公開日:2018年10月31日
最終更新日:2019年07月27日
税務調査は、納税者が申告した申告内容について調査を行い、違法な処理や誤った処理がある場合には、税法に従った申告や納税に修正させるために行われます。
税務調査には大きく分けて「強制調査」と「任意調査」があり、ドラマや映画などでよく見る税務調査は「強制調査」です。
中小企業や個人事業主の場合に行われる税務調査は、ほとんどのケースで任意調査であり、強制調査の対象となることはまずありません。
ただし任意だからと言って、調査を拒否すると『怪しい』と疑われてしまいます。
納税の義務がある会社や個人事業主にとって、税務調査は避けることができないものと捉え、しっかり対応するようにしましょう。
税務調査とは、納税者が申告した申告内容を確認するための調査のことをいいます。
調査の結果、違法な処理や誤った処理がある場合には、税法に従った申告や納税に改めさせなければなりません。
税務調査には大きく分けて「強制調査」と「任意調査」があります。
税務調査というと、ある日突然会社に大勢の調査官がやってくるシーンをイメージする人が多いようですが、それは国税局が行う強制調査であり、悪質で計画的な不正に対して、裁判所からもらった捜査令状をもとに行われる調査です。
中小企業や個人事業主の場合は「任意調査」であるケースがほとんどで、税務署が申告内容についてそれほど疑問を持っていないケースです。
事前に会社か顧問税理士に連絡があり、会社の承諾を得てから調査日が決定し、当日は帳簿や請求書などの書類を中心に、調査が行われます。
「税務調査」という場合には、一般的にこの任意調査を意味しますので、ここでも任意調査についてご紹介します。
税務調査の目的は、提出された法人税及び消費税申告書が、事実に基づいているか、正しく作成されているかを確認することにあります。
納税者の税務処理をチェックして、脱税や税務上の誤りがあれば、指導や摘発を行い、追徴課税を行います。
日本は、納税者が納税額を計算し納税する「申告課税方式」をとっていますが、もし、税務調査がなかったら、税金をごまかす人と真面目に申告納税する人に税負担の不公平が生じてしまうこともあるでしょう。
その意味で、税務調査は大変重要かつ必要な調査であるといえます。
税務調査というと、良いイメージを持つ人はあまりいないようですが、伝票・帳簿類、帳票や契約書、領収書などの書類を日頃からしっかり整理し保管をして、真面目に申告をしていれば、とくに怖い調査ではありません。
税務調査は、次の手順で実施されます。
①調査対象会社の選定
税務署の調査官が、調査対象となる会社を決定します。
「この金額はおかしい」「経費が、昨年と比べて増え過ぎている」「事業規模が変わった」「内部告発があった」などといった事情がある場合に、対象の会社に選ばれます。
調査対象に選ばれるサイクルは通常は3年~5年という会社もあれば、6~7年という会社もあります。
②調査の連絡
調査官が、調査対象会社か、その会社の顧問税理士に電話で、調査を実施する旨の連絡をします。
税務署から「○月○日に調査に行きたい」という事前連絡が直接かかってきた場合には、絶対に即答は避けましょう。
そして、顧問税理士がいる場合には顧問税理士に連絡します。
もし、顧問税理士がいない場合には、税務調査に対応してくれる税理士を探して、同席してくれるように依頼をするようにしましょう。
③調査実施
調査官が会社に来て、調査を実施します。
帳簿書類、領収書、契約書などの書類だけでなく、預金通帳や棚卸資産なども調査の対象となります。調査当日は、税理士に同席を依頼することができます。
事実確認を行うために、銀行や取引先等で調査することもあります(反面調査といいます)。
④発見事項の説明
調査官が、税務上の問題点を発見した時には、その問題点について説明します。
修正すべき点があれば、確定します。
⑤修正申告書の提出と納税
問題点を修正した修正申告書を提出し、追加納税します。
税務調査が行われる会社の件数について、平成29年11月に国税庁から発表された調査実績によると、以下のようになっています。
○法人税の調査
2016(平成28)事務年度においては、大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人97,000件(前年対比103.5%)について実地調査を実施しました。
このうち、法人税の非違があった法人は72,000件(同103.7%)、その申告漏れ所得金額は8,267億円(同99.5%)、追徴税額は1,732億円(同108.8%)となっています。
法人税の実地調査の状況 | 平成27事務年度 | 平成28事務年度 |
---|---|---|
実地調査件数 | 94千件 | 97千件 |
非違があった件数 | 69千件 | 72千件 |
うち不正計算があった件数 | 18千件 | 20千件 |
申告漏れ所得金額 | 8,312億円 | 8,267億円 |
うち不正所得金額 | 2,374億円 | 2,543億円 |
調査による追徴税額 | 1,592億円 | 1,732億円 |
調査1件当たりの申告金額 | 8,884千円 | 8,534千円 |
不正1件当たりの不正所得金額 | 12,845千円 | 12,864千円 |
調査1件当たりの追徴税額 | 1,702千円 | 1,788千円 |
※調査による追徴税額には、加算税及び地方法人税が含まれています。
○法人消費税の調査
2016(平成28)事務年度においては、法人消費税について、法人税との同時調査等として93,000件(前年対比103.4%)の実地調査を実施しました。
このうち、消費税の非違があった法人は55,000件(同104.8%)、その追徴税額は785億円(同139.0%)となっています。
法人消費税の実地調査の状況 | 平成27事務年度 | 平成28事務年度 |
---|---|---|
実地調査件数 | 90千件 | 93千件 |
非違があった件数 | 52千件 | 55千件 |
うち不正計算があった件数 | 14千件 | 15千件 |
調査による追徴税額 | 565億円 | 785億円 |
うち不正計算に係る追徴税額 | 154億円 | 292億円 |
調査1件当たりの追徴税額 | 626千円 | 842千円 |
不正1件当たりの追徴税額 | 1,073千円 | 1,915千円 |
※調査による追徴税額には、加算税及び地方法人税(譲渡割額)が含まれています。
税務調査の連絡がきたら、必ず税理士に同席を依頼しましょう。
税理士なら、過去の決算書を見るだけで、税務署から指摘されそうな問題点の目星をつけることができます。そして、その部分について必要な対策を行うことができます。
また、調査当日に立ち会ってもらうこともできます。
調査官が、会社のどの点に疑問を持ちそうか、どの点を重点的に調査しようとしているかについて、予め把握することができれば、その点について当日しっかり説明ができるように準備を進めることができます。
なお、通常の会社の場合には、調査を受ける時に準備をしておいた方がよい書類は、3期分の帳簿、請求書や領収書、見積書などの書類となります。
必要となる書類、準備した方がよい書類は、個々の会社の状況、取引先の状況などによって異なりますので、この点も税理士に相談するようにしましょう。
税務調査で準備する書類
種類 | 資料名 |
---|---|
帳簿類 | ・総勘定元帳 ・入出金伝票 ・小切手の控え ・会計日記帳(現金日計帳) ・売掛帳・買掛帳 ・決算書 ・申告書 ・勘定科目明細書 ・減価償却明細書 |
経費の資料 | ・請求書 ・領収書 |
売上資料 | ・見積書 ・納品書 ・請求書 ・領収書の控え ・工事契約書 |
契約書など | ・契約書(りん議書、議事録なども) ・役員社宅の賃貸契約書・家賃計算書 ・同族関係取引の契約書 |
人件費関連の資料 | ・給与台帳・扶養控除申告書 ・社会保険関係書類 ・タイムカードの記録 ・役員報酬の改定があった場合には、その議事録 ・家族役員がいる場合には、その報酬が適切かどうか検討したことが分かる資料 |
仕入・外注・在庫の資料 | ・見積書 ・請求書 ・納品書 ・実地棚卸表 |
税理士には、税務調査当日に同席を依頼することができます。
当日は、税務調査官に、事実の有無(事実認定)と税務上の解釈の両方について、質問されます。
事実の有無については社長か経理担当が回答する必要がありますが、税務上の解釈は、税理士から回答してもらうようにしましょう。
例えば、ある料亭で行った会食の領収書が問題になったとします。
この時調査官に、「誰と誰がこの料亭に行ったのか、どのような話をしたのか」と質問されたら、社長か経理担当は、領収書に記載されたメモを見ながら説明し、どのような理由で会議費に計上したかを回答します(事実認定)。
そして、その結果を受けて「会議費に該当するか交際費に該当するか」といった説明は、税理士に任せることになります(税務上の解釈)。
問題点が全く発見されないケースもありますが、調査官に問題点を指摘された時には、事実認定の部分に誤りがないかを確認し、税理士と相談します。
発見された問題点を認める場合には、税理士が修正申告書を作成します。
そして、修正申告書の税額に従って、税額を納付します。
2002年(平成14年)の税理士法改正によって、税理士会の報酬規程が廃止され、税理士が独自に決めた報酬規定が作成されるようになりました。
したがって、現在は税務調査の立会いについての報酬についても、個々の税理士事務所によって異なりますが、報酬の額については、旧税理士報酬規定を参考にしている税理士事務所が多いため、ここでも旧税理士報酬規定の報酬についてご紹介します。
旧税理士報酬規定では、税務調査の1日あたりの報酬は、60,000円となっています。
また、遠方の税理士に依頼する時には、日当、旅費、宿泊費なども負担しなければなりません。
旅費や宿泊費は、実費ですが、日当について、旧税理士報酬規定では、1日あたり50,000円となっています。
顧問税理士がいない場合でも、税務調査には税理士に立ち会ってもらうことをおすすめします。
確かに、会社の帳簿がきちんと整理し保管されていれば、税務調査がきても慌てることはありませんし、税理士がいるかいないかで、結果が大きく左右されることはあまりないといえるでしょう。
しかし、税務調査で問題が出てきた時には、税理士の対処次第で調査結果に影響が出ることはあります。
税務調査に精通している税理士ならば、質問にどのように回答すべきか熟知していますので、反論すべき点、了承すべき点のメリハリをつけて調査官と交渉し、できるだけ短時間で調査を終了し、修正がないようにしてもらうことが可能となるからです。
税務調査が初めてだという場合、予め税務調査の流れを教えてもらって事前に練習をしておけば、当日必要以上に緊張せずに済むのではないでしょうか。
また、個人、法人の税務調査についてさらに知りたい方は下記のリンクからご覧ください。
「税理士検索freee」では、税務調査に対応してくれる税理士をご紹介しています。
顧問契約を締結していない場合でも、対応してくれる税理士も多数いますので、1日も早く連絡をとることをおすすめします。