ネットショップの開業・仕入・運営の手順

公開日:2023年09月19日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • ネットショップの開業も、実店舗と同様に開業届等が必要。
  • ネットショップで大切なのは、価格設定、ECシステムの選択、作業の効率化。
  • 価格設定は、利益額と回転率で決めるのがおすすめ。

 

ネットショップの開業といっても、必要となる手続きや届出は実店舗とほぼ変わりません。実店舗を開業するときに必要となる手続きは、ネットショップを開業するうえでも、必要となります。また、税金についても実店舗がある場合と同じ計算方法で課税されます。
 

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ネットショップを開業する方法

ネットショップを開業する場合には、当然ですがまず商品を用意しなければなりません。スペースを確保できず大量の在庫を持てない場合でも、受注したらすぐに発注できるルートは確立しておく必要があります。

また、ECサイトも必要となります。
Yahooショッピングや楽天などのショッピングモールに、ネットショップをオープンする場合には、申し込み後に審査が行われ、この審査を通過した後に出店契約を交わす必要があります。
また、BASE、STORES、ShopifyなどのECシステムを利用する方法もあります。これらのECシステムを利用すれば、月額無料から数千円でECサイトをつくることができます。

個人事業主として開業する場合には、開業届の提出が必要ですし、法人で事業を開始する場合には、法人設立届出書等の提出が必要です。
また、取り扱う商品によっては許認可が必要な場合もあります。

(1)個人事業で開業する場合

個人事業主として事業を始める場合には、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。事業を開始して1カ月以内に行うこととされていますが、提出が遅れてもとくに罰則はありません。

これは開業届とも呼ばれるもので、個人事業主として開業したことを知らせるものです。金融機関で口座を開設したり、助成金を受給したりする時には、申請時に提出を求められることがあるので、控えは大切に保存しておきましょう。

個人事業主として開業し所得税の確定申告を行なう際に、納税額を軽減させたいのであれば、青色申告で行うことが基本です。
青色申告とは、適切な帳簿をつけることを条件として、税金の特典を受けられる制度です。
開業届を提出する際には、ぜひ青色申告の申請もあわせて提出しましょう。

家族にネットショップの仕事を手伝ってもらう場合には、併せて「給与支払事務所等の開設届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出しておきます。これは、家族に支払った給与を経費として計上するために必要な書類です。

・「個人事業の開業・廃業等届出書」は、1カ月以内に提出する。

・あわせて「所得税の青色申告承認申請書」も、申請する。

・家族に手伝ってもらう場合は、以下の届け出も併せて行う。
「給与支払事務所等の開設届出書」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
「青色事業専従者給与に関する届出書」

▶ 個人事業の開業・廃業等届出書の書き方

▶ 所得税の青色申告承認申請書とは?書き方・提出先・期限【まとめ】

▶ 給与支払事務所等の開設届出書|書き方・提出期限【まとめ】

▶ 青色事業専従者給与に関する届出書

(2)法人で事業を開始する場合

ネットショップを、株式会社や合同会社といった法人で始める場合には、税務署等に届出書を提出する前に会社設立手続きが必要です。
株式会社を設立する流れは、以下のとおりです。

①会社の重要事項(商号、事業目的など)を決定
②定款の作成・認証
③出資金の払込み
④登記書類や申請書等の作成・届出
⑤登記完了

会社を設立したら、必要な届出を税務署に提出します。また、社会保険の加入手続きも必要です。
会社設立の詳しい手続きについては、以下の記事でくわしくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 会社設立の流れ~設立から事業開始まで

(3)ネットショップで売るものを決める

ネットショップは、商品を開発もしくは商品を仕入れて、ネットショップを通じて販売し、収入を得ます。
まずは、売っても法律に違反していないか、売りたい商品に必要な手続きはないかを調べます。
自分で考えた名前やデザインでも、著作権や商標権に問題がないか確認しておきましょう。
キャラクターの布製品やブランドのコピー品など、加工が禁止されているものもあります。

アロマオイルや化粧品や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)がありますので、どのような行為が法律違反になるのか事前に調べておきます。

また、販売する者によっては事前に手続きが必要なものもあります。
たとえば、中古車やアンティークショップ、リサイクルショップの売買であれば古物商の許可が必要ですし、食品の販売では食品衛生法に基づく営業許可が必要です。
また、酒の通信販売では、通信販売酒類小売業免許が必要となります。

(4)ネットショップの業務を理解する

ネットショップというと、きれいなホームページが与えるイメージからスマートなネットビジネスと思われがちですが、実はほとんどが地道な作業です。
商品の写真をきれいに撮影し、説明文やコピーを考えて掲載します。
梱包や発送、在庫管理は毎日行わなければなりません。
さらにお客様からの問い合わせには、できるだけ迅速に対応することがリピーター獲得の秘訣でもあります。

また、ネットショップを立ち上げたら自動的に売れるものではありませんから、SNSでの発信やネット広告の運用なども必要になります。
つまり、売るための努力が必要となるわけです。

ひとりでネットショップを開業するためには、これらの業務をいかに効率化できるかが重要なカギとなります。不要な作業は極力削減し、自動化できるものは自動化します。

経理作業は、会計ソフトを活用して自動化し、メールでの問い合わせは削減しLINEで応対できるようなシステムにするなど、工夫次第で業務の効率化は可能です。
開業すると、日々の膨大な業務に追われてつい後回しにしてしまいがちなので、何の作業を効率化できるか、あるいは削減できるかは、ある程度見極めておくことが大切です。

「クラウド会計ソフト freee会計」であれば、銀行データやクレジットカードデータと自動連携されているので、常にリアルタイムで事業内容を把握することができます。
また、経理作業に自信がない人であれば、離れたところにいる税理士と同じデータを見ながら修正をしてもらうこともできます。

(5)商品を準備する

ネットショップですから、販売する商材は必須です。
商品は、メーカーなどから仕入れる方法と、OEM工場に依頼してオリジナルの商品をつくる方法があります。
OEM(Original equipment manufacturer)とは、受託生産を基盤とし、食品や衣類、雑貨などさまざまなカテゴリでオリジナルの商品をつくってくれる工場です。

仕入の場合は、すでに在庫を持っているメーカーから仕入を行うので、一時にシィ商品の仕入資金が必要となります。商品を置くスペースなども勘案して、どれくらいの仕入資金が必要となるかをあらかじめ計算しておきます。

仕入は、OEMと比較すると低予算で商品を用意できますが、卸値が高いので原価率が上がり、利益は少なくなります。
一方OEMは、オリジナル商品をつくれるため在庫数は増えがちですが、1個あたりの原価単価が下がるので、利益率が高いというメリットがあります。
また、健康食品やコスメを販売するためには薬機法や景品表示法を遵守したうえで、さらに保健所の許可が必要ですが、ODMでは工場が免許を持っているので、販売者は不要となる場合があります。

ネットショップ開業当時は、OEMでオリジナル商品を開発するだけの資金を準備できるケースは少ないと思われますので、最初はメーカーから商品を仕入れてネットショップで販売し、売上がアップしてきたらオリジナル商品にシフトしていくのもおすすめです。

なおネットショップ開業時は、あまり多くの商品を用意すると在庫管理に時間をとられてしまい、SNSや広告出稿、お客様対応がおろそかになってしまうリスクがあります。
「アパレルなどはある程度の商品数がないと…」という事情があるケース以外は、商品数はできるだけ絞り込むことも大切です。

(6)ECシステムを選択する

ネットショップで大切なのが、ホームページのデザインと機能です。
Yahoo!ショッピングやAmazon、楽天市場といったショッピングモールでネットショップをスタートする場合には、出店を申込み、出店審査が行われ、この審査を通過した後に出店契約を締結して、店舗ページが作成されます。

また、BASE、STORES、ShopifyなどのECシステムを活用する方法もあります。費用は月額ゼロ円からスタートすることができ、わざわざホームページ制作会社に発注することもなく、ブラウザ上の操作で簡単にサイトをつくることができます。
デザインも豊富に用意されていて、管理画面も直感的に操作できるよう工夫されており、文章や商品も自由に入れ替えることができます。

(7)価格設定は利益額と回転率で決める

商品の価格を決めるときは、相場をリサーチすることが大切です。
商品を仕入れて売る場合には、他でも同じ商品を売っています。そしてもしその店がとても人気が高いお店だったとしたら、思ったように商品が売れず在庫を抱えたままになってしまいます。

また価格設定の際には、ネットショップで最もコストがかかる集客コストや、配送費用なども考慮しなければなりません。
つまり、受注率を高めつつ利益も出せる価格設定を考えなければならないということです。

価格設定は売上にダイレクトに影響を与えるものですが、前述したようなリサーチを行っても、結局は「やってみなければ分からない」ところもあります。したがって「この価格だと売れるが、コストは回収できる」「この価格だとコストは回収できるが、利益は出ない」「この価格だと高過ぎて売れない」など、販売価格を変更しながら、適切な価格を模索することが必要です。

(8)梱包・配送作業から商品を決める

ネットショップが順調に売上を伸ばしてくると、手間がかかるのが梱包・配送作業です。
小規模な商品であれば、配送費用がそれほどかからない方法もありますが、配送費用がかかる商品だと配送費用がかかり過ぎて、販促施策が減ってしまうリスクもあります。
「配送費用って、そんなにかからないのでは」と思われるかもしれませんが、たとえばネコポスなら全国一律料金で385円(税込)ですが、宅急便だと1,000円以上かかる場合もあります。その差額は615円ですが、1,000個配送することを考えると、61万5,000円にもなります。
ネットショップを開業する時には、梱包サイズや配送費用から商品を選ぶという視点も必要になると言えるかもしれません。
少なくとも、ネットショップにおいて配送料は想像以上に重要な要素であることを忘れないようにしましょう。

(9)ネット広告は3つ程度に絞り込む

ネット広告は出稿するだけでなく、出稿後にはターゲットを再設定したりバナーを改善したりといった作業が必要となります。したがって、媒体の数を増やすと、それだけ作業時間が増えて管理が大変になるので、2~3程度に絞り込みます。たとえば、Googleのリスティング広告やFacebookの広告から始めて、効果を見ながら他の媒体の利用も検討してみます。

Googleのリスティング広告とは、Googleで検索されたキーワードに連携して、その検索結果に表示されるテキスト広告のことで、1カ月あたりの予算を設定することもできます

Facebookの広告は、タイムライン上にバナー広告が掲載される広告で、ユーザー数の多いFacebookだからできるユーザーのターゲティングが強みといえるでしょう。

これらの広告は、見出しや説明文によっても効果は変わってきます。出稿後には、効果を検証して改善するという作業の繰り返しが必要です。

(10)利益が増えてきたら会社設立を考える

ネットショップの事業が順調に軌道に乗れば、売上がアップし利益もアップしていきます。
そうなると気になるのが、税金の問題です。
個人事業主で事業を行う場合には、まずは青色申告で確定申告を行なうことは大前提ですが、その他にも小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入やふるさと納税の寄附金控除の活用など、節税対策は多々あります。

個人事業主が支払う主な税金は、所得税・事業税・住民税・消費税の4つですが、適切な節税対策を行えば、かなりの節税を実現することができます。

以下の記事では、個人事業主の節税対策について詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 個人事業主の節税対策/経費を増やして税金を減らす方法

また、利益が500万円を超えてくるようになったら、会社を設立してネットショップ事業を法人化する方が節税効果は高くなります。
所得税は、所得が増えるごとに税率が上がりますが、法人税法は基本的に23.2%であり、中小企業は特例で課税所得が800万円までは15%と優遇されます。
つまり、所得が増えたら会社を設立した方が有利になってくるのです。

 

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freeeの税額シミュレーションは、簡単な質問に答えるだけで、個人事業主の場合の税額と法人化した場合に支払う税額を比較することができます。

法人化するか悩んでいる方は、ぜひお試しください!

 

(11)インボイス制度対応

インボイスとは、仕入先に対して税率と税額を正確に伝えるために、一定事項を記載した請求書等のことをいいます。
インボイス制度においては、支払い側の企業にインボイスの保存がないと、仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。
仕入税額控除とは、課税事業者が消費税を納税するときに、仕入にかかった消費税を差し引くことができるしくみのことで、仕入税額控除ができないと取引先が損をしてしまう可能性があるので注意が必要です。

インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者登録番号を取得する必要があり、この番号を取得するためには消費税の課税事業者である必要があります。
つまり消費税の免税事業者のままではインボイス発行事業者の申請ができないため、インボイスを発行することはできません。

取引先が、消費税の免税事業者だけである場合には、適格請求書発行事業者登録番号を取得しなくても理論上は問題ありませんが、そうでない場合には、基本的に適格請求書発行事業者登録番号を取得した方がよいでしょう。

▶ インボイス制度の請求書|記載例・ルールを解説

▶ 個人事業主のインボイス|免税事業者にとっての影響とは

まとめ

ネットショップは、コロナ禍においてライフスタイルとして定着し、今後ますます市場は拡大すると思われます。ただし一方で、ネットショップ間の競争も激しくなることが予想されます。
この厳しい競争の中で生き残り、さらに利益を獲得していくためには、独自の経営計画を考え顧客や環境の変化に応じて商品を見直し、ネット広告の最適化をはかるなど、さまざまな工夫が必要となります。
そして、そのためにも会計や税務の基礎を理解して、事業の状況はリアルタイムで把握することが重要ですし、作業の効率化を図るための工夫も必要です。

ネットショップ開業について相談する

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、ネットショップの開業や開業時の資金調達やネットショップの作業で欠かせない経理システムの効率的や節税対策、税務申告などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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・仕入れについて
「ネットショップ(ホームページ)でオーダーメイドのブーケ屋さんをしております。
・個人→法人への在庫引き継ぎ時の価格について
「元々個人でネットショップを行っており、その後法人化して新たなネットショップを立ち上げました。
・ネットショップ用の倉庫の利用にかかった料金の仕訳について
「ネットショップの商品の保管、注文が入った際の配送を倉庫企業に委託しております。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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