私募債とは?少人数私募債のメリット・手続き・仕訳を解説

公開日:2024年06月24日
最終更新日:2024年06月24日

この記事のポイント

  • 少人数私募債は、資金調達手段として活用できる制度。
  • 少人数私募債は、発行手続きが公募債に比べて簡素で迅速というメリットがある。
  • 金利、償還期間、その他の発行条件を柔軟に設定することができる。

 

私募債とは、特定の引受人に対して直接発行される債券です。企業は資金調達の目的や必要な金額、条件を明確にして合意に達した後、正式に契約を締結します。
少人数私募債は、企業が特定の少数の投資家に対して直接発行する債券のことです。通常、少人数私募債は50人未満の投資家に向けて発行され、公募債のように広く一般に募集されることはありません。

少人数私募債とは

少人数私募債は、中小企業が資金調達に活用できる手法の一つです。社債の一種で、企業が債権を発行して投資家から資金を集める方法です。少人数私募債は、返済の据え置き期間が長く、返済時期に一括して支払うことが一般的です。そのため、企業にとっては長期的な債務となります。

(1)私募と公募の違い

私募は特定の少数の投資家に対して直接発行される債券で、公募は広く一般に募集される債券です。上場企業の発行する社債の募集方法は、ほとんどが公募です。私募は手続きが簡素で迅速に行えるのに対し、公募は多くの開示義務があり手続きが複雑です。
さらに、公募は財務省への通知書や有価証券届出書、目論見書などの作成が必要です。発行コストも莫大で、100億円の社債を発行する場合、発行をサポートする証券会社への手数料だけでも4,000万円以上かかります。

一方、私募債は特定少数の投資家を対象としていて、このような煩雑な手続きも必要ありませんし、コストもそれほどかからず資金調達できるというメリットがあります。

(2)少人数私募債のメリット

少人数私募債のメリットには、発行手続きの簡素化、コストの低減、条件設定の柔軟性、迅速な資金調達、特定の投資家との関係強化などを挙げられます。
少人数私募債を発行するためには、取締役会における普通決議だけで発行が完了します。さらに監督官庁への届け出も必要ありません。
また、金融機関から融資を受けると、大半が翌月から返済と金利の支払いが始まりますが、少人数私募債は無担保債なので、利息の支払いは1年ごとの後払いのケースが多く、保証会社に支払う保証料の負担もありません。

なお、少人数私募債は、投資家側にもメリットがあります。ひとつは金融機関に預けている預貯金より有利な利率が設定されることです。発行側からしても社債利率を金融機関より高く設定しても、保証料などのコスト負担の減少を考えると十分元がとれます。

(3)少人数私募債のデメリット

少人数私募債は、償還期限に元本を一括で返済する必要があります。そのため、償還期限までに計画的に資金を準備することが重要です。また、会社外部の人が引受人となった場合、その引受人の意向を無視しにくくなる点にも注意が必要です。

(4)少人数私募債の「特定」される投資家とは

少人数私募債の特定される投資家とは、発行会社の取締役や利害関係人、知人、親族などのうち、企業の財務状況や事業計画を理解し、リスクを適切に評価できる能力を持っている人がおすすめです。
金融機関が引受人になると、目論見書の作成が必要となりますので、除外します。

(5)少人数私募債の「少人数」とは

少人数私募債の「少人数」とは、通常50人未満の投資家を指します。50人未満なので、上限は49人です。50人以上になると、金融商品取引法上の募集行為、つまり公募となり、有価証券届出書を作成して提出しなければならなくなります。
また、社債一口の単位が発行総額の50分の1以上になると、社債管理会社が必要となるので、社債の1口の最低金額は、発行総額の50分の1より大きい必要があります。

また、償還期限までの途中で第三者に譲渡されないよう、定款に譲渡制限を付すなどの措置も必要です。

(6)少人数私募債で決めるべきこと

少人数私募債は、発酵する中小企業が内容を自由に決めることができますが、そうは言っても社債一口当たりの金額や、投資家などの制約はあります。
ここでは、中小企業が少人数私募債を発行するうえで、最低限決めなければならないことをご紹介します。

①社債の募集総額を決める
資金調達の目的に応じて、募集総額を決定します。社債の募集総額の上限は、社債一口の金額の49倍とされています。

②引受人を決める
社債を引き受けてくれる投資家を選びます。

③社債一口当たりの金額を決める
投資家が引き受けやすい額を決定するのがポイントです。一般的には、100万円~200万円というケースが多いようです。

④社債の利率と利息支払日を決める
投資家にとって引き受けたくなる利率を設定します。金融機関の預金利率よりも高く、発行会社の負担にならない利率を設定することが大切で、一般的には2.5%~6%程度です。
なお利息制限法では、最高金利は元本100万円以上で15%が上限となっているので、これを超えないよう注意しましょう。
利息支払日は、半年ごとでも1年ごとでも自由に決められます。

⑤償還の方法と期間を決める
社債は償還日まで一切返済しないのがルールです。通常は5年の満期償還を採用しているケースがほとんどですが、3年でも10年でも構いません。要は、投資家が引き受けてくれるかが大切です。

⑥社債の申込期間と払込期日を決める
払込日の翌日から利率の計算がスタートするので、払込期日より早めに入金があっても、利率の計算はあくまで払込期日の翌日からになりますので、その点には注意しましょう。

⑦社債券発行の有無を決める
少人数私募債を発行する場合に、社債券を発行するケースはほとんどありませんが、発行する場合には、投資家の名前を記載した社債券を引き渡します。

(7)少人数私募債の発行手続き

少人数私募債の発行は、取締役の普通決議からスタートします。
取締役会では、出席取締役の過半数の賛成が必要です。また、必ずその内容を議事録として保管しておくようにしましょう。

次に、社債の募集要項を作成します。募集要項は、社債申込証の裏面に記載し、投資家に了解してもらったら、表面の社債申込証にサインをしてもらいます。
サインしてもらった社債申込証を預かり、募集引受通知書を発送します。
入金口座は、日常取引で使用している口座ではなく、別の口座を用意しておく方がよいでしょう。なお、入金を確認したら「社債申込預り証」を発行します。
社債は、社債券者の住所・氏名、振込先口座、社債の取得年月日等を記入して管理します。
もし、社債の返還が困難になった場合には、社債権者集会が一度に全額を償還する請求を通知できますが、新たな少人数私募債を発行して継続して引き受けてもらう交渉を行うこともできます。

(8)少人数私募債の処理仕訳

少人数私募債は、発行時、償還時、決算時に処理を行う必要があります。

「3月決算の会社が、4月1日に少人数私募債3000万円を発行し、入金された。利率は2.5%、毎月9月末、3月末に500万円ずつ召喚され、利息と共に支払う。手数料は54万円であった。」

①発行時

借方 貸方
普通預金 30,000,000 社債 30,000,000
借方 貸方
社債発行費(営業外費用) 500,000 普通預金 550,000
仮払消費税等 50,000

②第1回償還時

借方 貸方
社債 5,000,000 普通預金 5,000,000
借方 貸方
社債利息 37,5000 普通預金 37,5000

③決算時

借方 貸方
社債 10,000,000 1年以内償還予定の社債 10,000,000

まとめ

少人数私募債は、中小企業でも取り組みやすい資金調達の方法です。簡単な手続きで発行することができ、担保や保証料も不要ですし、償還期限まで元本の返済は不要です。
ただし、引受人になってもらうためには、会社の決算内容を説明して信頼してもらうことが必要です。
したがって、少人数私募債を発行する場合には、税理士に相談して必要な準備を早めに進めておく方がよいでしょう。

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