減価償却はいくらから?10万・20万・30万の基準を解説!

公開日:2023年12月01日
最終更新日:2024年02月05日

この記事のポイント

  • 10万円未満の資産は、全額損金にできる。
  • 10万円以上20万円未満の資産は、3年間にわたって償却する特例がある。
  • 20万円以上の資産は、原則として減価償却する。
  • ただし、一定の要件を満たす青色申告者は、30万円未満の資産を全額経費にできる(合計額300万円まで)。

 

事業に使う10万円以上の資産か、使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、使用を開始した年に全額損金にできます。

しかし、一括償却資産や少額減価償却資産の特例を利用することで、10万円以上の資産でも、通常の減価償却ではなく全額損金にすることができます。

たとえば、一定の要件を満たす青色申告者であれば、30万円未満の資産も、、その年に全額経費にできます(合計額300万円が限度)。
その他、価額が10万円以上20万円未満の資産は、3分の1ずつ3年間で償却できるという特例もあります。 
 

減価償却の豆知識

耐用年数が1年以上で、取得価額が10万円以上のものは、有形固定資産として処理をします。しかし、税務上少額減価償却資産については、損金算入できる制度があります。
10万円未満の資産は、事業用に使用した時点で全額損金に算入できます。
10万円以上20万円未満の資産は、3年で均等償却できます。
また、中小企業者の場合は30万円未満は全額損金算入できる即時償却の特例があります(年間300万円が限度)。
また、税法上通常の減価償却費のほかに、特別な減価償却費の計上が認められる「特別償却」という制度があります。ポピュラーなものとしては「中小企業投資促進税制」があります。これは、青色申告をしている中小企業者等であれば、取得価額の100分の30を特別償却することができるというものです。
さらに、特定中小企業者(資本金が3,000万円以下)に該当する場合は、特別償却か7%の税額控除のいずれかを選択することができます。
これらの制度を上手に活用すれば、大きな節税効果が期待できます。必要な書類や要件、期限などについては税理士に確認しましょう。

減価償却はいくらから?

事業の使う10万円以上の資産は、減価償却によって必要経費に計上します。
減価償却とは、使えば使うほど時が経てば経つほどその価値が目減りしていく資産について、一度に全額を損金にしないで徐々に費用として計上することです。

したがって、減価償却をするのは原則として「10万円以上の資産から」ということになります。
ただし、従業員1,000人以下の青色申告者や一定の要件を満たす中小企業者等にはさまざまな特例があり、30万円未満の資産であれば全額経費にすることができるので、30万円以上の資産から減価償却することになります

中小企業者等 中小企業者等以外
10万円未満 全額損金算入
10万円以上20万円未満 一括償却資産(3年間定額償却)可能または300万円を限度として全額損金算入 一括償却資産(3年間定額償却)可能
20万円以上30万円未満 300万円を限度として全額損金算入 通常の減価償却
30万円以上 通常の減価償却

※貸付用資産は、主要な事業として貸付されるものを除き少額資産特例の適用はできなくなりました(令和4年度改正)。

(1)10万円未満はすべて損金可

取得価額が10万円未満か、使用可能な期間が1年未満の有形固定資産は、使用を開始した年に全額損金にできます。
※有形固定資産とは、固定資産のうち、建物、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品などです(土地は、非減価償却資産です)。

(2)10万円以上20万円は一括償却が可能

取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、以下のいずれかを選択することができます。これを「一括償却資産の特例」といいます。

①それぞれの耐用年数にもとづいて、個々の資産ごとに償却計算する。
②同一事業年度内に取得した資産をまとめて、その全額を3年で均等償却する。
※令和4年4月1日以降に取得した減価償却資産で、貸付け(主要な事業としてのものは除く)として使用したものは、3年の均等償却はできません。

(3)30万円未満なら少額減価償却資産の特例が可能

20万円以上30万円未満の減価償却資産は、基本的に減価償却をしますが、一定の要件を満たす青色申告を行う中小企業や個人事業主の場合には、合計額300万円を限度として、その年に全額経費にできます(「令和6年度税制改正の大綱」で、令和8年3月31日まで※ただし、電子申告が義務化された法人のうち従業員要件が300人以下に引き下げ。)。

たとえば、25万円のパソコンなら、器具備品ではなく消耗品費として経費にできます。

参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

(4)30万円以上は通常の減価償却

30万円以上は、通常の減価償却を行います。
主な減価償却の方法として、定額法定率法があります。

定額法は、耐用年数の期間にわたり一定額の減価が生じると仮定して、毎期一定額の減価償却費を計上する方法で、利益予測を立てやすいというメリットがあります。

取得価額100万円、耐用年数8年の資産を定額法で計算した例
定額法の償却率0.125

減価償却費の額 帳簿価額 計算方法
1年目 125,000 875,000 1000,000×0.125
2年目 125,000 750,000 1000,000×0.125
3年目 125,000 625,000 1000,000×0.125
4年目 125,000 500,000 1000,000×0.125
5年目 125,000 375,000 1000,000×0.125
6年目 125,000 250,000 1000,000×0.125
7年目 125,000 125,000 1000,000×0.125
8年目 124,999 1 124,999

定率法は、耐用年数の当初は多くの減価が生じると仮定して、毎年の減価償却費が一定の割合でだんだん減っていくように計算する方法です。
初期の段階で多くの費用を計上できるというメリットがあります。

取得価額100万円、耐用年数8年の資産を定率法で計算した例
定額法の償却率0.250 改定償却率0.334
補償率0.07909(償却補償額79,090)

減価償却費の額 帳簿価額 計算方法
1年目 250,000 750,000 1000,000×0.25
2年目 187,500 562,500 750,000×0.25
3年目 140,625 421,875 562,500×0.25
4年目 105,468 316,407 421,875×0.25
5年目 79,101 237,306 316,407×0.25
6年目 79,260 158,046 237,306×0.250=59,326<償却保証額 79,090
237,306×0.334=79,260
7年目 79,260 78,786 237,306×0.334=79,260
8年目 78,785 1 78,785

償却補償額を下回った段階で、改定償却率を計算する計算方法に切り替える。

少額固定資産の処理仕訳

実務上は、10万円のラインで費用なのか資産なのかという判断を迫られるケースはありません。
なぜなら、先ほどご紹介したように30万円未満の損金算入の特例(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)があるからです。

(1)10万円未満の固定資産の処理仕訳

安価な固定資産にまで減価償却のルールを適用すると、経理処理の負担が増えてしまいます。
そこで税法では、安価な固定資産については「購入したら、すぐ損金としてよい」という柔軟な取扱いを認めています。

①取得価額が10万円未満の固定資産、②使用可能期間が1年未満の固定資産のどちらかに該当する場合には、支払った金額をその期の費用にできます。

8万8,000円の備品を現金で購入した。10万円以下であるため費用処理をした。

借方 貸方
消耗品費 80,000 現金 88,000
仮払消費税等 8,000

(2)20万円未満の固定資産の処理仕訳

中小企業等の場合には、30万円未満の固定資産についても一括で費用計上できますので、20万円未満の固定資産について一括で経費としてOKです。

それ以外の法人については、20万円未満の固定資産を購入した場合にも、「一括償却資産の特例」という特例が認められています。
これは、20万円未満の固定資産であれば、所定の書類(※)を添付することで、資産を一括して3年間で均等に償却できるというものです。
3年間で取得価額の3分の1ずつを経費として計上するので、会計処理は非常に簡単です。
この場合には、年の途中で一括償却資産を購入した場合でも、月割按分せず、常に3年間で均等に減価償却をします。
※この制度の適用を受けるためには、確定申告書に一発償却対象額を記載し、その書類を保存します。また、一括償却資産を損金経理した場合には「一括償却資産の損金算入に関する明細書」を確定申告書に添付します。

20万円未満の工具器具備品を合計132万円(税込)取得し、一括して3年間で均等償却することとした。

①取得時

借方 貸方
工具器具備品 1,200,000 未払金 1,320,000
仮払消費税等 120,000

②1年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

③2年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

④3年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

まとめ

税務上、少額減価償却資産については、10万円未満・10万円以上20万円未満・30万円未満の区分で、損金算入できる制度があります。
少額の減価償却資産は、その年に全額費用とする特例があるため上手に活用することで、節税効果が期待できます。
どの特例を適用するのが良いのかは、個々の状況によって異なりますので、不明点や疑問点はあらかじめ税理士に確認しておくことをおすすめします。

減価償却について相談

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、減価償却の方法や節税対策や税務申告などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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「自宅の一室を改修してマッサージ店を開業いたしました。内装費用が100万円程度あるのですが、減価償却する際の耐用年数は何年になりますでしょうか。
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「11月にパソコン(31万円程)を24回の分割払い、クレジットカード払いで購入予定ですが、実際事業のために使用するのは来年の2月からになる予定です。この場合でも減価償却は可能でしょうか。
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「開業年度以前(開業する1年半前)にプライベートで購入したバイク(25万円)を、開業後、事業用へと転用しました。事業を始める前の購入ですが、少額減価償却資産として計上は可能でしょうか?

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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