海外展開|知っておきたい課題・支援体制

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年07月03日

この記事のポイント

  • 海外展開をする際には、国際的な税務に関する理解と検討が欠かせない。
  • 国際取引における課税は、基本的に国内法で規定されている。
  • ただし、二重課税や租税回避を防止する目的から租税条約がある。

 

国内市場の成熟化などを理由に、企業が海外展開する動きが改めて注目されています。

海外展開を検討する際には、さまざまな課題について検討する必要がありますが、同時に国際的な税務に関する理解と検討が欠かせません。

企業の国際取引においては、税務問題が時として企業の利益やキャッシュ・フローの最大化に大きな影響を及ぼすことがあるからです。

ここでは、海外展開する際に必要な国際税務に関する基本的な考え方について、ご紹介します。

日本企業の海外展開

日本企業の海外展開をする動きが、活発になってきています。
海外事業活動基本調査(2020年9月調査)によると2019年度末における現地法人数は2万5,693社となっており、ASEAN10(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、 ミャンマー、カンボジア)の割合が9年連続で拡大したとされています。

第50回 調査結果(2019年度実績)
現地法人分布の状況

2018年度 2019年度
全地域 26,233 25,693
北米 3,277 3,273
中国 7,754 7,639
ASEAN10 7,441 7,312
その他アジア 2,477 2,421
欧州 2,937 2,803
その他 2,347 2,245

引用:e-Stat「第50回 調査結果(2019年度実績)」

(1)業種別では製造業がトップ

全産業に占める割合は、製造業が43.6%でトップであり、製造業のなかでも「輸送機械」についての割合はとくに高く2,398社となっています。

第50回 調査結果(2019年度実績)
業種別現地法人分布の状況

2019年度末
現地法人数
全産業 25,693
製造業 11,199

製造業詳細

2019年度末
製造業現地法人数
食料品 528
繊維 468
木材紙パ 205
化 学 1,085
石油・石炭 44
窯業・土石 251
鉄 鋼 327
非鉄金属 353
金属製品 646
はん用機械 449
生産用機械 858
業務用機械 406
電気機械 677
情報通信機械 972
輸送機械 2,398
その他の製造業 1,532

 
引用:e-Stat「第50回 調査結果(2019年度実績)」

(2)中小企業の海外展開が活発化

中小企業基盤整備機構の海外事業活動基本調査によると、大企業のみならず、大手企業だけでなく中小企業の海外進出が活発になってきています。
中小企業基盤整備機構より平成29年3月に発表された「中小企業海外事業活動実態調査報告書」によると、「製造業」が 3,378 社で全体の44.1%、「非製造業」は 4,283 社で全体の 55.9%を占めているとされています。

中小企業の海外展開が活発化している理由としては「日本よりまだ成長の余地があり市場規模も大きい」「現地が政治的、社会的に安定している」「市場が開放的、特殊性が少ないか」などが挙げられています。

一方で、海外展開の検討を進めるうえで必要な支援として最も多かったのが「提携先との契約等に関する助言」で、次いで「現地の税制、商習慣等に関する情報提供」、「業務・技術提携候補の紹介」、「既に業務提携等を行っている企業との意見交換」といった意見が挙げられています。

参照:中小企業基盤整備機構「中小企業海外事業活動実態調査報告書」

(3)海外展開の支援体制

海外進出が活発になった背景としては、国内市場の成熟化、ビジネス戦略上の理由があるのはもちろんですが、さまざまな支援体制が整備してきたこともひとつの要因と言えます。

たとえば、日本企業の海外進出を支援している日本貿易振興機構JETRO(ジェトロ)では、進出計画案の策定 、国内での予備調査、現地調査、現地法人設立の流れなどについてレクチャーを受けることができるほか、JETRO(ジェトロ)を活用したさまざまな事例を紹介しています。

参照:日本貿易振興機構(JETRO)

また、中小企業基盤整備機構も、海外展開を検討・実施している中小企業向けに初期の計画段階から進出後のフォローアップまで、さまざまな支援制度を用意しています。
海外ビジネスの専門家によるアドバイスのほか、経費補助により海外調査、外国語Webサイトの作成等支援まで行っています。

また、各地の商工会議所、各都道府県や市区町村などでも、海外進出を支援する体制を強化していますので、これらの情報収集は積極的に行うようにしましょう。

参照:中小企業基盤整備機構

海外展開するうえで知っておきたい国際税務

前述したように、海外展開する際には「現地の税制、商習慣等の違い」がネックになるケースが多々あります。いわゆる「国際税務」の問題です。
国際税務とは、関連する税法や所得税、法人税、日本が外国政府と締結した租税条約、相手国の税法についての検討など、多岐にわたる関連税法や諸問題を包括したものをいいます。

国際間となると、日本国内の税制に相手国の税制も加わり、さらにどちらの国にどこまで課税権があるかといった問題もあり、問題は極めて複雑です。
海外展開においては、税負担を最小限に抑えるためのタックス・プランニング(税務戦略)は、必要不可欠な検討事項と言えるでしょう。
そこで、ここでは海外展開するうえで最低限知っておきたい条約や税制についてご紹介します。

(1)租税条約

企業が海外で事業を展開する際の税法上の取扱については現地の国内法を確認するのはもちろんですが、その国内法に優先するものとして租税条約があります。

租税条約とは、国際的な二重課税の回避および脱税を防止するために二国間の共通の課税ルールを定めた国家間の合意です。この租税条約の締結によって、納税者は二重課税となるのを回避でき、事業活動を行うことができるわけです。
租税条約と国内税法の規定が異なる場合には、まず租税条約の取り決めが優先されます。
したがって、相手国が日本との租税条約締結国である場合には、まず租税条約について確認する必要があります。

租税条約は、国際的な条約と言うわけではなく、二国間条約です。
したがって、A国とB国と取引している場合には、A国とB国の租税条約の内容によって税率は変わることになります。
これは、租税条約が二国間のそれぞれの経済状況を考慮して、慎重に協議することで締結されているからです。

したがって、海外展開をする際には、それぞれの国と締結したそれぞれの租税条約の内容を確認する必要があります。

日本においては、租税条約は国内の税法に優先して適用されますので、条約締結国における法人・個人と取引する際には、まず租税条約を確認する必要があります。
租税条約を締結していない国に進出したり、租税条約を締結していない国と取引したりする際には、税負担がどのようになるのかについて、十分注意する必要があります。

租税条約の目的は、二重課税の排除と脱税の防止なので、租税条約を締結している国との取引では、ほとんどの場合で、税負担が軽くなるよう配慮されています。
しかし、租税条約が締結されていない場合には、このような配慮がされず軽減措置もないため、税負担が想像以上に重くなる可能性があります。

(2)外国子会社合算税制

外国子会社合算税制(いわゆるタックス・ヘイブン対策税制)は、軽課税国を利用した租税回避への対抗策として導入された制度です。
正常な事業活動を行っている子会社の所得については適用外とされていますが、実質的活動を伴わないペーパー・カンパニーであったり、経済活動基準を満たさなかったりする場合には、その外国子会社の所得に相当する金額が内国法人の所得とみなされ、合算して課税されます。

▶ タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは

(3)移転価格税制

移転価格税制とは、国外に所在する関連者との取引において、その価格を操作することで租税回避等を行うことに対応するための税制です。
法人と国外関連者との間で行われた取引の対価が、通常の価格ではない価格で行われたことで、その法人の所得が国外に移転している場合には、いわゆる「独立企業間価格」とみなされ、その法人の所得金額が計算されます。
令和元年度の改正では、独立企業間価格の算定方法として、「ディスカウント・キャッシュ・フロー法」が追加されました。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法:
国外関連取引に係る棚卸資産の販売又は購入の時に当該棚卸資産の使用その他の行為による利益(これに準ずるものを含む。)が生ずることが予測される期間内の日を含む各事業年度の当該利益の額として当該販売又は購入の時に予測される金額を合理的と認められる割引率を用いて当該棚卸資産の販売又は購入の時の現在価値として割り引いた金額の合計額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法

参照:国税庁「移転価格税制とディスカウント・キャッシュ・フロー法」

まとめ

海外展開するうえでは、関係する国によって税法が異なるため税負担がどのようになるのかについて、十分注意する必要があります。
海外展開をお考えの際は、まずは国際税務に強い税理士に相談することをお勧めします。

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