棚卸資産回転率とは?計算式・業種別の目安を解説!

公開日:2021年08月15日
最終更新日:2024年07月12日

この記事のポイント

  • 棚卸資産回転率は高いほど良いが、業種ごとに平均値は異なる。
  • 理想は流通業なら20回転以上、製造業なら12回転以上だが、実際は低い。
  • 同業他社の平均値と比較して棚卸資産が低いなら、早急に検討が必要。

 

事業は利益が出ているかどうかで判断しますが、その大前提は「商品や製品がしっかり売れている」ということです。
棚卸資産回転率とは、会社の商品や製品が順調に売れているのか、それともあまり売れていないのかを見るための指標です。

この記事では、棚卸資産回転率の意味や計算式、業種別平均値とともに、棚卸回転率を高めたい時にあわせて見たい、棚卸資産回転期間や個別商品別回転期間などをご紹介します。
 

棚卸資産の豆知識

業績が悪化すると、必要もないのに生産量を増やす会社があります。固定費はほぼ一定ですから、期末在庫の増加と引換えに生産量が増えれば、製品1単位あたりの固定費は減少し、原価が下がります。つまり、計算上の売上原価は減って営業利益が増加するわけです。
これは業績を良く見せる効果があり、増産そのものは違法でもありません。
しかし、財務の安全性から見ればかなり問題のある行為です。製品在庫が増えればそれだけ運転資金が棚卸資産に変わってしまい、滞留してしまうからです。棚卸資産はすぐには売れないでしょうし、仮に売れるとしても原価以上の価格で売れる保証はありません。そうなれば、どんどん資金繰りが悪化してしまいます。
棚卸資産を多く抱えることが経営上問題となるのは、それが資金繰りに直結するからです。

棚卸資産回転率とは

会社を経営するうえでは、在庫は売れる分だけ置いておくという状態が理想です。このように適切に在庫を管理できているかを見る指標が「棚卸資産回転率」です。
在庫が多すぎれば、保管のコストがそれだけ大きくなり、また廃棄量も増えます。しかし在庫が少なすぎても、販売機会を逃してしまうリスクがあります。
棚卸資産回転率は高い方がよいが低すぎるのも考えもの、つまり、適正な在庫を持つことが重要ということになります。

(1)棚卸資産回転率の「回転」とは?

棚卸資産回転率の「回転」とは、会社の棚卸資産が年間で何回転して商品を売り上げているか、という意味です。
たとえば、棚卸資産回転率17.1回であれば、棚卸資産が1年間で17.1回転しているという意味で、約21日(365日÷17.1)で商品や製品が1回売れていることを意味します。

(2)棚卸資産回転率の計算式

棚卸資産回転率は、以下の計算式で計算します。

棚卸資産回転率 = 売上高棚卸資産

棚卸資産は、貸借対照表の商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品(つまり、在庫)で、売上高は損益計算書の売上高です。
したがって在庫がふくらめば、棚卸資産回転率は低くなり、在庫を抑えれば棚卸資産回転率は高くなります。

(3)棚卸資産回転率は高い(=在庫は少ない)方がよい

ムダな在庫を持ち資産がふくらめば、お金の出どころである資本もあわせてふくらみますので、資本の回転率は遅くなってしまいます。
よく「在庫は少ない方がよい」といいますが、これは棚卸資産回転率が低くなってしまうからです。
さらに、在庫があればその分の保管コスト、管理コストもかかります。

したがって棚卸資産回転率が低くムダな在庫が判明した場合には、その在庫の現実的な販売見込みをベースに、「在庫を持ち続けた時」「捨てた時」のどちらが損が少ないかといった比較を行い、捨てた方がよいという結果が出た時には、真剣に廃棄することを検討した方がよいでしょう。
 

棚卸資産の豆知識

廃棄をしないで、NPO法人などに寄付する方法もあります。ムダな在庫は捨てたり廃棄したりすることで保管コストや管理コストを削減できるうえ、損失を計上すれば節税というメリットも生み出します。
「在庫を持ち続けた時」「捨てた時」のシミュレーションや、それによる節税効果などは、税理士に相談したうえで早めに実行に移すことが必要です。

(4)棚卸資産は減らすべきだが思わぬリスクに注意!

効率よく稼ぐためには、棚卸資産回転率は高い方がよいですし、先ほども「ムダな在庫は減らすべきである」と説明しましたが、そうは言っても過剰に在庫を減らしてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
たとえば、自然災害や突然の地震、事故などで物流が止まってしまった場合です。
このような事態が生じた時に、在庫がなければ生産や販売もすぐに止まってしまいます。実際、2011年3月11日の東日本大震災の時には、道路が使えなくなったことから、スーパーやコンビニから商品がなくなりました。
このような不測の事態に備えて、棚卸資産回転率は業種ごとの目安(流通業なら20回転以上、製造業なら12回転)を基準として、多少多めの在庫を見ておくとよいでしょう。

(5)棚卸資産回転率の業種別平均値を見てみよう

棚卸資産回転率は業種によってさまざまですが、理想は流通業なら20回転以上、製造業なら12回転以上です。
ここでは、業種別の棚卸資産回転率をご紹介しますが、実際は理想よりはるかに低い数値となっています。
したがって、下記の業界別平均値よりさらに棚卸資産回転率が低いなら、早急にムダな在庫を確認し、対策を講じることが必要です。

業種 棚卸資産回転率
建設業 9.41回転
製造業 6.97回転
情報通信業 25.86回転
卸売業 14.83回転
小売業 6.60回転
不動産業・物品賃貸業 2.91回転
宿泊業・飲食サービス業 27.07回転
サービス業 57.62回転

参照:政府統計の総合窓口(e-Stat)中小企業実態調査(平成29年調査速報)より

棚卸資産回転率を高めるためにあわせて見たい指標

棚卸資産回転率を高めて適切な数値に保つためには、あわせて棚卸資産の回転期間や個別商品別の回転期間を見ることで、さらに細かく分析することができます。

(1)棚卸資産回転期間(在庫の1回転に要する日数)

まずは、棚卸資産回転期間です。
棚卸資産回転率の「回転」は、「1年間で何回転して商品を売り上げているか」でしたが、棚卸資産回転期間の「回転期間」とは、「在庫の1回転に要する月数(または日数)」を意味します。

つまり「在庫を何日分持っているか」という意味で、イメージしやすいことから実務でもよく使われる指標です。

棚卸資産回転期間は、以下の計算式で計算します。

棚卸資産回転期間 = 12カ月棚卸資産回転率(月数)

棚卸資産回転期間 = 365日棚卸資産回転率(日数)

棚卸資産回転期間は棚卸資産の1回転に要する期間ですから、棚卸資産回転期間は短く、棚卸資産回転率は高いほど、資本を有効活用しているということになります。

たとえば、売上高2億4,000万円で、棚卸資産1,000万円の場合には、以下のようになります。

棚卸資産回転率=2億4,000万円÷1,000万円 =24回転
棚卸資産回転期間=12カ月÷24回転 =0.5カ月
棚卸資産回転期間=365日÷24回転 ≒15.2日
棚卸資産回転期間=1,000万円÷2億4,000万円×12カ月 ≒0.5カ月
棚卸資産回転期間=1,000万円÷2億4,000万円×365日 ≒15.2日

(2)商品回転期間(商品ごとの回転期間)

これまで、棚卸資産回転率は高いほどよく棚卸資産回転期間は短いほどよいとご説明してきましたが、これらの指標を応用すると、問題のある商品在庫は何かを見抜くことができます。それが商品回転期間です。

考え方は、棚卸資産回転率・棚卸資産回転期間と同じなので、問題のある在庫を確認したい時にぜひ実践してください。

商品別の回転期間 = 商品在庫高商品売上高 × 365日
商品 在庫高 売上高 回転期間
5万円 608万3,000円 3日
38万円 213万4,000円 65日
16万円 265万5,000円 22日

回転期間3日とは「3日分の在庫」という意味で、65日とは「65日分の在庫」です。
このように商品ごとの回転期間を見れば、どの商品の回転期間が長いのか一目瞭然です。回転期間が極端に長い場合には、仕入れ過ぎたのか、あるいは売れておらず不良在庫が発生しているのかをチェックしましょう。また、回転期間が3日というのは、在庫が3日分しかないということですから、少なすぎる可能性があります。在庫切れを起こして販売機会を逃したことはないのかをチェックしましょう。

まとめ

以上、棚卸資産回転率の意味や計算式、あわせて見たい指標などについてご紹介しました。
「freee会計」の「収益レポート」では、売れ筋商品をグラフ化することができます。
細かい分析や改善策は、税理士などに相談することが必要ですが、大まかな売れ筋商品や、売れていない商品を把握することができれば、早めに必要な措置を実施することができます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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