C)=80となり、これを総議決権数で割ると、80÷100=80%で50%を超えることになりますので、同族会社ということになります。

発行済株式総数 200株
株式数
株主A:75株
株主B:40株
株主C:35株
株主D:25株
株主E:15株
その他:10株

議決権
株主A:20個
株主B:20個
株主C:20個
株主D:20個
株主E:20個
その他: 0個

上位3順位の議決権数
40(A+E)+20(B)+20(C)=80
80÷100=80%>50%
③社員数基準
持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)では、業務執行は社員(出資者)の過半数をもって決定します。しかし、この時には出資金額に左右されないことから、同族会社か否かを判定する際にも、株式数、議決権数に加え、出資社員の数によって判定するものとしています。

たとえば、業務執行社員の定めのある持分会社で、全社員9名に業務執行権がある場合には出資額のみの判定となるので、同族会社ということになります。

同族会社の自社株対策はなぜ重要か

自社株とは、一般的にオーナー経営者が主として株式を所有する会社の発行株式のことをいいます。
自社株は、会社の経営維持のために必要であるのは言うまでもありませんが、評価額が高額になってしまうことが多いことから、事業承継対策をするうえでも大変重要となります。

(1)評価額が高額になることがあるため

自社株の評価額は、設立当初の払込金額の何十倍となっているなど、自社株の評価額が高額になり、納税資金の確保が難しくなることもあります。自社株の評価が高くなってしまい、思いがけない相続税の納税資金を用意できず、会社の経営まで危うくなるケースもあるのです。そこで、事業承継の場合には相続税対策とともに自社株対策が大変重要となってきます。

(2)相続トラブルにつながることがあるため

相続財産には、不動産や現金預金などのほかに、自社株も含まれます。
この時遺言書がないと、相続人間で協議がなされますが、この相続財産の分配をめぐって、相続トラブルに発展するケースがあります。
こうなると、自社株を確保できなければ、後継者は事業を維持することができず、結局は会社の存続さえ難しくなるケースが多々あるのです。

このようなトラブルを防ぐためには、あらかじめ遺言書を作成して後継者に事業を継続するうえで必要な自社株や事業用不動産などを相続させるよう対策を行っておく必要があります。
具体的には、会社法の利用による株式対策、税務上の下部か引下げなどの対策が必要になります。これらの対策は親族の状況や持株割合、相続財産の総額などによって、異なってくるので、事業承継対策を行う場合には、必ず税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

(3)経営権が危ぶまれることがあるため

経営権とは、経営者自身の経営方針を通せるだけの株式を有していることをいいます。
けれども事業を行っていくうえでは、会社を増資して新株を他人に引き受けてもらったりした結果、経営者の持株割合が低くなってくるケースもあります。
持株割合が低くなってしまうと、思うとおりに経営ができなくなる可能性もあるため、そうならないように経営者自身の経営方針を通せるだけの株式保有は続ける必要があります。

経営権を確保するためには、少なくとも特別決議に必要な3分の2の議決権を経営者一族で保有しておく必要があります。ただし、3分の2の議決権があれば、すべての運営が自由になるというわけではありません。
たとえば解散請求権などは、議決権の10分の1を有する株主に少数株主権が認められています。

まとめ

以上、同族会社の意味や判定、自社株対策などについてご紹介しました。
なお、事業承継は、相続税・贈与税対策のほかにも、後継者の選定や育成など、さまざまな視点から検討する必要がありますし、場合によっては、M&Aなどを検討する方が得策なこともあります。

いずれにせよ、税理士などの専門家に相談し早めに対策を始めることが、無用なトラブルを防ぐことにつながりますし、会社を守り従業員の雇用、取引先の安全を守ることにつながります。

会社を後継者に引継ぎ、事業を維持するためにも、早めに事業承継に精通している税理士とともに対策を立てましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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