経過勘定とは?一覧とよくある仕訳を解説

公開日:2024年06月14日
最終更新日:2024年06月14日

この記事のポイント

  • 経過勘定とは、前受収益・前払費用・未収収益・未払費用の4種類
  • 前受収益・前払費用を「繰延勘定」という。
  • 未収収益・未払費用を「見越勘定」という。

 

経過勘定とは、前受収益・前払費用・未収収益・未払費用の4種類のことです。
これらについては、決算日の1時点において、現金の流れと収益・費用の帰属を整理して計上します。
具体的には、現金の入出金がありサービス等の提供を受けていないものを前受・前払とし、現金の入出金がないのにすでにサービス等の提供があるものを未収・未払で計上します。

経過勘定とは

適正な期間損益計算を行うためには、取引を期末時点で区切って資産・負債と収益・費用に分ける必要があります。しかし、実際の取引は会計期間に関係なく向こう1年分の費用をまとめて支払ったりサービスをすでに受けていても、その代金の決済が翌月以降であったりといったケースがよくあるものです。
このように継続した役務提供は、経過勘定によって、期間費用を確定させるための処理を行います。
たとえば、支払家賃などの支出のうち、まだ役務の提供を受けていない部分は、損益計算から差し引いて前払費用に計上しなければなりません。

(1)経過勘定の種類

経過勘定は、前受収益・前払費用・未収収益・未払費用の4種類です。
勘定科目としては、以下のようなものがあります。

未払費用 サービスの提供を継続的に受けるために支払った代金のうち、まだ提供を受けていない機関に対応するもの
長期前払費用 ①1年を超えるサービスの提供を継続的に受けるために支払った代金のうち、まだ提供を受けていない期間に対応するもの
②サービスの提供は受けたが、そのサービスの効果が1年以上に及ぶため、効果が及ぶ期間にわたって経費とするもの
前受収益 継続的にサービスの提供を行うために受け取った代金のうち、まだ提供をしていない期間に対応するもの
未収収益 継続的にサービスの提供を行っているもののうち、まだ代金を受け取っていない部分
未払費用 継続的にサービスの提供を受けているもののうち、まだ代金を支払っていない部分

(2)経過勘定と未払金の違い

経過勘定とは、継続した役務(サービス)の提供に関する処理であり、これに該当しない場合は、未払金や前払金などで処理をします。
未払金とは、本業以外の取引から発生する代金で、まだ支払っていないものを処理する時に使う勘定科目です。
経費や給料の未払などで、たとえば「家具を購入し、代金は翌月末に支払うことにした」といった場合に使います。

一方、前払金とは、商品やサービスを受ける前の代金の支払です。たとえば、材料費や外注費の前払いなどを行った時に使います。

経過勘定のよくある仕訳処理

経過勘定は、決算日の一時点において現金の流れと収益や費用の帰属を整理して計上します。
現金の入出金があるのにサービス等の提供がないものを前受け・前払いで、現金の入出金がないのにサービス等の提供があるものを未収・未払いで計上します。

(1)前払費用

前払費用とは、継続して役務(サービス)の提供を受ける場合に、まだ提供が終了していない役務について支払われた対価です。
代表的なものとして、前払家賃、前払保険料、前払リース料などがあります。
役務の提供を受ける費用は、実際に役務の提供を受けた期間の費用ですから、まだ役務の提供を受けていない部分の支払いは、当期の費用に計上することはできません。
そこで、支払った金額は前払費用として当期の損益計算から外して処理をします。
たとえば、3月決算の会社において1年分の家賃を12月に前払いした場合、3月末までの費用が当期分で、翌期4月から12月までの部分は、翌期分として前払費用とします。

3月決算の会社で、1年分の家賃132,000円を12月に現金で前払いした。

①支払時

借方 貸方
家賃 120,000 現金 132,000
仮払消費税等 12,000

②決算時

借方 貸方
前払費用 99,000 家賃 90,000
仮払消費税等 9,000

120,000円÷12×9カ月=90,000円

なお、税務上支払った日から1年以内に役務の提供を受ける短期前払費用は、その支払った事業年度の損金の額に算入する処理方法を継続適用することを自条件として、支払った事業年度の損金とすることが認められます。

(2)長期前払費用

前払費用のうち1年を超えて役務の提供を受けるものは、長期前払費用として固定資産に計上します。
たとえば、複数年の保険料や借入金にかかる保証料などが該当します。
また、税務上の繰延資産(※)など長期にわたって便益をもたらすと考えられる費用も、長期前払費用で処理をします。
※たとえば、建物を借りるために礼金を支払いますが、それを支払うことで契約期間にわたり建物を借りられるという効果が続くことになります。

新聞雑誌の購読料は、サービスの提供ではなくモノの購入に該当するので、長期前払費用ではなく「前払金」に該当します。また、商店街などのアーケードや日よけ、アーチなどは、原則として5年で償却します。

長期前払費用のうち、1年以内に費用化が予定されている部分は、長期前払費用から短期前払費用に振り替えます。

(3)前受収益

前受収益とは、一定の契約に従い、継続して役務を提供する場合に、まだ提供していない役務に対して支払いを受けた対価です。たとえば、地代、家賃、利息などが該当します。
役務の提供に基づく収益は、実際に役務を提供した機関の収益となりますから、役務を提供していないのに受けた支払いは、当期の収益とはならず、前受収益として、当期の損益計算から除外する必要があります。

3月決算の会社で、12月末に向こう1年間の地代120万円(1カ月10万円)が普通預金に振り込まれた。

①入金時

借方 貸方
普通預金 1,200,000 賃貸料 1,200,000

②決算時

借方 貸方
賃貸料 90,000 前受収益 90,000

③翌期首

借方 貸方
前受収益 90,000 賃貸料 90,000

※月次の収益を明確にするため、収入時に全額前受収益で処理をし、月次で収益に振り替える方法をとることもできます。

①入金時

借方 貸方
普通預金 1,200,000 前受収益 1,200,000

②毎月末

借方 貸方
前受収益 1,00,000 賃貸料 1,00,000

(4)未収収益

未収収益とは、一定の契約に従って、継続して役務の提供を行う場合に、すでに提供した役務に対して未だにその対価の支払いを受けていないものです。
たとえば、未経過受取家賃、未経過受取保険料などがあります。
役務の提供に基づく収益は、実際に役務を提供した期間の収益となります。

3月決算の会社で、1年分の家賃13万2,000円を12月に後払いにしてもらった。

①決算時

借方 貸方
未収収益 33,000 受取家賃 30,000
仮受消費税等 3,000

②入金時

借方 貸方
普通預金 132,000 未収収益 33,000
受取家賃 90,000
仮受消費税等 9,000

(5)未払費用

未払費用とは、一定の契約に従って、継続して役務の提供を受ける場合に、すでに提供を受けた役務に対してまだ支払いが済んでいないものです。
たとえば、賃借料や給料、社会保険料などがあります。
役務の提供を受けたものに対する支払いは、当期の費用となります。

①社会保険料の未払計上
社会保険料15万円を計上する。

借方 貸方
法定福利費 150,000 未払費用 150,000

なお、未払費用と未払金を混同しているケースがありますが、未払金は、相手からの給付が完了した確定債務を処理する際の勘定科目ですから、継続的な役務の給付を内容とする契約に基づいて貸借対照表日までに提供されている役務に対する未払額である未払費用とは別もので、区別して処理するべきです。
未払金として処理されるのは、有形固定資産や有価証券などの購入に関する未払金のみですから、その点注意しましょう。

まとめ

継続した役務提供は、経過勘定によって期間費用を確定させる処理を行います。
継続契約に関する費用や収益のうち、発生と収支の帰属期間がずれる者に関しては、どの会計期間に帰属させるのかを決定しなければなりません。
この帰属期間を確定させるために使われるのが、経過勘定という特殊な勘定科目です。
税務調査では、会計処理がしっかりと行われているか勘定科目がチェックされますので、不明点は早めに税理士に相談して、適切に会計処理を行うようにしましょう。

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「請求時に前受金勘定を用いること自体、おかしいとは思いますが、請求の進捗を帳簿上で確認するために、経過勘定として利用している形です。この場合の前受金勘定は、負債の増減額として営業活動によるキャッシュ・フローに加減していいものかどうか教えていただけませんでしょうか?

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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