中退共(退職金共済)の5つのメリットと3つのデメリット

公開日:2023年01月13日
最終更新日:2023年01月13日

この記事のポイント

  • 中退共(中小企業退職金共済)は、中小企業の退職金制度。
  • 中退共の掛金は、月額5,000円から3万円。
  • 中退共の掛金は全額損金となり、大きな節税効果がある。

 

中退共(退職金共済)とは、中小企業のための退職金制度です。
中小企業しか加入することができない制度で、掛金を支払時の損金とすることが認められるため、節税効果があります。ただし、掛金が戻らない、従業員の勤続期間が2年未満だと元本割れしてしまうなど、いくつかの注意点もあります。

 

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中小企業退職金共済(中退共)とは

中小企業退職金共済(中退共)とは、その名前のとおり中小企業のための退職金制度です。
中退共に加入すると、その掛金が支払時の損金として認められます。また、従業員の給与と見られることもありません。
中退共制度は共済制度であり、事業主が拠出する掛金とその運用収入を財源としていて、長期加入者の退職金が手厚くなるようなしくみになっています。

令和4年10月末時点で、中退共に加入している企業や従業員は以下のとおりです。

加入している企業 379,062所
加入している従業員 3,635,777人
運用資産額 約5.3兆円

(1)中退共は中小企業の退職金制度

中退共は、その名前のとおり、中小企業のための退職金制度なので、中小企業しか加入することができません。
ただし、中退共の中小企業の範囲は比較的緩やかになっており、加入できる企業は、業種によって異なりますが、かなり広範囲をカバーしています。

常用従業員数 資本金・出資金
一般業種(製造・建設業等) 300人以下 3億円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
サービス業 100人以下 5,000万円以下
小売業 50人以下 5,000万円以下

(2)「中小企業」でなくなった場合は?

中退共は、事業主が中退共本部と「退職金共済契約」を締結し、加入手続きも事業主が行います。
中退共に加入していたものの、前述した中小企業の要件を超えた場合には、原則として退職金共済契約を解除することになりますので、事業主から「中小企業者でなくなった旨の届出」を提出することになります。
この場合には、従業員からの請求に基づいて「解約手当金」が支給されます。「退職金」は税法上「退職手当等」とみなされますが、「解約手当金」は「一時所得」として取り扱われます。
また、一定の要件を備えていれば、解約手当金相当額を他制度へ引渡すこともできます。

中退共のメリット

中退共は、掛金を支払時の損金とすることができます。
また、退職金は一時払いで受け取ることもできますし、一定の要件を満たしていれば本人の希望により全部または一部を分割して受け取ることができます。

(1)掛金は損金にできる(節税となる)

従業員への退職金は、原則としてその全額が損金として認められます。
ただし、退職金は退職時に一度に支払うものですから、一時に多額の費用が発生してしまうことになります。
この退職時に発生する多額の費用は、中小企業の場合にとって大きなインパクトを与えることになりかねません。
そこで、一時に多額の費用が発生することを回避するために中退共に加入すれば、徐々に退職金を積み立てることができ、毎期の費用にすることができます。

また、この制度に加入する前に勤務していた期間は、過去勤務期間(最高10年)の通算によって、さらに充実した退職金制度を確立することができます。

参照:中退共「過去勤務期間の通算」

(2)退職金共済の掛金は5,000円~3万円

中退共の掛金は、5,000円~3万円で従業員ごとに任意で選択することができます。また、掛金を変更したいときは、掛金月額の種類の範囲内でいつでも行うことができます。
たとえば、勤続35年で退職金1,000万円とした場合、掛金月額は2万円となります。

短時間労働者の場合には、2,000円から4,000円の範囲で設定することができるため、自社の資金繰りとの兼ね合いで柔軟に掛金を設定することができます。

(3)受け取り方を選ぶことができる

受取り方は、①一時金払い(退職金の全額を退職時に受け取る)と、②分割払い(5年間または10年間にわたって分割して受け取る)と③併用払い(一時金払いと分割払いを組み合わせた方法で受け取る)の3つの受け取り方法から選ぶことができます。

一時金で受け取る場合には、その退職金は退職所得となり、退職所得控除が適用されるので、事業所得などと比較すると納税額が軽減されます。
また、分割で受け取る場合にも、公的年金等控除が適用されるため、やはり少ない税金で済みます。

なお、退職金は、基本退職金と付加退職金の2本建てで、両方を合計したものが、受け取る退職金になります。

退職金 = 基本退職金 + 付加退職金

基本退職金は、掛金月額と納付月数に応じて定められている金額で、付加退職金は、基本退職金に上積みされるものです。付加退職金は運用収入の状況等に応じて変わってきます。

(4)管理が楽

中退共の毎月の掛け金は、口座振替で納付することができます。また、加入後の面倒な手続きや事務処理なども必要ありません。
従業員ごとに納付状況を確認することができ、退職金額については事業主にお知らせが届くので、楽に退職金の管理を行うことができます。

(5)国の助成がある

中退共制度に新たに加入する事業主に対して、加入後4カ月目から、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間、国が助成してくれます。

また、掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額変更する事業主に対しては、その増額分の3分の1を1年間、国が助成してくれます。

参照:中退共「掛金助成制度」

中退共のデメリット

メリットの多い制度である中退共ですが、デメリットもあります。
最も大きなデメリットは、「掛金が会社に戻らない」という点です。これは、中退共の掛金が「個人の退職金に充当されるものである」ため、仕方がないものではありますが、資金繰りとの兼ね合いで十分に検討する必要があります。

(1)全従業員を加入させる必要がある

中退共は、一部の従業員だけ加入させるということはできず、原則として全従業員を加入させる必要があります。事業主や役員は加入できませんが、使用人兼務役員として賃金の支払いを受けている場合は加入することができます。

また、以下の従業員については、加入させなくてもよいことになっています。

①期間を定めて雇用される者
②季節的業務に雇用される者
③試用雇用期間中の者
④短時間労働者
⑤休職期間中の者
⑥定年などで短期間内に退職することが明らかな者

(2)支払った掛金は戻らない

掛金は従業員ごとの「契約成立日」の属する月分から「退職日」が属する月分まで納付します。
そして、中退共が従業員個人の退職金に充当されるものであることから、支払った掛金は会社に返却されることはありません。
ここが、中退共と保険制度などと最も大きな違いといえます。
また、従業員を懲戒解雇した場合でも、基本的に退職金は支払われます。

また、掛金は増額することはできますが、減額については原則として認められず、被共済者が同意したとき、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたときしか減額することはできません。

(3)勤続期間2年未満は元本割れ

従業員の勤続期間が2年未満だと元本割れをしてしまいます。
また、掛金の納付が1年未満の場合は、退職金は支給されません。
元本割れしないためには、2年から3年6カ月の加入が必要です。そして、3年7カ月から掛金相当額を上回る額を受けとることができます。
これは中退共が、長期加入者の退職金を手厚くするためのしくみになっているためです。

まとめ

中退共は、中小企業しか加入することができない退職金であり、従業員の退職金を先に損金とすることができる、掛金の変更ができるなど、多くのメリットがある制度ですが、原則として全従業員を加入させなければならず、支払った掛金は返してもらえない、従業員の勤続期間が2年未満だと元本割れしてしまうなどのデメリットも考慮する必要があります。
資金繰りには十分注意して掛金を設定するようにし、上手に活用することが大切です。

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