税務調査対策とは?税務調査はどこまで調べる?

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2024年02月08日

この記事のポイント

  • 税務調査の連絡がきたら、すぐに税理士に連絡をする!
  • 税務調査対策として、税務調査ではどこまで調べるか知っておこう。
  • 税務調査対策として調査官に反論してよいこと、反論しない方がよいことを知っておこう。

 

税務調査とは、「納税者が正しく税法に従って納税をしているかを確認するための調査」です。
「税務調査」という言葉を聞いたことはあっても、実際どういうことを調査されるのかわからない方も多いのではないでしょうか。また、「何を調査されるのか不安だ」と感じる方もいるかもしれません。
けれども、税務調査がどんなものか理解し、事前にしっかりと準備して対応方法を知っておけば、怖い調査ではありません。
ここでは、税務調査の目的や、税務調査がどのように行われるのか、どのように対応すべきかなどについてご紹介します。
 

税務調査の豆知識

税務調査は、税理士がいるかいないかで調査内容や調査結果が大きく異なります。税務調査というと、つい感情的になりがちですが、税務調査に税理士が立ち会ってくれると、調査官に問題点を指摘されても冷静に対応し、反論すべき時にはきちんと根拠を示して論理的に反論をしてくれます。
税務調査の調査官は、調査のプロではありますが、調査官の指摘がすべて正しいというわけではありません。事実認定が足りない場合もあれば、税法解釈を誤り判断が間違っていることもあるのです。
税務調査官は、どうしても課税の方向から状況を見る傾向があります。そこを適切に主張してくれるのが税理士です。
また税理士は、税務調査でどのようなところをチェックされるのか熟知しています。顧問税理士がいれば、どのような経理処理を行えば、税務調査の対象となってもスムーズに問題なく調査が進むか分かっていますので、日頃から適切な経理処理を行うことができます。
さらに決算書の作成は税理士に依頼し、税理士法第33条の2第1項の書面を添付してもらえば、決算書の信用力を高めることができ、税務調査の対象となる可能性が減少します。

税務調査とは

税務調査とは国税庁や税務署が、調査の対象者が税法にのっとり、税金を適正に支払っているかどうかを調査し、違法な処理があった場合には、税法に従って申告や納税を改めさせるために行われます。
税務調査の対象は必ずしも所得税、法人税だけというわけではなく、消費税、源泉徴収税、印紙税、固定資産税など、事業にかかわるすべての税金が対象となります。
また、相続税の場合は、申告者の20~30%が税務調査を受けていると言われています。

(1)税務調査の頻度は決まっていない

税務調査の頻度は、3~5年に1回くらいの頻度で来るとよく言われますが、10年以上税務調査がこないという会社や、創業以来、一度も税務調査が入ったことのないという会社もあり、その頻度は一律ではありません。
しかしながら、どんな会社、個人事業者でも、税務調査を受ける可能性はあります。

国税庁の調査実績の「法人税等の調査事績の概要」によれば、実地調査が行われたのは62,000件、簡易な接触事積(書面や電話による連絡や来署依頼による面接など)は、66,000件となっています。

【実地調査件数】

令和3年 令和4年 前年比
41,000件 62,000件 152.3%

【簡易な接触事積】

令和3年 令和4年 前年比
67,000件 66,000件 99.3%

参照:国税庁「令和4事務年度法人税等の調査事績の概要(令和5年11月)」

(2)調査対象となりやすい会社とは?

税務調査は、すべての会社、個人事業者が対象となる可能性があります。
しかし、やはり税務調査の義務を課される可能性が高い会社、個人事業者という傾向はあります。
それでは、どのような会社、個人事業者が調査対象となりやすいのでしょうか。

前年度以前と比較して決算書の項目の増減が大きい会社

税務署というのは、各会社、個人事業者の決算書のデータベースを持っています。
そして、決算書の増減を簡単に把握することができます。「売上が伸びているのに所得が上がっていない会社」や「支店数が増加しているのに売上が伸びていない会社」などは、利益を圧縮して税金をごまかしているのではないかと疑われます。税務署からすると、売上が上がれば所得(利益)も合わせて延びるのが普通と考えるからです。
ですから、売上とともに利益も伸びている会社は税務調査の対象となりにくいと言えるのです。
なお、会社の所得は同業他社の所得とも比較されています。
同業他社より低い所得率(所得÷売上)であれば、税務調査の対象となりやすくなります。

利益率が高い会社、流行している業種

利益率が高い会社・流行している業種は、調査した結果で修正申告をすることになれば、法人税をかなり納めてもらえることが期待できます。
ですから、利益率が高い会社・流行している業種は、税務調査の対象に選ばれやすい傾向があります。

IT業界など業務内容が把握しにくい会社

IT業界など、業務内容が把握しにくいサービスを提供している会社、個人事業者は、簡単に利益を実際よりも少なく見せるケースがあります。
税務署もそれを充分理解していますので、業務内容が把握しにくいサービスを提供している会社は、税務調査が入る可能性が高くなります。
逆に不動産賃貸業者など、業務内容が明確で売上や経費がほぼ一定の会社は、10年以上調査が行われないこともあります。

税理士がついていない会社

会社、個人事業者に税理士がついていると、税理士は調査官に対して税法に基づき、適切に反論を行います。
つまり顧問税理士がいる会社については、税務署も「この会社を調査しても、追徴課税をあまり課すことができないだろう」と考えるので、結果的に顧問税理士のいない会社が税務調査の対象となりやすいといわれています。

以上、税務調査の対象となりやすい会社の特徴についてご紹介しましたが、上記の例に該当しない会社でも、税務調査を受ける可能性は十分にあります。決算書が赤字の成績であったとしても、油断はできません。源泉所得税や印紙税などで税金を徴収することも可能だからです。
納税義務のあるすべての会社、個人事業者にとって税務調査は避けては通れないものとして考えておく必要があります。

参照:国税庁「令和元事務年度 法人税等の調査事績の概要」

税務調査の連絡がきたらすべきこと

税務署から税務調査の連絡がきたら、「不正をしていると、疑われているの?」「何を準備すればいいか、分からない」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、税務調査の結果痛い目に遭うのは、その会社に税務処理上の問題があったか、税務調査時の対応を誤ったかのどちらかであるケースがほとんどです。
したがって税務調査で正しい対応方法を知っておけば、税務調査は決して怖い調査ではありません。

(1)すぐに税理士に連絡する!

税務調査は、通常は10日から2週間前に税務署から連絡があり、スケジュール調整をして日時を決めます(※事前の連絡なく税務調査が行われるケースもありますが、極めて稀です)。

顧問税理士がいれば、通常は顧問税理士に連絡がいくので、すぐに税理士と協議をしましょう。
顧問弁護士がいない場合でも、税務調査だけでも対応してくれる税理士もいます。今すぐ税務のプロである税理士に相談して、事前準備や整理しておくべき書類などについてアドバイスを受けるようにしましょう。
ただし、税務調査のすべてを税理士に任せることができるのかというと、そうではありません。
税務調査は、税理士と二人三脚で対応するのが正しい対応方法であることを忘れないようにしましょう。

(2)資料(帳簿、証票類など)を整理する

まずは税理士と打ち合わせしながら、資料(帳簿、証票類など)やデータの整理を行います。
調査官に求められた資料やデータがなかなか提示できないだけで、税務調査の進行が送れますし、調査官に「資料の管理が杜撰だから、税金の計算も杜撰なのでは」と疑われてしまうからです。
つまり、調査官に求められた資料やデータを迅速に提示することができれば、調査官の心証は確実によくなります。

税務申告書の見直し

納税額の直接的な算定根拠は、税務申告書にあります。
したがって、税務署はまず申告書の適正性を最初に確認をします。
ですからまずは、税理士と一緒に適正に申告書が提出されているかどうかについて、協議する必要があります。

帳簿、証票類の確認

税務申告書を作成する元となっている、帳簿、証票類などの会計帳簿の適正性を確認します。
会計を作成する元になっている仕訳は、必ず根拠資料(請求書や領収書等)を元にしていますので、請求書や領収書などについても確認して整理をしておきましょう。
実際、税務調査では、ひとつひとつの領収書まで細かくチェックするケースが多いので、明確に説明できるようにきちんと整理しておきましょう。

給与台帳などの確認

会計帳簿の根拠資料が、給与台帳、固定資産台帳など、各種台帳であることもあります。
たとえば、パートやアルバイトに給与を支払っているように見せかけて、実際には雇っていないのではないか……と疑われるケースもあるのです。
したがって、台帳の正確性をすぐに確認できるよう準備し、税法の定めた通りに処理がなされているかどうかについても併せて確認をするようにしましょう。

(3)税理士とリハーサルしよう

税務調査において、調査の場においてどのように対応したか、どのように質問に答えたかによって、その後の流れは大きく変わることになります。

調査官は他の税務調査も同時進行で抱えているため時間的な余裕がないからです。
税務調査では、すべての項目を網羅的にチェックされるわけではありません。
税理士であれば、税務調査で問題となるポイントを熟知していますから、そのポイントについてどのように回答するのかシミュレーションしておきましょう。
もちろん、実際の税務調査では、すべてリハーサルどおりに進むわけではありませんが、事前に準備をしておけば精神的な余裕ができます。また、税務の各種論点によっては、解釈が分かれるものも多々ありますので、なぜこの処理を行ったかを適切に説明できるように理論武装しておくことも大事なことです。

税務調査対策|どこまで調べる?

それでは、実際に税務署はどのようなところをチェックしてどこまで調べるのでしょうか。ここでは、税務調査に指摘されやすい、具体的なポイントをご紹介します。

(1)売上の計上時期・所得率

必ずみられるのが、毎月の所得率です。
税務署は、売上が上がれば所得も合わせて伸びるのが普通だと考えますから、所得率(所得÷売上)が年々下がっている会社は、利益圧縮をして税金をごまかしているのではないかと疑われる可能性が高いです。

また、売上の計上時期も必ずチェックされるポイントです。
それは、売上の計上時期によって、税額が大きく変わるからです。

特に所得税、法人税の計算では、所得額の大きさによって納税額が決まります。
所得は、基本的には会計期間の益金から損金を引いた金額で算出されます。この益金の中には、売上額も入りますので、売上額が今期のものなのか、来期のものなのかで税額が変わることになります。

つまり税務署は、「本当は今期に売上として計上すべきものにもかかわらず、来期に計上して、納税の回避をしようとしているのではないか」という視点をから、税務調査を行うのです。
なかには、このように当期の所得を減らす目的で意図的に計上すべき時期をずらすこともありますが、単純な事務処理ミスや勘違いで発生することもありますので、しっかり確認しておきましょう。

(2)交際費

得意先や仕入れ先に対して飲食接待をした場合の費用は、交際費等に該当しますが、これらの費用のうち1人あたり5,000円以下のものについては、交際費も含めず全額損金に算入することが認められます。
しかし、これは、得意先や仕入れ先に対して飲食接待をした場合のみの適用であり、役員や従業員などに対して接待した場合には、適用がありません。

たとえば、交際費に計上すべき経費を会議費に計上しているケースです。
同じ経費でも、交際費については全額損金にすることができないので、会議費として計上されているものが実は交際費だったとすれば、それだけで納税額が増えます。

このように、本来交際費として認められない会社の事業にかかわらない支出にも関わらず、交際費として計上を行うことにより、税務上損金に算入させて計上するケースについて、税務署は細かくチェックをしてきます。

交際費という項目は、税法上非常に曖昧な定義となっているため、所得操作をしやすい項目と考えられているからです。
元帳などから、交際費に該当すると思われる費用を一覧にして、その請求書や領収書などから内容を検討して、人数の水増しなどがないか調査します。

(3)在庫の計上漏れ

会計期末において製品、商品、材料等で残っているものに関して、会計上は在庫認識をしなければなりません。
在庫認識とは、「損金として計上を予定していた仕入の一部を在庫として認識し、その部分は会計上損金として計上をしない処理をすること」をいいます。
つまり、在庫を計上するということは、納める税金が上がることになります。
そして、この在庫の計上が漏れている場合、結果として税金徴収に漏れが生じていることを意味することになりますので、税務署は「期末において棚卸が適正になされ、在庫が適切に計上されているかどうか」をチェックします。

(4)架空人件費の有無

パートやアルバイトに給与を支払っているように見せかけて、実際には雇っていないのに給与の金額を損金算入するケースは、昔から非常に多くみられる脱税の手法です。
税務署は実際にその人物が存在しているかどうか、勤務実態があるかどうか、金額が妥当なのかどうかについて、タイムカードやその人が住んでいる場所まで、細かくチェックします。
調査官は、給与台帳、源泉徴収簿、組織図、配席図、社員名簿、タイムカードなどから調査します。
特にタイムカードがある場合には、同じ時刻に出退社がされているかなど、細かくチェックします。

(5)外注費

外注費とは、外部の業者を利用したその対価のコストをいいます。
この外注費は、給与認定されることがあります。給料ではなく外注費となると、原則として源泉所得税を差し引かなくてもよくなりますし、消費税の課税仕入れの対象となります。
しかし外注費と認められるためには、契約書があるか否かだけでなく、指示しているのが誰か、支払額は固定額かなどの基準に基づいて、総合的に判断されます。

仮に「これは、外注費ではなく給与である」と指摘をされた場合には、源泉徴収税、消費税、加算税、延滞税など多くの追徴課税が発生しますので注意が必要です。

(6)関連会社との取引

関連会社との取引は、価格設定を容易に操作することが可能ですので、所得操作をしやすい項目のひとつです。
本当に発注されたのか支払いがされたのかなど基本的な事項がチェックされることはもちろん、価格の設定方法、根拠、取引の実態などについても、業界の相場などを調べたうえで、細かく質問されます。

(7)役員退職金

役員退職金の金額は、会社は基本的に自由に決めることができますが、すべて損金算入させてしまうと、所得操作の温床となってしまいます。
そこで税法上は、金額として妥当と考えられる以上の金額に関しては、損金不算入処理を行うことになっています。この金額設定に関しては正当な判断の根拠をしっかり説明することが求められます。

(8)固定費

固定費とは、会社の稼働状況にかかわらず、常に一定程度発生するコスト(家賃など)のことをいいます。固定費は、原則として、毎期一定額となるため、その金額が大きく変動している場合には、税務調査で調査対象になります。

固定費が大きく変動している場合には、なぜ変動したのかきちんと説明をできるように準備をしておきましょう。

(9)社屋や車両の購入

社屋や車両の購入は基本的に金額が大きいものです。また減価償却を行う際の耐用年数の設定などに判断が含まれ、その判断により損金の金額が変動します。
そのため税務調査では、社屋や車両などの購入があった期の判断の妥当性を調査します。また、経費に計上されている項目の中で、社屋や車両の購入にかかる取得原価に含まれるものがあるかどうかという点もあわせて調査対象となります。

まとめ

以上、税務調査の対策や、どこまで調べられるのかについてご紹介してきました。
基本的に日本の税務調査は、理論武装である程度抗弁することが可能です。また、調査の際に、税務調査の理由を確認することも可能です。もちろん、具体的な調査目的を教えてくれるはずはありませんが、税務調査の理由をきちんと問いただす姿勢は、調査官に対してけん制することにもなりえます。

また、憲法35条によって税務署員が納税者の承諾なしに店や事務所、工場内に立ち入ったり、金庫を調べたりすることは違法とされています。
最近はこのような違法な税務調査は少なくなりましたが、もし、このような違法な調査が行われた場合には、はっきり調査官に異議を述べて構いません。

いずれにせよ、税務調査に関する交渉力に長けている税理士と協議の上、綿密な準備のもとに臨むようにしましょう。

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税務調査のカギを握るのは、事業のお金の流れを熟知している税理士です。
税理士がいるか否か、税務調査の経験が豊富な税理士か否かで、税務調査の流れが大きく変わることがあります。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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