公開日:2022年01月25日
最終更新日:2022年03月29日
貸倒引当金は、法人税法上、金銭債権の状況やそれに伴う貸倒引当金繰入限度額の算定の違いによって「個別評価する金銭債権」と「一括評価する金銭債権」に区分されます。
「個別評価する金銭債権」とは、いわゆる不良債権のことであり、「一括評価する金銭債権」はその不良債権以外の債権(一般売掛債権等と損失見込債権のうち、個別評価しなかったもの)です。
当該事業年度に発生した金銭債権が、同一事業年度に明らかに回収できない場合には「貸倒損失」として計上することができます。
ただし、当該事業年度に残っている金銭債権については、翌事業年度以降に貸倒れが発生すると見込まれる場合には「貸倒引当金」を設定することができます。
「貸倒引当金」とは、翌年度以降の貸倒れを予測して、その回収不能額の見込み金額を金銭債権から差し引くためのマイナス評価の引当金です。
本来、税法では会社が支出した費用については、債務が確定した年度にはじめて損金として認めています。
したがって、会社が将来発生する支出に備えて、適当に引当金を計上することは認められません。
しかし会社経営上、引当金の計上を絶対に認めないというのも現実的ではありません。
そこで、損金経理をすることを条件に「貸倒引当金」の設定が認められています。
貸倒引当金を設定できる法人は、平成24年4月1日以降開始する事業年度から、銀行、保険会社、中小法人に限定されています。
貸倒引当金の設定は、「個別評価する金銭債権」と「一括評価する金銭債権」に分けて行います。
貸倒引当金の損金算入の要件は、画一的で厳格です。計上した貸倒引当金繰入額が税務上の損金と認められない場合には、申告調整が必要となります。
法人税法上、損金となる貸倒引当金の設定は、金銭債権の状況や貸倒引当金繰入限度額の算定等の違いから、「一括評価金銭債権」と「個別評価金銭債権」に分類されます。
「個別評価金銭債権」とはいわゆる「不良債権」であり、債務者ごとに貸倒引当金を計算します。
一方、「一括評価する金銭債権」とは、「不良債権」以外の「一般売掛債権等」をいいます。
「個別評価金銭債権」とは、不良債権であり債務者ごとに貸倒引当金を計上しなければならないものです。
①長期棚上げ債権
「長期棚上げ債権」とは、特定な事由が生じたことによって、その弁済が猶予されるなどの状態になった金銭債権で、以下のような状況に陥った場合です。 ・会社更生法、金融機関の更生手続きの特例等に関する法律、または民事再生法による更生・再生計画認可の決定があった場合 |
②一部取立不能債権
「一部取立不能債権」とは、実質的に回収不能が生じている金銭債権で、債務者が以下のような状況に陥った場合です。 ・債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、事業好転の見通しがない場合 |
③形式要件が生じた金銭債権
上記①と②をのぞく個別評価金銭債権で、金銭債権の回収不能が確定していなくても、債務者について一定の事実が生じた場合です。 |
一括評価金銭債権とは、前述したような不良債権以外の「一般売掛債権等」をいいます。
事業経営においては、一見順調に回収できそうな健全な金銭債権でも、実際には貸倒れになる可能性があるものです。
そこで、個別評価金銭債権を除いた金銭債権全体に対しても、一括して「貸倒引当金」を設定することが認められています。
「一般売掛債権等」とは、売掛金・受取手形・未収入金・貸付金・立替金・割引手形・裏書手形などの債権です。割引手形・裏書手形については、個別注記表に「裏書および割引手形 ×××円」と明確にされて、はじめて一般売掛債権等となります。
なお、銀行預金・前渡金・保証金・敷金は、一般売掛債権等ではありません。
個別評価金銭債権(不良債権)は、個別債権ごとに貸倒引当金を計算します。
①長期棚上げ債権 長期棚上げ債権の貸倒引当金繰入額の計算は、対象となる個別債権ごとに、特定の事由が生じた事業年度の末日の翌日から5年を経過する日までの弁済予定金額と担保権の実行による取立て等の金額を差し引いた金額です。
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②一部取立不能債権 金銭債権(①を除く)の「貸倒引当金繰入額」は、債務者の債務超過の状態が相当期間継続して、その事業に好転の見通しがないこと等により、その金銭債権の一部の金額について、取立て等の見込みが認められないことになった場合に、「取立ての見込みがない金額」です。
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③形式要件が生じた金銭債権 形式要件が生じた金銭債権の「貸倒引当金繰入額」は、金銭債権の回収不能が確定していなくても、当該金銭債権から担保権の実行・保証債務の履行等による取立て等の金額を差し引いた金額の50%相当額です。
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一括評価する場合の対象となる債権は、一般売掛債権等と損失見込債権のうち、個別評価しなかったものをいいます。
一般売掛債権に対する一括評価による貸倒引当金の設定額は、一括評価金銭債権に貸倒実積率をかけた金額です。
貸倒実績率 = 過去3年間の平均貸倒損失 / 過去3年間の一括評価金銭債権の平均残高
※小数点以下4位未満端数は切り上げ |
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なお、期末の資本金額または出資金額が1億円以下の中小法人は、特例として一括評価金銭債権について「法定繰入率」で計算することもできます。
つまり、中小法人は前述のした「貸倒実績率」と「法定繰入率」を比較して、より高い繰入率となる方を選択することができることになります。
事業の種類ごとの法定繰入率
個人事業の場合の一括法による法定繰入率は以下のとおりです。 個人事業の事業の種類ごとの法定繰入率
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前期末の貸倒引当金より、当期末の貸倒引当金の額が少なくなった場合には、その差額を戻し入れます。
戻し入れる方法には、「差額処理」と「洗替処理」があります。
差額処理:前期末分と当期末分の差額を計上する方法 洗替処理:前期末分と当期末分の差額を計上する方法を全額戻し入れて、当期末分を再計算し、その分を当期分として計上する方法 洗替処理は、いちいち戻入れと繰入れを計上する方法で、差額処理は、戻入れと繰入れとの差額を計上する方法です。 |
「当社は、卸売業である。決算にあたり、期末の売掛金1,000万円について、一括法により「貸倒引当金」を設定した。なお、前期末に貸倒引当金を設定しており、当期貸倒はなかった。」
1000万円×1.0%(法定繰入率)=100万円
100万円―120万円=―20万円…貸倒引当金繰入額
差額処理
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「当社は、卸売業である。決算にあたり、期末の売掛金1,000万円について、一括法により「貸倒引当金」を設定した。なお、前期末に貸倒引当金を設定しており、当期貸倒はなかった。」
1000万円×1.0%(法定繰入率)=100万円
100万円―120万円=―20万円…貸倒引当金繰入額
洗替処理
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「過年度に貸倒損失で処理した債権20万円について、当期で回収できた。」
過年度に「貸倒損失」として処理していたものを、当期になって回収することができた場合、その回収額は「償却債権取立益」で処理をします。
借方 | 貸方 | ||
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普通預金 | 200,000 | 償却債権取立益 | 200,000 |
以上、一括評価金銭債権の意味や一括評価金銭債権の貸倒引当金繰入額の計算方法などについてご紹介しました。
一括評価金銭債権は、いわゆる「不良債権」以外の受取手形、売掛金、貸付金といった金銭債権等の合計額に対して、一括して貸倒引当金を計算することで、中小法人は「貸倒実績率」と「法定繰入率」を比較して、より高い繰入率となる方を選択することができることになります。
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